血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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調教される日々

怒りの沸点

「命か…そりゃ俺もそれ相応の対価をお前に与えないとな。」

「では庵が欲しいと言ったら若はくれますか?」

「馬鹿を言うな。こいつを奪おうものならいくらお前でも骨の1本はへし折ることになっちまうな。」



龍之介は庵を膝に乗せ抱きしめたまま運転席を蹴った。だが瀧雄は驚くことも焦ることもせず運転を続ける。日常茶飯事なのであろう。瀧雄は流暢に話し始めた。



「ほんとに若は怖いったらありゃしませんね。庵を見てください。ガタガタ震えてるじゃないですか。」



瀧雄にそう言われずとも龍之介は分かっている。なにせ庵は龍之介の膝の上にいるのだから。先程からガクガクと震え逃げようとしている庵を押さえ込んでいるのは龍之介だ。だが龍之介はそれを楽しんでいるというのは伏せておくことにしている。庵が逃げようとする度龍之介が押さえつけると庵はさらに怯える。だからそれを言ってしまえばここまで耐えてきた庵もさすがに恐怖で気絶してしまうかもしれないから。気絶してしまえば反応がなくなり面白くない。



「俺は怯えまくってる庵を見て楽しんでる瀧、お前が1番怖いがな。なぁ庵。お前もそう思わねぇか?」

「…お、おれはっ、」



1番怖いのは龍之介だ。庵はそう言おうとしたが龍之介と目が合ってしまえば言えない。固まってしまう。まるで目の前にライオンがいるように恐怖で縮こまってしまう。このまま殺されてしまうのではないかと錯覚すらしてしまう。だから庵は何も言えずただ震える他なかった。そんな庵に龍之介はキスを落とした。そして不気味な笑みを浮かべると庵の頬を撫で始める。



「俺が怖いか?大丈夫だ。お前さえいい子にしてりゃ俺は手を出さない。さっきみたいに殴られたくねぇだろ?」

「ぉ、おれはっ…」

「あ?なんだ。ものはハッキリと言え。」

「おれはっ、別に殴られてもいい…ここから…出せっ。」

「クソガキが。殴られたりなかったようだな。」



いつまで経っても諦めない。逆らい続ける庵についに龍之介の怒りの沸点が超えた。そして龍之介が庵を殴ろうとしたその時…。



「若!」



運転していた瀧雄が叫んだ。これまで庵に何をしようとも声を荒らげることをしなかった瀧雄が龍之介を止めたのだ。その瀧雄にも腹が立った龍之介は運転席を思い切り蹴った。だが瀧雄はそれに屈することなく話し続けた。



「若…。」

「邪魔すんじゃねぇ。」

「若お願いです。抑えてください。躾んのは事務所についてからです。そうしないと庵を取られますよ。気に入ったのでしょう?今日はよりによって若のお兄さんがいらっしゃる日なんですから。ただでさえあのめんどくさい幹部共がいるのに。もし出会した時は即刻取られます。だからお願いです。庵の事を気に入ったのであれば大切にしてやってください。事務所につけば好き放題して構いませんから。」



庵は瀧雄の言うことを聞いてより震え上がった。龍之介は若だから上の立場なのだと勝手に思っていた。だが違ったようだ。龍之介には兄がいるらしくしかも今日は幹部も来るらしい。若という立場なのに幹部には逆らえないのか…?龍之介よりもっと怖い人達が沢山いるところにこれから行く恐怖が庵を襲っていく。



「…あ、のっ、」

「なんだ。」



怖くて幹部の人達のことや龍之介のお兄さん達のことを庵は聞こうとした。だけど今目の前にいる龍之介は怒っている。返事はしてくれたものの怖くて庵は言葉を発せなかった。そんな庵の思考がわかったのであろう。龍之介の代わりに瀧雄が話し始めた。



「安心しろ庵。お前が思ってるようなことにはしないから。幹部共たちからも若のお兄さん達からも守ってやる。だからいい子にしてろ、な?」



瀧雄は庵にそう言い聞かせるように言った。そうしないと辛い目に遭うのは庵だから。だが庵にはその瀧雄の良心が通じることなかった。いい子にしてろ…?こんなところに勝手に連れてきて母親まで殺されていい子にしてる訳がない。それに瀧雄がそういったのは龍之介のためだ。決して庵のためでは無い。龍之介から庵が奪われたら龍之介の機嫌も悪くなる。だからそう言ったんだ。そう思えば思うほど庵は瀧雄に対する怒りがどんどん込み上げていった。



「なんでお前にそんなこと言われなくちゃいけないんだよっ…そんな風に言うんだったら離せよっ…いっその事殺せよっ…!」



庵がそう叫ぶと車内が静寂に包まれた。その静寂を消したのは龍之介だった。龍之介は庵の首に手を添え軽く擽るように指を動かした。



「お前がそんな風に誰彼構わず馬鹿犬のごとく吠えることは結構。だが泣く羽目になるのはお前だぞ。事務所に着くなりお前はどんな目に遭うんだろうな?」

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