おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

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分析

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 白野は、約束通り、7時にファイルコピー成功を連絡し、新宿の事務所に届けてから京王線に乗った。
 電話した時も、事務所でSDカードを渡した時も、「先生、ヤクザの跡目争いに俺達巻き込まれているだけなんですか?」の言葉が喉元まで出かかった。
 まだ、言えない、聞けない。せめて自分なりにどうするのか考えてから。必死の思いで自制した。

 駅で降りコンビニで朝食を買って出ようとすると、ガラス戸の向こうに黒江がいた。
 白野が店の外に出ると、にっこり笑って挨拶してきた。その笑顔に疲れが癒される思いがする白野だった。
「おはよう、うまくいったんだね。」
「おはよう、どうしてそれを?」
「先生から連絡があったの。先生のPC、SDカードリーダーが無いんだよ。外付けのリーダーが必要だからって言うんで今から私のパソコン持っていくんだ。そういうのが必要ってことは成功したんだよね。」
「一応、一通りコピーはしたつもり、残念ながらスマホは、甲斐が出かけて見れなかった。」
 4時まで何度か組事務所に『Mark2Eyeball』を送ってみたが、甲斐がおらず空振りになっている。
「そこまでできればよかったかもしれないけど、急がずにやればいいと思うよ。私たち、明日から大学生なんだから。」
「そうだね。」
 期限は後4か月、新星会の跡目の選挙までだと思うよ。
 そう言ったら黒江さんどうするんだろう。
 そんなことを考えてしまった。
「白野さん、どうしたの?なんか厳しい顔してる?」
「あぁ、ごめん、あんまりよく寝れてないから、ちょっと頭が痛くて。」
 適当に誤魔化した。
「大丈夫?ファイルの解析は先生や私に任せてゆっくり寝てね。」
「お言葉に甘えてゆっくり寝るよ。ご飯食べてからね。」
 そう言ってコンビニの袋をかざした。サラダが2つ透けて見える。
「あのネットカフェ、サラダが無くてさ。だから昨日野菜食べてない。その分、今から食べるから勘弁して。」
「えらい。私さ、実は昨日帰ってから白野さんが行ったネットカフェ色々調べたんだ。メニューにサラダ無いなんてびっくりしたよ。ファミレスでもあるのにね。」
「調べたんだ。」
「うん、何にもできないのがちょっともどかしくて、意味ないとは思ったんだけど。」
「黒江さんはPC操作して先生助ける仕事があるじゃん。」
「そうだね。でも待つのはちょっとね。」
「役割も仕事の時間も違うのはしょうがないよ。ただ、協力することが大事だと思う。」
「そうだね。それにしても隠し事しなかったのは、えらいぞ。お姉さん嬉しいな。」
「ならなんかご褒美ちょうだい。?ちゅーとかいいな。」
 隠し事いっぱいなんだけどな。そう思いながらも、内心を隠すべく冗談をとばす。
「ほっぺになら、ちゅーしてあげようか♪」
「えっ!」
 一気に顔が紅潮するのがわかった。外気の冷たさが救いだ。
「ほら、ほっぺを出しなさい。」
 言われるままに左の頬を出すよう右を向く。黒江の右手が耳にかかり、左手が頬のあごよりの位置にかかり。
「いたひいたひ。」
 黒江の右手は耳を、左手は頬を、それぞれつねっている。
「こんな人前でするわけないでしょ、このおバカ。大体、私達そんな関係じゃないでしょ、おバカ。顔真っ赤にしちゃって。本当におバカね。」
「やっぱひ。」
 わかっちゃいるんだけどね。それでも万分の一、いや10万分の1の確率でもかけるのが男という生き物で。
 黒江は、両手でつねりながら、口元に白野の耳を唇がふれるか触れないかのところまで引き寄せた。
「お疲れ様、ゆっくり寝てね。明日、入学式で会いましょ。」
 手を離すと黒江は、駅に入っていった。
 ささやかれた左耳にくすぐったさを感じて、しばらく白野は左耳をおさえていた。

「先生、おはようございます。」
「黒江ちゃん、朝からすまないね。」
「いいえ、何かできるのってうれしいですよ。」
 そう言いながら黒江は、持参したノートPCを机の上に置き、渡されたSDカードを挿入する。
エクスプローラを立ち上げ、SDカード内のファイルを表示する。
「先生、どうぞ。」
黒江はノートPCを吉良に差し出した。
「どうぞって、数字しか出てないんだけど。」
 ファイルは表示されているが、どれも名称が数字で表記されている。
「多分、法則性があってどの数字が、どの項目という風になっていると思うが。」
「時間かかりそうですね。お茶入れて来ます。」
 蔵良が立ち上がった。
「USBメモリあります?コピーすれば先生たちのPCでも読めると思いますけど。」
「一応あることはあるはずだけどね。」
 お茶を煎れながら蔵良は言った。
「手分けして調べるのも悪くないが、黒江ちゃん、もう少しすればお店が開くだろう。パソコンを買ってきてくれないか?お金は用意してる。」
「今からですか?」
「今後のこともあるし、今日君が帰る時、このパソコンは返さないといけない。それでは、困るから頼む。私は、文書に目を通すから。」
 吉良のカバンから用意していたらしい封筒を渡してきた。結構厚みがある。
「50万入れておいた。君の選択で構わないから頼む。」
「そんなに、よろしいのですか?」
「よろしく頼む、この老人を助けると思って。」
「ほら、助けると思って、じゃなくて助けてよ、あたしからもお願い。」
 お茶を吉良の脇から出しながら、蔵良も言った。
「わかりました。行ってきます。」
「後、悪いんだけどできるだけ安くね。申し訳ないけど。」
「時間はかかっても構わない。そうだ、秋葉原に足を伸ばしたまえ。夕方までに帰ってきてくれればいい。お昼も渡したお金で食べたまえ。」
「はい、わかりました。」
 封筒をバッグに入れ、しっかり抱きかかえるようにして事務所を出て行った。
「出ていきましたね。」
「さすがにこんなのは見せられない。これも資金源なのだろうが。」
 PCの画面には、裸で絡み合う男女の画像と脇に販売額とおぼしき数字などのテキストが表示されていた。裏ビデオの製作販売の記録であろう。スクロールさせると、縛られたりカットソーを捲りあげられている画像などが次々と表示された。ひどいのになると、銃を突きつけられ青ざめた顔で服を脱いでいる画像もある。演技ならいいが……。
「あのお嬢ちゃんが見たら卒倒しかねませんね。」
「どうせ買いに行ってもらうつもりだったのだ。それが少し早くなっただけさ。」
 吉良は蔵良が差し出したUSBメモリを差し込み、SDカード内のファイルのコピーを始めた。
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