少女は 見えない糸だけをたよりに・・

すんのはじめ

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第2章

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 燿さんが、お店に道具を持ち込んできた。焼き型のようなもの。聞いたら、ワッフルを焼く大型のものって言って居た。

「あのね クレープって 女の子のものって感じじゃない? だから、甘さを控えめにして、ワッフル生地で、サンドにするの あんまり甘くないの サクッとね 中はカツとかソーセージとかサラダ 男の子がターゲットよ 女の子向けには、フルーツサラダでも良いじゃない。最近は、誰かさん目当てに、男の子も来るみたいだしね」

「わぁー わかってたんだ 店長 カナミ目当ての人」

「えー 暁美さん 私・・」

「そりゃーそうよ 香波ちゃんが 店頭に立ち始めたら 男の子のお客様 何人か来出したものー 最初は お店の前を通り過ぎるだけだったんだけど 香波ちゃんが大きな声を出すもんだから、女の子なんだって気づいたのよね」と、燿さんも

「そーですよね ウチも最初の頃 女の子のお客様に あの可愛い男の子 名前なんていうんですかって、聞かれて・・ 女の子が騒ぐぐらいだったんだから・・あの頃は、美少年だったのよね でも 段々と男の人 増えてきたみたい」

「ウフッ 今から、試作するの 香波ちゃん手伝って 覚えてね 今度は、あなたが、暁美ちやんとくるみちゃんに教えるのよ」

「わかりました。一生懸命 覚えます」

 とりあえず、生地をいろいろと作って、具材も試していたら、暁美さんが私の腕を掴んで

「来たわよ カナミのファン 店頭に立ちなさいよ」と、表を指さしていた。

 二人連れの男子学生。寒そうにポケットに手を突っ込んで首を縮めて

「コンチワー 何しょっかなー 君は何がお薦め?」と、私 こんな軽そうな人 好きじゃないって思ったけど

「なんでも おいしいですよー ナッツチョコはいかがでしょうか? ビターなチョコですよー バナナも入れるともっとおいしいです」と、笑顔で応えた。

「じゃー それにしょっ」

「俺も それにしょうかなー でも、バナナの代わりに君の笑顔もっと入れてほしいなぁー ねぇ 君は女の子だよね!」と、私は、鳥肌が・・でも、笑ってごまかしていた。

「ねぇ ねぇ ここ日曜は休みでしょ 休みの日は何してんのー」と、

「そーですねー 歩いています 一人っきりで歩くの好きですから ハイ! 出来ました ありがとうございまーす」と、心の中で早く帰れと思っていたんだけど

「ねえ この前も、構内に立っていたよね 何してたん?」

「はぁー 別の人じゃぁ無いですかー」と、しらんぷりしていたら、ようやく帰って行った。

「フフッ 嫌なんだ あんなの」と、暁美さんが

「嫌ですよ 知らないのに、馴れ馴れしくー 駄目なんです それに、男の人、怖くってー」

「カナミは初心うぶなんだからー 男の扱い教えよっかー」

「暁美ちゃん よしなさいよー からかうの 香波ちゃんも あれくらいは、適当にあしらうように覚悟していきなさいね」と、燿さんに言われていた。

「続き やるよー」と、燿さんに呼ばれた。

 そして、とりあえずの試作品も完成して5品目。

「とうしょうかなー あと1週間で、クリスマスでしょ 学生さんもお休みになるしねー ウーン 考える いつから 販売するか」と、燿さんは黙り込んでしまった。ただ、その眼は私のほうをみつめていたんだけど・・私 身動きできなかった。そして、突然

「香波ちゃん お化粧って していないよねー 肌がきれい 透き通っているみたい ウチに来た時は あんなに日焼けで黒かったのにねー だんだん 変わっていってるねー 美少年のままのほうがいいのか 美少女になるのかー・・・ 変な虫がつかないよーに 美少年のままのほうが 良いのかなー」

