64 / 77
吉良
しおりを挟む
甲斐は皆からの報告を聞いていた。
報告する面々の顔に赤みは無い。食事を済ませるようにと指示したが、アルコールは禁じたのを全員守ってくれている。
「先々代は、事務所にこもったままのようですね。こちらも遠巻きにしか監視できませんので限度はありますが。」
「やむを得ん。近寄るだけでも危険じゃからな。」
「ただ、姐さんが、先々代の自宅に行ってます。着替えなどを取りに行っているようです。」
「姐さん、奥さん気取りか。」
「結婚したのかもしれませんぜ。自宅に行った帰りに区役所にも寄ってます。」
「その辺はどうでもええ。それより事務所に詰めている人数はどんな感じじゃ?」
「30名くらいでしょうか。ただ、他所からの応援が半数入ってます。」
俺達の捜索に新星会の人間を当てているんだろう。
薄くなった警備要員を応援でまかなっていると見ていい。。
「後、例の弁護士のところです。事務所自体はただの雑居ビルですね。」
「出勤は?」
「弁護士と事務のねーちゃんが9時前に来ただけで、後は来客だけ。組長のお気に入りのバイトは来ていません。」
「お気に入りのバイト?男と女どっちだ?」
「そりゃ男で。」
レッドホークが本座の鼻先に突きつけられる。
「組長、銃口を人に向けるのは……。」
安全装置を解除する音がした。
「本座、笑えねぇジョークは嫌いなんだ、俺は。」
「失礼しました。女の子の方ッスね。」
「いねえよ、お気に入りなんざ。」
だから気にせず、必要に応じた処置をとれ、甲斐は暗にそう言った。
甲斐はレッドホークをホルスターに戻した。
「皆、聞いてくれ。明日だ。明日仕掛けるぞ。」
場の空気が一気にしまった。
「組長、お言葉ですが明日でなくてはならないのでしょうか?急ぎ過ぎではありませんか?」
「そうだな。主導権は俺達にある。ここはいつ来るかいつ来るかとじらして消耗させるのがセオリーだろうが、消耗した相手に勝ったところで今後に繋がらん。消耗していない相手に目的を達成することができてこそ、俺達の価値が上がる。」
「なるほど。」
「まず、先々代からだ。場所は新星会の事務所だから全員慣れとるだろう。」
甲斐は、戦闘に関する机上演習の場所の一つとして新星会事務所を利用していた。実際、中のことを皆熟知している。実地でやったことがないことだけが不安要素だが、甲斐はそれほど心配はしていなかった。
「できる限り殺すな。殺すのは簡単だが、最小限の殺しで目的を達成することができるという見本になる。」
「はい。」
「問題は、弁護士先生だ。」
「バイトまで含めた全員が出勤しているか、ですな。」
「その辺りは大丈夫じゃろ。今日休んで明日も休むということはないじゃろ。給料が少なくなるからの。」
「問題は、いかに新星会の事務所から速やかに移動するかですね。」
「新星会の車を使う。」
「弁護士襲撃後は?」
「速やかに新宿から離脱する。田家、お前の運転にかかっている。」
「わかりました。任せて下さい。」
「ビルの裏が幸い空き地だ。そこに止めればいい。裏からの脱出も防げる。」
「そうか、本座ありがと。」
「入口は道路に面した所だけなんで二人配置して、裏に田家と一人配置。残り全員で突入して一気にけりをつけます。素人4人、こっちは6人。万全ですよ。」
「よし、では行動を開始する。」
合コンの2次会はカラオケボックスに突入した。
無論、一室に入り切れないのでいくつかの部屋に別れた。
白野は、一緒の部屋の人間に断ってカラオケボックスの外に出た。甲斐に頼まれた解散届を届けるためだ。
幸い、姉田弁護士の事務所は近い。ポストに投函してすぐにカラオケボックスに戻るつもりだった。
ビルのエントランスに設置されているポストに投函しようとした時、声をかけられた。
「白野君、何をしているのかね?」
「先生。どうしてここに?」
声をかけて切ってのは吉良だった。
「姉田弁護士と甲斐のことで話をしていた。甲斐に紹介したのが私だからね。君は、合コンはどうしたのかね?」
「今近くのカラオケボックスに移動しました。ちょっと抜けて、甲斐に頼まれ甲斐組の解散届を姉田弁護士に届けに。」
「甲斐に?今、君が持っている封筒かね?」
「はい。」
「ちょっと貸したまえ。」
そう言って封筒を取り上げ吉良は、自分の鞄に入れた。
「先生?」
「この封筒、警察に届けば指紋も調べられるだろう。君に行き着くかわからんが、私に任せたまえ。悪いようにはせん。」
「わかりました。」
吉良は歩き出した。白野も続く。
エントランスから出たところで、2人組の男に声をかけられた。
「失礼ですが。」
「あぁ、彼は白野すずお君。私のところのアルバイトだよ。書類を持って来てもらったんだ。」
白野が返事をするより先に吉良が返事をした。
「君達は新宿署の方かね。白野君の身元は私が保障する。彼は犯罪と関わる様な人間では無い。」
「白野君は、呑んでいる様ですが。」
「友人と楽しんでいるところ、私が無理に頼んだだけだ。白野君、行くぞ。」
吉良に促されるまま、白野は刑事達から離れた。
「甲斐も指名手配された。姉田弁護士のところにも接触の可能性を考慮して張り込ませているのだよ。」
