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「……ん」
目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。
硬いマットレスに肌触りの悪いシーツ
動く度にギシギシと揺れるベッド
木造の古ぼけた部屋に窓が一つ、温かな日差しが
入ってきている。
「なによ、ここは……」
ベッドから立ち上がり、部屋の扉を開ける。
狭い廊下にはこの部屋の他に2つ部屋がある。
ここは2階のようで、階段をおりると
美味しそうな匂いが漂ってきた。
1階には広めのキッチンがあり、そこに誰かが立っている。
「起きたのか?」
「……れ、レグリス?!」
少し長めの髪を後ろで縛り、シャツの袖をまくって
その男は鍋の前に堂々と立っている。
器用に野菜を鍋の上で切り、ポチャンポチャンと
具材が鍋の中に落ちる。
この匂いの正体はあれか、まさかこの男
料理ができただなんて
「そんなところに突っ立ってないで手伝え
そこにある食器持ってこい」
「……なんで公爵令嬢の私がそんなことを」
「もう公爵令嬢じゃないだろ、文句言ってないで
早く持ってこい」
「……そうね、たしかに違う」
私は公爵令嬢じゃなくなったんだった。
抵抗する気力もなくて大人しく食器を持っていくと
なぜかレグリスは気まずそうに顔を歪めた。
食器を私から受け取り、そこに鍋からお玉で
シチューを掬い、皿にのせる。
大きな肉がゴロゴロと入ったブラウンシチューは
微かにワインの香りがした。
シチュー2皿を男はどこかへ持っていく
ついていくとキッチンの奥に何個かの机と
それを囲むように椅子が置かれていた。
窓際の席にそれを置き、男は私を手招きする。
「座ってろ」
ちょこんと指された椅子に座っていると
男はキッチンからまだ湯気がたっている。
美味しそうなバケットをカゴに入れて持ってきた。
向かいの席に男も座り、私にスプーンを手渡す。
「な、なによ……」
「スプーンがないと食えないだろ」
食べる?私がこれを?
「わ、私は庶民の食べ物なんて……」
「食わねぇとこれから生きていけねぇよ」
「……」
「それに腹減ってるだろ」
「そんなこと……!」
ぐぅぅ
大きな音が鳴り、私は恥ずかしくてお腹を隠す。
レグリスは、ほらな?と笑って私は渋々スプーンを
受け取った。
スプーンをシチューにつけようとすると
「おい、待て」
と男に止められる
「なによ、食べろって言ったじゃない!」
「食べる前に感謝しろ」
「貴方に?」
「いいや、その食べ物にだ
肉だって野菜だって大切な命だったんだ
だからその命に感謝してから食べるんだよ」
真似しろとでも言うように男は私に目配せし
男は両手を組んだ。
私も同じように手を組み、男と同じように目を瞑った。
「いただきます」
「い、いただきます……」
馴染みのない言葉に戸惑ってしまう。
「ほらもう食べていい、ゆっくり噛めよ」
「……言われなくても」
スプーンを手に取り、シチューを口に運ぶ。
大きなお肉は口の中でホロリと溶け、口の中に
シチューの香りが広がった。
「……悪くはないわ」
「素直に美味しいって言えよ」
バケットにシチューをつけ、パクリと食べると
トロリとしたシチューがパンに絡まり
食べる手が止まらなくなる。
あっという間に間食すると、レグリスはなぜか
笑っていた。
「そんなに美味かったか?」
「……お腹が空いてただけ」
「そうかよ」
男は席を立ち、私に使い終わった食器を持ってくるように言った。
「私は公爵れ……わかったわよ」
言い返すこともできず、私は食器を持ち
男の方へと持っていく。
「皿の洗い方分かるか?」
「……分からない」
「なら教えてやるから覚えろよ」
まさかお皿の洗い方を学ぶ日が来るなんて思わなかった。
スポンジを使い、石鹸と水で丁寧に洗うと
ピカピカの皿が完成した。
「できたわ」
「綺麗にできたな」
「まぁね、私は公爵れい……ではなかったわね」
皿を洗い、布巾を絞り机を拭く。
「まだ絞りきれてない、ちゃんと力入れろ」
「無理よ、これ以上!」
「力ないんだな、お前」
机も精一杯力を入れて拭きあげ、水をきった皿を
乾いた布巾で拭きあげる。
「つ、疲れた……」
「そんくらいで何言ってんだよ」
紅茶を持ってきたレグリスは私の向かいに座り
「ハチミツいれるか?」
と聞いてきたので頷いておいた。
「それでここはどこなの」
「俺の家」
「貴方の家?この小屋が?」
「そうだ、小さいけどいい家なんだよ」
「ここに一人で暮らしてるわけ?」
「あぁ、暮らしてた」
ハチミツの優しい甘さが広がる紅茶をチビチビと
飲んでいると
これも食えよ、とクッキーがのった皿を
私に差し出した。
一つとり、齧るとクッキーはサクッと崩れ
バターの風味が舌をくすぐる。
「……これも悪くはないわ」
「捻くれたやつ」
「それでなんで私を貴方の家に連れてきたわけ?」
「働いてもらおうと思ってさ」
「働く?」
チリンチリン
扉が開き、薄汚れた格好の男が中に入ってきた。
「グリス、帰ってきたんだってな!
