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ベネディクトの葬儀は、王都にて執り行われた。
葬儀自体は、当人の生前「派手にやらないように」と語っていたことに従い、つつましいものとなった。
それでも参列者の列が、国教会の広大な敷地に収めきれぬほどのものになり、公爵の葬儀として十分面目を保ったものになったと言えよう。
退出する参列者にアシュリーは、新たに公爵となるクリフと並んで挨拶する。
「本日は、急な葬儀にご参列頂きありがとうございました。」
頭を下げたまま退出する参列者に挨拶する。
正直疲れ果てて、頭を上げるのもつらい。
だが、使命感で必死にアシュリーは挨拶を続ける。
クリフも涙をこらえながら、必死に挨拶している。
「あの子が次の公爵か。」
「大人しそうな子ね。」
「どんな子かは知らんが、デュエルはどうなる?」
「勝てるとは思えんな。」
退出した参列者の勝手な言葉が耳に入る。
何を言おうがいい。
挨拶するだけ。
「本日は急な葬儀にご参列頂きありがとうございました。」
「いや、急なことで言葉もない。ただ、お悔やみ申し上げる。」
まさか、この声。
顔を上げたアシュリーの視界に入ったのは、喪服を着用したブラッドだった。
傍らにシンシアもいる。
「ブラッド、あなた……。」
あなたが殺したようなものだ。
辛うじてその言葉を飲み込んだ。
そんなアシュリーの前で、ブラッドはクリフの前で膝を折った。
「クリフ君、いやオルコット公。」
別に平伏しているわけではない。ただ、背の低いクリフに視線を合わせているだけのようだった。
語り掛ける口調も表情も、年少の者を相手にするに相応の優しいものだ。
別に威圧しようなどと考えているわけではないようだ。
「俺は、君の亡き御父上にデュエルを申し込んでいた。ご存知かな?」
「はい。詳しいことはわかりませんが。」
誰に説明を受けたわけではないが、参列者の話す言葉を聞いていれば、クリフにも理解はできていた。
「オルコット領のゼファー州をかけてのデュエルだ。継続されるか?」
「ブラッド、クリフは、まだ9歳なのよ!」
なんてことを言うのだ。幼いクリフにデュエルを申し込むのか、この男は。
「そうだが、クリフ卿はベネディクト卿の跡を継いで公爵となられるのだろう。」
「そうだけど、後見人がおかれるわ。当然でしょう。クリフは、まだ9歳なのよ。」
「どなたが、後見人を勤めるのだ?」
「私よ!」
「……君なのか。」
「えぇ、親族の中で最も血が近いものが後見人となるのだから当然でしょう。」
それが帝国の慣習なのだから。
まさか知らない?
「すまない。軍務ばかりで、そういうことに疎い。失礼した。」
ブラッドは、軽く頭を下げてから立ち上がった。
「では、後見人たるアシュリー殿にお聞きする。亡くなられたベネディクト卿とのデュエル、継続されるか?」
この人……。
アシュリーは、どうしてブラッドを好きになれなかったのか、ようやく理解できた気がした。
人の気持ちを考えるという能力が弱いのだ。
「オルコット公は、お受けになられた。だが、後見人たるアシュリー殿には、アシュリー殿のお考えもあろう。」
別にこれも援助すればいいのだ、とか言外に言っているわけではない。
そんなマネする人間ではない。
ただ、本気でアシュリーの意向を確認しているだけだ。
「ブラウニング伯、ゼファー州はオルコット家が代々受け継いできた所領の一部。それをブラウニング伯爵家に帰属させる考えはありません。」
アシュリーは、断言した。
父ならここで断固とした態度をとる。デュエルの連鎖を防ぐために。
その思いだけが、アシュリーを動かしていた。
「では、受けられるのだな。」
「ええ、受けますわ。ゼファー州の民をオルコット公爵家は慈しんでまいりました。これからもそれに変わりはありません。貴方には渡せませんわ。」
勝算あっての発言ではない。
それでも家を守るために戦わねばならないのだ。
「クリフ卿は?」
「後見人たる姉が言うならば、それがボ、公爵たるわたしの意志でござ……意志です。」
クリフも必死に慣れぬ言葉使いでブラッドに返答する。
怖いだろうに、と思うだけで、アシュリーは心が痛い。
「いいの、クリフ君。」
傍らのシンシアがクリフに声をかけてくる。
「戦いになるのよ。わかっているの?」
さすがに年少のクリフに気を使っているのはわかる。
「承知しているつもりです。」
「私は聖女として、多くのけが人を癒してきたけど、間に合わないで死ぬ人も多かったわ。本当にいいの?」
「シンシア、クリフ卿は、決意されたのだ。それ以上とやかく言うことは失礼だろう。」
「えぇシンシア。ブラッドと我がオルコット公爵家はデュエルを行うわ。」
「そう、分かったわ。わたし達の新婚旅行はゼファー州になるのね。」
は?
