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「そうね、そのためにやるのよね。なんで資金が必要なの?」
「それは、隊員の給与や物資の調達、色々あり過ぎて言い切れないことに必要だからだ!そんなこともわからないのか!」
なんなのだ、一体。何が言いたいのだ、アシュリーめ。
「万余の敵を倒しても資金にならないの?」
「ならない。そんなこともわからなくて、よく人のことを劣等生呼ばわりできるな、優等生。」
ブラッドも対抗すべく、からかい口調に切り替える。
アシュリー、俺だって言われっ放しじゃないぞ。
「ドヤ顔しちゃって。」
アシュリーがオペラグラスをかざすのが、癇に障る。
「それがどうかしたのか?」
「言い返してやったって顔ね。馬鹿じゃないの。」
「馬鹿とはなんだ。俺は国家の敵を倒すと言う貢献をしてきたんだ。」
「あなたは国家の敵を倒す、というけど、その敵を倒すのに必要な資金を私は調達できるわ。というか、資金無くして敵を倒せないわよね。」
「そんなことは……。」
「順序として、資金や物資を集めて軍勢を揃え、訓練して戦場に送り込んで敵を倒す。あなたは、後半をやらせたらそりゃあこの国最高の将よ。でも前半なくして、いきなり後半はできない。
敵を倒してから、また休養や失った兵の補充のため前半に戻るわけだけど、このサイクルが動かせない。動かせなくなっている。」
「……そうなるか。」
ブラッドは、今まで考えたことも無いことを、言われ、考え込んでしまった。
アシュリーの言う通りである。
今までは、兵を集めるのを父がやってくれていた。
サンダーマンやアンダーウッドのような例外はあるが、99%父アントニーが集めた兵である。
父が集めた兵を、ブラッド自身の手で訓練し戦場に引き連れて行って戦っていた。
まさしくアシュリーの言う、「訓練して戦場に送り込んで敵を倒す」しかやってこなかったのだ。
そして、敵族長を討ち取る形で「敵を倒す」という工程を終わらせ、「資金や物資を集めて」の工程に戻っている。
今までは、それは父がやっていたが、伯爵位を継いだ以上自分の仕事になっている。
父がやっていたように、オルコット家に資金や物資を依存できればよかったのだが、それが断られたから、こうやってデュエルをやる羽目に陥っているのである。
国家に貢献していると自負していたが、こうした観点から見れば、人より多少は優れていると自負していた軍事の分野でも半分しかできていない。
「やっと自分が何してるかわかった、ブラッド?」
アシュリーの言葉は、思いっきり、ブラッドのプライドを打ち砕いた。
か弱い女子供とデュエルをやるわけではないという考え。
国家に絶大な貢献をしてきたと言う自負。
全て、アシュリーの言葉の戦槌に粉砕されてしまった。
プライドが粉砕され、ブラッドは頭の中が真っ白になっていた。
「どうしちゃったの、ブラッド、呆然としちゃって。」
アシュリーの言葉にブラッドは、我に返った。
「いや、今更戻れないと思ってな。」
「そうね、今更デュエルの取り消しなんてできないでしょ。」
「あぁ。」
そうだ。
自分は国家に大した功をたてた人間でない。
女子供とデュエルをやるような卑劣漢でしかない。
それはそれでいい。
もう選んでしまったのだ。
「俺は、シンシアを妻とする。その上で、黒駒隊を存続させブラウニング家をザナドゥ王国にあって重きをなす家とする。そのためにゼファー州を獲得する。」
もう引き返せない。
シンシアを妻とするため。
黒駒隊を存続させるため。
ブラウニング家のため。
デュエルを勝利するだけだ。
それ以外、打ち砕かれたプライドを回復する手立ては無い。
「そうなの。」
「クリフ卿と変わって頂きたい。デュエル開始のための口上を交わしたい。」
「わかったわ。」
城門の上で動きがあった。
再び、小柄な人影が出てくる。
「ブラウニング伯、かわりました。クリフ・オルコットです。」
