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第4章
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出発当日、お父さんはポロシャツに麻のジャケットで、私は、そんな服装、初めて見た。私は、ワイドパンツにベストジャケットを着ていた。お姉ちゃんに選んでもらったものだ。
船から島に降りたのは、お昼過ぎだった。船に乗る前に、食堂で、お刺身定食を済ませて、お花を用意していた。昔、過ごした食堂は板で覆われていて、そのまんまの姿だった。でも、入り口辺りには雑草も伸びていて、もう、誰かのものなのか、入ることも出来なかった。そこから、少し、坂道を登って、藤原家のお墓のある場所に・・
「お父さん ごめんなさい あと、少しですから」、私は、お父さんのジャケットを持って、ハンカチでお父さんの額の汗を拭いていた。坂道とはいえ、途中途中が階段状になっている急な登り坂なのだ。
「うん 普段 歩いているんだけど これは、きついな」
「お父さん あそこ」
「そうか 着いたか」
私は、お花を添えて、ペットボトルのお水でお墓をきれいにした。お父さんは、お線香をあげながら、長いこと、お参りしていた。そして、私も・・涙が滲み出ていたのかも知れない。お父さんが、優しく、私の肩をポンポンと・・
「香波 海が見渡せて、きれいな所なんだな ワシは誓ったんだ お父さんとお母さん、おばぁさんにな 何があっても 香波を幸せにするから、任せてくれって」
「お父さん ありがとうございます 私も 報告しました 今 とっても 幸せです だから、安心してって」
「そうか 幸せか 良かった」
「お父さん 私 行きたいとこ あるんだけど 良い?」
「おお 良いぞー 気になるとこあるんか?」
そして、港の反対側 砂浜の広がるところに向かって行った。そうしたら 近づくにつれて「ワァォーン ワン ワァン」という鳴き声・・「バク だ」
私は、荷物も捨てて走り出した。バクは繋がれたままだったんだけど、飛び跳ねて・・わかってくれたんだ。私の姿を見る前から・・忘れていなかったんだ。私だってこと。
私は、バクを抱きしめて、顔中をべろべろされていた。その時
「香波ちゃんけー んまぁー でーれー べっぴんに・・それで、さっきから、バクが騒いでおったんか」巌さんだ
「あっ お久しぶりです お墓参りに」
「そうなんか バクもな 香波ちゃんがおらんようになってから、毎日、あそこの岩場とか浜に行って海ばっかり、暗くなるまで見ていたな 元気なかったんじや こんなに うれしそうにしてるのは、久し振りじゃけー」
「ごめんね バク 私 黙っていってしまって」て、泣き出していたんだけど、バクは、私を慰めるように、擦り寄ってきてくれていた。
「巌さん 私 バクと砂浜で遊んできて良い?」と、バクと砂浜でじゃれあっていた。私、水着でくれば良かった。バクは波打ち際に誘ってくるから・・。だから、ズボンもビシャビシャ。そして、あの場所にも行ってみた。変わらない。あの時、バクが来てくれなければ、今の私は居ないかも知れない。
「バク 又 来るから そん時ね」通じたのか、バクは ウワン ワンとはしゃいでいた。そして、戻ると、お父さんは、巌さんとビールを飲んでいて
「香波 今夜 部屋を用意してくれるから、ここにお世話になるぞー 予約していたホテルはキャンセルした」っと。本当は、船で戻って、シティホテルで予約していたのに・・。
そのあと、お父さんは巌さんと意気投合してしまたのか、飲み続けていた。私は、民宿のおばさんに、着替えを借りたんだけど、もんぺみたいのしか無くて、だけど、何人か泊まっているお客さんに、配膳のお手伝いをしていたのだ。
「香波ちゃん 去年の年末にな 若い男の人が 香波ちゃんを探しているってきたぞ ー 前の夏にウチに泊っていた人じゃぁな 正月が明けてもいたかなー 仕事さがしているって 毎日、バクと遊んじゃった じゃけん 漁師も暇じゃろー ウチも、お客さん 少くのうなってしもたからな 赤穂のほうに行くって言っておった」
巧さんだ。やっぱり、来てくれていたんだ。約束どおり。
そして、夜 バクと一緒に、真っ暗な海を・・波の音だけが聞こえる そして、心なしか、夜光虫の明かりが・・巧さん・・会いたい・・
