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3話:『逃走』
しおりを挟む嫌な予感は確信に変わる。
村の方は益々明るくなる。
一つの悲鳴が聞こえた。それを皮切りに、村のあちこちで悲鳴が上がる。
アン:「間違いない。王国軍の襲撃だ」
ゴブリンの村は、王国軍の襲撃を受けていた。
王国軍はまず始めに、火矢を用いた。
食物庫が燃え始めた。外が明るくなったのに気付き、ゴブリンが家から次々に出てきた。
ゴブリンの多くは、そのことをただの火事だと思っていた。
皆、火消しの準備に取り掛かる。
大国軍は、様子を伺い2射目を放った。また違う建物が燃え始めた。
ゴブリン達は、ようやく事のおかしさに気づき始める。
一人の悲鳴が聞こえた。
後はもうパニックしか残らなかった、、、。
3人は家に戻った。
アン:「スー逃げる準備をするんだ」
スーはそのころ、まだ幸福の余韻に浸っていた。
ドアからは入ってきた3人は、また神妙な面持ちをしていた。スーはまたかと頭を掻いた。
次は何を企んでいるのかな?楽しみだ。
アン:「大国軍が攻めてきた。急ぐんだ」
スー:「もうだまされないよ」
スーは微笑みながらそう言った。
しかし、3人の顔付きは戻らなかった。
そそくさと各自荷物をまとめている。
ドゥー:「嘘じゃない。スー」
トロワ:「速く逃げなきゃ!」
アン:「おまえも速く荷物をまとめるんだ」
スーは何が起きているのか分からなかった。
言われるがまま、荷物をまとめようとするが手がおぼつかない。
早く冗談だと言ってくれよと心の中で願っている。
思考とは裏腹に、身体の方が何かを察したようだった。
手は痙攣を起こしていた。
アン:「もしかしたら、あの噂の軍かもな、、、」
ドゥー:「ああ」
トロワ:「それって、大国軍の勇者のこと?」
アン:「そうだ。なんでも、どえらい強さだって噂だ」
トロワ:「そいつが来たらヤバイね」
ドゥー:「ああ」
大国はここ数年、ゴブリン討伐に力をいれていた。
先代の国王が亡くなり、若い国王になったことが原因だ。
若さは血をたぎらせる。古くからの念願、人間による人類の統一。
若き王は、歴代の王で誰も成し遂げなかったことを達成する所存であった。
その中で一際戦果を挙げているのが、勇者率いる一軍である。
勇者は初めから『勇者』と言われているわけではなかった。
簡単な話だ。戦果を挙げ続けているうちに、誰かがそう呼ぶようになったのだ。
その波紋はいつの間にか国中に広がった。それだけであった。
しかし、
その強さは勇者と呼ぶのに相応しいものであった。
人類史最強なのではないかとさえ囁かれるほど、桁外れの強さであった。
王国軍A:「こっちにも家があるぞー!」
声が近い。
3人のゴブリンとスーは、自分達の家が見つかったことを知った。
トロワ:「速いよ、速すぎるよ!」
アン:「荷物は途中で良い。すぐに出るぞ」
ドゥー:「ああ」
アンはスーを見つめた。
俺らはゴブリンだが、こいつは人間だ。何かしらの理由を付けてここに残せば、3人のゴブリンに捕まった哀れな人間として保護されるのではないかと思った。
しかし、帝国軍は容赦がないという話も聞く。
見知らぬ他人にスーを任せるより、俺達で守る方が生き残る確率は高いのではないか。
考えが交差する。
アン:「スー。マントと包帯を速く」
結局後者を選んだ。
家から出ると大国軍の兵士が2人いた。
3人は目を合わせる。いくぞ。
アンが突っ込み、注意を惹く。
そのうちに、ドゥーは岩、トロワは弓で攻撃した。
3人は別に弱くはなかった。
あっという間に2人の兵士を殺した。
アン;「どんなもんでぇ」
トロワ:「僕達3人にかかればこんなもんだよね」
ドゥー:「ああ」
アン:「さてと、逃げるか」
スーは人間の兵士が殺されるのを見ても、何も思わなかった。
ただ、3人が無事で良かったと感じた。
この時はもう逃げる逃げる覚悟が決まっていた。
スー:「アン、ドゥー、トロワ。早く逃げよう!」
戦闘が終わった3人に近づきそう言った。
その時、村の方面から馬の足音が聞こえてきた。
勇者:「家があると聞こえたから来たものの、もう遅かったか、、、」
馬上の勇者はそう言った。ゆっくり堂々と馬から降りる。
こいつらに負けることは絶対にない。そういう自負がそうさせる。
勇者:「君たち覚悟は良いか」
アンは強者の空気を感じ取った。
おそらくこいつが、噂の勇者だろう。
俺達では絶対にかなわない。
ドゥー、トロワに目配せをする。
アン:「おまえたち分かってるよな」
ドゥー:「ああ」
トロワ:「もちろんさ」
アンとドゥー:「スー絶対に生きるんだ!!」
この言葉の瞬間にトロワはスーを肩に担いで逃げた。
アンは勇者に牽制した。その隙にドゥーは馬を捻り殺した。
スーは担がれながらその光景を見ていた。
アンはすぐに、勇者に切られた。ドゥーの首が飛ぶのが見えた。
スー:「わーーーんトロワ。2人が、2人があ」
トロワは担ぎながら走っている。
トロワ:「いーから逃げるだ。逃げるんだよー!」
声は涙声だった。
勇者の足止には成功した。
乗っていた馬は潰された。数秒間攻撃した。
それで十分だった。2人は暗い森の中に消えていった。
しかし、
敵は勇者だけという訳ではなかった。
トロワは走り続けた。スーは泣いている。担がれたままだ。
スーは微かな物音感じた。目を移すと、弓兵が弓を放つ瞬間だった。
スー:「あっ」
トロワがこけたように感じた。
スーは放り投げられる形になった。
そばによると。トロワの背中に矢が刺さっていた。
スー:「トロワ、トロワ」
トロワ:「スー。よーく聞け。ひたすら西を目指すんだ。西だ。あそこならゴブリンも人間も住んでいない」
スー:「嫌だ、嫌だよ」
トロワ:「僕はもう駄目だ。スー。1人で逃げるんだ」
足音が近づくおとが聞こえる。
トロワ:「いーから行くんだ。スー。生きて」
スーは涙ながら走り出しました。
ひたすら西へ走り出しました。
荷物もいつの間にかどっかいってしまいました。
ただ、2つのダガーは胸に抱えていました。それだけです。
涙ながららひたすら西へ走ります。
ひたすら西へ。
夜が明けるころまで走り続け、体力が肉体の限界を迎えたころ、スーは倒れました。
スー:「くっ、くそぅ」
・
・・・
・・・・・・・
?:「おや、こんなところに誰か倒れているぞ。珍しい」
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