少女は 見えない糸だけをたよりに・・

すんのはじめ

文字の大きさ
30 / 60
第7章

7-1

しおりを挟む
「どうするかなー 大人っぽいのもなー あんまり、子供ぽいのもなー どんなのが気にいってもらえるかなー」と、お姉ちゃんは1週間前から悩んでくれていた。

 私が巧さんと会う時の服。最初の印象って、大切なのよと・・言ってくれていた。買い物に連れて行ってくれて、スカイブルーのハイウェストで背中の部分が編み上げになっている少し短めのフレァーなワンピースにホワイトのエナメルのベルトの厚底サンダル。

「少し、子供ぽいけど・・やっぱり まだ 17才なんだものね それなりが一番よ ぶつかっていくのよ 香波」と、言ってくれていた。

 有沢さんから言われたように、大学生協の前で待っていた。お姉ちゃんからは、お店を出る時

「いい 香波 なんにも、考えないで あなたの思いだけをぶつけるのよ」と、念押しされていた。

 なんか学生には見えないのか、通る人に、割とチラチラ見られながら・・きっと 場にそぐわないんだろう 自分でも大学生には見えないわって感じていた。

 来た! 巧さん 有沢さんを探しているのか 周りを見回すように、汚いパーカーとジーンズにボサボサ頭。私をチラッと見て、興味なさげに、又、キョロキョロと・・。わかんないのかなー。どうしょうかなー・・・

 私は、視界に入るように回り込んで「バク」と、呟いた。しばらく、私を見ていて

「もしかして・・・か な み ちゃん? だよね 前は男の子みたいだったし いや こんなに可愛い女の子なのか」と、私は、その時、精一杯の笑顔で・・

 すると、抱きしめられて「はじめを探していて、女の子が居るのは見ていたんだけどー 気づかなかった。でも かなみちゃんだよね なんでここにいるの? まぼろしじゃあないよね 逢いたかったよー」と、そして、だんだんと強く。

「巧さん 苦しい」と、思わず

「あっ ごめん つい 懐かしくてー」と、ようやく放してくれた。

「どうして ここに居るんだい?」

「だって 私 巧さんに逢いたくて 待っていたの こっちで働きながらー ずーと 逢いたかったの 有沢さんが、今日ここで待ってろって」

「そう はじめ と ここで待ち合わせしてたんだけど・・あいつ!」

 その後、私達、木陰のベンチに座って

「これね 私が働いているとこのワッフルサンド、焼き豚のとポテトサラダの 私が焼いたの 食べて」

「あっ そう」と、食べてくれたら「うん 旨い ハニーエンジェルかぁー 知らないなー」

「そうなの クレープもやってるんだけど」

「あっ あそこかー クレープなんて 女の子ばっかりだから 寄ったこともなかったんだ いつも、自転車で素通り」

「私ね もう 1年半になるの おばぁちゃんが突然亡くなってね 脳溢血だった 私 身寄りもいないから・・ 心細くって 巧さんを 頼って京都に来たの あそこのお店で働いていたら逢えるんじゃあないかと ねぇ 迷惑かなぁー」

「そんなことないよ 僕も島に行ったんだけど、もう、逢えなかった 香波ちやん 高校は?」と、私の手を包むように繋いできてくれた。

「うん 辞めたの 島を出て、あそこのお店に面接のつもりで行った時、店長さんが優しくしてくれて、今、その人のお家でお世話になっているの」

「そうだったんだ 去年、行き違いだったんだ もう、京都に来ていたのかー 苦労したんだなぁー 知らなくてー 心細かったろう? 中学出て、間も無かったんだろう? 香波 僕は、まだ、2年間学生のままなんだけど ずーと側に居てくれないか 勿論 僕も もう 離れない」

「ええ」と、下を向いてうなづくことしかできなかった。嬉しくて、それに、急に恥ずかしくなってきて「だって だってさー ずーっと 待ってたんだよー」涙も出てきていたから・・

「ねぇ 私 嫌われてもいいから、追いかけていきたいの 本当に 邪魔じゃぁない?」

「もちろんだよ 香波みたいな心の優しい子が居てくれたら 安らぐ と言っても 僕は、まだ、何にもしてあげられないと思うけど、君を守ることが出来るように頑張るよ」

「うん 私ね 今のお家の人にも、とても、よくしてもらってるの お店の人達も親切だし それにね、去年の秋 バクが死んじゃったんだけど、私の側で見守ってくれているから 頑張れるよ これからは、巧さんにも会えるしね うれしいの!」

「そうなんかー 香波に懐いていたのになぁー」

 そして、その日は、別れを惜しみながら、別れた。私も、お店を抜けさせてもらったから、戻らなきゃって思っていたし。巧さんも夕方からバイトだと言って居た。でも、私は、これからの生活がとっても光っているような気がしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

25年目の真実

yuzu
ミステリー
結婚して25年。娘1人、夫婦2人の3人家族で幸せ……の筈だった。 明かされた真実に戸惑いながらも、愛を取り戻す夫婦の話。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...