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事務所のドアの前で、白野は一度逡巡した。開けるべきか、それとも適当な理由をつけて今日は休むか。
どこかで、対峙しないといけないよな。
その気がなくてはここまで来ない。
天秤は開けるに傾き、意を決した白野は事務所のドアを開けた。
「こんにちは。」
「白野君、こんにちは。来てそうそう申し訳ないのだが、甲斐の携帯を調べて貰えないだろうか?君がコピーしてきてくれたファイルを調べてみたが、わからない点があってね。携帯の通話履歴がわかれば、調べることもできるはずなのだ。」
「それは構いませんが、お話しがあります。」
「何かな?」
「甲斐の件は乗りかかった船ですので、お手伝いしますが、それ以降に関しては考えさせて下さい。」
「どうしたのかね?」
「銃犯罪の未然の防止に協力できても、新星会の跡目争いに関わるつもりはありません。」
「どういう意味かね?」
「どうもこうも言った通りです。先生は、江戸川さんの顧問なんでしょ。その江戸川さん、新星会の創設者で新星会の跡目争いに関与してる。」
「どうしてそれを?」
「週刊誌ってものがあるんですよ。」
「そういや坊や、実話系週刊誌読んでいるんだっけね。」
「江戸川さんに初めて会った時、どこかで見た顔だなって思って調べたんです。2月ごろの週刊誌に久しぶりに顔を出したなんて記事が写真付きで出てましたよ。そこから、バックナンバー漁って調べました。」
言いたいことありますか?その意思をこめて吉良に視線をぶつけた。
「君の言っていることは概ね正しい。江戸川さんは、新星会の創設者だし跡目争いに関与している。何しろ跡目を組員全員の選挙で決めるとしたのは江戸川さんだしね。」
「久島でしたっけ。今の新星会の若頭、その人を未亡人の頼みで跡目にしようとしているんですね。」
「そこは違う。久島を跡目にしようとしているのは江戸川さん自身の意思だ。あの人は甲斐を危険人物とみなしている。新星会のみならず新井組すら揺るがしかねない人物と言っていたよ。だから排除すると。」
「本当ですか?」
「あぁ、信じてもらうしかないがね。銃犯罪を未然に防止するというのも信じてもらえるとありがたい。」
「一応信じましょう。未亡人の頼み云々も憶測記事でしたから。銃犯罪の方は、保留させてもらいます。」
「仕方ないか、隠し事していたのは、こちらに非がある。」
「ちょっとお伺いしたいのですが、江戸川さんと先生は、大学の先輩後輩ですね。そのころに接点はあったのでしょうか?ウィキペディアじゃ江戸川さん、大学を8年在学していたそうですが。先生が1年の時接点があったのでは?」
「うぃきぺでぃあ?」
「ネットの百科事典です。あんまり信用してはいけないんですけど、参考にはできます。」
「そんなものがあるのか、ネットとは、いやはやすごいね。その通りだよ。江戸川さんは8年間在学して、最後の年
に私と知り合ったんだ。」
「坊や、江戸川さんはさておき、先生のことまでそのウィキペディアに出てたのかい?」
「いいえ、先生の情報は、大学と検事としての略歴、事務所の連絡先くらいです。」
「そう言えば、パソコンを設定した業者が今時、ホームページくらい無ければ信用されません、といって私の略歴などを聞いてきたな。ホームページに載せるとか言っていたが、そのことか。」
「ブログもありましたけど、何もなかったですね。」
「あぁ、設定したとは聞いていたが、わからないので何もしていない。」
とことんネットとかPCとか知らないんだな、この先生。
「最初は色々あったよ。白野君は知らないだろうが、私の学生のころ学生運動というのが盛んでね。あの人も学生運動にどっぷりつかって、周囲の人間を活動に片っ端から引き込もうとしたり、利用しようとしていたね。あの人自身、かなり恐れられている人でね、退学になった時、職員や教授などはかなりほっとしたもんだよ。」
「その頃からヤクザ的なところはあったということですね。」
「普通の学生運動の参加者にそう言うと失礼になるが、あの人は例外だ。かなり暴力的で、気に食わなければ仲間でも容赦しなかったからね。直接的な暴力威圧のみならず策略も巡らせるからタチが悪かった。」
「策略家ですか、今もあんまり変わってないんじゃないですか?俺が、あの人の顔見た時の第一印象は『狡猾』でした。」
この人、まず間違いない。俺の予測通りだろうな。
「そうだね、その辺は変わってなさそうだ。私に顧問弁護士を依頼してきたときも、最初元ヤクザであることを隠そうとしたからね。曰く、恥ずかしかったのだそうだ。革命にヤクザを利用すると言ってヤクザになったのだからね。」
「革命の戦力として利用するはずが、完全にヤクザになりきり革命家でなくなってしまったと。」
「そういうことだ。最初昔革命のためにやった犯罪行為で捜査された場合、弁護して欲しいと言ってきたからね。」
大分、雰囲気が緩くなったな、切り出すとすれば今か。
白野は、開いてる椅子に座った。
