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歯車はまた動き出す
【4】
しおりを挟む正門からではなく南門から王城に入城する
歩いていると数人の城兵が守衛している姿が見受けられた
みな僕らを見ると綺麗に一礼している
………前回ではここから攻め入り兵を連れて
火を放ったのだ
通路から見える中庭も絵画も美術品も
すべて壊して燃えたはずだ
「着きましたよ王子。中には王妃様がいらっしゃるはずです」
頷くと扉を開かれた
部屋の明るさに目が眩んだ
豪奢な部屋の迎賓室は広く綺麗に国の美術品や装飾がなされている
そこの設置されているソファーに母上ともう一人の人物がいた
「あら、来たのねセウス。ログナスもセウスのことありがとう」
「ごきげんよう母上」
「ご機嫌麗しゅうございます王妃様」
「あら素敵な服ね今日にぴったりじゃない。ユダが誂えたのかしらセウス。二人とも同じ色を揃えたのね。とてもお似合いだわ」
?なにをおっしゃっているんだ
改めてログナスと僕の服を見る
僕は鮮やかな青生地で金の刺繍が入った上着と下半身に
ピッタリとしているが窮屈さはないズボンだ
ログナスは普段は光沢のある白い騎士服だが
今日は一応パーティーだからか藍色の上着に銀の刺繍
肩にマントで覆われているズボンは帯刀しているサーベルとしっかりと折り目があり足の長さが際立つ白いズボンだった
これじゃお揃いの服じゃないか
どこのカップルだ
「あらあら素敵ね!まるで恋人のお披露目会みたい!」
「母上!おやめくださいたまたまです!たまたまなんですよ!」
流石にユダでもログナスがどんな服で来るかなんてわからないはずだ
でも見送った時気づいてたはず
あいつめんどくさがったなぁ!?
「王妃様、まだ私などセウス王子に見合う男では残念ながらありません。主役と同じ装いだと分からず着装してしまいましたが、どうかご容赦を」
「いいのよログナス。どこぞの馬の骨なんかより安心して任せられるわ。それに誰も気にしてないわよあなたたちずっと仲良しなんだから」
「お言葉痛み入ります。この身を賭しても必ずやお側でお守りいたします」
「頼むからやめて。勝手に話を進めないで欲しいから、ログナスもいちいち真に受けなくていいからね」
この二人は冗談なのか本気なのかわからないやりとりするから困るよ
昔は気にしなかったけど今の僕には複雑だ
「ねぇ、そろそろいいかい?」
落ち着いた綺麗な声音が母の後ろからした
煌めく金の髪に澄んだ青い眼の人物
純白と金の装飾が美しい王家の王族服を着た兄上だった
「お、お久しぶりですリオス兄上」
「やぁセウス!!今日もなんて可愛らしいんだ」
「グヘッ!」
見た目の麗しさに騙された
確か兄上はログナスほどではないが長身で細身だったのだが力が強い
それで勢いよく抱きしめられた
「あ、兄上!ちょっくるし…」
「あぁなんて可愛いんだ妖精に連れ去られてしまうよいやセウスが妖精なのかい?私の愛しい弟が連れていかれるなんて許せないやはり部屋から出さないようにせねば」
「お、落ち着いて兄上」
そう兄上が一人盛り上がっていると
グイッと体を引っ張られる力とは裏腹に優しく抱きしめられた
「リオス王子。どうかご容赦を。セウス王子が困っておいでです。そしてご安心を私がお守りしますので連れ去られることなど決してありえません」
頭上なにやら視線だけで鍔迫り合いがはじまっている
そうだった普段彼らは大人しくそれぞれの立ち振る舞いで
接しているが
愛が重い兄上から身を挺して庇ってくれるログナスと
よく衝突していた
「そうか確かにヴァーミリオン卿の御子息なら安心できるよ。まぁ物語では誠実そうな騎士が姫の前では本性を表して狼にならないとは限らないだろう?」
「麗しく気高いリオス王子ならきっと愛しいものを何よりも大切にするでしょう。相手が望まないのに閉じ込められた籠の鳥は心から囀ることができましょうか。騎士と姫が結ばれるのは古来からの必定ですね」
ひぇええぇよくわからないけどこわぃ
母上微笑んでないでお助けを!