「ブラッド・ブラウニング、あらためてでありますが、オルコット公クリフ卿にデュエルを申し込む。応諾いただけるや?」
「クリフ・オルコット、ブラウニング伯ブラッド卿よりのデュエル、応諾する!」
「応諾感謝する!互いに堂々と戦いましょう。」
「はい!武勇優れた貴方にどこまでやれるかわかりませぬが、知勇の限りを尽くします。」
ここにデュエルは成立した。後は、双方死力を尽くすだけだ。
ブラッドは、馬首を返した。
姉弟は、去り行くブラッドの後姿を見送った。
「姉上、デュエルは成立したのですね。」
「そうよ。ブラッドを叩きのめすためのデュエルは成立したの。」
そう言いながらアシュリーは、クリフの後ろから抱き着いた。
「あ、姉上!?」
「あぁ、お姉ちゃん、疲れたぁ。」
「姉上、人が見ています、離して下さい。」
「うぅん、お姉ちゃん癒しが欲しい。」
「姉上、時々思うのですが、ぼ…私を幼く見ていませんかぁ!?」
「私なんて言葉使わなくていいからね、”ぼく”でいいのよ。」
「よくありません!わ、私はオルコット公なんです!」
「いいの、いいの。父上も母上もいない。私達は二人だけの家族なんだから。私にだけは”ぼく”でいいの。」
この子のために、このデュエル、必ず勝つ。
とりあえず、ブラッドのプライドをしたたかに打ち砕いた。
更にブラッドを実戦で打ち破り、精神的に打ちのめす。
その上で、私達姉弟を侮った貴族達も叩きのめしてやる。
そのための戦いの前に、しばしの癒しを求めアシュリーは、もがくクリフを抱きしめ続けた
ジール城の周辺は田園地帯であり、小高い丘や高台がある程度で、見通しはいい。
故に高く掲げられた黒駒隊の旗は、すぐにわかる。
ブラッドは、陣とすべく周辺を柵で囲った集落の入り口で馬を降りた。
何か踏んだ感触がしたので、足元を見ると、木の板を踏んずけていた。
「00」と読める焼き印が押されている板だった。
なんだろうと思いながら足を上げる。
足の下の部分にも焼き印がある。
何と書いてあるか読もうとした時、声をした。
「隊長、お戻りですか?」
ソーンダイクだった。
ブラッドは、足元の板のことなど意識の外に追いやった。
「あぁ、デュエルの口上を交わしてきた。」
「成立ですか。」
「おぅ、クリフ卿の口上は、立派なものだった。10年後が楽しみだ。クリフ卿はひとかどの人物となるだろう。」
「そうでしょうな。」
そう言うソーンダイクの口調は、単純なものでなかった。
「何かあるか?」
「付近を偵察させました。どうもオルコット家の手勢が潜んでいるようで。」
「そうか。手配はしているのだろう。」
「はい。」
二人の会話が一段落したところで、別の声がブラッドにかけられた。
「ブラッド、お帰り、待っていたわ。」
聞き間違えることのない声。
「シンシア、今戻った。」
ブラッドは、人目を気にせず、シンシアを抱き寄せた。
腕の中で笑うシンシアにブラッドは、あらためて誓う。
このデュエル必ず勝つ。勝ってアシュリーにとやかく言わせないようにする。
「痛い、痛いってばブラッド。」
「あぁ、すまない。力が入り過ぎたようだ。」
慌てて抱きしめる腕の力を緩める。
「ブラッド、シチュー作ったから。」
「お、食材が手に入ったのか。」
「えぇ、住民は避難したようですが、食材は残っておりました。」
そう言いながらソーンダイクは、ブラッドの馬の手綱を取る。
「隊長、馬の方は自分が見ておきましょう。」
「ソーンダイク、そういう訳には。」
各自の馬は、各自で世話をする。黒駒隊におけるルールであり、ブラッドも例外ではない。
ブラッドは、シンシアと一緒に世話をするつもりだった。
「このデュエルの間だけは、構いませんよ。皆、同じ気持ちです。二人の時間を大切にして下さい。」
そう言ってソーンダイクは、馬を引いて行った。
「デュエル、成立したの?」
「あぁ、明日から戦いだ。」
「そう、お願いがあるんだけど。」
「なんだい、戦場だから、聞けるかわからないが。」
優しく語り掛けるブラッドにシンシアは、自分の要望を語った。