「あぁ、俺達は3週間後、挙式することにした。その頃に、今回の戦役で戦死した父の喪が開けるのでな。」
それは、またお早い、とアシュリーは思わずにいられない。
「おめでとう。お幸せにね、二人とも。」
「……君から祝福されるとは思わなかった。ありがとう。」
ブラッドが、面食らいながらも、会釈する。
「ごめんなさい。あなたから略奪することになったけど、ブラッドへの愛だけはどうしても譲れなかったの。」
「気にしなくていいわ。」
えぇ、こんな男、リボンつけて差し上げたいくらい。
苦労するわよ、多分。
無論、アシュリーは、そんなこと言いはしない。
「本当にごめんなさい。13歳で聖女として教育を受けろ、とアカデミーに入れられた時、右も左もわからない私の面倒見てくれたのに。」
「俺も戦場から数ヶ月ぶりに戻って、アカデミーに出席した時、どこのどの教室に行けばいいのかわからず、迷った時に捜しに来てくれもした。感謝している。」
「そんなこともあったわね。それは気にしないで。ただのクラスメイトへの親切だから。」
正直、言われて思い出したくらいだ。全く気にしていない。
「そうだ、アシュリー、結婚のお祝いだけど。」
「何か欲しいものでもあるの?」
「ゼファー州というわけにはいかないかしら。」
「ふざけないで!」
冗談でもふざけている。結婚式のお祝いの品くらい、ほどほどの品なら贈っても構わないが、領地など聞いたこともない。
「シンシア、いくらなんでも強欲すぎる。失礼だぞ。」
ブラッドもたしなめる。
「そうだけど、やはりデュエルだと最悪死者が出るもの。できるなら避けたいわ。私も戦場で治癒魔法を使っていたけど、手遅れで亡くなる人を多く見とったの。敵であってもつらいわ。」
「なら、夫に諦めるよう説得して頂戴。」
「それは無理だ。王国のため黒駒隊を維持せねばならない。そのためにもゼファー州くらいの豊かな地が必要なのだ。」
そう言うブラッドの顔にあるのは、何としてでもゼファー州を取ると言う意志だった。
「ええと……。」
アシュリーとブラッドの間で、シンシアがおろおろしてしまう。
「シンシア、妻として夫に逆らえないのはわかるわ。だから、夫に従って。結婚の祝いとしてでなく、デュエルの戦利品としてゼファー州を手に入れることを考えて。」
仕方なくとは言え、何を言っているのかと、アシュリーも自身にあきれてしまう。
敵に塩を贈るにしても、程度と言うものがある。
でもこうしないと、後ろの参列者に迷惑となる。やむを得ない。
「ブラッド、これ以上話をしても無駄だと思うの。1か月、喪に服すけど、その後のデュエルの場でお会いしましょう。」
もうデュエルをやることは決まったのだ。
この場はお引き取り願おう。
アシュリーは、その意を込めてブラッドに告げる。
「そうだな。1か月後、ゼファー州で会おう。」
そう言ってブラッドは、シンシアを伴って退出した。
葬儀自体は、当人の生前「派手にやらないように」と語っていたことに従い、つつましいものとなった。
それでも参列者の列が、国教会の広大な敷地に収めきれぬほどのものになり、公爵の葬儀として十分面目を保ったものになったと言えよう。
退出する参列者にアシュリーは、新たに公爵となるクリフと並んで挨拶する。
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「大人しそうな子ね。」
「どんな子かは知らんが、デュエルはどうなる?」
「勝てるとは思えんな。」
退出した参列者の勝手な言葉が耳に入る。
何を言おうがいい。
挨拶するだけ。
「本日は急な葬儀にご参列頂きありがとうございました。」
「いや、急なことで言葉もない。ただ、お悔やみ申し上げる。」
まさか、この声。
顔を上げたアシュリーの視界に入ったのは、喪服を着用したブラッドだった。
傍らにシンシアもいる。
「ブラッド、あなた……。」
あなたが殺したようなものだ。
辛うじてその言葉を飲み込んだ。
そんなアシュリーの前で、ブラッドはクリフの前で膝を折った。
「クリフ君、いやオルコット公。」
別に平伏しているわけではない。ただ、背の低いクリフに視線を合わせているだけのようだった。
語り掛ける口調も表情も、年少の者を相手にするに相応の優しいものだ。
別に威圧しようなどと考えているわけではないようだ。
「俺は、君の亡き御父上にデュエルを申し込んでいた。ご存知かな?」
「はい。詳しいことはわかりませんが。」
誰に説明を受けたわけではないが、参列者の話す言葉を聞いていれば、クリフにも理解はできていた。
「オルコット領のゼファー州をかけてのデュエルだ。継続されるか?」
「ブラッド、クリフは、まだ9歳なのよ!」
なんてことを言うのだ。幼いクリフにデュエルを申し込むのか、この男は。
「そうだが、クリフ卿はベネディクト卿の跡を継いで公爵となられるのだろう。」
「そうだけど、後見人がおかれるわ。当然でしょう。クリフは、まだ9歳なのよ。」
「どなたが、後見人を勤めるのだ?」
「私よ!」
「……君なのか。」
「えぇ、親族の中で最も血が近いものが後見人となるのだから当然でしょう。」
それが帝国の慣習なのだから。
まさか知らない?