「香波ちゃん お風呂空いているから 入りなさい」と、おばさんが言ってきてくれた。お風呂上りに、部屋に行くと、お父さんが、もう、お布団の中に・・。
私は、お布団が二つ並んでいたんだけど、くっつけて、そして、お父さんに寄り添って行った。お酒臭い。だけど、お父さんの匂いが・・する。
次の日の朝、早くにお父さんと一緒に眼が覚めた。
「おっおー なんだ 香波 寄り添ってくれていたんか?」
「えへっ 最初 抱き着いていたんだけどね お酒臭くって 背中向けちゃった ごめんなさい」
「そうか すまんかったな 香波は優しいのう 燿は冷たくってな」
「お姉ちゃんだって、優しいですよ 私 お父さんを小さい頃、亡くしているから・・お父さんのぬくもりとか知らないんで、つい」
「いいんだよ 香波 ワシでも良ければ、もっと甘えてくれて」
朝ごはんの後、お父さんを誘って、砂浜にでた。バクも付いて来ていた。
「バク 私のお父さんだよ」って言うと、バクはお父さんの足元でクンクンと身体を摺り寄せていった。
「おーおー 懐いてくれたのかな これは 香波?」
「うん バクの親愛の表現だよ でもね バクはオスなんだよ お父さん」
「そうか それで 香波と仲良しなんだな」
「そーだよ ボーイフレンド 子犬の時から、一緒に遊んでくれたり、淋しいと慰めてくれたり、助けてもらったこともあるの」
お昼ごろの船に乗ると言うので、私ひとりで、もう一度、お墓参りに、お父さんは、待っているからと言って居た。
前に、島を離れる時は、不安で心配かけたけど、今は、本当に幸せなのよ。安心してねとお父さん、お母さん、おばぁちゃんに報告した。
港に戻ると、お父さんは缶ビールを片手に海を眺めていた。
「ちゃんと お別れしてきたか この島の人達は、みんな親切だわ こんな好い島で育ったから香波も純粋なのかもな 忘れたらあかんぞ この島のこと」
「はい お父さん ありがとうね 一緒に来てくれて」
「ワシのほうこそ 香波と来れて嬉しかったよ いい想い出になった」
そして、倉敷まで出た時、せっかくだから、こっちの寿司を食って行こうと言われて、私は、ばら寿司を頼んで、お父さんは、さわらとか穴子とか・・
「香波 彼氏の情報 まだないのか?」
「お父さん 彼氏じゃぁないですよー まだね 今頃はさくらんぼの収穫をしているだろうなって それだけしか・・そして、秋になると北海道」
「そうか まぁな 色々経験するのもいいけど 一度ぐらい 帰ってきたらいいのにな 可愛い娘が待っているのに」
船から島に降りたのは、お昼過ぎだった。船に乗る前に、食堂で、お刺身定食を済ませて、お花を用意していた。昔、過ごした食堂は板で覆われていて、そのまんまの姿だった。でも、入り口辺りには雑草も伸びていて、もう、誰かのものなのか、入ることも出来なかった。そこから、少し、坂道を登って、藤原家のお墓のある場所に・・
「お父さん ごめんなさい あと、少しですから」、私は、お父さんのジャケットを持って、ハンカチでお父さんの額の汗を拭いていた。坂道とはいえ、途中途中が階段状になっている急な登り坂なのだ。
「うん 普段 歩いているんだけど これは、きついな」
「お父さん あそこ」
「そうか 着いたか」
私は、お花を添えて、ペットボトルのお水でお墓をきれいにした。お父さんは、お線香をあげながら、長いこと、お参りしていた。そして、私も・・涙が滲み出ていたのかも知れない。お父さんが、優しく、私の肩をポンポンと・・
「香波 海が見渡せて、きれいな所なんだな ワシは誓ったんだ お父さんとお母さん、おばぁさんにな 何があっても 香波を幸せにするから、任せてくれって」
「お父さん ありがとうございます 私も 報告しました 今 とっても 幸せです だから、安心してって」
「そうか 幸せか 良かった」
「お父さん 私 行きたいとこ あるんだけど 良い?」
「おお 良いぞー 気になるとこあるんか?」
そして、港の反対側 砂浜の広がるところに向かって行った。そうしたら 近づくにつれて「ワァォーン ワン ワァン」という鳴き声・・「バク だ」
私は、荷物も捨てて走り出した。バクは繋がれたままだったんだけど、飛び跳ねて・・わかってくれたんだ。私の姿を見る前から・・忘れていなかったんだ。私だってこと。
私は、バクを抱きしめて、顔中をべろべろされていた。その時
「香波ちゃんけー んまぁー でーれー べっぴんに・・それで、さっきから、バクが騒いでおったんか」巌さんだ
「あっ お久しぶりです お墓参りに」
