おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

文字の大きさ
63 / 77

甲斐と白野

しおりを挟む
「あぁそう、一応言っておくが、ここに俺達が潜伏していること、サツにチクるなよ。チクったら。」
「俺を殺しますか。」
「いや、サツ相手にここで一戦交える。」
「警察と銃撃戦って。」
「やっちゃいかん言われてもやる。お前の言う犯罪をたっぷりやる。」
 嫌なら言うなということか。
「勝ち目あるんですか?」
「あるさ。伊達や酔狂でここに隠れているわけじゃねえ。」
 そう言う甲斐の言葉に、狂気は感じられない。冷徹な計算に裏打ちされた自信を感じるだけだった。
「ま、警察官が大勢死ぬことになるのだけは間違いない。それだけは言っておく。」
 甲斐のファイルに拳銃やサブマシンガン、小銃にグレネードランチャー、手りゅう弾などの数量が記載されたものがあった。無論、それらに必要な銃弾も。細かい数字は覚えていないが、かなりの量があったのは間違いない。
「あぁそうだ。お前を殺さん理由を忘れるところだった。」
 甲斐はバッグから先ほどコンビニで作成した封筒を取り出した。
「こいつを頼む。」
 渡された封筒には、「解散届」と書かれていた。
 裏を見ると「甲斐組三代目甲斐史郎」とある。
「そいつは、甲斐組の解散届だ。ヤクザの一家やるのに国への届とかいらねえんだが、解散は所轄に届け出る。まぁケジメだな。そうせんとカタギにはわからんから。」
「何で俺に?」
「今のこのこと届けに行けば逮捕だし、郵送すれば、消印でこの辺にいるとサツがすっ飛んでくる。そいつを姉田さんに届けてくれ。後はあの美人さんがやってくれるだろう。」
 姉田弁護士は、美人らしい。
「俺が死ねば残った連中の中で投降するのも出るだろう。その時組が解散していれば、俺に脅された、という言い訳もできる。」
「死ぬ気なんですか?」
「自殺願望はねえが、万が一はある。その時残った連中のこと考えてやらんとな。」
「甲斐さん、くどいですが、ヤクザ以外の生き方考えませんか?」
「ヤクザ以外の生き方か。もう考えられねえ。別の生き方探るにゃ歳も食いすぎた。」
「そんなことは。自首して罪を償って、それからでも。」
「ガキが黙れ。いいか、ヤクザの懲役は一般人より長い。銃の密輸とか最低10年は出てこれねえ。それにだ、ムショに新星会なり新井組なりのヒットマンが来ない保障ができるのか?」
「刑務所に?どうやって?」
「犯罪犯せば簡単に行けるぜ。得物はどうにでもなる。例えばマイナスドライバーを鋭く尖らせるとかな。グラインダーや旋盤だってムショの中にはある。お手軽にハサミだってあるし。後は、俺に近づいてしまえばいいだけだ。」
「……」
「わかったな。世の中いろんな人間がいる。いろんな考え方や生き方がある。そいつをどうにかしようなんざ、てめえの分を超えているぜ。」
「しかし、犯罪を許すことはできません。」
「いい加減黙んな!」
 甲斐は拳銃を白野に突きつけた。
「ルガー・レッドホーク、45ACP弾ってわかるか?44マグナムを超えるマンストッピングパワーを誇る銃弾を使う銃だ。てめえなんぞ肉片にしかなんねえぞ。」
 さすがに白野も一歩引いた。専門用語は理解できなかったが、破壊力のある銃であることはわかった。
 しかし、白野は下がりながらもポケットに手を突っ込んだ。
「怖えのかよ。犯罪は許さねえとか言いながら、いざその象徴ともいうべき銃を突きつけられりゃ、逃げるしかねえ。わかるか。お前無力なんだよ。」
 「ダブルフィンガー」発動。
 同時に、白野の携帯が鳴った。
「出ていいぜ。」
 別に許可されたからではないが、電話に出た。
「白野さん。」
「黒江さん、どうしたの?」
「白野さん、今日大学来てないってクラスの人が。」
「うん、黒江さんと別れてから頭が痛くなってさ。授業休んだ。」
「大丈夫?熱は?」
「熱は無いよ。寝ていたら楽になったから合コンは大丈夫だと思う。」