「すまない。軍務ばかりで、そういうことに疎い。失礼した。」
ブラッドは、軽く頭を下げてから立ち上がった。
「では、後見人たるアシュリー殿にお聞きする。亡くなられたベネディクト卿とのデュエル、継続されるか?」
この人……。
アシュリーは、どうしてブラッドを好きになれなかったのか、ようやく理解できた気がした。
人の気持ちを考えるという能力が弱いのだ。
「オルコット公は、お受けになられた。だが、後見人たるアシュリー殿には、アシュリー殿のお考えもあろう。」
別にこれも援助すればいいのだ、とか言外に言っているわけではない。
そんなマネする人間ではない。
ただ、本気でアシュリーの意向を確認しているだけだ。
「ブラウニング伯、ゼファー州はオルコット家が代々受け継いできた所領の一部。それをブラウニング伯爵家に帰属させる考えはありません。」
アシュリーは、断言した。
父ならここで断固とした態度をとる。デュエルの連鎖を防ぐために。
その思いだけが、アシュリーを動かしていた。
「では、受けられるのだな。」
「ええ、受けますわ。ゼファー州の民をオルコット公爵家は慈しんでまいりました。これからもそれに変わりはありません。貴方には渡せませんわ。」
勝算あっての発言ではない。
それでも家を守るために戦わねばならないのだ。
「クリフ卿は?」
「後見人たる姉が言うならば、それがボ、公爵たるわたしの意志でござ……意志です。」
クリフも必死に慣れぬ言葉使いでブラッドに返答する。
怖いだろうに、と思うだけで、アシュリーは心が痛い。
「いいの、クリフ君。」
傍らのシンシアがクリフに声をかけてくる。
「戦いになるのよ。わかっているの?」
さすがに年少のクリフに気を使っているのはわかる。
「承知しているつもりです。」
「私は聖女として、多くのけが人を癒してきたけど、間に合わないで死ぬ人も多かったわ。本当にいいの?」
「シンシア、クリフ卿は、決意されたのだ。それ以上とやかく言うことは失礼だろう。」
「えぇシンシア。ブラッドと我がオルコット公爵家はデュエルを行うわ。」
「そう、分かったわ。わたし達の新婚旅行はゼファー州になるのね。」
は?
「あぁ、俺達は3週間後、挙式することにした。その頃に、今回の戦役で戦死した父の喪が開けるのでな。」
それは、またお早い、とアシュリーは思わずにいられない。
「おめでとう。お幸せにね、二人とも。」
「……君から祝福されるとは思わなかった。ありがとう。」
ブラッドが、面食らいながらも、会釈する。
「ごめんなさい。あなたから略奪することになったけど、ブラッドへの愛だけはどうしても譲れなかったの。」
「気にしなくていいわ。」
えぇ、こんな男、リボンつけて差し上げたいくらい。
苦労するわよ、多分。
無論、アシュリーは、そんなこと言いはしない。
「本当にごめんなさい。13歳で聖女として教育を受けろ、とアカデミーに入れられた時、右も左もわからない私の面倒見てくれたのに。」
「俺も戦場から数ヶ月ぶりに戻って、アカデミーに出席した時、どこのどの教室に行けばいいのかわからず、迷った時に捜しに来てくれもした。感謝している。」
「そんなこともあったわね。それは気にしないで。ただのクラスメイトへの親切だから。」
正直、言われて思い出したくらいだ。全く気にしていない。
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「何か欲しいものでもあるの?」
「ゼファー州というわけにはいかないかしら。」
「ふざけないで!」
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「それは無理だ。王国のため黒駒隊を維持せねばならない。そのためにもゼファー州くらいの豊かな地が必要なのだ。」
そう言うブラッドの顔にあるのは、何としてでもゼファー州を取ると言う意志だった。
「ええと……。」
アシュリーとブラッドの間で、シンシアがおろおろしてしまう。
「シンシア、妻として夫に逆らえないのはわかるわ。だから、夫に従って。結婚の祝いとしてでなく、デュエルの戦利品としてゼファー州を手に入れることを考えて。」
仕方なくとは言え、何を言っているのかと、アシュリーも自身にあきれてしまう。
敵に塩を贈るにしても、程度と言うものがある。
でもこうしないと、後ろの参列者に迷惑となる。やむを得ない。
「ブラッド、これ以上話をしても無駄だと思うの。1か月、喪に服すけど、その後のデュエルの場でお会いしましょう。」
もうデュエルをやることは決まったのだ。
この場はお引き取り願おう。
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