おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

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吉良

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 甲斐は皆からの報告を聞いていた。
 報告する面々の顔に赤みは無い。食事を済ませるようにと指示したが、アルコールは禁じたのを全員守ってくれている。
「先々代は、事務所にこもったままのようですね。こちらも遠巻きにしか監視できませんので限度はありますが。」
「やむを得ん。近寄るだけでも危険じゃからな。」
「ただ、姐さんが、先々代の自宅に行ってます。着替えなどを取りに行っているようです。」
「姐さん、奥さん気取りか。」
「結婚したのかもしれませんぜ。自宅に行った帰りに区役所にも寄ってます。」
「その辺はどうでもええ。それより事務所に詰めている人数はどんな感じじゃ?」
「30名くらいでしょうか。ただ、他所からの応援が半数入ってます。」
 俺達の捜索に新星会の人間を当てているんだろう。
薄くなった警備要員を応援でまかなっていると見ていい。。
「後、例の弁護士のところです。事務所自体はただの雑居ビルですね。」
「出勤は?」
「弁護士と事務のねーちゃんが9時前に来ただけで、後は来客だけ。組長のお気に入りのバイトは来ていません。」
「お気に入りのバイト?男と女どっちだ?」
「そりゃ男で。」
 レッドホークが本座の鼻先に突きつけられる。
「組長、銃口を人に向けるのは……。」
 安全装置を解除する音がした。
「本座、笑えねぇジョークは嫌いなんだ、俺は。」
「失礼しました。女の子の方ッスね。」
「いねえよ、お気に入りなんざ。」
 だから気にせず、必要に応じた処置をとれ、甲斐は暗にそう言った。
 甲斐はレッドホークをホルスターに戻した。
「皆、聞いてくれ。明日だ。明日仕掛けるぞ。」
 場の空気が一気にしまった。
「組長、お言葉ですが明日でなくてはならないのでしょうか?急ぎ過ぎではありませんか?」
「そうだな。主導権は俺達にある。ここはいつ来るかいつ来るかとじらして消耗させるのがセオリーだろうが、消耗した相手に勝ったところで今後に繋がらん。消耗していない相手に目的を達成することができてこそ、俺達の価値が上がる。」
「なるほど。」
「まず、先々代からだ。場所は新星会の事務所だから全員慣れとるだろう。」
 甲斐は、戦闘に関する机上演習の場所の一つとして新星会事務所を利用していた。実際、中のことを皆熟知している。実地でやったことがないことだけが不安要素だが、甲斐はそれほど心配はしていなかった。
「できる限り殺すな。殺すのは簡単だが、最小限の殺しで目的を達成することができるという見本になる。」
「はい。」
「問題は、弁護士先生だ。」
「バイトまで含めた全員が出勤しているか、ですな。」
「その辺りは大丈夫じゃろ。今日休んで明日も休むということはないじゃろ。給料が少なくなるからの。」
「問題は、いかに新星会の事務所から速やかに移動するかですね。」
「新星会の車を使う。」 
「弁護士襲撃後は?」
「速やかに新宿から離脱する。田家、お前の運転にかかっている。」
「わかりました。任せて下さい。」
「ビルの裏が幸い空き地だ。そこに止めればいい。裏からの脱出も防げる。」
「そうか、本座ありがと。」
「入口は道路に面した所だけなんで二人配置して、裏に田家と一人配置。残り全員で突入して一気にけりをつけます。素人4人、こっちは6人。万全ですよ。」
「よし、では行動を開始する。」

 合コンの2次会はカラオケボックスに突入した。
 無論、一室に入り切れないのでいくつかの部屋に別れた。
 白野は、一緒の部屋の人間に断ってカラオケボックスの外に出た。甲斐に頼まれた解散届を届けるためだ。
 幸い、姉田弁護士の事務所は近い。ポストに投函してすぐにカラオケボックスに戻るつもりだった。
 ビルのエントランスに設置されているポストに投函しようとした時、声をかけられた。
「白野君、何をしているのかね?」
「先生。どうしてここに?」
 声をかけて切ってのは吉良だった。
「姉田弁護士と甲斐のことで話をしていた。甲斐に紹介したのが私だからね。君は、合コンはどうしたのかね?」
「今近くのカラオケボックスに移動しました。ちょっと抜けて、甲斐に頼まれ甲斐組の解散届を姉田弁護士に届けに。」
「甲斐に?今、君が持っている封筒かね?」
「はい。」
「ちょっと貸したまえ。」
 そう言って封筒を取り上げ吉良は、自分の鞄に入れた。
「先生?」
「この封筒、警察に届けば指紋も調べられるだろう。君に行き着くかわからんが、私に任せたまえ。悪いようにはせん。」
「わかりました。」
 吉良は歩き出した。白野も続く。
 エントランスから出たところで、2人組の男に声をかけられた。
「失礼ですが。」
「あぁ、彼は白野すずお君。私のところのアルバイトだよ。書類を持って来てもらったんだ。」
 白野が返事をするより先に吉良が返事をした。
「君達は新宿署の方かね。白野君の身元は私が保障する。彼は犯罪と関わる様な人間では無い。」
「白野君は、呑んでいる様ですが。」
「友人と楽しんでいるところ、私が無理に頼んだだけだ。白野君、行くぞ。」
 吉良に促されるまま、白野は刑事達から離れた。
「甲斐も指名手配された。姉田弁護士のところにも接触の可能性を考慮して張り込ませているのだよ。」
 初めての経験に白野は、言葉が出ない。自分が犯罪に関わっている緊張感にあらためて襲われていた。
「ところで甲斐とはどこで?」
「八王子です。ファイルにあったコンテナの置き場に行ったら出くわしました。」
「何故、そこだと思った?」
「コンテナなら隠れ家になるかなと思って。」
「それだけかね。」
「はい、違ったらまた、別の場所を探すだけと思って行ってみました。」
「危険なことを。」
「『Mark2eyeball』を使って探る前に甲斐と出くわして。」 
 甲斐と出くわしてからのことを、歩きながらざっくりと話した。
「江戸川さんや我々を殺すと。」
「俺も次会う時は殺すと。」
 話しているうちにカラオケボックスに着いた。
「それでは失礼します。幹事だから戻らないと。」
「そうしなさい。言いたいことは山ほどあるが、これだけ言っておく。すでにこの件は、君の手から離れた。どうなろうと見ているだけにしたまえ。」
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