魔王様はレベル1の勇者に恋をする! 〜ヤンデレ系こじらせ魔王は愛する勇者のレベルを上げさせない〜

愛善楽笑

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1話 魔王と勇者

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 私が魔王になってどれくらいが経ったのか。先代の魔王がこの世を去ってからだいぶ時は過ぎていた。

 ──それは私が魔王就任したばかりの、木漏れ日の温もりが優しい、ある春の出来事だった。

「ユ、ユーナ……! すすす好きだ! 愛しているッ」

「うん、ありがと。ユーナもヨーケスのこと、本物のお兄ちゃんみたいに好きやよ?」

「きょ、兄妹!? ち、違うぞユーナ! ライクではなくラブの意味で私は! ユーナ、私とけけ、結婚を前提に付き合ってほしい!」

「ん? 結婚? ヨーケスは冗談が相変わらず上手やね! というか、ヨーケスはなんでか知らんけど 魔王やりよるんやろ? ユーナも勇者に選ばれよったし、敵同士になってしまったね」

「(な、流された……!)わ、私はユーナの敵なんかじゃない! 私が魔王で君が勇者だとしても別に敵同士なんかじゃないよ!」

「うーん、でも魔王と勇者は戦う運命って昔から決まっとるらしいし」

 ……冒険者ギルドに併設されたバーのひと席で、私は神託の勇者ユーナ・ステラレコードに盛大な告白をしたものの、私はあっさりとフられてしまう。

 サプライズでプレゼントするはずだった、シャンパンの中に仕込ませた婚約指輪。

 それを恥ずかしさのあまりに、ゴクンとうっかりと飲み込んでしまったけど、あきらめることなく私の告白タイムは続いていく。

 ……そんな私と彼女は、不思議な縁があった。

 魔族と人族の激しい戦いが起きた場所。燃え盛る炎の中で、私と彼女は出会った。

 父も母も、仲間も互いに失った私と彼女。

 泣き腫らした目を擦り、見つめ合ったあの時にはもう、私は君に恋をしていたのかもしれない。
 戦災孤児となった私とユーナが手を取りあって生き延びた、あの幼少期が懐かしい。

