その小さな女の子のことが気になってしまったんだが、どう接していけばいいんだろう

すんのはじめ

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第1章

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 その日は、少年サッカーの試合なんかも行われていたため、帰りがいつもより遅くなってしまって、もう辺りも暗くなり始めていた。そして、公園のほうを見ると、まだ、あの子が居るのだ。僕は、気になったものだから、驚かさないようにと大きな足音を立てて近づいて行って

「まだ 見ていたの? もう暗くなるから・・」

「・・・」

「あのさー お家の人も心配するんじゃぁない? 家 この近く? もう 帰らないと・・・」 気まずい雰囲気なんだけど

「・・・」

「僕の名前は 北番 秀きたばんしゅう お嬢ちゃんの名前は?」

「・・・」 こっちも見もしないで、真直ぐに風景をみていたのだ。

「もう 知らない人じゃぁないだろう 一人っきりじゃぁ危険だから送ろうか?」余計に、変質者と思われるだろうか・・・このままじゃぁー まずい

 相変わらず、前を向いたままだったけど、ポツンと

「もう 帰るから・・ いいの 独りで」

「そうか 大丈夫かい?」と言うと、その子は走って坂道を下って行った。真直ぐに前を見て、振り返るつもりも無かったみたい。その様子を僕は坂の上から見守っていたのだ。束ねた二つの髪の毛も揺れている感じもなかったので、そうとう早く走っているのだろう。僕から、逃げるようだったのか

 僕は、その子が見えなくなるまで、そこに居て、ようやく自転車をこぎ出して坂道を降りて行った。何だか、その子に追いつくのも悪いような気がしていたからなのだ。

 帰りにスーパーに寄って、おかずとかを買っていたのだが、ふと、おにぎりに入れる具材にあの子は何が好きなんだろうとか、頭をかすめていた。買い物カートを押しながら、あの子と同じくらいの女の子がお母さんに食べたいものをねだっている様な光景が眼に入った。その様子を見て、僕が、余計な事をする必要ないよナァー あんまり、変なことをすると警戒されるナと、思い直していたのだ。

 それから、世間の休日の間には、あの子は公園に来てなかったみたいだった。僕は、その間、おにぎりを用意して持っていくようにしていたのだが。少し、気落ちしている自分が居たのだ。

 そして、小学校の授業が始まる日。仕事の帰りに公園を見てみると、あの子が座っていた。僕は、傍に寄っていって

「やぁ 来てたんだ 隣に座っていいかい?」

「・・・」 僕は、構わず座っていた。だけど、その子は自分の座っているところをずらすようにしていて、細い脚と擦り切れてくたびれたズックを抱えるようにしていた。明らかに、少し警戒して避けているような感じだった。

 見ると、今日も何かの紙に鉛筆で街の絵を描いていた。それも、かなり細かく丁寧に描いていた。おそらく、上手というのだろう。だけど、よく見ると何かのプリントの裏みたいだった。ランドセルを膝の上に乗せて、それを下敷きがわりにして、街並みと手元の紙を交互に見て、僕のことなんか無視しているようだった。確か、この前までは髪の毛を両方に二つに分けていたと思ったが、今日は後ろにひとつにしてゴムで束ねていた。半袖のチェックのブラウスを着ていて、細い首がのぞいていたのだが、それも襟元は擦り切れてきているようだった。申し訳ないけど、僕はこの時、この子はあんまり家の人から構ってもらえてなくて、裕福な家の子でも無いんだなって、勝手な想像をしていた。

 連休中に遊びに行ってきたという職場のパートさんからもらったどら焼き饅頭があったのを思い出して、

「もらったんだけど これ食べるかい? 僕はあんこ苦手なんだ」と、彼女の横に包みのまま置いた。彼女はそれをチラッと見たけど、又、無視したように絵を描き続けていた。お菓子で打ち解けようと、安直な考えなのかと反省していたのだ。

「じゃぁー じゃますると悪いから」と、僕が立ち去ろうと歩いている時

「ありがとう おじさんって怪しい人じゃぁないよネ」という声が背中から聞こえた。振り返ってみると、彼女はそのどら焼きを喰らいついているようだったけど、僕には彼女の小さな背中しか見えなかったのだ。

 だけど、帰り道、ようやく打ち解けてきてくれたような気がして、僕は晴れやかな気分だった。新任の教師が初めて授業を受け持って、ようやく生徒から反応があった時って、こんな感じなのだろうな。だけど、おじさんは無いだろー この日から彼女との触れ合いが始まったのだ。
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