「先生、俺や黒江さんにもう一つ隠し事をされてますね。」
どこかで、対峙しないといけないよな。
その気がなくてはここまで来ない。
天秤は開けるに傾き、意を決した白野は事務所のドアを開けた。
「こんにちは。」
「白野君、こんにちは。来てそうそう申し訳ないのだが、甲斐の携帯を調べて貰えないだろうか?君がコピーしてきてくれたファイルを調べてみたが、わからない点があってね。携帯の通話履歴がわかれば、調べることもできるはずなのだ。」
「それは構いませんが、お話しがあります。」
「何かな?」
「甲斐の件は乗りかかった船ですので、お手伝いしますが、それ以降に関しては考えさせて下さい。」
「どうしたのかね?」
「銃犯罪の未然の防止に協力できても、新星会の跡目争いに関わるつもりはありません。」
「どういう意味かね?」
「どうもこうも言った通りです。先生は、江戸川さんの顧問なんでしょ。その江戸川さん、新星会の創設者で新星会の跡目争いに関与してる。」
「どうしてそれを?」
「週刊誌ってものがあるんですよ。」
「そういや坊や、実話系週刊誌読んでいるんだっけね。」
「江戸川さんに初めて会った時、どこかで見た顔だなって思って調べたんです。2月ごろの週刊誌に久しぶりに顔を出したなんて記事が写真付きで出てましたよ。そこから、バックナンバー漁って調べました。」
言いたいことありますか?その意思をこめて吉良に視線をぶつけた。
「君の言っていることは概ね正しい。江戸川さんは、新星会の創設者だし跡目争いに関与している。何しろ跡目を組員全員の選挙で決めるとしたのは江戸川さんだしね。」
「久島でしたっけ。今の新星会の若頭、その人を未亡人の頼みで跡目にしようとしているんですね。」
「そこは違う。久島を跡目にしようとしているのは江戸川さん自身の意思だ。あの人は甲斐を危険人物とみなしている。新星会のみならず新井組すら揺るがしかねない人物と言っていたよ。だから排除すると。」
「本当ですか?」
「あぁ、信じてもらうしかないがね。銃犯罪を未然に防止するというのも信じてもらえるとありがたい。」
「一応信じましょう。未亡人の頼み云々も憶測記事でしたから。銃犯罪の方は、保留させてもらいます。」
「仕方ないか、隠し事していたのは、こちらに非がある。」
「ちょっとお伺いしたいのですが、江戸川さんと先生は、大学の先輩後輩ですね。そのころに接点はあったのでしょうか?ウィキペディアじゃ江戸川さん、大学を8年在学していたそうですが。先生が1年の時接点があったのでは?」
「うぃきぺでぃあ?」
「ネットの百科事典です。あんまり信用してはいけないんですけど、参考にはできます。」
「そんなものがあるのか、ネットとは、いやはやすごいね。その通りだよ。江戸川さんは8年間在学して、最後の年
に私と知り合ったんだ。」
「坊や、江戸川さんはさておき、先生のことまでそのウィキペディアに出てたのかい?」
「いいえ、先生の情報は、大学と検事としての略歴、事務所の連絡先くらいです。」
「そう言えば、パソコンを設定した業者が今時、ホームページくらい無ければ信用されません、といって私の略歴などを聞いてきたな。ホームページに載せるとか言っていたが、そのことか。」
「ブログもありましたけど、何もなかったですね。」
「あぁ、設定したとは聞いていたが、わからないので何もしていない。」
とことんネットとかPCとか知らないんだな、この先生。
「最初は色々あったよ。白野君は知らないだろうが、私の学生のころ学生運動というのが盛んでね。あの人も学生運動にどっぷりつかって、周囲の人間を活動に片っ端から引き込もうとしたり、利用しようとしていたね。あの人自身、かなり恐れられている人でね、退学になった時、職員や教授などはかなりほっとしたもんだよ。」
「その頃からヤクザ的なところはあったということですね。」
「普通の学生運動の参加者にそう言うと失礼になるが、あの人は例外だ。かなり暴力的で、気に食わなければ仲間でも容赦しなかったからね。直接的な暴力威圧のみならず策略も巡らせるからタチが悪かった。」
「策略家ですか、今もあんまり変わってないんじゃないですか?俺が、あの人の顔見た時の第一印象は『狡猾』でした。」
この人、まず間違いない。俺の予測通りだろうな。
「そうだね、その辺は変わってなさそうだ。私に顧問弁護士を依頼してきたときも、最初元ヤクザであることを隠そうとしたからね。曰く、恥ずかしかったのだそうだ。革命にヤクザを利用すると言ってヤクザになったのだからね。」
「革命の戦力として利用するはずが、完全にヤクザになりきり革命家でなくなってしまったと。」
「そういうことだ。最初昔革命のためにやった犯罪行為で捜査された場合、弁護して欲しいと言ってきたからね。」
大分、雰囲気が緩くなったな、切り出すとすれば今か。
白野は、開いてる椅子に座った。
「先生、俺や黒江さんにもう一つ隠し事をされてますね。」
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