「それは、隊員の給与や物資の調達、色々あり過ぎて言い切れないことに必要だからだ!そんなこともわからないのか!」
なんなのだ、一体。何が言いたいのだ、アシュリーめ。
「万余の敵を倒しても資金にならないの?」
「ならない。そんなこともわからなくて、よく人のことを劣等生呼ばわりできるな、優等生。」
ブラッドも対抗すべく、からかい口調に切り替える。
アシュリー、俺だって言われっ放しじゃないぞ。
「ドヤ顔しちゃって。」
アシュリーがオペラグラスをかざすのが、癇に障る。
「それがどうかしたのか?」
「言い返してやったって顔ね。馬鹿じゃないの。」
「馬鹿とはなんだ。俺は国家の敵を倒すと言う貢献をしてきたんだ。」
「あなたは国家の敵を倒す、というけど、その敵を倒すのに必要な資金を私は調達できるわ。というか、資金無くして敵を倒せないわよね。」
「そんなことは……。」
「順序として、資金や物資を集めて軍勢を揃え、訓練して戦場に送り込んで敵を倒す。あなたは、後半をやらせたらそりゃあこの国最高の将よ。でも前半なくして、いきなり後半はできない。
敵を倒してから、また休養や失った兵の補充のため前半に戻るわけだけど、このサイクルが動かせない。動かせなくなっている。」
「……そうなるか。」
ブラッドは、今まで考えたことも無いことを、言われ、考え込んでしまった。
アシュリーの言う通りである。
今までは、兵を集めるのを父がやってくれていた。
サンダーマンやアンダーウッドのような例外はあるが、99%父アントニーが集めた兵である。
父が集めた兵を、ブラッド自身の手で訓練し戦場に引き連れて行って戦っていた。
まさしくアシュリーの言う、「訓練して戦場に送り込んで敵を倒す」しかやってこなかったのだ。
そして、敵族長を討ち取る形で「敵を倒す」という工程を終わらせ、「資金や物資を集めて」の工程に戻っている。
今までは、それは父がやっていたが、伯爵位を継いだ以上自分の仕事になっている。
父がやっていたように、オルコット家に資金や物資を依存できればよかったのだが、それが断られたから、こうやってデュエルをやる羽目に陥っているのである。
国家に貢献していると自負していたが、こうした観点から見れば、人より多少は優れていると自負していた軍事の分野でも半分しかできていない。
「やっと自分が何してるかわかった、ブラッド?」
アシュリーの言葉は、思いっきり、ブラッドのプライドを打ち砕いた。
か弱い女子供とデュエルをやるわけではないという考え。
国家に絶大な貢献をしてきたと言う自負。
全て、アシュリーの言葉の戦槌に粉砕されてしまった。
プライドが粉砕され、ブラッドは頭の中が真っ白になっていた。
「どうしちゃったの、ブラッド、呆然としちゃって。」
アシュリーの言葉にブラッドは、我に返った。
「いや、今更戻れないと思ってな。」
「そうね、今更デュエルの取り消しなんてできないでしょ。」
「あぁ。」
そうだ。
自分は国家に大した功をたてた人間でない。
女子供とデュエルをやるような卑劣漢でしかない。
それはそれでいい。
もう選んでしまったのだ。
「俺は、シンシアを妻とする。その上で、黒駒隊を存続させブラウニング家をザナドゥ王国にあって重きをなす家とする。そのためにゼファー州を獲得する。」
もう引き返せない。
シンシアを妻とするため。
黒駒隊を存続させるため。
ブラウニング家のため。
デュエルを勝利するだけだ。
それ以外、打ち砕かれたプライドを回復する手立ては無い。
「そうなの。」
「クリフ卿と変わって頂きたい。デュエル開始のための口上を交わしたい。」
「わかったわ。」
城門の上で動きがあった。
再び、小柄な人影が出てくる。
「ブラウニング伯、かわりました。クリフ・オルコットです。」
「ブラッド・ブラウニング、あらためてでありますが、オルコット公クリフ卿にデュエルを申し込む。応諾いただけるや?」
「クリフ・オルコット、ブラウニング伯ブラッド卿よりのデュエル、応諾する!」
