少女は 見えない糸だけをたよりに・・

すんのはじめ

文字の大きさ
9 / 60
第2章

2-5

しおりを挟む
 燿さんが、お店にやってきて、いきなり

「チラシ 入れたからね 明日 クリスマスまでの5日間 とりあえず、期間限定 香波ちゃん 練習しといてね ハムカツ 塩ネギポーク マカロニサラダ フルーツサラダ とりあえず 今回は 4種類 わかった? これチラシ」と、渡された。

 そこには、サクッとホットサンド(運が悪いと10分以上 お待ちいただくこともございます でも、お店の天使達の笑顔で 応対させていただきます)と書かれていた。

「あー そうよ 香波ちゃんも リップクリームぐらいは 塗ってね」と、今度は、リップクリームを・・。

「明日 朝 9時出勤ね のぼりとポスター届くし 仕込みもね」と、一方的に・・

「あぁ それとね 二人 明日 チラシ配り頼んでいるから 私も配るね 来ると思うよ お客様」

 私 何か この人のペースに付いて行くの、辛い やることが、決めたら速いんだもの・・。

 そして、次の日の朝。最初のお客様、薄汚れたカーキ色のコートの男子が一人。10時半頃、ポテトサラダのを注文してくれた。その後、11時半頃から、来出した。普段の日より倍くらいのお客様。だって、サクッとホットサンドの方が売れていて、男子学生も並び始めていたんだもの。

 燿さんも戻ってきて、具材の仕込みをやってくれたり、レヂのほうをやってくれたり、3人でてんやわんやで、バタバタしてて、ようやく2時過ぎに、順調に流れ出した。

「ごめんね 私もこんなになるって 思わなかったから」と、言いながら、4時に、くるみちゃんが来ると、出て行ってしまった。暁美さんが、しょうがないから、今日はもう少し残るわって居てくれたのだ。

 4時半頃から2度目のピークを迎えていた。もう、ホットサンドばっかりで、焼き型が3台しかないのに、お昼より大変だった。でも、並んでいる人も男子女子混じっていたので、合コンみたいで、寒い中、みんな並んで待ってくれていた。

 ようやく落ち着いてきた頃、あの人が3人連れで来た。ゲンイチさん。店内は女の人で埋まっていたんだけど「いいよ 外で待っている」と言ってくれていた。暁美さんは6時前に帰っていて、私とくるみちゃんの二人だけだったんだけど、私が、必死に焼いているのに、のんきにくるみちゃんはゲンイチさん達と笑いながら楽しそうに話をしている。

 私は、くるみちやん ハムカツ揚げてよ って思いながらも、先輩なので言う訳にもいかないので、先に、マカロニサラダのを焼きながら、ハムカツを揚げて・・。そのうち、店内のお客様がみんな引き上げだして、ゲンイチさんが入ってきた。

「忙しそうだね お昼も来てみたんだけど、並んでいたんで・・逆に迷惑かなって思ってしまってね」と・・。何なんだろう、私、もう、この人の顔を見ると安心してしまっていた。先に、マカロニサラダのを出して、ハムカツのを焼いていた。だって、3人とも二つ注文していたんだもの。

  次の日も、昨日より少し少ないけど、お昼前から混んできていた。そして、5時過ぎにあの人がやってきた。丁度、お店の中の席が空いた時だった。

「いらっしゃい 今日も来てくださったんですね ありがとうございます」と、私はお水を持っていったら

「えーと ハムカツのとランチョンミートのと 二つ お願いします」と、遠慮がちに下を向いて注文してきた。

 そして、私がカツを揚げて、焼き始めたら、別の席に居た女の子の二人組が

「写真 撮ってもいいですか インスタにアップしたいの」って言ってきた。私は「はぁー」と、戸惑っていたのか

「君等ー そんなこと、勝手にやったら・・ なぁー」と、ゲンイチさんが、私に同意を得るように・・。

「でも こんなに可愛い男の子が焼いているんだったら インスタ映えするし お客さんも増えるよ きっと」

「だから そんなことになったら・・えっ 男の子????」

「いいんですよ ゲンさん でも、お店の場所は出さないでくださいね」と、私は、その人達にお願いしておいた。「えっ 女の子? どっち? ? ?  男の子 ちがうのぉー」と戸惑った様子で、でも、写真を撮って出て行った。

 焼きあがったものを持っていった時

「ありがとうございます さっきは 気を使っていただいて」

「いや 自分は そのー 香波ちゃんが、他人にさらされるような気がして・・ すみません 余計なことでしたね」

「いいんです 私は でも、店長に叱られるかも」

「そんなことになったら 自分が 説明します」

「あららー ゲンイチさんは カナミちゃんに ぞっこん なのねー」と、くるみちやんがクレープを持って来て

「いや そっ そんなことは・・ くるみさんも・・」

「くるみさんも? なに?」

「はい だから 二人共 いい感じです! 笑った顔がいいです それに、女性とこんな風に話できるのは 自分は初めてなんです」と、又、下を向いていた。私は、この人、本当に真面目そうで・・好感を持ってしまった。

「うふっ ゲンイチさんって 見た目とちがって 可愛い―」と、くるみちゃんがからかっていた。

 知らないよ。私なんかより、くるみちゃんが付き合えば良いじゃない。

 今日は、夕方の客があんまり来なかった。寒いせいなのかも知れない。

「カナミ クリスマス どうすんの?」

「どう って?」

「だからー 誰かと クリスマスすんの?」

「クリスマスするって? お仕事ですよ いつもと一緒」

「違うよ! だから、男の子と特別な場所で食事するとか、ネオンが綺麗な場所にいくとかさー ないの?」

「そんなー 私 知ってる人居ないしー 帰って 何か食べて お風呂行って 寝るだけですよ」

「そんなん あんたー 青春を損してるよ もっと 楽しいことしなきゃー」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

25年目の真実

yuzu
ミステリー
結婚して25年。娘1人、夫婦2人の3人家族で幸せ……の筈だった。 明かされた真実に戸惑いながらも、愛を取り戻す夫婦の話。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...