「わかったけど、みんな心配してるよ。」
「うん、みんなにはline送っとく。心配してくれてありがとう。切るね。」
 通話を切った。
「なんだ、あのお嬢さんからか。合コンだのなんだの平和なこったな。」
「平和ですよ。このまま女の子だけでも平和にしておいてもらえませんか?」
「ダメだ。言ったろう。はめてくれた返礼はしなきゃ物笑いの種だって。先々代や関係した奴は殺す。お前も例外じゃねえ。今殺さないのは、こっちの事情に過ぎねえ。」
 下の者に殺すなと言っておいて自分が殺したのでは、示しがつかないからだが、そこまで言う気はなかった。
「そうですか、ならこちらも容赦しません。」
「ほう、ちっと顔が変わったな。」
「ええ、甲斐さんをしとめましたから。」
「何?」
「襟を。」
 甲斐は襟に左手を当てた。人差し指に細い金属の感触がある。つまんで引き抜いてみた。
「針、まさかお前か?」
「はい。」
「だがよ、こんなんじゃ人間死なねえぞ。」
「毒でも塗りますよ。農薬とか色々合法的に入手できるものはありますから。」
「犯罪止めるために、お前犯罪やるんかい。」
「はい、黒江さんに手を出すなら容赦はできません。」
「そんな顔ができるんだな。」
 甲斐は銃口を地面に向け、白野に近寄って来た。
 至近距離でにらみ合う。
「ほれ。」
 甲斐は無造作に、白野に銃を握らせ構えさせた。
 銃口は、甲斐の胸に触れている。
「引き金引いてみねえか?お嬢さんの安全は確保できるぜ。」
 さすがに白野はひるんだ。銃を持つ手が下がる。
 空いたスペースに甲斐が踏み込んで来た。
「残念だったなあ!」
「ゲボゥッ。」
 甲斐のボディブローが白野のみぞおちに炸裂した。たまらず、白野は崩れる。
 崩れる白野から甲斐は拳銃をもぎ取った。
「いい顔すると思ったが。10代じゃこんなもんか。」
「あんた、自殺願望無いんじゃないのかよ。」
「無い。だから安全装置をかけて渡した。」
「きったねえ。」
 引き金を引いても発砲しなかったということだ。
「これでわかったか。俺達は汚いこともやるし、殺しを厭う気もねえ。次会う時は殺す。てめえも覚悟決めておけ。」
 甲斐は踵を返した。
「わかりました。解散届はお引き受けします。」
「あぁ、頼んだぜ。」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

碧春

風まかせ三十郎
青春
 碧色(へきいろ)。それは表面は澄んでいながら最奥までは見通すことのできない深い碧。毎日のように級友たちと顔を合わせているにも拘わらず、気心の知れた友達ですら、その心の奥底までは見透かすことができない。でも一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、それは深海の底から沸き上がる気泡のように目視できることがある。主人公わたしは電車内で不意に唇を奪われた。それも同じ学校の女生徒に。彼女の名前は瀬名舞子。今日転校してきたばかりの同級生。それ以後、わたしの受験生としての日常は彼女に翻弄されることになる。碧春(へきしゅん)。それはきらめく青春の断片。碧春。それは誰もが抱く永遠の思い出の欠片。

つまみ食いしたら死にそうになりました なぜか王族と親密に…毒を食べただけですけど

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私は貧しい家に生まれた お母さんが作ってくれたパイを始めて食べて食の楽しさを知った メイドとして働くことになれて少しすると美味しそうなパイが出される 王妃様への食事だと分かっていても食べたかった そんなパイに手を出したが最後、私は王族に気に入られるようになってしまった 私はつまみ食いしただけなんですけど…

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...