魔王様はレベル1の勇者に恋をする! 〜ヤンデレ系こじらせ魔王は愛する勇者のレベルを上げさせない〜

愛善楽笑

文字の大きさ
20 / 89

20話 魔王が驚く勇者のスピーチ

しおりを挟む

 ユーナを激励するために、王や大教皇、大神官やら大聖女なんかがぞろぞろと、この冒険者ギルドに来ているらしい。

 ちなみに、王城の中で祝賀会をしなかったのはユーナの考えなんだとか。

『お城でそんなパーティーしたら、みんな畏まっちゃうでしょ? それに冒険者のみんなが来づらいじゃん』とのこと。

 ほんと、ユーナの愛は天井知らずだ。周りにも気を遣える、心から優しい彼女に私は感心してしまう。

『それでは、神託の勇者ユーナ・ステラレコード様、ご挨拶をお願いします』

 すると、司会進行役のギルドスタッフに呼ばれて、ステージ袖から私のユーナが姿を現す。

 緊張した面持ちではあるが、毅然とした態度でユーナは一度、我々の方へと一礼する。

 ツカツカとステージ中央まで歩くと、再び観客側へ深々と頭を下げて。

「みなさん、このたびはユーナの勇者パーティー結成記念に起こしいただき、ほんとうにありがとうございます」

 ユーナの言葉に、拍手が巻き起こる。中には甲高い口笛の音を出す者もいるくらいだ。

 しかし、良かった……ユーナのしゃべり方もしっかりとした口調で話しができている。

 さすが私のユーナだ。賢さで彼女の右に出るのは私くらいなものだろう。

 えらい、えらいぞユーナ。
 私は心の中でユーナをこれでもかと褒め称える。

 ユーナはさらに、渾身のポーカーフェイスをキメながら私たちに向けて言った。

「勇者に選ばれて、迷いも戸惑いもありました。『どうしてユーナが勇者なの?』って後ろ向きになったこともありました。……でも、そんな時思い出したんです。わたしのよく知ってる男の子のことを」

『わ、私のことかな……? (ドキドキ)』

 そんなことを思い、私はユーナを見つめる。そしてユーナは続けた。

「彼はいつも前ばかり向いて真っ直ぐでした。……その男の子を思い浮かべたら、なんか悩むのバカらしくなったんです。だからわたしは、勇者としての運命を受け入れ、がんばると誓いました! そして、今日はみなさんにユーナの仲間を紹介しよー思ってます! ……でもまずはその前に! みんな、今日はユーナのために集まってくれてありがとーございますッ! じゃんじゃん飲んでくださいね! だって、今日は王様の奢りですから! あははっ、かんぱーい!」

「「「カンパーイッ!」」」

 ユーナの音頭で、身分の高い者もそうでない者も、居合わせた者たち全てが笑顔で手に持っていたグラスを掲げる。

 ユーナの笑顔に引き込まれていくのを感じながら……私は思った。

 皆を笑顔にできるなんて、なかなかできることじゃない。

 そして、ついさっきまで、皆の前で話すことに緊張していた彼女はもういない。

 プレッシャーを跳ね除け、いつのまにかゴールデンタイムを掴みとるなんて……まさに勇者。

 そんな素晴らしき勇者である彼女を私は今も、これからもずっと……愛し続けよう、そう改めて思ったのだった。

「それではみなさんに、ユーナの新しい仲間をしょーかいしよーと思いまーす!」

 むむ? 私のことかな?

 いや、愛の告白ではないから、まだ私の名前を言うのは後かもしれない。

 ま、私はユーナ以外に興味ないから仲間のことは別にどーでもいい。一人はキノコと判明してるし、いまさらだ。

「んじゃ、さっそく来てもらおうかな。【大聖女シャンプル・リンスル】【大魔法使いマッシュ・ルムゥ】それから……【剣聖エツィー・ドゥガー】」

 ……あれ?
 ちょっと待て、何かがおかしい。

「エツィー……? どっかで聞いたような……」

 ステージの照明が落とされ、名前を呼ばれた三人のメンバーにスポットが当たる。

 ユーナの脇に現れたのはキノコ、それに一人の美女が。そして……私のよく知る、大自然から抜け出してきたバカゴリラが立っていた。

「……あいつ何をやってるんだ! しかも二つ名が剣聖ってどーゆーことだ!」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...