店開いてるか?」
「開いてる、久しぶりだなバロ爺さん」
「……ん?なんだ、ようやく帰ってきたと思えば
結婚したのか!とんでもなく綺麗な嫁さんだな」
「妻ではありません!」
「あぁ、妻じゃない
労働力としてつれてきたんだ」
「ほう、まぁとりあえずコーヒーとランチをくれ」
「はいはい、ほらお前もこれから働くんだ
手伝え」
「働くってここは何なのよ、家じゃなかったの?」
「俺の家であり、俺の店でもある」
「店?」
レグリスは椅子にかけていたエプロンの紐をクイッと
縛った。
「カフェ キャロット
それがお前がこれから働く店の名前だ」
「……カフェ?」
こうして公爵令嬢だった私は、大嫌いなやつと
カフェで働くことになった。
「まず来た客に、いらっしゃいませって
大きな声で言うんだ」
「い、いらっしゃいませ……?」
「それから来た客に水を持っていく
ほら持って行ってみろ」
グラスに水を注ぎ、席に座った男の前に置いた。
「水をあげる、飲みなさい」
「おい、やめろ
すまないバロ爺さん、今日のお代はタダでいいから
コイツに練習させてくれないか?」
「そりゃあいい、お嬢ちゃん
その言い方じゃお客さんは怒っちまうかもしれない」
「……なら何て言えばいいのよ」
「お水をどうぞ、でいいと思うぞ」
「……お水をどうぞ」
「ありがとう」
それからレグリスがつくったシチューとバケット
そしてコーヒーを持っていく。
「ご、ご注文のものよ
熱いから気をつけなさいよ」
「おい、敬語を使え」
キッチンから注意が聞こえ、無視すると
目の前の男はケラケラと笑った。
「面白い子だね、ありがとう
名前は何だい?」
「聞いて驚かないでちょうだいよ
私の名前はラビエッ……んん?!」
口を後ろから塞がれ、代わりにレグリスが淡々と答えた。
「ラビィ、それがコイツの名前」
「私はラビエッ……」
言い返そうとするが耳元で、やめとけ
と囁かれ悔しいが黙ることにした。
「ラビィちゃんか、可愛い名前だ」
レグリスは私をキッチンに連れていき
バロ爺さんとかいう人に聞こえないように
小さな声で話した。
「お前は今、ラビィっていう平民としてこの国に
入ってきてる」
「ここはどこの国なの?」
「カルボナ帝国、俺が何を言いたいかは分かったな?」
「カルボナ帝国ですって?」
カルボナ帝国、不法な移住を厳しく取り締まる国で
有名であり、バレた場合死刑となる。
「なんでそんな国に私を入れたのよ?!
