1 / 3
前編
しおりを挟む
はるか昔、とある王国のある山に、白き龍が住んでいた。
信仰の篤い民が多いその王国では、龍は皆、善き神の使いとされていた。もちろん、白き龍も善き神の使いとして山のふもとの村から崇められていた。
ある日、ふもとの村に、一人の男が訪れた。
黒いローブをまとったその旅人は、村人を集めてこう言った。
「お前たちは、皆だまされている。善き神など本当はいないのだ。いるのは、欲深き龍のみよ。」
「な…………!!なんということをおっしゃるのですか。白き龍のお方は、………お方は………。」
自分たちが崇める白き龍を馬鹿にされて、怒り心頭の村人達だったが、こうも思った。本当に白き龍は、善き神の使いなのだろうか?我ら村人は長いこと、毎年、白き龍に供物をささげてきた。こんなにも尽くしてきたんだから、もし本当に善き神の使いなら、少しくらい恩恵があってもいいんじゃないのだろうかと。
男は、そんな村人達の顔を見てから、再び口を開いた。
「どうやら、心当たりがあるようだね。さて、これから君たちはどうするのかね?」
「どうする?とはどういうことでしょうか?」
村人の一人が声を上げた。
「いやなに、龍の体からとれる素材は、高く売れる。白き龍を殺して、その素材を奪ってしまってはどうかと思ってね。「長年尽くしてきたんだ。そろそろ恩恵があってもいいころだ。」そう思ったのだろう?ならば、自分たちで恩恵を作ればいい。素材を売って得たお金という名の恩恵を。」
「し、しかし…。」「さすがにそれは…。」
村人たちもさすがにすぐには賛同しない。
中にはこんな意見も出てきた。
「この王国では、龍は善き神の使い。殺したことがバレれば、この村は王国による皆殺しに合うでしょう。そんな状況では、素材は決して王国では売れません。それはどうするので?」
「無論、大丈夫だ。この王国内で売らなければ、白龍を殺したのが君たちだとわかることはない。この王国の隣、山を越えた向こうに帝国があるだろう?そっちなら、龍を殺して得た素材を売っても全然問題にならないぞ。そもそも、龍を善き神の使いだなんて言っているのはこの王国だけだしな。」
「…………そうだったのですか。」
しばらくの沈黙ののち、一人の若者が声を上げた。
「なあ、村長、俺はあの白き龍を殺したい。そこの黒い奴が言ってるみたいにすれば、問題になんね~んだろ。だったらあんな龍殺しちまおうぜ。なあ、皆!」
「「「おうよ。」」」
若者の声掛けに、皆が答えた。これを聞いた村長も、白き龍を殺すことを決意した。
「黒い衣をまとった旅人よ、我らを諭してくれて、ありがとな。」
黒い服を着た旅人は、そのまま去っていった。口元に邪悪な笑みを浮かべながら。
信仰の篤い民が多いその王国では、龍は皆、善き神の使いとされていた。もちろん、白き龍も善き神の使いとして山のふもとの村から崇められていた。
ある日、ふもとの村に、一人の男が訪れた。
黒いローブをまとったその旅人は、村人を集めてこう言った。
「お前たちは、皆だまされている。善き神など本当はいないのだ。いるのは、欲深き龍のみよ。」
「な…………!!なんということをおっしゃるのですか。白き龍のお方は、………お方は………。」
自分たちが崇める白き龍を馬鹿にされて、怒り心頭の村人達だったが、こうも思った。本当に白き龍は、善き神の使いなのだろうか?我ら村人は長いこと、毎年、白き龍に供物をささげてきた。こんなにも尽くしてきたんだから、もし本当に善き神の使いなら、少しくらい恩恵があってもいいんじゃないのだろうかと。
男は、そんな村人達の顔を見てから、再び口を開いた。
「どうやら、心当たりがあるようだね。さて、これから君たちはどうするのかね?」
「どうする?とはどういうことでしょうか?」
村人の一人が声を上げた。
「いやなに、龍の体からとれる素材は、高く売れる。白き龍を殺して、その素材を奪ってしまってはどうかと思ってね。「長年尽くしてきたんだ。そろそろ恩恵があってもいいころだ。」そう思ったのだろう?ならば、自分たちで恩恵を作ればいい。素材を売って得たお金という名の恩恵を。」
「し、しかし…。」「さすがにそれは…。」
村人たちもさすがにすぐには賛同しない。
中にはこんな意見も出てきた。
「この王国では、龍は善き神の使い。殺したことがバレれば、この村は王国による皆殺しに合うでしょう。そんな状況では、素材は決して王国では売れません。それはどうするので?」
「無論、大丈夫だ。この王国内で売らなければ、白龍を殺したのが君たちだとわかることはない。この王国の隣、山を越えた向こうに帝国があるだろう?そっちなら、龍を殺して得た素材を売っても全然問題にならないぞ。そもそも、龍を善き神の使いだなんて言っているのはこの王国だけだしな。」
「…………そうだったのですか。」
しばらくの沈黙ののち、一人の若者が声を上げた。
「なあ、村長、俺はあの白き龍を殺したい。そこの黒い奴が言ってるみたいにすれば、問題になんね~んだろ。だったらあんな龍殺しちまおうぜ。なあ、皆!」
「「「おうよ。」」」
若者の声掛けに、皆が答えた。これを聞いた村長も、白き龍を殺すことを決意した。
「黒い衣をまとった旅人よ、我らを諭してくれて、ありがとな。」
黒い服を着た旅人は、そのまま去っていった。口元に邪悪な笑みを浮かべながら。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる