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迎撃宣言
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吉良弁護士事務所のTVはニュースを流していた。
「新宿における複数の爆発に関し、新宿署は事態の把握に追われています。先ほどもまた公園で爆発が発生。これで5件目になります。」
「テロでしょうか?」
黒江のつぶやきに、吉良は沈黙したままTVを見つめている。
「さっき、郵便局に手紙出してきましたけど、街中騒然としていますよ。父からも電話があって、新宿にいると言ったらすぐに帰れとうるさかったです。」
仕事を抜けて電話してきたのだ。会話中、「部長が」、という声が聞こえた。上司の呼び出しが無ければまだ、電話しているかもしれない。
「最後の爆発から15分か。」
17時の爆発以降、5件の爆発の時間と場所の一覧がフリップに表示された。吉良の言う通り、最後の爆発が17時50分、今が18時5分なのでちょうど15分経過している。
「先生、何をお考えですか?」
吉良は蔵良に返事をせず、代わりに指示を出した。
「白野君、隣の会議室に非常用の縄梯子があるから準備してくれ。蔵良君と黒江ちゃんは荷物をまとめて会議室に。」
「先生?」
「言う通りにしてくれ、気が付くのが遅かったかもしれん。」
「先生、何があるんでしょうか?」
「甲斐達の襲撃があるかもしれん。それも今から。」
「えっ?」
「爆発が新宿で5件連続。場所を見ると新星会の事務所を囲むようになっていた。」
「まさか?この爆発はめくらまし?甲斐さんの仕業なんですか?」
「その、まさかでなければいいが、テロならもう霞が関などを狙うだろうし、愉快犯ならもっと人の多い繁華街などを狙うのではないかね。」
白野は甲斐が銃や手りゅう弾などを所持していることを思い出した。爆発の音が銃声などをかき消すことを狙ったのなら。
全員、急いで会議室に入った。吉良は窓を開ける。
裏の空き地のタンクローリーの横にアルファードが止まった。
タンクローリーからも男が降りてくる。
吉良はしゃがみ込んだ。
「先生。」
「白野君、悪いが外を見てくれ。私は目が悪いから、誰がいるのか確認して欲しい。」
白野は吉良の横に移動し、しゃがみ込んで窓からこっそり外を覗いた。
車の助手席近くで指示を出しているのは……。
「甲斐です。甲斐が来ました。」
見間違うはずのない男の顔があった。
「田家、お前は信吾と引き続きここの監視だ。万が一脱出装置なんかで裏から脱出するようなら射殺しろ。」
「わかりました。」
「後はついてこい。江渡と隆平はわかっているな。」
「はい、1階の監視ですね。」
「裕、久島の兄さんを解放してやれ。」
裕が猿轡を取った。
「兄さん、お付き合いありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい。」
「甲斐、貴様、今からどうやって逃げるつもりだ?」
「いちいち説明する時間はありません。お帰りになって下さい。」
裕がインシュロックをナイフで切断した。信吾がアルファードのカギを渡す。
「多分、警察も通報を受けて飛んでくるでしょう。さっさと離れないと痛くもない腹を探られますよ。」
殺意を込めた視線で久島は、甲斐を睨みつけながらアルファードに乗った。
荒っぽい運転でアルファードを空き地から出し走り去った。
「人を引き連れてきますかね。」
「こんじゃろ、戦闘力の差を見せつけてやったし、サツも来るじゃろうから。事務所を片付けて大人しくしてると思うがの。それより弁護士先生じゃ。」
「非武装の素人相手だ。速戦速攻で行くぜ。時間が勝負だから急ごう!」
本座の言葉で全員走りだす。
蔵良が携帯を操作している。
「警察ですか、吉良法律事務所に銃を持った男たちが押しかけてきています。」
110番通報している。
「吉良法律事務所の住所は、新宿区……。」
住所を説明している。
「早くお願いします。」
そう言って蔵良は電話を切った。
「甲斐さん、先生を狙ってきたの?」
「俺達全員だよ。」
「まさか、私こないだデートに誘われたのに。」
