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第5章
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9月になって、学生さんも増えてきた頃、有沢さんがひょっこり現れて
「香波ちやん すまん 巧がな 一度 戻ってきたらしいんや 休学の延長の手続きに来たんやって」
「はい? それで?」
「うん やっぱり 北海道にいくって言っていたらしい」
「有沢さんは 会ってないの?」
「うん 俺も 実家に帰っていてな クラスの奴がたまたま会ったらしい」
「なんなん その情報 あんたなぁー カナミをからかいに来てんのんかー」と、横で聞いていたくるみちやんが
「そんなことないよ 香波ちゃんが ちょっとでも消息知りたいかなって だからぁー 可愛い顔して そんな 鬼みたいになるなよ」
「うー それは よく 言われる まぁ 許すか」
「くるみ 甘いんちゃう? 有沢さん 何か、探し出す手 ないのー? 親友なんでしょ」
「あのさー なんで 俺 そんなに ふたりから責められなきゃなんないん?」
「そーいうわけじゃぁないんだけどね 有沢さんって 言いやすくってー ごめんなさいね 私 お願いあるんだけど」
「香波ちゃんの願いなら なんだい?」
「えぇ 私をね 清水さんの参道 連れてて欲しいんだ」
「なに そんなことなら いつでもー」
「うん 私ね 日曜日のお昼からしか 時間ないんだ」
「わかった じゃぁ 次の日曜でいいんかい」
「ええ ありがとうね お昼ご飯ぐらいだったら 出せるかも」
私は、教室を終えて、円山公園の駐輪場に預けて、待ち合わせ場所に向かった。大きな桜の樹のあるところ。今は、緑の葉で被われている。家族連れも多いけど、カップルも多い。女の子のグループも思ったより多いので私は、驚いていた。なんだろう、大学生なんかなー。
すぐに、有沢さんは、私を見つけてくれた。
「どうしょう 直ぐに 何か 食べる?」
「ううん 今 混んでるし、私は もっと後でもいいの 有沢さん お腹 すいているの?」
「いいやー じゃぁ 歩こうか 清水まで」と、歩き始めたんだけど
「ねぇ 有沢さん 手 繋いだほうがいい? カップルって みんな 腕組んだりとかさー」
「あぁ 俺は どっちでもー まぁ 香波ちゃんが 嫌でなければ」
私は、やっぱり、手を繋いでいった。ごめんね、巧さん。でも、その方が歩きやすかったから・・。そのまま、高台寺から産寧坂へ。
「何で ここ 来たかったの 香波ちやん」
「うん まだ、わかんないんだけど お姉ちゃん あっ 店長がね 次のお店出すんだったら この辺りかなって 私 この雰囲気 よく わからなかったから」
「そーなんだ 2号店 ねぇー まぁ 今の店も順調そうだしな」
「ちがうよ 今の場所じゃぁ 学生さんがお休みになると お客さんが減ってしまうじゃぁない だからだと思う そんなに余裕ないんだよ 今のままじゃぁー」
「なるほどねー」
その後、五条坂から宮川町にある和食料理屋さんに連れて行ってくれた。
「お昼のランチは安いんだよ。我々でも、入れるからね」と、言って、有沢さんが、結局、払ってくれていた。
「有沢さん 今日はありがとうね 私 友達居ないから 助かったわ」
「おお こんなことなら いつでも 言ってくれて大丈夫だよ 香波ちゃんみたいな 可愛い子と手繋いで歩けるなんて 幸せだよ 巧の代わりな」
― ― ― * * * ― ― ―
10月の初め、私が家に帰ると、お母さんが
「香波ちゃん さっき 巌さんって方から 電話があってね バクが亡くなったんだって 私 何のことだか 犬のことなの? 帰ってきたら、折り返し電話しますって 電話してみて」
私は、一瞬 まさか バクじゃぁないよね 元気だったじぁない と、思いながら、電話してみた。
