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「あ、あの閣下。まるでこのデュエル、私どもが勝つかのようにおっしゃられていませんか。」
「左様、お主が勝つ。」
「どこをどうすれば勝てると?」
「何を申しておる。アカデミーきっての劣等生だったブラッドが、優等生だったお主に勝てるはずもあるまい。」
「えっと、あの、ブラッドの軍人としての能力の高さは、これまでの戦役における武功で証明されていると思うのですが。」
「何を言う。アカデミーで軍事学も講義したが、ブラッドは卒業試験、白紙解答で零点だったのだぞ。確かお主は軍事学を少々不得手としていたと思うが、それでも上位グループの一員であったことは間違いない。なんなら、アカデミーより記録を取り寄せてみるか。」
アシュリーは、ブラッドの成績に関しては初耳だったが、納得はできた。
12歳で初陣を飾って以来、相次ぐ騎馬民族の劫掠に対処するため、教室は言うに及ばず、私邸にいる時間より軍営にいる時間が長かったことは、婚約者だった頃に聞いている。
礼法や法令に関する試験も、軍務を理由に受けなかったり、席に座って名前を書いただけで提出したりという噂を耳にしていたが、事実だったのだろう。
「確かにそうかもしれません。しかし、私には軍事の経験がありません。」
アシュリーの軍事に関する経験は、父の指示で補給のための物資や食料などを集積し、護衛をつけて指定された地に送ったくらいである。
アシュリーは、刀槍を手にして戦ったことはなく、兵を率いたこともない。
ブラッドは、無論双方に十分な経験を有し、実績も豊富。
どうやってこれでデュエルに勝てると言うのか。
「閣下、ひょっとしてブラッド以上の戦士をご存じなのですか?」
ひょっとしたらと、淡い期待を抱きながら、アシュリーは質問した。。
そんな方がいれば千金を積んでもいいので代理人とする。
「いや、知らぬ。あやつ、アカデミーで一度だけ卒業間際に剣の訓練に参加したが、教師役をことごとく叩きのめしおった。教師総がかりであったにも関わらずな。そんなあやつ以上の戦士など、おるとは考えにくい。」
なんですか、それは?
期待しただけにアシュリーは、落胆甚だしかった。
「では、ブラッド以上の将をご存じなのですか?」
今度は、大した期待もせず質問する。
「それはお主だと言った。」
「ですから、私には、経験も実績もありません!」
「誰だって最初はそうだ。あのブラッドとて初陣はある。」
「それは、そうですが。」
アシュリーは、アーネストの相手に疲れ始めていた。
「いいか、ブラッドなどのような劣等生に優等生のお主は負けぬ。それだけの授業をアカデミーの学長としてやってきた私が言うのだから間違いない。」
「そうですが、私には実際の経験がありません。」
確かにブラッドは、アカデミーの成績は劣等生かもしれない。
アシュリーが後見人になることも知らなかったくらいだから、軍事以外、さほど知識などが無いのかもしれない。
だが、軍事に関しては、余人の追従を許さぬほどの経験や実績がある。
そしてそれは、アシュリーに無いもので、デュエルにおいて極めて有益なものだった。
「その辺は、経験を有する者に頼れ。亡くなられたベネディクト卿は、優れた部下を育てておられた。」
「しかし……。」
「アシュリー、私はアカデミーの学長時代、決して生徒にできない課題を課したことはない。宮廷に戻ってからも、部下を見極め、その者の力量にあまる仕事をやらせなかった。このことに関しては、自信をもって言える。」
「つまり、なんですか。私がブラッドとデュエルをやって勝てると?」
弱兵のオルコット家の軍勢で、帝国最強の黒駒隊を打ち破れると?
