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第2章:『悟る、孤高の委員長』

悟る、孤高の委員長8

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 堀さんは、ある放課後にクラスの子に話があると時間を設けた。


 「ごめんね皆。私少しお話があるの」


 人望の厚い堀さんの言葉は、誰も文句を言わずに受け入れた。



 「私さ、1人が好きなの。だからもう今までのようにお話しに行くことは少なくなると思う。静かに本を読んでいたいわ。でも、一つだけ覚えてほしいことがあるの。私は皆のことが大好きで、決して嫌とかそういうのじゃない。ただ、静かに過ごさせてほしいの」
 「私のワガママをどうか受け入れて下さい」


 堀さんは皆にペコリと一礼をした。クラスの皆は、突然の告白に無言であった。何が起きているかは分からないけど、そういうことならという感じの雰囲気を醸し出していた。
 その日はそれで解散した。次の日から噂話や、陰口がちょくちょく耳に入ってきた。あんな事を言って、本当は私達を見下しているのよ。とか、なんか自分に酔ってんのかな委員長。とか、つまらない妄言だ。
 堀さんの言葉の真意を理解したいる人間はどのくらいいるのだろうか?嫌いにならない人はどれだけいるのだろうか?人望の厚い委員長は消え、堀さんは今、好きな時間を有意義に、主に読書などをしている。


 「ねえ木下君お話しましょうよ」
 「おう堀さん、調子はどうだい?」
 「ボチボチよ」


 堀さんの爪は綺麗になっており、憑き物が落ちたみたいであった。以前のとは比べ物にならないくらい1人で過ごしている。休み時間、授業の移動など、そんな感じだ。寂しくはないのだろうか?でも、不思議と生き生きとしている。


 「良いのか?1人が好きなら無理に話そうとしなくて良いぞ」
 「まーね木下君。あれは、皆を傷つけないようオブラートに包んだものいいだったけど。本当にそうみたい。1人が楽で楽でたまらないの」
 「寂しくないのか?」
 「寂しくないわ。でもね木下君。どんなに1人が好きであっても、人間は社会的な動物だわ。だから、ときどき人と話したくなるの」
 「そんなものなのか」
 「だから今私は木下君とお話がとてもしたいの」


 よくよく考えてみれば、異性の同級生に私今貴方ととってもお話したいというセリフが臭く感じたのだろうか?全然俺は気にしないけど。堀さんの顔が少し赤くなっているように感じた。


 「あらあら、委員長。木下君は私のものだわ。私に許可を取りなさい」


 神崎はわざとらしく、俺に首に抱きついてくる。俺のことをものだと思っているのだろうか?


 「神崎さん。木下君貸して」
 「仕方ないわね。特別よ委員長」
 「ありがとう」


 「ねぇねぇ木下君。この前読んだ本でとても興味深い話があったの聞いて聞いて」
 「どんな話?」


 堀さんは、時たま、こんな感じで一気に話すようになった。楽しそうで何よりだ。そして、頭の良い人の話って面白いので俺にとっても楽しい時間だ。


 「木下君。何事にも例外があるってことを知っている?」
 「何かによるけど知っているつもり」
 「そう。木下君もまた私にとっての例外みたい」
 「つまり」
 「何も気にせず、楽しくお話できる唯一の人間ってこと」

 「おう、光栄だぜ」



 私が照れている仕草を見て、堀さんはクスクスと笑っていた。
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