私の中にあの猫がいる

すんのはじめ

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第3章

3-7

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 舜の会社が大阪で展示会に出展するので、見に来ないかと誘われたが、平日だったので、昼からお休みをもらって、出掛けることにした。

 ホテルレストランの関係者とか個人事業主相手らしいが、かなりの人で混雑していた。会場に入ると、厨房機械とか大掛かりなものから、色んなものが展示されていた。私は、こんなのをあんまり目にする機会も無かったので、珍しいものばっかりだった。

 中でも、並んでいる人が居たのは、焼きたてのパンを配っているところなんだが、私には、オーブンを展示しているんだか、パン生地なんだかなぁーと思いながら、舜のブースを探した。

 あった 目立たないのー 多分、事務所の女の人とふたりで、声を出しているけど、通る人はチラッと見るだけで、みんな素通りしていた。兵庫県と茨城県産のごま油を売り込もうとしているのだが、どうも、反応が良くないみたいだった。

 ブースの前に行くと、舜が気が付いたみたいで

「すずり 来てくれたんだ ありがとう」

「うん どんなかなって思って」と、事務所の中野さんにも、頭を下げて挨拶をした。

「どうなの 商談まとまった?」と、私は聞いてみた。

「ううん かんばしくないなぁー パンフレットはみんな持っていくけど」と、舜も元気なかった。

「あのさー 生意気なこと言って、ごめんね 私、思うけど、スティツクのきゅうりとか人参につけるのって、当たり前じゃぁない? 今は、お菓子よ 例えば、パウンドケーキなんかも試食用に置いてみたら そうよ 私 さくらになるわ」

「えー すずりにそんなこと頼めないよー」

「いいの やってみたい やってみようよ」

「わかった 中野さん どこかでケーキみたいなの買ってきてくれないかな できるだけシンプルなやつ」

 準備が整うまで、他のブースを見て周って、ワインの試飲なんかもして、ほんのりお酒を飲んで勢いをつけて、又、戻ってみた。ちゃんと、パウンドケーキみたいなものも並んでいた。人の流れが多くなった頃をみて、思い切って声掛けてみた

「まぁ いい香りがするわね 国産なの じゃぁ安心よね」と、大きな声を出して、ケーキをつまんだ

「おいしいわ 洋菓子にも合うのね 健康的だから女性にはうれしいわね」と、少し、恥ずかしかったがアピールした。そのうちに、足を止め、何人かの人がつまんできて、私が、中野さんに説明を聞いていると、独りの女性の方が、舜に説明を求めてきた。2軒の洋菓子屋を経営していると言って居た。割と熱心に聞いていたので、見込みがあるのだろう。

 その後、私は、又、会場をぶらりとして、頃合いをみて、戻って

「じゃぁ私 帰るね」と、舜に伝えると

「あぁー 5時までだから、その後、飯でも喰いに行こうよ 今日のお礼」

「そんな ネックレスのお礼だから 明日もあるんでしょ 中野さんを誘って 私は帰ります」

「そうか いや 今日は助かったよ 有難う 気をつけて帰ってな」

 私は、大阪駅前まで出て、冬用のブーツとかわいらしい下着を物色して、帰りに吉野の箱寿司を買いに行って、高くて、躊躇したが、お母さんが気に入っているので、まぁいいかと買い求めて、家に向かった。

 家の近くの坂道を登っている時、後ろから付いてきていた。多分プチだ。そういえば、今日は私の中に居なかったのだ。

「なんでここに居るのよ ご飯食べたの?」

「何言ってんだよ 迎えに来たに決まってんじゃん 心配だからな でも、いいことあったみたいだな」

「あっ ありがとう まぁ調子いいかな でも、今日はプチへのお土産ないよ」

「俺 ご飯も食べないで、すずりチャンのこと待っていたんだけど それは無いだろう」

 ― ― ― * * * ― ― ―

 11月の日曜日、天気が良かったので、私は独りで2階のベランダに出て、電気コンロを持ち出して、ふぐの味醂干しを焼きながら、ワインをチビチビやっていた。と、言ってもプチも一緒だ。お父さんは相変わらず、ゴルフで出て行ったし、お母さんも仕事だから、こんな姿は、両親には見せられないかも知れない。

 気持が良くなってきて、プチも充分食べた頃、一度 庭に降りて、また戻ってきた時 プチが

「すずりちゃん 話があるんだけど・・ 実はな、チッチが調子悪いんだよ」

「えー どうしたのー どこか、悪いの?」

「うーん 何かね、こいつ寿命短いみたい それに、俺が無理させすぎたみたい」

「えー 死んじゃうの?」

「いや 直ぐって訳じゃぁ無いんだけど 俺が、すずりちゃんと出掛けて居る時に、何かあるとさー 俺は、戻れなくって、大変なことになるんだよ すずりちゃんから、出られなくなると、すずりちゃんに何が起こるかわからない」

「何かってなんなのよ せっかく、いい気持ちになってきたのに、醒めるじゃぁない 不安にしないでよー プチったら」

「例えばね 最悪 俺の精霊が強いと、すずりちゃんを追い出して、その身体を俺が乗っ取ってしまうとか」

「何よーソレ 私は 何処へ行ってしまうの?」

「うーん そうなると 世間をさまようとか」

「そんなの めちゃくちゃじゃぁない 私 死んだようなものなの? そんなの嫌だぁー」

「待ってよ 最悪の話だよ そうなるのを、防ぐために、これから、俺は、すずりちゃんと外に出掛けるのは、よそうと思う」

「ということは、家ン中だけなの プチと話せるのは」

「そういうことだな これからは、自分のことは自分で守って」

「そうなのかー 自分で守ってねぇー それが、普通なのかもね  プチと普通の猫として、又、会いたかったのかも」

「うん 先行きは、運が良ければ、又、合えるかも でも、その時は、俺のきおくはもうなくなっている普通の猫だろうな でも すずりちゃんの俺への愛情次第かもな」

「なに言ってるのー 私 プチのこと 忘れる訳ないじゃぁない!」  


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