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第二部
閑話⑤ フライパンクッキーを作りまして1
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私と夕凪と十兵衛の骨折三人衆の骨もちゃんとくっついて、三人とも後遺症もなく剣が握れるようになった頃。リハビリの為に、クッキーを作ることにした。
クッキー作りって、意外と握力や指の力が大事。なので、きっといいリハビリになるはずだ。
「というわけで、二人ともよろしくね!がんばりましょう!」
「……あい…………」
「……はい…………」
しばらく沈んで使い物にならなかった私の従者ズにも、前掛けをつけさせアシスタントとしてスタンバイしてもらう。
あの戦のあと、夕凪は骨折状態で飛び込んできて、泣いて私に詫びた。
涙を滝のように流しながら、両サイドで結んだ髪をしゅんとさせている夕凪に、私も抱きついて謝った。
十兵衛の方は、話しかけてもずっと表情が死んでた。
こんな死んだ顔は、幼い頃私の兄達に心無い言葉を言われたあの頃以来だ。
信長や周りの人に、何か酷いことでも言われたんだろうか。「無能従者」とか「役立たず護衛」とか。そんなこと言う人はいないとは思うけど。
私にも「自業自得女」とか「出しゃばり正室」とか言ってくる人もいないし。
むしろみんな、ただただ怪我を心配してくれて私の方が恐縮してしまうくらいだった。
きっと、誰からも責められないせいで、責任感の塊な彼は逆に自責の念を昇華させられずにいるのだろう。
真面目くんはこういうとき大変だ。
なので、そんな元気のない二人にも、元気を取り戻していただきたい。
ストレス発散と、指のリハビリを兼ねて。
「十兵衛はボウルを押さえてて。夕凪は一緒に材料を入れて混ぜてね」
「あい……」
「はい……」
覇気ねええええ!
元気なのは、私だけだった。
ともかく、進めよう。
十兵衛がボウルという名の鍋を持ってくれているところに、小麦粉、砂糖、油を入れていく。そしてお塩をひとつまみ。
バターがなくても、サラダ油でクッキーって出来るのよね。
砂糖はいつもなら贅沢品なので使用を躊躇するところだが、なんと先の戦で頑張った私に、ご褒美として砂糖が付与されたのだ!
本当は新しい着物とか土地とかお城とか色々言われたんだけど、そんなものより砂糖がいい。できたら醤油を作ってくれ!
と言ったら、清州城に私のための味噌蔵が出来た。
職人さん達に、いろんな大豆発酵食品をこれから開発してもらう予定だ。
醤油っぽいものはすでにあったようなので、これを私の好きなあの醤油に改良してもらう。
今から楽しみだ。
「姫様、このくらいでしょうか?」
「そうそう。指、痛くない?無理はしないでね」
「平気です。姫様……」
「まあ!夕凪はもうほとんど全快ね!さすが、治りがはやい!有能!!」
「あい!」
少し機嫌が治ったようだ。
十兵衛と交代して、彼にも生地をこねてもらう。十兵衛も、指はちゃんと動かせるくらい回復しているようだ。
粉と油が固まってひとまとまりになったら、濡れふきんを被せていったん冷所で寝かせる。
だいたい15~30分くらいかな。
その間に洗い物をして、火の準備。これが一番大事。
強火だと確実に焦げる。
クッキーは通常、オーブンでじっくり焼くのが普通だけど、ここにはもちろんオーブンなんてない。
私達はフライパン(という名の浅型の鍋)を二人で掲げ、ゴウゴウの炎から引き離して火加減を調節するしかないのだ。
フライパン(鍋)を温めつつ、まな板に粉を振るって寝かせていた生地を取り出す。
棒状になった生地を包丁で輪切りにしていくと、平たく丸いかたまりがころんと転がった。形はだいぶクッキーだ。
「あとはこれを、焼きます。二人とも頑張ってね!弱火キープよ?」
「あい!」
「はい……」
まだちょっと覇気のない十兵衛は置いといて、クッキー生地を並べて焼いていく。
焦げないようにじっくりと。
根気強く交代しながら火と生地を見つめ、ひっくり返して両面焼けば、完成。
ちょっと焦げたがちゃんときつね色になった。
「焼きたてが一番おいしいのよ。はい、味見!」
皿に取り上げたばかりのアツアツのクッキーを、つまんで二人の口の中に放り込んでいく。
最後に自分にも。
砂糖の甘味、それに食感がサクふわ!