「おぉ 香波ちゃん バクがな さっき 海の見える所に埋めて来ょった。今朝から 姿が見えないんでどうしたのかなって思ってたんじゃが 繋いでいた紐を食いちぎっちょった 日暮れになっても戻ってこんかったでー 探しに行きよったら 岩場が見渡せる石の上でな・・顔を石に乗せたままの姿で海辺を見たままな 香波ちゃんを見守っているようだったよ」
「巌さん あんなに元気だったじゃぁない どうしてー 私 夏に海で無理させちゃたんだ」
「あいつも もう 13才じゃ もう、去年から元気無かったけん それでもな夏は 香波ちゃんと 想い出をつくって喜んどったじゃろ・・一時、元気になったかなって思っちょたんだがー 頑張りよった 最後は、幸せそうな寝顔だったよ」
私は、電話を切った後もそこから動けなかった。私があんなにはしゃいでしまったから・・寿命縮めてしまったんだろうか・・バクまで、私から・・離れて遠くに行ってしまうの―。
私は、部屋にこもって、ずーと泣いていた。お姉ちゃんが
「お母様から聞いたわよ どう 声 掛けたら良いのかわからないけど 納得 行くまで泣きなさい」と、慰めに来てくれた。
そして、どれくらい時間が過ぎたんだろうか、下に降りていくと、お父さんは、まだ、起きていて
「お父さん すみません 私 このまま 寝ます」と、言ったら
「うむー 香波 悲しむ気持ち、わかるが ワシは思うんだが バクはなー 香波を見守る為に 側に来たかったんじゃぁないのかな いつも 側に居たかったんじゃ だから、そんなに落ち込んでいたら そこに居るバクも悲しむぞ 元気な香波で居て欲しいと思っているはずだから」
「お父さん・・ありがとう そーだよね おやすみなさい」
そう言ったものの、部屋に帰っても、涙が止まらなかった。ずーと、眠れなかったけど、朝、顔を洗って出て行くと、お姉ちゃんが
「まぁ 香波 いいから 今日は お休みしなさい そんな顔でお店に出る訳には・・」
「お姉ちゃん 後で 冷やすから・・ 私 バクに元気なとこ見せなきゃ 安心させられないやん」
「そう じゃぁ 遅れてもいいからね 香波 強くなったね」
「うん お姉ちゃんの妹なんだから」
お姉ちゃんは、私を抱きしめて、額にチュッとしてくれた。
「香波ちやん すまん 巧がな 一度 戻ってきたらしいんや 休学の延長の手続きに来たんやって」
「はい? それで?」
「うん やっぱり 北海道にいくって言っていたらしい」
「有沢さんは 会ってないの?」
「うん 俺も 実家に帰っていてな クラスの奴がたまたま会ったらしい」
「なんなん その情報 あんたなぁー カナミをからかいに来てんのんかー」と、横で聞いていたくるみちやんが
「そんなことないよ 香波ちゃんが ちょっとでも消息知りたいかなって だからぁー 可愛い顔して そんな 鬼みたいになるなよ」
「うー それは よく 言われる まぁ 許すか」
「くるみ 甘いんちゃう? 有沢さん 何か、探し出す手 ないのー? 親友なんでしょ」
「あのさー なんで 俺 そんなに ふたりから責められなきゃなんないん?」
「そーいうわけじゃぁないんだけどね 有沢さんって 言いやすくってー ごめんなさいね 私 お願いあるんだけど」
「香波ちゃんの願いなら なんだい?」
「えぇ 私をね 清水さんの参道 連れてて欲しいんだ」
「なに そんなことなら いつでもー」
「うん 私ね 日曜日のお昼からしか 時間ないんだ」
「わかった じゃぁ 次の日曜でいいんかい」
「ええ ありがとうね お昼ご飯ぐらいだったら 出せるかも」
私は、教室を終えて、円山公園の駐輪場に預けて、待ち合わせ場所に向かった。大きな桜の樹のあるところ。今は、緑の葉で被われている。家族連れも多いけど、カップルも多い。女の子のグループも思ったより多いので私は、驚いていた。なんだろう、大学生なんかなー。
すぐに、有沢さんは、私を見つけてくれた。
「どうしょう 直ぐに 何か 食べる?」
「ううん 今 混んでるし、私は もっと後でもいいの 有沢さん お腹 すいているの?」
「いいやー じゃぁ 歩こうか 清水まで」と、歩き始めたんだけど