「そうなんか バクもな 香波ちゃんがおらんようになってから、毎日、あそこの岩場とか浜に行って海ばっかり、暗くなるまで見ていたな 元気なかったんじや こんなに うれしそうにしてるのは、久し振りじゃけー」
「ごめんね バク 私 黙っていってしまって」て、泣き出していたんだけど、バクは、私を慰めるように、擦り寄ってきてくれていた。
「巌さん 私 バクと砂浜で遊んできて良い?」と、バクと砂浜でじゃれあっていた。私、水着でくれば良かった。バクは波打ち際に誘ってくるから・・。だから、ズボンもビシャビシャ。そして、あの場所にも行ってみた。変わらない。あの時、バクが来てくれなければ、今の私は居ないかも知れない。
「バク 又 来るから そん時ね」通じたのか、バクは ウワン ワンとはしゃいでいた。そして、戻ると、お父さんは、巌さんとビールを飲んでいて
「香波 今夜 部屋を用意してくれるから、ここにお世話になるぞー 予約していたホテルはキャンセルした」っと。本当は、船で戻って、シティホテルで予約していたのに・・。
そのあと、お父さんは巌さんと意気投合してしまたのか、飲み続けていた。私は、民宿のおばさんに、着替えを借りたんだけど、もんぺみたいのしか無くて、だけど、何人か泊まっているお客さんに、配膳のお手伝いをしていたのだ。
「香波ちゃん 去年の年末にな 若い男の人が 香波ちゃんを探しているってきたぞ ー 前の夏にウチに泊っていた人じゃぁな 正月が明けてもいたかなー 仕事さがしているって 毎日、バクと遊んじゃった じゃけん 漁師も暇じゃろー ウチも、お客さん 少くのうなってしもたからな 赤穂のほうに行くって言っておった」
巧さんだ。やっぱり、来てくれていたんだ。約束どおり。
そして、夜 バクと一緒に、真っ暗な海を・・波の音だけが聞こえる そして、心なしか、夜光虫の明かりが・・巧さん・・会いたい・・
「香波ちゃん お風呂空いているから 入りなさい」と、おばさんが言ってきてくれた。お風呂上りに、部屋に行くと、お父さんが、もう、お布団の中に・・。
私は、お布団が二つ並んでいたんだけど、くっつけて、そして、お父さんに寄り添って行った。お酒臭い。だけど、お父さんの匂いが・・する。
次の日の朝、早くにお父さんと一緒に眼が覚めた。
「おっおー なんだ 香波 寄り添ってくれていたんか?」
「えへっ 最初 抱き着いていたんだけどね お酒臭くって 背中向けちゃった ごめんなさい」
「そうか すまんかったな 香波は優しいのう 燿は冷たくってな」
「お姉ちゃんだって、優しいですよ 私 お父さんを小さい頃、亡くしているから・・お父さんのぬくもりとか知らないんで、つい」
「いいんだよ 香波 ワシでも良ければ、もっと甘えてくれて」
朝ごはんの後、お父さんを誘って、砂浜にでた。バクも付いて来ていた。
「バク 私のお父さんだよ」って言うと、バクはお父さんの足元でクンクンと身体を摺り寄せていった。
「おーおー 懐いてくれたのかな これは 香波?」
「うん バクの親愛の表現だよ でもね バクはオスなんだよ お父さん」
「そうか それで 香波と仲良しなんだな」
「そーだよ ボーイフレンド 子犬の時から、一緒に遊んでくれたり、淋しいと慰めてくれたり、助けてもらったこともあるの」
お昼ごろの船に乗ると言うので、私ひとりで、もう一度、お墓参りに、お父さんは、待っているからと言って居た。
前に、島を離れる時は、不安で心配かけたけど、今は、本当に幸せなのよ。安心してねとお父さん、お母さん、おばぁちゃんに報告した。
港に戻ると、お父さんは缶ビールを片手に海を眺めていた。
「ちゃんと お別れしてきたか この島の人達は、みんな親切だわ こんな好い島で育ったから香波も純粋なのかもな 忘れたらあかんぞ この島のこと」
「はい お父さん ありがとうね 一緒に来てくれて」
「ワシのほうこそ 香波と来れて嬉しかったよ いい想い出になった」
そして、倉敷まで出た時、せっかくだから、こっちの寿司を食って行こうと言われて、私は、ばら寿司を頼んで、お父さんは、さわらとか穴子とか・・
「香波 彼氏の情報 まだないのか?」
「お父さん 彼氏じゃぁないですよー まだね 今頃はさくらんぼの収穫をしているだろうなって それだけしか・・そして、秋になると北海道」
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