 ― ― ― * * * ― ― ―

 あの人が来た。ごっつい人。くるみチヤンは、直ぐに店の中に招いたのだけど、その人も躊躇せずに入ってきていた。「あっ いらっしゃい」と、私は笑顔になったんだけど、内心は少し、怖かったのだ。この人。

「あのー ランチョンミートにチーズですか」と、私はお水を持っていって。

「うん うまいからね あのー・・ そう 今日も そのー 寒いね」と

「はぁ そうですね だけど お客様はいつも薄着ですよね」

「もう 慣れてしまったからね 薄着に いつもコレッ」

 そーいえば、いつも、上下ジャージだけで・・前の私みたい。よく見ると大学の刺繍が・・。焼き上がるまで、沈黙が続いた。私は、くるみちゃんのほうを見て 早くーぅー と、思っていたんだけど、気のせいか、ゆっくりやっているようで・・。

「あのー」って言うのが、ふたり同時だった。

「あっ どうぞー」って、向こうが先に言った。

「すみません あのー ここの学生さんなんですよね?」

「はい! 3回生です。源一みなもとはじめです みんなは、ゲンイチって呼びます」と、大きな声で・・。

「み・な・も・と ?  うふっ あー ごめんなさい 一瞬 敵 かな って 私 藤原って言うんです だから・・」

「あー そうなんですか そりゃ いいやー 嫌 良くないです」

「? ・ ?  良くないですかー?」

その時、くるみちゃんから、クレープを渡された。それを、持っていきながら

「良くないって?」と、もう一度、聞いてみた。

「いえ 忘れてください。源氏平家なんて 昔の事だから・・ いや そのー 今は、仲良くなれるかなって いや そのー なんだろうな」

 店頭では、くるみちゃんが クックック と笑いをこらえていた。もう、三口ぐらいで食べてしまって

「すみません もう一つ お願いしても良いですか」と、その途端、くるみちゃんは、こらえていたのを我慢できないで、声を出して笑ってしまって

「いいですよ いつもの コース ですよね」と、作り始めていた。

「あのー すみません よければ 店員さんの 下の名前 教えてもらっても・・いいですか」

「あっ はぁー 香波 です 香る 海の波」

「かなみさんかー うん いい 名前だ か・な・み ね」

「あのー ゲンイチさん 運動部なんですか? その すんごい 肩」

「うーん 秋口に首を痛めてね 半年 運動禁止なんだ レスリング だけど もう 就活も始まるし レスリングは終わりだね 情けないよ 今まで 一生懸命やってきたのに肝心な時にな」

「あっ ごめんなさい 私 そのー そんなつもりじゃぁ でも、これからじゃぁないですかー 良い会社に入って頑張れば これからですよー うん ゲンイチさんは 礼儀正しいし 就職先も・・ あっ ごめんなさい 私 余計なことを ごめんなさい なんにも わからないのに・・」

「ああー いいんだよ そーなんだけどな 途中で挫折しただけだから 又 がんばればいいんだけどなー なかなかね」

 そして、二つ目もペロリと。

「ごちそうさま 又 きてもいいですか?」と

「どうぞ 又 お待ちしてます」と、私は元気よく応えたら

「かなみちゃんですね あと、そちらの店員さんは?」

「えー くるみ です」

「じゃあ かなみちゃんとくるみちゃん ふたりの笑顔見ると元気出ます ありがとう 自分は女の子とあんまり話することも無かったからー 余計です」と、言って帰って行った。

「絶対 あの人 カナミを気に入ったんだよ 今度は 付き合ってくれって言うよ 絶対! 良い人みたいだから 良いんじゃあない」

「ダメです 私 そんなの 困ります 本当に」 と、言いながらも、あの素朴な感じに悪い印象はなかったのだ。その瞬間 私 男の人を意識したのは あの人以外に2人目なのだ。 

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