「わかっておらぬようだから、ヒントはやろう。ブラッドの初陣からの戦い全てを調べよ。」
「それだけですか?」
「それで十分だ。」
「そんな。」
アシュリーには、ヒントにすらなっていない。
「アシュリー、アカデミー時代からお主は、健全な常識人で当たり前のことを当たり前にやる生徒だった。」
「褒めているのですか。」
「無論だ。それが実際は大切なことなのだ。できないことはできないと認め、それをどうすればできるようになるか考え、必要な行動をする。」
「それは、アカデミーでは、机に座って学習するだけでしたから。」
わからなければ、教師に質問したり理解できている方に聞いたり、できるようになるまで何度も学習した。
アシュリーは、愚直にそれだけをやった。
そのため、他の人より多くの紙を消費したが、それは誇りに思っている。
「故にアシュリー、私はお主をかっている。ブラッドとの婚約が無ければ、宮廷で働いて欲しいと思っていた。」
「本気でおっしゃられているのですか?」
「本気だ。」
「ならば、オルコット公爵家が没落するようなことがあれば、弟クリフを連れて亡命いたします。保護して下さいませ。」
アシュリーは、半ば本気の冗談を飛ばした。
もういいです。アシュリーは、やけっぱちになっていた。
「よかろう。そんなことになるとは思えぬが、なったら喜んで保護しよう。ただではないがな。」
「宮廷でこき使うと言うことですね。」
「まぁ、そういうことになろうか。」
アーネストは、薄く笑った。
まぁそれはそれでよろしいでしょう。
父が最後に言っていたデュエルの連鎖によるオルコット家の没落。
その場合の選択肢は確保できたのだ、とアシュリーは、開き直ることにした。
「では、失礼する。」
そういってアーネストは、立ち上がり、部屋を出る。
見送るべく、アシュリーもアーネストに従う。
そこに家令がやってきた。
「アシュリーお嬢様、大変です。」
「あなた、今、宰相閣下のお見送りなのよ。」
叱責せざるを得ない。
「アシュリー、家令も緊急の要件故、伝達に来たのであろう。聞くがいい。」
「……何があったのかしら?」
「ケラハ候、アーヴィング子爵、ジョイス子爵より、デュエルの申し込みがありました!」
「何ですって!」
今まで、オルコット家はデュエルを経験していない。
それが、クリフに代替わりした途端、3件もデュエルを申し込まれるなんて。
クリフや自分が若く未熟だから、侮られたのもあるだろう。
それ以上にブラッドとデュエルをやって無事に済むはずもない。
弱ったオルコット家から、領地なり利権なりをもぎ取るつもりであろう。
父の恐れていたデュエルの連鎖が始まったのだ、とアシュリーは恐怖した。
「宰相閣下、これでも私は勝てるのでしょうか?」
「ふむ、さらにデュエルが3件か。やりようによるな。」
「つまり勝てる方法があると?」
「左様だ。」
信じがたい言葉だった。
「ならば、それをご教授下さい。」
アシュリーは、アーネストの足元に跪いた。
最早、プライドとか体面とか一切気にしていられない。
「アシュリーよ、立ちなさい。」
「閣下、もう、ブラッドだけでも手に余りますのに、さらに3件もデュエルを申し込まれて。我がオルコット家は、私は、どうすればよろしいのでしょうか?ご教授下さいませ!」
「立ちなさい。」
重ねてのアーネストの言葉に従ったのは、体面ではない。アーネストの機嫌を損ねるのを恐れただけだ。
「戦争であれば、手はないがこれはデュエルだ。それを忘れるな。」
「デュエルだから、なんだと?」
「デュエルは1対1が基本であろう。それを忘れるな。もう一つ。」
「はい、なんでございましょう。」
「人前で跪くような真似は止めよ。そして涙を流すな。」
アーネストに言われ、自分が涙を流していることに初めてアシュリーは、気が付いた。
デュエルの連鎖に、自身が精神的に追い込まれていることを自覚せざるを得なかった。
「いかなる苦境にあろうが、冷静さを保て。よいな。」
それだけ言ってアーネストは、屋敷を去っていった。
「左様、お主が勝つ。」
「どこをどうすれば勝てると?」
「何を申しておる。アカデミーきっての劣等生だったブラッドが、優等生だったお主に勝てるはずもあるまい。」
「えっと、あの、ブラッドの軍人としての能力の高さは、これまでの戦役における武功で証明されていると思うのですが。」
「何を言う。アカデミーで軍事学も講義したが、ブラッドは卒業試験、白紙解答で零点だったのだぞ。確かお主は軍事学を少々不得手としていたと思うが、それでも上位グループの一員であったことは間違いない。なんなら、アカデミーより記録を取り寄せてみるか。」
アシュリーは、ブラッドの成績に関しては初耳だったが、納得はできた。
12歳で初陣を飾って以来、相次ぐ騎馬民族の劫掠に対処するため、教室は言うに及ばず、私邸にいる時間より軍営にいる時間が長かったことは、婚約者だった頃に聞いている。
礼法や法令に関する試験も、軍務を理由に受けなかったり、席に座って名前を書いただけで提出したりという噂を耳にしていたが、事実だったのだろう。
「確かにそうかもしれません。しかし、私には軍事の経験がありません。」
アシュリーの軍事に関する経験は、父の指示で補給のための物資や食料などを集積し、護衛をつけて指定された地に送ったくらいである。
アシュリーは、刀槍を手にして戦ったことはなく、兵を率いたこともない。
ブラッドは、無論双方に十分な経験を有し、実績も豊富。
どうやってこれでデュエルに勝てると言うのか。
「閣下、ひょっとしてブラッド以上の戦士をご存じなのですか?」
ひょっとしたらと、淡い期待を抱きながら、アシュリーは質問した。。
そんな方がいれば千金を積んでもいいので代理人とする。
「いや、知らぬ。あやつ、アカデミーで一度だけ卒業間際に剣の訓練に参加したが、教師役をことごとく叩きのめしおった。教師総がかりであったにも関わらずな。そんなあやつ以上の戦士など、おるとは考えにくい。」
なんですか、それは?