まだ頭上で二人が共に爽やかで綺麗な笑顔でいるが
あからかに牽制して圧力を掛け合っている
部屋のもう一つの扉からノックする音がした
「失礼いたします。お部屋の準備ができましたのでご案内させていただきたいと思います」
そう声をかけたのはこの城のメイド長だ
「じゃみんなでいきましょうか」
はいと答え母上の後ろをついて行こうとする
その時肩を掴まれた
母上と兄上はメイドと共に先に行ってしまったので
後ろにはログナスがいたはずだ
「どうかしたの?」
「他の方々に会う前にこれを」
いつのまにか携えていたのは流通が少なく
白く香りの良い愛の告白という意味もある
白花スノウの花束を持っていた
「これは改めて怪我の回復のお祝いと謝罪の気持ちを込めた花だ。よかったら受け取って欲しい」
あの日から定期的に普段もやり取りしていた手紙が
より心配と気遣い、そして日々のちょっとした出来事を
手紙で伝えてくれていた
その度に贈り物が来ていた
珍しい本や遠征先の銘菓、小物などを花と共に送ってくれた
だから直接可憐な純白の花束を手渡す彼に僕は驚く
「ログナス、嬉しいけどそんなに気を使うことはないんだよ。あれは自爆的なものだし、これまでだってたくさんくれたじゃないか。それにこれ、繊細であまり流通しない花じゃないか」
「もちろんセウスを想わない日はないが、送りたいから送っただけだ。セウスにも見せたかったし喜んで欲しいと思っただけさ。この花好きだったろ?朝摘みでとってきたんだ。喜んでくれたか?」
僅かに不安そうな顔で問いかけてきた
誰よりも忙しいくせにこんなことして
世の女性方はこの見た目とのギャップにやられてしまうんだろうな
「うん、好きだ。嬉しいよログナス」
「!……それは良かった」
一瞬狼狽したような表情をした
耳が赤い気がする
まさか照れたのか?
ログナスはまたスッとした表情をして
花束から一輪取り出し長さを整えて
僕の胸ポケットに入れた
「よく似合っているよセウス。君に祝福を」
………
「じゃあ我が国の未来の英雄黒騎士に栄光と神の御加護があらんことを」
僕は花束から一輪取り出し同じように長さを整えて
ログナスの胸ポケットに入れた
これでさらにお揃いだ
どうせ周りも仲良し具合に喜ぶだけだ気にしない
ログナスはめずらしく表情を崩し
まるで熱い視線で愛しいものを見るような目で見つめてきた
「さ、さぁ皆が待っている!いくぞ!」
耐えきれなくて背を向ける歩き出す
後ろからはいと聞こえてすぐ後ろをログナスがついてきているのがわかる
以前は当たり前だったこの関係が
ひどく温かくて
胸の痛みを強く感じさせた
▼
本来国賓を招きもてなす部屋が会場になるらしい
流石に此度の会には国外の来賓はおらず
王家の血縁者と普段城に勤務する人物たちが招かれているはずだ
扉の前には衛兵がおり二人のメイドが待機していた
「お待ちしておりましたセウス王子様、並びにログナス様。皆様が中におられますのでご入室をお願いいたします」
メイドは一礼して両扉を一人ずつ開いた
中に入り手を挙げる
「皆さんお忙しい中お集まり頂きとても嬉しく思います。私事ながら多大なご心配をおかけしたことを謝罪します。今日はぜひ、佳き日になりますよう楽しんでください」
事前にユダの台本通りに決めたセリフをいう
実際この会については何もしていないのだがね
「セウス!よく来てくれた我が愛子よ。元気そうで何よりだ」
僕の父ことこの国の王マクルス・クルースベル国王陛下が
両手を広げ向かい入れてくれた
「父上お久しぶりです……。この度はこのような会を開いて頂き嬉しく思っております」
「なに、かわいい我が子のためだ。そんなに堅苦しくするでないセウス。肩の力を抜きなさい」
「は、はい」
「そうよセウス。あんなことがあったのだからセウスはいっぱい楽しまなくてはダメよ。陛下はもう少し我が子のことを気を抜かず考えて欲しいですね」
母上の言葉に冷や汗をかいている国王陛下
昔から男どもは女性陣には弱いのだ
「い、いや私なりに考えてみたのだが。あ、いやすまない。セウス父が悪かった許しておくれ」
「何も悪いことはしておりませんよ父上。僕も嬉しくてはしゃぎすぎました」
その言葉に安心したように微笑む父
後ろに控えていた凛々しく立ち姿が綺麗な人物が声をかけてきた
「お久しぶりですセウス王子、お怪我をしたと聞いた時は大変驚きました。倅が側におりましたのに申し訳ございません。ぜひ今後もこき使ってやってください本人も喜ぶでしょう」
