私の中にあの猫がいる

すんのはじめ

文字の大きさ
13 / 30
第2章

2-2

しおりを挟む
 朝 正月休みが明けて、初めての土曜日、早坂さんに京都に行こうと誘われていた。鞍馬寺に行こうと言っていた。断る理由もなく、私は、「はい」と言ってしまったのだ。

「プチ どうする? 天狗だよ」

「止めとく いやな感じだ あいつは、魔物に近いからなー それに、あの男なら、すずりちゃんを危険なめに合わせないだろうし」

 三宮で朝9時に待ち合わせした。多分寒いだろうってことで、私は、スリムのジーンズにブーツとハーフのダウンコートにした。プチに見送られて、駅に向かった。振り返って、プチ(チッチ)の姿を一枚撮った。後で、見返すと、何だか、二重に映って見えていた。

 待ち合わせ場所で、直ぐに会えて、JRで大阪に行くという。お父さんとは、違うんだと思いながら・・電車の中では、正月の間、金沢に行ってお寿司屋さんを食べ歩きしていたとか話してくれていた。

 大阪駅に着いてからは、地下鉄に乗り換えるからって、手をつないできた。私、お父さん以外、男の人と手をつないで歩くのって初めてかも・・。ごつくて、暖かい。人が多くって、独りだったら、歩くの迷っていたかも。

 鞍馬の駅に着いてからも、坂道を登って行く時も、手をつないでくれていて、山門に着いて

「ケーブルあるけど、どうする? 歩いても、ゆっくりでも1時間はかからないと思うよ」

「うーん 歩きます 良いところあったら、写真撮っても、良いですか」

「もちろん良いよ ちょっと、道がジメジメしてるかもわからないけどね すずりさんが天狗に連れ去られないように、しっかり、手をつないでおくよ」

「やだー 私、天狗の彼氏はお断りですよー でも写真のモデルになってもらうかも」

 早坂さんは、笑いながら手を握り直して「じゃ 行こう」と言って、登り始めた。途中、所々で道端に雪が残っていた。ちょこちょこ写真を撮っていたもんだから、本殿に着いた時には、本当に1時間かかっていた。

「ねぇ 早坂さん 天狗さんって、結局、毘沙門天のこと?」

「うーん 単純には言えないよね 最初の頃は、天狗って魔物扱いだったからね 毘沙門天が天狗をやっつけてる絵も残されているからな それは、カラス天狗のことかも知れない 山伏が修行して大天狗になったとか 山伏は仏教の教えと、ちょっと違ったんだ そのうち、大天狗は人々を守る存在になって、魔物から守る毘沙門天と結びついたのかも」

「複雑ですね よく、わかんないです 早坂さん、詳しいですね」

「そーでもないけどね もう一つ、昔、ここに外国人が住み着いて、ふもとの人がそれを見かけて、鼻が高いし顔も赤みがかっていて髪の毛の色も違うから、それを見て天狗と言ったのだという説もある。そうすると、牛若丸は外国人から色々と教わったわけだ」

「ヘェー わかった だから、牛若丸って女の人みたいな恰好してたんだ みんなに女の子として育てられたんだわ だって、山伏も男の人ばっかでしょ」

「それは、意味深だね 飛躍しすぎじゃぁない? 単純に源の血筋を引くから、男だと 具合が悪かったんじゃぁないかなー」

 私、変なこと言ってしまったと、後悔して、多分、顔を紅くしていたんだと思う。帰り道は下り坂で、私、何回か滑りそうになって、早坂さんの腕に掴まっていた。

「早坂さん 帰りはケーブルで良い?」

「そうだね 転んで、泥だらけになっちゃぁ大変だからね」

 下りてきて、お昼をだいぶ過ぎていたが、河原町で天ぷら屋さんに行きたいので、その前に、何か少し食べようってなって、私は、ぜんざいを選んだ。

「早坂さんって、大学の時、どこに住んでいたんですか?」

「出町柳の近くでね 酒屋の倉庫の2階に住まわせてもらっていたんだ 殆ど、自炊はしてないけどね」

「えー 不健康そう」

「うん でもね 昼は学食で安いし、ガッツリだったし、配達先でも色々お世話になったしね」

 その後、河原町に行って天ぷら屋で食事をして出た後、

「もう、少し入るかい? 軽く、餃子とビールを飲みたいな」

「いいですよ 行きたいところあるんですか」

「うん 大学の時、先輩に連れられて、それから、魅せられてね」

 お店に入ると、早坂さんはさっさと2階に上がって行った。窓からは川が見えて、寒いだろうに、その川側を歩いているカップルとか川に向かって座ってるグループなんかが居た。もう、私、お腹いっぱいだったけど、皮が薄くて、なんだか食べれちゃった。ビールも・・

 ちょっと、浮かれていた。ちょっと陽が落ちて、暗くなりかけていた。私から

「鴨川歩きたい」と、言って誘ったら、私の手をつないでくれて、川に下りていってくれた。だけど、私、後ろから腕を組んでいったら、手を握りしめてくれて

「寒くない?」

「ううん 少し、酔っているし、こうやっていると温かい みんなもこうやっているもんね」

「すずりさんとこんな風に歩けるなんて、夢のようだよ とにかく、君は僕にとって、天使のようなもんだよ」

 私、早坂さんに近づいてきたのかも・・・

 ― ― ― * * * ― ― ―

 なずなと仕事の帰りに、食事に行こうってなって、ドイツレストランに居た。私、カスラーとかソーセージが好きだから。

「すずり あれから、石積さんとこ行った?」

「ううん 行って無いよ なかなか一人じゃぁね」

「そーなんだ すずりは、会いたくないの? まんざらでもなかったみたじゃぁない」

「最初は、優しいし、良い人だとは思ったんだよ でも、あの人とお休み合わないし、続かないかなって」

「だよねぇー あこがれの人なんだけど、現実的なこと考えると、私も、ちょっとなって・・ でも、私もね、あいつとはあれっ切りだし、さえないよねー すずりは?」

「実は、この前に同じビルの人と遊びに行った。まだ、付き合うまでいって無いけどね」

「そうなの 私もね、取引先の人と食事なんかに行くけど、何か、燃えてこないんだよね 好きなんだかなんだかわからない」

「何か、高校大学と時期を逸したよね もう、年なんかなぁー」

「高校大学の時って、すずりなんか、キリットして男を寄り付けませんって雰囲気だったもの」

「そういう、なずなだって、告白されても、相手にしなかったこと何回もあったじゃぁ無い」

「それは、お互い様よ すずりに告白した男の子なんて、はたで見てて、可哀そうだったわよ」

「そんなことあった?  だって、熱意が感じられないんだもの 勉強に集中していたし」

「私等、こんな可愛いのに・・ 今までの、天罰かもね」

 笑って、済ますしかなかった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

処理中です...