「ねぇ 有沢さん 手 繋いだほうがいい? カップルって みんな 腕組んだりとかさー」
「あぁ 俺は どっちでもー まぁ 香波ちゃんが 嫌でなければ」
私は、やっぱり、手を繋いでいった。ごめんね、巧さん。でも、その方が歩きやすかったから・・。そのまま、高台寺から産寧坂へ。
「何で ここ 来たかったの 香波ちやん」
「うん まだ、わかんないんだけど お姉ちゃん あっ 店長がね 次のお店出すんだったら この辺りかなって 私 この雰囲気 よく わからなかったから」
「そーなんだ 2号店 ねぇー まぁ 今の店も順調そうだしな」
「ちがうよ 今の場所じゃぁ 学生さんがお休みになると お客さんが減ってしまうじゃぁない だからだと思う そんなに余裕ないんだよ 今のままじゃぁー」
「なるほどねー」
その後、五条坂から宮川町にある和食料理屋さんに連れて行ってくれた。
「お昼のランチは安いんだよ。我々でも、入れるからね」と、言って、有沢さんが、結局、払ってくれていた。
「有沢さん 今日はありがとうね 私 友達居ないから 助かったわ」
「おお こんなことなら いつでも 言ってくれて大丈夫だよ 香波ちゃんみたいな 可愛い子と手繋いで歩けるなんて 幸せだよ 巧の代わりな」
― ― ― * * * ― ― ―
10月の初め、私が家に帰ると、お母さんが
「香波ちゃん さっき 巌さんって方から 電話があってね バクが亡くなったんだって 私 何のことだか 犬のことなの? 帰ってきたら、折り返し電話しますって 電話してみて」
私は、一瞬 まさか バクじゃぁないよね 元気だったじぁない と、思いながら、電話してみた。
「おぉ 香波ちゃん バクがな さっき 海の見える所に埋めて来ょった。今朝から 姿が見えないんでどうしたのかなって思ってたんじゃが 繋いでいた紐を食いちぎっちょった 日暮れになっても戻ってこんかったでー 探しに行きよったら 岩場が見渡せる石の上でな・・顔を石に乗せたままの姿で海辺を見たままな 香波ちゃんを見守っているようだったよ」
「巌さん あんなに元気だったじゃぁない どうしてー 私 夏に海で無理させちゃたんだ」
「あいつも もう 13才じゃ もう、去年から元気無かったけん それでもな夏は 香波ちゃんと 想い出をつくって喜んどったじゃろ・・一時、元気になったかなって思っちょたんだがー 頑張りよった 最後は、幸せそうな寝顔だったよ」
私は、電話を切った後もそこから動けなかった。私があんなにはしゃいでしまったから・・寿命縮めてしまったんだろうか・・バクまで、私から・・離れて遠くに行ってしまうの―。
私は、部屋にこもって、ずーと泣いていた。お姉ちゃんが
「お母様から聞いたわよ どう 声 掛けたら良いのかわからないけど 納得 行くまで泣きなさい」と、慰めに来てくれた。
そして、どれくらい時間が過ぎたんだろうか、下に降りていくと、お父さんは、まだ、起きていて
「お父さん すみません 私 このまま 寝ます」と、言ったら
「うむー 香波 悲しむ気持ち、わかるが ワシは思うんだが バクはなー 香波を見守る為に 側に来たかったんじゃぁないのかな いつも 側に居たかったんじゃ だから、そんなに落ち込んでいたら そこに居るバクも悲しむぞ 元気な香波で居て欲しいと思っているはずだから」
「お父さん・・ありがとう そーだよね おやすみなさい」
そう言ったものの、部屋に帰っても、涙が止まらなかった。ずーと、眠れなかったけど、朝、顔を洗って出て行くと、お姉ちゃんが
「まぁ 香波 いいから 今日は お休みしなさい そんな顔でお店に出る訳には・・」
「お姉ちゃん 後で 冷やすから・・ 私 バクに元気なとこ見せなきゃ 安心させられないやん」
「そう じゃぁ 遅れてもいいからね 香波 強くなったね」
「うん お姉ちゃんの妹なんだから」
お姉ちゃんは、私を抱きしめて、額にチュッとしてくれた。
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