それから 本町絢と水島基は

すんのはじめ

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第2章

2-3

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 2泊して昼すぎに美波の家を出てきた。葵はもう少し世話になると言っていた。慎二とは、一緒だったが、各地を回りながら、実家に帰ると言って、直ぐに別の列車で出て行った。

 僕達は、夜7時半に市民会館で待ち合わせしていた。絢は、白の地模様に光る蛍とつゆ草をあしらった浴衣に黄色の帯でやってきた。初めて見る絢の浴衣姿だ。帯には、あの青と紅の蝶々お守りを付けていた。その鈴を鳴らしながら、小走りで駆け寄ってきて

「ごめんね 待った? 急いだんだけど」

「そんなに、急がないでもいいのに 転ぶよ」

 見ると、小さいリボンをモチーフにしたイアリングをしていた。薄いが化粧をしているみたいだ。うす暗いけど、キラキラしていた。

「うふっ お姉ちゃんに着せてもらったんだ お化粧も やっとモト君と花火見れるね 夢がもう一つ叶いぃ」

「そうだな 小学校の時、行けなかったんだよな」

「覚えていてくれたんだ。あの時、ウチ 悲しかったわ でも、もういいんだ 今こうしてモト君と一緒だモン」

 と言いながら、僕の腕にすがりつき、そのまま、後ろから腕を組んできた。大勢の人が、ぞろぞろと並ぶように川の方向に歩いている。もう、川沿いには陣どった人々でいっぱいだったが、僕達は橋を渡って、向こうの公園に行こうとしていた。あっちの方が広々としているから。

 広場もいっぱいの人だったけど、何とか樹のたもとで立ったままで見れそうだった。その時、少しずつ花火があがりはじめていた。絢は、まだ腕を組んだまま寄り添っている。それでも、真上にまで昇って大きく輪が広がっていった。こんなに真直で見るのは、僕も初めてだ。「ウワーすごい」とか「きれいわ」とか、はしゃいで楽しそうにしている絢を見ていると、今は、僕も嬉しくなる。

 花火が終了した時、一斉に帰り始め混雑しているので、僕たちは、しばらく公園の中を歩いていた。僕は、人気のない建物の陰に絢を引っ張って行った。

 抱き寄せて、髪の毛を分けた時、柑橘の香りがして、耳に唇を寄せると、絢は「あぁ」と小さく吐息をもらした。そして、柔らかそうな唇を合わせると、絢は僕の背中に手をまわして力を込めてきた。この前よりも長ーく唇を合わせていた。

「遅くなったね 叱られるかな」

「大丈夫 今日はモト君と一緒に見に来ているの知っているから」
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