「お久しぶりですヴァーミリオン卿。ログナスがいてくれたおかげで僕は大怪我をせずすみました。忙しい中よく相手をしてくれて申し訳ないぐらいです。貴公もお変わりなく」
「父上、不徳の致すところです。私は精進しセウス王子、国のため尽力していく所存です」
「うむ。励みなさいログナス」
「はいお任せください」
血は繋がってないはずだがなんというか似たもの同士だ
立ち振る舞いというか雰囲気が
奥方は早くに亡くなられ、孤児院で魔力の才能があり
母上のツテで引き取られ養子になったはず
噂では神託があったとかなかったとか…
「セウス王子、怪我からのご帰還大変喜ばしく思うぞくははは!また背が縮まぬよう引き伸ばしてあげますよ」
「いけませんわお兄様!そんなことをしては王子の小さなお体では千切れてしまいます。また怒らせては可愛らしいお顔が膨れてしまいますわよ」
あーいたなバカ兄妹
「はぁ。お元気そうですねフィックトス兄妹」
「おやいつもみたいに僕をバカにするな!と騒がないのか?頭を打ったらしいじゃないかぜひ俺の前でまたやってみせてくれ」
「我が家のお茶会の出し物に良さそうねぜひお願いしたいわ。ログナス様もぜひうちにいらして!新しいドレスをぜひみて欲しいの!」
子供ながらよく口が悪い奴らだ
暇なのかいちいちたて突いてくる
兄のフィンは兄上に敵わないから年下の僕にしか突っつくことができないんだ
妹のマーベルは僕によくついてくるログナスに気があって目の敵にされている迷惑な話だ
「お二方、セウス王子の件は私が側にいながらお止めできなかったのが事の発端です。なので今の言葉はおやめ頂きたい。無礼に受け取れます」
ログナスが庇うようにそう言う
主に僕が明らかに悪いのだが
すぐ調子に乗る二人にはちょうどいいだろう
僕だって伊達に二度目の人生を生きていない
「えぇ、件は私の至らなかったことで原因ですので、国王陛下にわざわざこのような大それた催し物など心苦しく思いますね。ログナスにもずっと側にいて大切に守られてきましたから僕も油断しました」
どうだユダ仕込みの皮肉返し!!
「ふ、ふん!国王陛下はお優しいから末っ子のお前に甘いだけだ!いつもリオスとログナスの後ろにいるくせに臆病者め」
「ログナス様もとてもお優しいから断れないだけよ!私だっていつもお誘いしてもお忙しいっていつもずるいわ!」
「御言葉ですがセウス王子は臆病者などではございません。いつも慎重で奥ゆかしいお人柄でたまに突発的で衝動的に関心の赴くままに動く様は可愛らしく皆を喜ばせます。お誘いは嬉しいですが私にも公務がありますのでご容赦を」
冷たい視線だ。普段冷然としている分圧があり怖い
言葉と態度は丁寧だが言葉を返す余談は許さない気迫がある
仕方ない
「あ、兄上」
「呼んだ?」
「「ひぃいいいぃいい!?」」
「そんな化け物を見たような声を出してどうしたんだいフィックトス兄妹。というか来ていたんだね名簿にあったかな?ちなみになんの話をしていたのか一言一句変えず教えてくれよなぁ」
背後から現れた兄上から妖気が出ている
この二人は病んでる気がある兄上が大の苦手なんだ
「い、いえ。なんでもありませんちょっとした雑談ですでは失礼します」
「わ、私も同じです」
そういって足早にさっていった
「まったく懲りない馬鹿者たちだ馬鹿がうつる」
「兄上助かりましたが言葉が過ぎます。誰が聞いているかわかりませんよ」
「そうだねセウス。なら私の部屋においでよとっておきの首、ネックレスがあるんだ特注品なんだよ」
「お断りします」
「そんなぁ」
「セウス王子。お飲み物は如何なさいますか?良ければこちらのフルーツドリンクをどうぞ」
「おいログナスまだ私とセウスが話しているだろう」
「?ではまた後列にお並びください」
「なんの列だ!兄弟の会話にそんなの必要ではないはずだ」
「お時間ですのでどうかお引き取りを」
「お前本当に私を舐めているなどこが清廉なる騎士だ腹黒が」
「ご冗談を。リオス王子には敵いません」
睨み合いがまた勃発した
そこでちょうど配備されていた楽団が演奏を開始した
あとは話して食べて時間を過ぎるのを待とう
まだ何人か挨拶をしなければいけない
疲れるから嫌なんだがなぁ
でもいい機会だ
ここにいる王族関係者は全員
あの最低最悪である悪夢の日の容疑者だ
今度は必ず守るために暴いて見せるぞ
胸に宿る復讐の炎が強く揺らめいている
0
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