「応諾感謝する!互いに堂々と戦いましょう。」
「はい!武勇優れた貴方にどこまでやれるかわかりませぬが、知勇の限りを尽くします。」
ここにデュエルは成立した。後は、双方死力を尽くすだけだ。
ブラッドは、馬首を返した。
姉弟は、去り行くブラッドの後姿を見送った。
「姉上、デュエルは成立したのですね。」
「そうよ。ブラッドを叩きのめすためのデュエルは成立したの。」
そう言いながらアシュリーは、クリフの後ろから抱き着いた。
「あ、姉上!?」
「あぁ、お姉ちゃん、疲れたぁ。」
「姉上、人が見ています、離して下さい。」
「うぅん、お姉ちゃん癒しが欲しい。」
「姉上、時々思うのですが、ぼ…私を幼く見ていませんかぁ!?」
「私なんて言葉使わなくていいからね、”ぼく”でいいのよ。」
「よくありません!わ、私はオルコット公なんです!」
「いいの、いいの。父上も母上もいない。私達は二人だけの家族なんだから。私にだけは”ぼく”でいいの。」
この子のために、このデュエル、必ず勝つ。
とりあえず、ブラッドのプライドをしたたかに打ち砕いた。
更にブラッドを実戦で打ち破り、精神的に打ちのめす。
その上で、私達姉弟を侮った貴族達も叩きのめしてやる。
そのための戦いの前に、しばしの癒しを求めアシュリーは、もがくクリフを抱きしめ続けた
ジール城の周辺は田園地帯であり、小高い丘や高台がある程度で、見通しはいい。
故に高く掲げられた黒駒隊の旗は、すぐにわかる。
ブラッドは、陣とすべく周辺を柵で囲った集落の入り口で馬を降りた。
何か踏んだ感触がしたので、足元を見ると、木の板を踏んずけていた。
「00」と読める焼き印が押されている板だった。
なんだろうと思いながら足を上げる。
足の下の部分にも焼き印がある。
何と書いてあるか読もうとした時、声をした。
「隊長、お戻りですか?」
ソーンダイクだった。
ブラッドは、足元の板のことなど意識の外に追いやった。
「あぁ、デュエルの口上を交わしてきた。」
「成立ですか。」
「おぅ、クリフ卿の口上は、立派なものだった。10年後が楽しみだ。クリフ卿はひとかどの人物となるだろう。」
「そうでしょうな。」
そう言うソーンダイクの口調は、単純なものでなかった。
「何かあるか?」
「付近を偵察させました。どうもオルコット家の手勢が潜んでいるようで。」
「そうか。手配はしているのだろう。」
「はい。」
二人の会話が一段落したところで、別の声がブラッドにかけられた。
「ブラッド、お帰り、待っていたわ。」
聞き間違えることのない声。
「シンシア、今戻った。」
ブラッドは、人目を気にせず、シンシアを抱き寄せた。
腕の中で笑うシンシアにブラッドは、あらためて誓う。
このデュエル必ず勝つ。勝ってアシュリーにとやかく言わせないようにする。
「痛い、痛いってばブラッド。」
「あぁ、すまない。力が入り過ぎたようだ。」
慌てて抱きしめる腕の力を緩める。
「ブラッド、シチュー作ったから。」
「お、食材が手に入ったのか。」
「えぇ、住民は避難したようですが、食材は残っておりました。」
そう言いながらソーンダイクは、ブラッドの馬の手綱を取る。
「隊長、馬の方は自分が見ておきましょう。」
「ソーンダイク、そういう訳には。」
各自の馬は、各自で世話をする。黒駒隊におけるルールであり、ブラッドも例外ではない。
ブラッドは、シンシアと一緒に世話をするつもりだった。
「このデュエルの間だけは、構いませんよ。皆、同じ気持ちです。二人の時間を大切にして下さい。」
そう言ってソーンダイクは、馬を引いて行った。
「デュエル、成立したの?」
「あぁ、明日から戦いだ。」
「そう、お願いがあるんだけど。」
「なんだい、戦場だから、聞けるかわからないが。」
優しく語り掛けるブラッドにシンシアは、自分の要望を語った。
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