血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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調教される日々

聞こえてくる会話

「若…。」



もう1回戦したあと気絶するように眠ってしまった庵を見て亮が呆れた顔をしていた。亮は再び庵に何かを食べさそうと果物を持って寝室にきたのだ。だがなぜか目の前には倒れている庵がいた。その原因は龍之介しかいない。だから亮はここに来てからというものずっと龍之介を呆れ顔で見ていたのだ。



「悪いとは思っている。」

「そういう態度には見えませんけどね。」



それもそうだろう。龍之介は気絶している庵を抱きしめては身体を撫でるように触ることを辞めないのだから。可愛いのは分かるが口と行動があっていない龍之介に亮は強く出だ。だが龍之介も龍之介で黙ってはいなかった。



「チッ、お前はいちいちうるせぇんだよ亮。さっさと言われたことだけをやれ。」

「はいはい。」



亮はそう言うと眠ってしまった庵を抱きかかえた。どこへ向かうかなんて1つしかない。浴室だ。体をきれいにしなくてはいけないから。だが…。



「しかし今日何回目の風呂ですか。さすがに庵の肌が荒れますよ。せっかく綺麗な肌なのに。」

「ならお湯でざっと流すだけでいい。」

「分かりました。」



そう言って亮が庵を抱きかかえたまま寝室を出ようと歩き出したがあることを思い出したようで立ち止まった。



「どうした。」

「そういえば報告があったんです。結構前のことですけど。」

「亮…。」



亮がミスするなんて珍しいこともあるもんだと思いながらも龍之介は呆れ顔が隠せなかった。報告は大切なものだ。必ず徹底しなければならない。特に亮と瀧雄だけを信頼している龍之介にとって2人からの情報だけが頼りになるから。それなのに亮ときたら…と龍之介はため息を漏らしてしまった。まぁ言うのを忘れるくらいなのだから仕事には支障がないのだとは思うが。



「すみませんって。人間なんでミスぐらいしますよ。」

「たく、お前は。まぁいいから言え。」



龍之介のその言葉を聞くと亮は腕の中にいる庵を一旦見た。要はちゃんと寝ているかどうかを確認したのだ。その行動で話の内容を察した龍之介は足を組んだ。



「庵の母親の処理をしようとした時ついでに部屋も色々見てたんです。まぁ汚い部屋でしたけど面白いものを見つけちゃいましてね。」

「もったえぶってないで早く言え。」

「急かさないでくださいよ若。直ぐに言いますって。その面白いものってのが海外向けの人身売買の書類があったんですよ。海外って言ってもスラムとかそこら辺でしたけど。」

「その書類は?」

「持ってきてますよ。鞄にしまってたの忘れてました。」

「後で見せろ。」




龍之介はそういうと考え込んだ。これは調べた時得られなかった情報だから。そんな事あるのか?一般人なら多少調べるだけで全ての情報が得られる。なのにこれだけは隠し通されていた。それも龍之介が見破れないほど厳重に…。なにか特別な力が働いていたのかもしれない。もしかすると他にも庵を狙っていた人物がいたのでは…?龍之介は色々推測をし始めた。だがそんな龍之介とは裏腹に亮は呑気なもので深刻な顔をする龍之介に変わらず話し続けた。



「分かりました。しかし良かったですね。庵が売られる前に連れ去ることが出来て。」

「そうだな。まぁあの女は他にも色々惨い事を庵にしようとしてたみたいだしな。」

「他にもですか?」



そういえば龍之介は庵に対するなにかの脅しの材料になればと調べたことを亮達に言っていなかったことを思い出した。母親の事や庵の学校のこと、庵自身のことに関しては亮達に任せていた。だがそれ以外は龍之介自身で調べていたのだ。



「こいつを金持ちのじじい共の相手にさせようとしてたらしいぞ。自分がソープに飛ばされたことが相当屈辱だったんだろうな。」

「最低ですね。」

「俺らが言うのもあれなんだがな。」

「はは、言えてます。俺ら金持ちのじじい共と同じことしてますから。」

「まぁあいつらよりマシだろ。俺は飼い殺したりしない。ちゃんと可愛がるからな。だが勿論躾はするし脱走もさせないが。」

「ですね。じゃあそろそろ風呂入れてきますね。」

「ああ。頼んだ。」



庵は今裸だ。これ以上話したら身体が冷えてしまうと思った亮はそう言い寝室を後にした。そしてリビングにいた瀧雄に龍之介の世話を頼むことにした。



「おい瀧。」

「あ?庵?どうしたんだよ。」



ご飯を食べさせようと寝室に入っていった亮なのに何故か今は腕の中に庵がいる。その訳の分からない光景に瀧雄は思わず拍子抜けの顔になった。



「若がやらかしたんだ。休ませようとはしてたみたいだがまぁ庵を前にして若が我慢できるはずねぇよな。」

「ほんとに気に入ったんだなこいつの事。」 

「そうだな。」



一日に何度も風呂に入れてあげる上にご飯まで上げている。そして何よりも龍之介は庵自身に興味があり庵自身を好いていた。2人にとってこれは初めての事だった為に瀧雄は未だに動揺が隠せない様子だ。そして瀧雄は庵に惹かれているという自分にも動揺している様子だった。だが亮は違った。



「でも俺は少し安心してる。」

「なんでだよ。」



こんな状況で安心もクソもないだろと心の中で思いながら瀧雄は亮にそう言った。初めての事はなんにせよやはり怖いものだ。瀧雄は特にそうだった。だから龍之介がこれからどんどん庵に執着していきそれが龍之介の弱点になってしまうことも怖かった。瀧雄にとって1番の恐怖は龍之介がいなくなってしまうことだから。そんなことを考える瀧雄の足を亮は軽く蹴った。



「痛ってぇ…。」

「そんな強く蹴ってねぇだろ。ちょっと待ってろ。」

「はぁ?どこ行くんだ。風呂は反対側だぞ。」

「ブランケットだよ馬鹿。」

「ブランケット?」

「寒いだろうが庵が。」

「ならさっさと風呂いけよ。」

「その前にお前に言わなきゃいけねぇことがある。」



そう言い手にブランケットを持ち帰ってきた亮は瀧雄の隣に座る。そして庵が寒くないようにブランケットを庵の体に巻きながら話し始めた。



「若はずっと俺らしか頼れる存在がいなかった。情けねぇが俺らにも言えないことはあると思う。だがこいつがいればもしかしたら変わるかもしれない。実際庵の母親を殺して以降は誰も殺してねぇし汚ぇ真似もやらなくなった。だから俺はこいつが若の中にある何かを変えてくれると信じてる。そんで時間はかかるかもしれねぇが庵が若に寄り添ってくれる日が来るのも信じてる。」



亮の言っていることは何一つ間違っていない。毎日のように人を殺め続けていた龍之介がそれを辞めた。ただ単に庵に夢中になっているだけかもしれないがそれでも亮と瀧雄にとっては龍之介が数日間銃口を誰にも向けていないというのは初めての事だった。



「…確かにそうだな。こいつで若のストレスが少しでも和らいでくれたらいいんだが。」

「瀧、お前1回寝室行ってみろ。」

「言われなくとも。」

「そういう意味じゃねぇ。若の顔つきが少し変わってんだよ。世話ついでに見てこい。」

「…おう。」

「じゃあ俺は庵を風呂に入れてくるから若を頼んだぞ。」



瀧雄にそう言い残すと返事を聞かずに亮は歩き出した。それも急ぎ足で。ブランケットをかけているとはいえ風邪をひかせたら大変な事だ。もし風邪をひかせてしまえばあれだけ庵を大事にしている龍之介から何をされるか分からない。それもあるが亮自身のためでもある。庵が風邪を引けば抱くことは出来なくなるから。ましてや体に触ることすら出来なくなってしまう恐れすらあった。だから亮は急いだのだ。だがその時あることに気づいた。




「庵?起きてんのか?」



風呂場について亮も服を脱ごうとした時庵が瞬きをした。それを見過ごさなかった亮は庵の顔を掴み顔をのぞきこんだ。だがその時…。




「どうしたお前。なんで泣いてんだ。」

「………っ。」



亮はこの時龍之介にまた身体の隅々まで触られ抱かれてしまったことが怖かったのかと思った。でもよくよく考えるとおかしい。それなら庵は起きて直ぐに亮を跳ね飛ばすはず。離れろと言い押し返してくるはずだ。なのにそれをしてこない。ということは…。



「まさかお前…さっきの話聞いてたのか?どっから聞いてた。」


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