「あの時は、先生が自分を破門に追い込むなんて思ってなかったから。今はここで働くもの全員、もちろん黒江さんも標的だ。」
「ウソでしょぉ。」
黒江の言葉に危機感は感じられない。
そのことに白野は危機感を感じた。
「裏に2人残っているな。」
そう言って吉良は、窓際から離れた。
「迎え撃つ、君たちは窓から逃げなさい。蔵良君、2人だが大丈夫かね?」
「できれば坊やは先生と一緒で。いいでしょ。」
「黒江さんだけ一緒にテレポートして逃げてくれるんですね、お願いします。俺は先生を援護します。」
「さっすが男の子だね、かっこいいじゃん。」
「あの……。」
このごに及んで黒江は、話が見えていない。
「お嬢ちゃん、あたしと一緒に裏からテレポートで逃げるよ、ほらこんな風に。」
蔵良は、黒江の手を取った。
蔵良は窓際を見る。
何も起こらない。
「……蔵良さん、何がしたいんですか?」
「……あれ?テレポートできない?」
「ちょっと。」
吉良も会議室を出たところで足を止めた。
「蔵良君、どうしたのかね?」
「テレポートが、ちょっと待って下さい。」
蔵良は、黒江から手を離し、強く「逃げる」と念じる。
蔵良は窓際にテレポートした。
「できた。」
そう言いながら黒江のところに戻りもう一度手を取る。
窓際を見て強く「逃げる」と念じる。
何も起こらなかった。
「坊や、ちょっと。」
黒江の手を離し、白野の手を取る。再度窓際を見て強く「逃げる」と念じる。
何も起こらない。
「まさか、人間をテレポートで運べないとか。」
「そういや、今までテレポートで人を運んだことは無いね。」
「私は、とりあえず甲斐達を食い止める。黒江ちゃんと白野君ははしごで逃げたまえ。」
吉良は指示を出して出て行った。
「黒江さん、俺は先生を援護してくる。黒江さんははしごで逃げて。」
「いやよ、男の人いるんでしょ。下から見られちゃう。」
スカートをおさえる。
「そんなこと言ってる場合じゃないよ、お嬢ちゃん。」
「いやです。甲斐さん、先生が全員倒すかもしれないし、女性は見逃してくれるかもしれないじゃないですか。階段から逃げます。」
そう言って、黒江も事務所を飛び出した。
「新宿における複数の爆発に関し、新宿署は事態の把握に追われています。先ほどもまた公園で爆発が発生。これで5件目になります。」
「テロでしょうか?」
黒江のつぶやきに、吉良は沈黙したままTVを見つめている。
「さっき、郵便局に手紙出してきましたけど、街中騒然としていますよ。父からも電話があって、新宿にいると言ったらすぐに帰れとうるさかったです。」
仕事を抜けて電話してきたのだ。会話中、「部長が」、という声が聞こえた。上司の呼び出しが無ければまだ、電話しているかもしれない。
「最後の爆発から15分か。」
17時の爆発以降、5件の爆発の時間と場所の一覧がフリップに表示された。吉良の言う通り、最後の爆発が17時50分、今が18時5分なのでちょうど15分経過している。
「先生、何をお考えですか?」
吉良は蔵良に返事をせず、代わりに指示を出した。
「白野君、隣の会議室に非常用の縄梯子があるから準備してくれ。蔵良君と黒江ちゃんは荷物をまとめて会議室に。」
「先生?」
「言う通りにしてくれ、気が付くのが遅かったかもしれん。」
「先生、何があるんでしょうか?」
「甲斐達の襲撃があるかもしれん。それも今から。」
「えっ?」
「爆発が新宿で5件連続。場所を見ると新星会の事務所を囲むようになっていた。」
「まさか?この爆発はめくらまし?甲斐さんの仕業なんですか?」
「その、まさかでなければいいが、テロならもう霞が関などを狙うだろうし、愉快犯ならもっと人の多い繁華街などを狙うのではないかね。」
白野は甲斐が銃や手りゅう弾などを所持していることを思い出した。爆発の音が銃声などをかき消すことを狙ったのなら。
全員、急いで会議室に入った。吉良は窓を開ける。
裏の空き地のタンクローリーの横にアルファードが止まった。
タンクローリーからも男が降りてくる。
吉良はしゃがみ込んだ。
「先生。」
「白野君、悪いが外を見てくれ。私は目が悪いから、誰がいるのか確認して欲しい。」