ていうかちゃんと手続き踏んだんじゃないの?!」
「国を追放された令嬢がちゃんとした手続きで
入れてもらえると思ってんのか?」
「うっ……」
「バレたら死ぬと思えよ、お前も俺も」
「そこまでしてなんで私を連れてきたのよ」
「……さぁな、早くバロ爺さんのとこ行け
コーヒーおかわりって呼んでる」
「……分かったわよ」
カップを受け取り、新しいコーヒーを持って行った。
それから接客の仕方について、あれこれ言われ
バロ爺さんが帰ったあとは食器を洗い
席を拭かされた。
「今日は早めに閉めるが、明日は朝から夜まで開けるからもっと頑張れよ」
「……貴方、私をこき使うためにわざわざ連れてきたわけ?それが貴方なりの仕返しなの?」
「そうかもな、2階に風呂があるから入ってこい」
「レグリス、私はこんなことをしたくは……」
「レグリスって呼ぶな、ここではグリスって呼ばれてる」
「……」
「たとえこれがお前への仕返しだとしても
お前はここで働くしかないんだ、生きて行くために
分かったらとっとと風呂入ってこい」
レグリスは私にタオルを投げ、キッチンに消えていった。
分からない、なんで私をそこまでして連れてきたのか
放っておけばよかったのに
全てに絶望してあとは死ぬだけだったのに
まさか家に連れて来られて働かされるだなんて
考えても分かるわけもなく、お風呂に入ろうと私は
2階にあがった。
「グリスー!!グリス来てってば!」
「もうなんだよ、静かに風呂も入れないのか!」
風呂から悲鳴が聞こえ、扉の前に行くと
青い髪を濡らした美しい少女が扉の隙間から
顔を覗かせた。
「た、助けて!水が止まらないのよ!」
「は、はぁ?!」
かろうじて首から下は見えていないものの
服を着ていないことは明らかで、俺は咄嗟に
目を逸らす。
「出すことまではできたの、でも止め方が……
どうすればいいの?!」
「じゃ、蛇口を逆に捻ろ!」
「逆に??」
ドタドタと音が聞こえ、キュッと蛇口を捻る音がする。
「止まった、止まったわ!」
「……はぁ」
濃い化粧が落ちた彼女は初めて会った時と
全く変わっていなかった。
目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。
硬いマットレスに肌触りの悪いシーツ
動く度にギシギシと揺れるベッド
木造の古ぼけた部屋に窓が一つ、温かな日差しが
入ってきている。
「なによ、ここは……」
ベッドから立ち上がり、部屋の扉を開ける。
狭い廊下にはこの部屋の他に2つ部屋がある。
ここは2階のようで、階段をおりると
美味しそうな匂いが漂ってきた。
1階には広めのキッチンがあり、そこに誰かが立っている。
「起きたのか?」
「……れ、レグリス?!」
少し長めの髪を後ろで縛り、シャツの袖をまくって
その男は鍋の前に堂々と立っている。
器用に野菜を鍋の上で切り、ポチャンポチャンと
具材が鍋の中に落ちる。
この匂いの正体はあれか、まさかこの男
料理ができただなんて
「そんなところに突っ立ってないで手伝え
そこにある食器持ってこい」
「……なんで公爵令嬢の私がそんなことを」
「もう公爵令嬢じゃないだろ、文句言ってないで
早く持ってこい」
「……そうね、たしかに違う」
私は公爵令嬢じゃなくなったんだった。
抵抗する気力もなくて大人しく食器を持っていくと
なぜかレグリスは気まずそうに顔を歪めた。
食器を私から受け取り、そこに鍋からお玉で
シチューを掬い、皿にのせる。
大きな肉がゴロゴロと入ったブラウンシチューは
微かにワインの香りがした。
シチュー2皿を男はどこかへ持っていく
ついていくとキッチンの奥に何個かの机と
それを囲むように椅子が置かれていた。
窓際の席にそれを置き、男は私を手招きする。
「座ってろ」
ちょこんと指された椅子に座っていると
男はキッチンからまだ湯気がたっている。
美味しそうなバケットをカゴに入れて持ってきた。
向かいの席に男も座り、私にスプーンを手渡す。
「な、なによ……」
「スプーンがないと食えないだろ」
食べる?私がこれを?