初めての経験に白野は、言葉が出ない。自分が犯罪に関わっている緊張感にあらためて襲われていた。
「ところで甲斐とはどこで?」
「八王子です。ファイルにあったコンテナの置き場に行ったら出くわしました。」
「何故、そこだと思った?」
「コンテナなら隠れ家になるかなと思って。」
「それだけかね。」
「はい、違ったらまた、別の場所を探すだけと思って行ってみました。」
「危険なことを。」
「『Mark2eyeball』を使って探る前に甲斐と出くわして。」
甲斐と出くわしてからのことを、歩きながらざっくりと話した。
「江戸川さんや我々を殺すと。」
「俺も次会う時は殺すと。」
話しているうちにカラオケボックスに着いた。
「それでは失礼します。幹事だから戻らないと。」
「そうしなさい。言いたいことは山ほどあるが、これだけ言っておく。すでにこの件は、君の手から離れた。どうなろうと見ているだけにしたまえ。」
報告する面々の顔に赤みは無い。食事を済ませるようにと指示したが、アルコールは禁じたのを全員守ってくれている。
「先々代は、事務所にこもったままのようですね。こちらも遠巻きにしか監視できませんので限度はありますが。」
「やむを得ん。近寄るだけでも危険じゃからな。」
「ただ、姐さんが、先々代の自宅に行ってます。着替えなどを取りに行っているようです。」
「姐さん、奥さん気取りか。」
「結婚したのかもしれませんぜ。自宅に行った帰りに区役所にも寄ってます。」
「その辺はどうでもええ。それより事務所に詰めている人数はどんな感じじゃ?」
「30名くらいでしょうか。ただ、他所からの応援が半数入ってます。」
俺達の捜索に新星会の人間を当てているんだろう。
薄くなった警備要員を応援でまかなっていると見ていい。。
「後、例の弁護士のところです。事務所自体はただの雑居ビルですね。」
「出勤は?」
「弁護士と事務のねーちゃんが9時前に来ただけで、後は来客だけ。組長のお気に入りのバイトは来ていません。」
「お気に入りのバイト?男と女どっちだ?」
「そりゃ男で。」
レッドホークが本座の鼻先に突きつけられる。
「組長、銃口を人に向けるのは……。」
安全装置を解除する音がした。
「本座、笑えねぇジョークは嫌いなんだ、俺は。」
「失礼しました。女の子の方ッスね。」
「いねえよ、お気に入りなんざ。」
だから気にせず、必要に応じた処置をとれ、甲斐は暗にそう言った。
甲斐はレッドホークをホルスターに戻した。
「皆、聞いてくれ。明日だ。明日仕掛けるぞ。」
場の空気が一気にしまった。
「組長、お言葉ですが明日でなくてはならないのでしょうか?急ぎ過ぎではありませんか?」
「そうだな。主導権は俺達にある。ここはいつ来るかいつ来るかとじらして消耗させるのがセオリーだろうが、消耗した相手に勝ったところで今後に繋がらん。消耗していない相手に目的を達成することができてこそ、俺達の価値が上がる。」
「なるほど。」
「まず、先々代からだ。場所は新星会の事務所だから全員慣れとるだろう。」
甲斐は、戦闘に関する机上演習の場所の一つとして新星会事務所を利用していた。実際、中のことを皆熟知している。実地でやったことがないことだけが不安要素だが、甲斐はそれほど心配はしていなかった。
「できる限り殺すな。殺すのは簡単だが、最小限の殺しで目的を達成することができるという見本になる。」
「はい。」
「問題は、弁護士先生だ。」
「バイトまで含めた全員が出勤しているか、ですな。」
「その辺りは大丈夫じゃろ。今日休んで明日も休むということはないじゃろ。給料が少なくなるからの。」
「問題は、いかに新星会の事務所から速やかに移動するかですね。」
「新星会の車を使う。」
「弁護士襲撃後は?」
「速やかに新宿から離脱する。田家、お前の運転にかかっている。」
「わかりました。任せて下さい。」
「ビルの裏が幸い空き地だ。そこに止めればいい。裏からの脱出も防げる。」
「そうか、本座ありがと。」
「入口は道路に面した所だけなんで二人配置して、裏に田家と一人配置。残り全員で突入して一気にけりをつけます。素人4人、こっちは6人。万全ですよ。」
「よし、では行動を開始する。」
合コンの2次会はカラオケボックスに突入した。
無論、一室に入り切れないのでいくつかの部屋に別れた。
白野は、一緒の部屋の人間に断ってカラオケボックスの外に出た。甲斐に頼まれた解散届を届けるためだ。
幸い、姉田弁護士の事務所は近い。ポストに投函してすぐにカラオケボックスに戻るつもりだった。
ビルのエントランスに設置されているポストに投函しようとした時、声をかけられた。
「白野君、何をしているのかね?」
「先生。どうしてここに?」
声をかけて切ってのは吉良だった。
「姉田弁護士と甲斐のことで話をしていた。甲斐に紹介したのが私だからね。君は、合コンはどうしたのかね?」
「今近くのカラオケボックスに移動しました。ちょっと抜けて、甲斐に頼まれ甲斐組の解散届を姉田弁護士に届けに。」
「甲斐に?今、君が持っている封筒かね?」
「はい。」
「ちょっと貸したまえ。」