期待しただけにアシュリーは、落胆甚だしかった。
「では、ブラッド以上の将をご存じなのですか?」
今度は、大した期待もせず質問する。
「それはお主だと言った。」
「ですから、私には、経験も実績もありません!」
「誰だって最初はそうだ。あのブラッドとて初陣はある。」
「それは、そうですが。」
アシュリーは、アーネストの相手に疲れ始めていた。
「いいか、ブラッドなどのような劣等生に優等生のお主は負けぬ。それだけの授業をアカデミーの学長としてやってきた私が言うのだから間違いない。」
「そうですが、私には実際の経験がありません。」
確かにブラッドは、アカデミーの成績は劣等生かもしれない。
アシュリーが後見人になることも知らなかったくらいだから、軍事以外、さほど知識などが無いのかもしれない。
だが、軍事に関しては、余人の追従を許さぬほどの経験や実績がある。
そしてそれは、アシュリーに無いもので、デュエルにおいて極めて有益なものだった。
「その辺は、経験を有する者に頼れ。亡くなられたベネディクト卿は、優れた部下を育てておられた。」
「しかし……。」
「アシュリー、私はアカデミーの学長時代、決して生徒にできない課題を課したことはない。宮廷に戻ってからも、部下を見極め、その者の力量にあまる仕事をやらせなかった。このことに関しては、自信をもって言える。」
「つまり、なんですか。私がブラッドとデュエルをやって勝てると?」
弱兵のオルコット家の軍勢で、帝国最強の黒駒隊を打ち破れると?
「わかっておらぬようだから、ヒントはやろう。ブラッドの初陣からの戦い全てを調べよ。」
「それだけですか?」
「それで十分だ。」
「そんな。」
アシュリーには、ヒントにすらなっていない。
「アシュリー、アカデミー時代からお主は、健全な常識人で当たり前のことを当たり前にやる生徒だった。」
「褒めているのですか。」
「無論だ。それが実際は大切なことなのだ。できないことはできないと認め、それをどうすればできるようになるか考え、必要な行動をする。」
「それは、アカデミーでは、机に座って学習するだけでしたから。」
わからなければ、教師に質問したり理解できている方に聞いたり、できるようになるまで何度も学習した。
アシュリーは、愚直にそれだけをやった。
そのため、他の人より多くの紙を消費したが、それは誇りに思っている。
「故にアシュリー、私はお主をかっている。ブラッドとの婚約が無ければ、宮廷で働いて欲しいと思っていた。」
「本気でおっしゃられているのですか?」
「本気だ。」
「ならば、オルコット公爵家が没落するようなことがあれば、弟クリフを連れて亡命いたします。保護して下さいませ。」
アシュリーは、半ば本気の冗談を飛ばした。
もういいです。アシュリーは、やけっぱちになっていた。
「よかろう。そんなことになるとは思えぬが、なったら喜んで保護しよう。ただではないがな。」
「宮廷でこき使うと言うことですね。」
「まぁ、そういうことになろうか。」
アーネストは、薄く笑った。
まぁそれはそれでよろしいでしょう。
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その場合の選択肢は確保できたのだ、とアシュリーは、開き直ることにした。
「では、失礼する。」
そういってアーネストは、立ち上がり、部屋を出る。
見送るべく、アシュリーもアーネストに従う。
そこに家令がやってきた。
「アシュリーお嬢様、大変です。」
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叱責せざるを得ない。
「アシュリー、家令も緊急の要件故、伝達に来たのであろう。聞くがいい。」
「……何があったのかしら?」
「ケラハ候、アーヴィング子爵、ジョイス子爵より、デュエルの申し込みがありました!」
「何ですって!」
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それが、クリフに代替わりした途端、3件もデュエルを申し込まれるなんて。
クリフや自分が若く未熟だから、侮られたのもあるだろう。
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父の恐れていたデュエルの連鎖が始まったのだ、とアシュリーは恐怖した。
「宰相閣下、これでも私は勝てるのでしょうか?」
「ふむ、さらにデュエルが3件か。やりようによるな。」
「つまり勝てる方法があると?」
「左様だ。」
信じがたい言葉だった。
「ならば、それをご教授下さい。」
アシュリーは、アーネストの足元に跪いた。
最早、プライドとか体面とか一切気にしていられない。
「アシュリーよ、立ちなさい。」
「閣下、もう、ブラッドだけでも手に余りますのに、さらに3件もデュエルを申し込まれて。我がオルコット家は、私は、どうすればよろしいのでしょうか?ご教授下さいませ!」
「立ちなさい。」
重ねてのアーネストの言葉に従ったのは、体面ではない。アーネストの機嫌を損ねるのを恐れただけだ。
「戦争であれば、手はないがこれはデュエルだ。それを忘れるな。」
「デュエルだから、なんだと?」
「デュエルは1対1が基本であろう。それを忘れるな。もう一つ。」
「はい、なんでございましょう。」
「人前で跪くような真似は止めよ。そして涙を流すな。」
アーネストに言われ、自分が涙を流していることに初めてアシュリーは、気が付いた。
デュエルの連鎖に、自身が精神的に追い込まれていることを自覚せざるを得なかった。
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