「おいしい~~~!どう、夕凪?」
「あまい……!おいひいれす!」
ぴこん!とツインテールが元気に飛び跳ねた。
続いて十兵衛に向くと、少しだけ頬がピンクに染まっている。美味しい時の顔だ。
「おいしい?」
「はい……その、もう一枚良いでしょうか」
照れたように目線を落とした先には、焼きあがったクッキー。
やっぱ甘いもの好きね。
切れ長の瞳が、普段大人びているそれが、すっかり子供のようになっていた。
笑ったらきっと拗ねてしまうから、ここはお姉さんぶるにとどめる。
「いいわよ!まだ生地はいっぱいあるから、いっぱい焼きましょう!食べさせてあげたい子もいるしね!」
クッキー作りって、意外と握力や指の力が大事。なので、きっといいリハビリになるはずだ。
「というわけで、二人ともよろしくね!がんばりましょう!」
「……あい…………」
「……はい…………」
しばらく沈んで使い物にならなかった私の従者ズにも、前掛けをつけさせアシスタントとしてスタンバイしてもらう。
あの戦のあと、夕凪は骨折状態で飛び込んできて、泣いて私に詫びた。
涙を滝のように流しながら、両サイドで結んだ髪をしゅんとさせている夕凪に、私も抱きついて謝った。
十兵衛の方は、話しかけてもずっと表情が死んでた。
こんな死んだ顔は、幼い頃私の兄達に心無い言葉を言われたあの頃以来だ。
信長や周りの人に、何か酷いことでも言われたんだろうか。「無能従者」とか「役立たず護衛」とか。そんなこと言う人はいないとは思うけど。
私にも「自業自得女」とか「出しゃばり正室」とか言ってくる人もいないし。
むしろみんな、ただただ怪我を心配してくれて私の方が恐縮してしまうくらいだった。
きっと、誰からも責められないせいで、責任感の塊な彼は逆に自責の念を昇華させられずにいるのだろう。
真面目くんはこういうとき大変だ。
なので、そんな元気のない二人にも、元気を取り戻していただきたい。
ストレス発散と、指のリハビリを兼ねて。
「十兵衛はボウルを押さえてて。夕凪は一緒に材料を入れて混ぜてね」
「あい……」
「はい……」
覇気ねええええ!
元気なのは、私だけだった。
ともかく、進めよう。
十兵衛がボウルという名の鍋を持ってくれているところに、小麦粉、砂糖、油を入れていく。そしてお塩をひとつまみ。
バターがなくても、サラダ油でクッキーって出来るのよね。
砂糖はいつもなら贅沢品なので使用を躊躇するところだが、なんと先の戦で頑張った私に、ご褒美として砂糖が付与されたのだ!
本当は新しい着物とか土地とかお城とか色々言われたんだけど、そんなものより砂糖がいい。できたら醤油を作ってくれ!
と言ったら、清州城に私のための味噌蔵が出来た。
職人さん達に、いろんな大豆発酵食品をこれから開発してもらう予定だ。
醤油っぽいものはすでにあったようなので、これを私の好きなあの醤油に改良してもらう。
今から楽しみだ。
「姫様、このくらいでしょうか?」
「そうそう。指、痛くない?無理はしないでね」
「平気です。姫様……」
「まあ!夕凪はもうほとんど全快ね!さすが、治りがはやい!有能!!」
「あい!」
少し機嫌が治ったようだ。
十兵衛と交代して、彼にも生地をこねてもらう。十兵衛も、指はちゃんと動かせるくらい回復しているようだ。
粉と油が固まってひとまとまりになったら、濡れふきんを被せていったん冷所で寝かせる。
だいたい15~30分くらいかな。
その間に洗い物をして、火の準備。これが一番大事。
強火だと確実に焦げる。
クッキーは通常、オーブンでじっくり焼くのが普通だけど、ここにはもちろんオーブンなんてない。
私達はフライパン(という名の浅型の鍋)を二人で掲げ、ゴウゴウの炎から引き離して火加減を調節するしかないのだ。
フライパン(鍋)を温めつつ、まな板に粉を振るって寝かせていた生地を取り出す。
棒状になった生地を包丁で輪切りにしていくと、平たく丸いかたまりがころんと転がった。形はだいぶクッキーだ。
「あとはこれを、焼きます。二人とも頑張ってね!弱火キープよ?」
「あい!」
「はい……」
まだちょっと覇気のない十兵衛は置いといて、クッキー生地を並べて焼いていく。
焦げないようにじっくりと。
根気強く交代しながら火と生地を見つめ、ひっくり返して両面焼けば、完成。
ちょっと焦げたがちゃんときつね色になった。
「焼きたてが一番おいしいのよ。はい、味見!」
皿に取り上げたばかりのアツアツのクッキーを、つまんで二人の口の中に放り込んでいく。
最後に自分にも。
砂糖の甘味、それに食感がサクふわ!
「おいしい~~~!どう、夕凪?」
「あまい……!おいひいれす!」
ぴこん!とツインテールが元気に飛び跳ねた。
続いて十兵衛に向くと、少しだけ頬がピンクに染まっている。美味しい時の顔だ。
「おいしい?」
「はい……その、もう一枚良いでしょうか」
照れたように目線を落とした先には、焼きあがったクッキー。
やっぱ甘いもの好きね。
切れ長の瞳が、普段大人びているそれが、すっかり子供のようになっていた。
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