白野は吉良の横に移動し、しゃがみ込んで窓からこっそり外を覗いた。
車の助手席近くで指示を出しているのは……。
「甲斐です。甲斐が来ました。」
見間違うはずのない男の顔があった。
「田家、お前は信吾と引き続きここの監視だ。万が一脱出装置なんかで裏から脱出するようなら射殺しろ。」
「わかりました。」
「後はついてこい。江渡と隆平はわかっているな。」
「はい、1階の監視ですね。」
「裕、久島の兄さんを解放してやれ。」
裕が猿轡を取った。
「兄さん、お付き合いありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい。」
「甲斐、貴様、今からどうやって逃げるつもりだ?」
「いちいち説明する時間はありません。お帰りになって下さい。」
裕がインシュロックをナイフで切断した。信吾がアルファードのカギを渡す。
「多分、警察も通報を受けて飛んでくるでしょう。さっさと離れないと痛くもない腹を探られますよ。」
殺意を込めた視線で久島は、甲斐を睨みつけながらアルファードに乗った。
荒っぽい運転でアルファードを空き地から出し走り去った。
「人を引き連れてきますかね。」
「こんじゃろ、戦闘力の差を見せつけてやったし、サツも来るじゃろうから。事務所を片付けて大人しくしてると思うがの。それより弁護士先生じゃ。」
「非武装の素人相手だ。速戦速攻で行くぜ。時間が勝負だから急ごう!」
本座の言葉で全員走りだす。
蔵良が携帯を操作している。
「警察ですか、吉良法律事務所に銃を持った男たちが押しかけてきています。」
110番通報している。
「吉良法律事務所の住所は、新宿区……。」
住所を説明している。
「早くお願いします。」
そう言って蔵良は電話を切った。
「甲斐さん、先生を狙ってきたの?」
「俺達全員だよ。」
「まさか、私こないだデートに誘われたのに。」
「あの時は、先生が自分を破門に追い込むなんて思ってなかったから。今はここで働くもの全員、もちろん黒江さんも標的だ。」
「ウソでしょぉ。」
黒江の言葉に危機感は感じられない。
そのことに白野は危機感を感じた。
「裏に2人残っているな。」
そう言って吉良は、窓際から離れた。
「迎え撃つ、君たちは窓から逃げなさい。蔵良君、2人だが大丈夫かね?」
「できれば坊やは先生と一緒で。いいでしょ。」
「黒江さんだけ一緒にテレポートして逃げてくれるんですね、お願いします。俺は先生を援護します。」
「さっすが男の子だね、かっこいいじゃん。」
「あの……。」
このごに及んで黒江は、話が見えていない。
「お嬢ちゃん、あたしと一緒に裏からテレポートで逃げるよ、ほらこんな風に。」
蔵良は、黒江の手を取った。
蔵良は窓際を見る。
何も起こらない。
「……蔵良さん、何がしたいんですか?」
「……あれ?テレポートできない?」
「ちょっと。」
吉良も会議室を出たところで足を止めた。
「蔵良君、どうしたのかね?」
「テレポートが、ちょっと待って下さい。」
蔵良は、黒江から手を離し、強く「逃げる」と念じる。
蔵良は窓際にテレポートした。
「できた。」
そう言いながら黒江のところに戻りもう一度手を取る。
窓際を見て強く「逃げる」と念じる。
何も起こらなかった。
「坊や、ちょっと。」
黒江の手を離し、白野の手を取る。再度窓際を見て強く「逃げる」と念じる。
何も起こらない。
「まさか、人間をテレポートで運べないとか。」
「そういや、今までテレポートで人を運んだことは無いね。」
「私は、とりあえず甲斐達を食い止める。黒江ちゃんと白野君ははしごで逃げたまえ。」
吉良は指示を出して出て行った。
「黒江さん、俺は先生を援護してくる。黒江さんははしごで逃げて。」
「いやよ、男の人いるんでしょ。下から見られちゃう。」
スカートをおさえる。
「そんなこと言ってる場合じゃないよ、お嬢ちゃん。」
「いやです。甲斐さん、先生が全員倒すかもしれないし、女性は見逃してくれるかもしれないじゃないですか。階段から逃げます。」
そう言って、黒江も事務所を飛び出した。
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