 互いに敵同士の種族だったのに、私たちが生き抜くためには助け合うしかなかったのだ。

 あの頃のユーナは泣き虫の甘えたで、夜になると寂しさからか、私に毎晩ぎゅーっと抱っこをさせて眠りについていた。

 ほんとに可愛くて、キュン死、萌え死にを何度も味わった。

 何度、回復魔法を唱えたかわからない。

 そんなユーナは今、優しさの中に凛々しさを秘めたような、美しい女性に成長していた。

 それでも、ユーナは私と話すとよく笑ってくれるので、私はそれが何よりも嬉しかった。

 今の私が……魔王だとしても。

 そういえば、二人で手を繋いで山の中を歩いていたら魔王軍の兵士に見つかって、全力でユーナを逃したのを思い出す。

 あの時の魔王軍は、人族に対して容赦はなかった──。


 ……──時は遡り、10年前──


「そこをどけ小僧! お前がともにいる娘は我ら魔族の天敵である人間だ! 庇い立てすると貴様も容赦せんぞ!」

「そ、そんな! ユーナが一体、何をしたっていうんだ!」

 唐突に現れた魔王軍の騎士たちの言葉に、ボクは声を荒げていた。

 ここは、焼け野原になったボクとユーナの出会った街から離れた山の中。

「何をだと? その答えがわからぬのか小僧。我ら魔族と人間は相容れぬ存在であり、そやつは我らの敵だ。生かしてはおけぬ!」

 漆黒の鎧に身を包み、凄まじい威圧感を放つ黒騎士たちは容赦なくボクのユーナを『生かしてはおけない』と言う。

 フルフェイスの兜で覆われていて、妖しく赤く光る瞳の色。

 ボクが絵本の中で大好きだった、誇り高き魔王軍の黒騎士と同じ姿をしているのに、目の前のこいつらは子どもであるボクらに剣を向けていた。

 この瞬間に、ボクの憧れていた魔王軍の黒騎士の姿は音を立てて崩れ落ちていた。

 子どもに剣を向ける騎士のどこに誇りがあるんだ。

 絵本の中で悪い人間と戦う黒騎士は目の前にはいやしなかった。

 ……いるのは、どこからどう見ても悪い騎士だ。

「お前も魔族の端くれならば、魔族と人間がともにいてはならないと知っているのだろう? さぁ、わかったらその娘をわたせ」

 くぐもった声で話す黒騎士に、ボクは気圧されそうになる。

 ……怖くてたまらない。足がガクガクと震えているのがわかる。

 でも、ボクはユーナを渡すつもりなんてこれっぽっちもなかった。

 なぜならこの時、死んだじーちゃんとの約束を思い出していたから。

 ボクはじーちゃんっ子だったから、いつもじーちゃんにべったりだった。

 そんなじーちゃんも人間たちとの戦いに巻き込まれて、父さんと母さんと一緒に死んじゃったけど……死ぬ間際にボクに言った言葉はこうだ。

『……いいかヨーケス。お前も誇り高き魔族ならば女や子どもに手を出す男になるな。そして、困ってる友だちがいたら全力で助けてやれ。じーちゃんと約束しろ』

 ボクはじーちゃんと指切りして約束したんだ。

 それを思い出したら、このままユーナを渡したらじーちゃんと約束を破ったことになるし、天国のじーちゃんに怒られるって思ったんだ。

 何より、小さな女の子を悪いヤツに渡すだなんて男としてカッコ悪い……子どもながらにボクはそう思った。

 だから……ボクはこれまでにないくらい勇気みたいなのを振り絞って、盛大に啖呵を切る。

 もちろん、命の危険は承知の上だ。

「やかましいなわるもの! なにがあってもユーナはわたさない! ほしけりゃボクを倒して奪いとってみろよこのタコスケ!」

 そして、不安げな顔をしているユーナにボクは告げた。

「ユーナ……! ここはボクが食い止めるからキミは逃げろ。いいかい? 決してふりかえっちゃダメだ。ぜんりょくで走るんだよ?」

「いやや! そんなんいややヨーケス! ユーナをひとりぼっちにせんといてよぅ!」

「だいじょうぶ……ボクは必ずキミを見つけに行く……! だから……」

 ユーナの大きな瞳から大粒の涙が頬をつたっている。

 ボクは彼女の顔を両手で包み込む様に触れて、親指で目元の涙を拭う。

 ピンク色の髪の色、大きくてぱっちりとした瞳で、かわいらしい顔立ちの人間の女の子、ユーナ。

 ボクはその顔を瞳に焼き付けるように見て、ユーナに力強く叫んでいた。

「ここはボクにまかせてさっさといけ! はしりぬけろ! さぁ、早くッッ!」


 ────……


 ……老若男女誰かれ問わずぬっころす、残酷な奴らを私は大がつくほど嫌いだった。

 ま、このときに覚醒した私のチートな魔力のおかげで、迫り来る魔王軍兵士をちぎっては投げて、全滅させてからユーナを探して回ったんだったな。

 彼女をひとりにさせるなんて心の底から嫌だったし、心配で心配で仕方なかったのを記憶している。

 ……だけど、ユーナの姿はどこにも見当たらなかった。

 ──やがて時が経ち、私と彼女が再会したのは、魔王として新たに就任した挨拶をしようと訪れた、人族の王国。

 瞬間移動をした人間たちの王城で、勇者として魔王討伐の神託を受けていたのが……忘れもしない、目の前にいるユーナだった。

 そんなことを思い出していると、ユーナが口を開いた。

「さて、ユーナはレベル上げに忙しいからもう行かないと」

 ユーナが席を立つ。

「レベル上げないと、ヨーケスに勝てないし。っていうか、魔王と勇者が一緒に食事してるのアカンと思うんやけどな」

 レベル上げ。

 人族にはレベルというものがあるらしい。

 自らの強さを数値化したもので、その数値の大きさが大きいほど、難易度の高いダンジョンやクエストに挑戦できるらしい。

 とはいえ、勇者となると話は別のようだ。

 神から特別に加護を授かった彼女は、なんの弊害もなく全てのクエストにトライできるようだ。

 しかし、そんな彼女のレベルは1。駆け出しも駆け出しだ。いきなりそんな高難易度のクエストを踏破できるはずもない。

 それにだ。

 世界には危険がいっぱいある。

 悪い男もアホみたいにたくさんいる。
 変態だって山ほどいるんだ。

 ついでに言うと、ウチの魔王軍の頭の腐ったヤツがいつユーナを傷つけるかもわからない。

 襲い来る危険から彼女を、誰かが守ってやらないといけないんだ。

 それは誰がやるんだ? 私だろ、私しかいない! 

 私が魔王なのに? そんなの関係ない。

 私は彼女を愛しているんだ。

 席を立ったユーナを見上げ、私は彼女に想いを告げる。

「あ、あのさユーナ……レベル上げなんてしなくて良くないか? そんなことしなくても……私は君に負けてるんだけどな」

「んん? 意味わからないよ? ヨーケスはいつユーナに負けよったん? ユーナはヨーケスとまだ戦ったことないよ?」

 ぽかんとした顔も可愛いかった。

 勇者っていうか、私からすると天使だわ。

 マジ天使可愛すぐる。





 ☆★☆★☆★

【大感謝!】

 たくさんの小説がある中この作品を読んで下さいまして、ありがとうございます。
 もし、面白いと思って下さいましたら魔王や勇者の今後を応援してくれると嬉しいです!


 もし良かったらぜひ、ファンタジー小説大賞における皆さんの清き応援の一票をよろしくお願いしますッ。

(*´꒳`*)


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(´;ω; `)

 
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