「わ、私は庶民の食べ物なんて……」
「食わねぇとこれから生きていけねぇよ」
「……」
「それに腹減ってるだろ」
「そんなこと……!」
ぐぅぅ
大きな音が鳴り、私は恥ずかしくてお腹を隠す。
レグリスは、ほらな?と笑って私は渋々スプーンを
受け取った。
スプーンをシチューにつけようとすると
「おい、待て」
と男に止められる
「なによ、食べろって言ったじゃない!」
「食べる前に感謝しろ」
「貴方に?」
「いいや、その食べ物にだ
肉だって野菜だって大切な命だったんだ
だからその命に感謝してから食べるんだよ」
真似しろとでも言うように男は私に目配せし
男は両手を組んだ。
私も同じように手を組み、男と同じように目を瞑った。
「いただきます」
「い、いただきます……」
馴染みのない言葉に戸惑ってしまう。
「ほらもう食べていい、ゆっくり噛めよ」
「……言われなくても」
スプーンを手に取り、シチューを口に運ぶ。
大きなお肉は口の中でホロリと溶け、口の中に
シチューの香りが広がった。
「……悪くはないわ」
「素直に美味しいって言えよ」
バケットにシチューをつけ、パクリと食べると
トロリとしたシチューがパンに絡まり
食べる手が止まらなくなる。
あっという間に間食すると、レグリスはなぜか
笑っていた。
「そんなに美味かったか?」
「……お腹が空いてただけ」
「そうかよ」
男は席を立ち、私に使い終わった食器を持ってくるように言った。
「私は公爵れ……わかったわよ」
言い返すこともできず、私は食器を持ち
男の方へと持っていく。
「皿の洗い方分かるか?」
「……分からない」
「なら教えてやるから覚えろよ」
まさかお皿の洗い方を学ぶ日が来るなんて思わなかった。
スポンジを使い、石鹸と水で丁寧に洗うと
ピカピカの皿が完成した。
「できたわ」
「綺麗にできたな」
「まぁね、私は公爵れい……ではなかったわね」
皿を洗い、布巾を絞り机を拭く。
「まだ絞りきれてない、ちゃんと力入れろ」
「無理よ、これ以上!」
「力ないんだな、お前」
机も精一杯力を入れて拭きあげ、水をきった皿を
乾いた布巾で拭きあげる。
「つ、疲れた……」
「そんくらいで何言ってんだよ」
紅茶を持ってきたレグリスは私の向かいに座り
「ハチミツいれるか?」
と聞いてきたので頷いておいた。
「それでここはどこなの」
「俺の家」
「貴方の家?この小屋が?」
「そうだ、小さいけどいい家なんだよ」
「ここに一人で暮らしてるわけ?」
「あぁ、暮らしてた」
ハチミツの優しい甘さが広がる紅茶をチビチビと
飲んでいると
これも食えよ、とクッキーがのった皿を
私に差し出した。
一つとり、齧るとクッキーはサクッと崩れ
バターの風味が舌をくすぐる。
「……これも悪くはないわ」
「捻くれたやつ」
「それでなんで私を貴方の家に連れてきたわけ?」
「働いてもらおうと思ってさ」
「働く?」
チリンチリン
扉が開き、薄汚れた格好の男が中に入ってきた。
「グリス、帰ってきたんだってな!
店開いてるか?」
「開いてる、久しぶりだなバロ爺さん」
「……ん?なんだ、ようやく帰ってきたと思えば
結婚したのか!とんでもなく綺麗な嫁さんだな」
「妻ではありません!」
「あぁ、妻じゃない
労働力としてつれてきたんだ」
「ほう、まぁとりあえずコーヒーとランチをくれ」
「はいはい、ほらお前もこれから働くんだ
手伝え」
「働くってここは何なのよ、家じゃなかったの?」
「俺の家であり、俺の店でもある」
「店?」
レグリスは椅子にかけていたエプロンの紐をクイッと
縛った。
「カフェ キャロット
それがお前がこれから働く店の名前だ」
「……カフェ?」
こうして公爵令嬢だった私は、大嫌いなやつと
カフェで働くことになった。
「まず来た客に、いらっしゃいませって
大きな声で言うんだ」
「い、いらっしゃいませ……?」
「それから来た客に水を持っていく
ほら持って行ってみろ」
グラスに水を注ぎ、席に座った男の前に置いた。
「水をあげる、飲みなさい」
「おい、やめろ
すまないバロ爺さん、今日のお代はタダでいいから
コイツに練習させてくれないか?」
「そりゃあいい、お嬢ちゃん
その言い方じゃお客さんは怒っちまうかもしれない」
「……なら何て言えばいいのよ」
「お水をどうぞ、でいいと思うぞ」
「……お水をどうぞ」
「ありがとう」
それからレグリスがつくったシチューとバケット
そしてコーヒーを持っていく。
「ご、ご注文のものよ
熱いから気をつけなさいよ」
「おい、敬語を使え」
キッチンから注意が聞こえ、無視すると
目の前の男はケラケラと笑った。
「面白い子だね、ありがとう
名前は何だい?」
「聞いて驚かないでちょうだいよ
私の名前はラビエッ……んん?!」
口を後ろから塞がれ、代わりにレグリスが淡々と答えた。
「ラビィ、それがコイツの名前」
「私はラビエッ……」
言い返そうとするが耳元で、やめとけ
と囁かれ悔しいが黙ることにした。
「ラビィちゃんか、可愛い名前だ」
レグリスは私をキッチンに連れていき
バロ爺さんとかいう人に聞こえないように
小さな声で話した。
「お前は今、ラビィっていう平民としてこの国に
入ってきてる」
「ここはどこの国なの?」
「カルボナ帝国、俺が何を言いたいかは分かったな?」
「カルボナ帝国ですって?」
カルボナ帝国、不法な移住を厳しく取り締まる国で
有名であり、バレた場合死刑となる。
「なんでそんな国に私を入れたのよ?!
ていうかちゃんと手続き踏んだんじゃないの?!」
「国を追放された令嬢がちゃんとした手続きで
入れてもらえると思ってんのか?」
「うっ……」
「バレたら死ぬと思えよ、お前も俺も」
「そこまでしてなんで私を連れてきたのよ」
「……さぁな、早くバロ爺さんのとこ行け
コーヒーおかわりって呼んでる」
「……分かったわよ」
カップを受け取り、新しいコーヒーを持って行った。
それから接客の仕方について、あれこれ言われ
バロ爺さんが帰ったあとは食器を洗い
席を拭かされた。
「今日は早めに閉めるが、明日は朝から夜まで開けるからもっと頑張れよ」
「……貴方、私をこき使うためにわざわざ連れてきたわけ?それが貴方なりの仕返しなの?」
「そうかもな、2階に風呂があるから入ってこい」
「レグリス、私はこんなことをしたくは……」
「レグリスって呼ぶな、ここではグリスって呼ばれてる」
「……」
「たとえこれがお前への仕返しだとしても
お前はここで働くしかないんだ、生きて行くために
分かったらとっとと風呂入ってこい」
レグリスは私にタオルを投げ、キッチンに消えていった。
分からない、なんで私をそこまでして連れてきたのか
放っておけばよかったのに
全てに絶望してあとは死ぬだけだったのに
まさか家に連れて来られて働かされるだなんて
考えても分かるわけもなく、お風呂に入ろうと私は
2階にあがった。
「グリスー!!グリス来てってば!」
「もうなんだよ、静かに風呂も入れないのか!」
風呂から悲鳴が聞こえ、扉の前に行くと
青い髪を濡らした美しい少女が扉の隙間から
顔を覗かせた。
「た、助けて!水が止まらないのよ!」
「は、はぁ?!」
かろうじて首から下は見えていないものの
服を着ていないことは明らかで、俺は咄嗟に
目を逸らす。
「出すことまではできたの、でも止め方が……
どうすればいいの?!」
「じゃ、蛇口を逆に捻ろ!」
「逆に??」
ドタドタと音が聞こえ、キュッと蛇口を捻る音がする。
「止まった、止まったわ!」
「……はぁ」
濃い化粧が落ちた彼女は初めて会った時と
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