そう言って封筒を取り上げ吉良は、自分の鞄に入れた。
「先生?」
「この封筒、警察に届けば指紋も調べられるだろう。君に行き着くかわからんが、私に任せたまえ。悪いようにはせん。」
「わかりました。」
吉良は歩き出した。白野も続く。
エントランスから出たところで、2人組の男に声をかけられた。
「失礼ですが。」
「あぁ、彼は白野すずお君。私のところのアルバイトだよ。書類を持って来てもらったんだ。」
白野が返事をするより先に吉良が返事をした。
「君達は新宿署の方かね。白野君の身元は私が保障する。彼は犯罪と関わる様な人間では無い。」
「白野君は、呑んでいる様ですが。」
「友人と楽しんでいるところ、私が無理に頼んだだけだ。白野君、行くぞ。」
吉良に促されるまま、白野は刑事達から離れた。
「甲斐も指名手配された。姉田弁護士のところにも接触の可能性を考慮して張り込ませているのだよ。」
初めての経験に白野は、言葉が出ない。自分が犯罪に関わっている緊張感にあらためて襲われていた。
「ところで甲斐とはどこで?」
「八王子です。ファイルにあったコンテナの置き場に行ったら出くわしました。」
「何故、そこだと思った?」
「コンテナなら隠れ家になるかなと思って。」
「それだけかね。」
「はい、違ったらまた、別の場所を探すだけと思って行ってみました。」
「危険なことを。」
「『Mark2eyeball』を使って探る前に甲斐と出くわして。」
甲斐と出くわしてからのことを、歩きながらざっくりと話した。
「江戸川さんや我々を殺すと。」
「俺も次会う時は殺すと。」
話しているうちにカラオケボックスに着いた。
「それでは失礼します。幹事だから戻らないと。」
「そうしなさい。言いたいことは山ほどあるが、これだけ言っておく。すでにこの件は、君の手から離れた。どうなろうと見ているだけにしたまえ。」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
煙草屋さんと小説家
男鹿七海
キャラ文芸
※プラトニックな関係のBL要素を含む日常ものです。
商店街の片隅にある小さな煙草屋を営む霧弥。日々の暮らしは静かで穏やかだが、幼馴染であり売れっ子作家の龍二が店を訪れるたびに、心の奥はざわめく。幼馴染としてでも、客としてでもない――その存在は、言葉にできないほど特別だ。
ある日、龍二の周囲に仕事仲間の女性が現れ、霧弥は初めて嫉妬を自覚する。自分の感情を否定しようとしても、触れた手の温もりや視線の距離が、心を正直にさせる。日常の中で少しずつ近づく二人の距離は、言葉ではなく、ささやかな仕草や沈黙に宿る。
そして夜――霧弥の小さな煙草屋で、龍二は初めて自分の想いを口にし、霧弥は返事として告白する。互いの手の温もりと目の奥の真剣さが、これまで言葉にできなかった気持ちを伝える瞬間。静かな日常の向こうに、確かな愛が芽吹く。
小さな煙草屋に灯る、柔らかく温かな恋の物語。
【完結】かみなりのむすめ。
みやこ嬢
キャラ文芸
【2022年2月5日完結、全95話】
少女に宿る七つの光。
それは守護霊や悪霊などではなく、彼女の魂に執着する守り神のような存在だった。
***
榊之宮夕月(さかきのみや・ゆうづき)は田舎の中学に通う平凡でお人好しな女の子。
夢は『可愛いおばあちゃんになること』!
しかし、ある日を境に日常が崩壊してしまう。
虚弱体質の兄、榊之宮朝陽(さかきのみや・あさひ)。謎多き転校生、八十神時哉(やそがみ・ときや)。そして、夕月に宿る喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲の七つの魂。
夕月のささやかな願いは叶うのか。
***
怪異、神様、友情、恋愛。
春の田舎町を舞台に巻き起こる不思議。
私の守護霊さん
Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。
彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。
これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユキ・シオン
那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。
成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。
出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。
次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。
青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。
そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり……
※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる