血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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調教される日々

折れた手

「なぁ亮。こうしたからにはお前も覚悟ができてんだよな?」



覚悟なんてここに来た怜二の姿を見た時から出来ていた。龍之介は出張中で助けに来てくれない。助けを求めるつもりもない。自分が庵を守らなければ…。あの時龍之介が助けてくれた時のように。



「もちろんです。怜二さんと宏斗さんの好きにしてください。」

「ならさっさとこっちに来い。」



怜二の楽しそうな声が亮の頭に響く。大嫌いな声だ。この声を聞くだけで吐きそうになる。亮はそれに耐えながら1歩1歩進んでいき怜二の前まで行った。



「服を脱げ。」



そう怜二に言われ亮は自らの服に手をかける。だが脱ぎたくなかった。脱げば何をされるのか分かっていたから。庵を救うためにはこれしかない。そう分かっていても手が震え脱ぎ出すことが出来ない。そんな亮に怜二は再び手をかける。



「あか゛っ!」



怜二はあろうことか亮の折れた手首を掴み机に叩きつけた。複雑骨折は避けられないだろう。あまりにも激しい痛みに亮は声を荒らげる。だがそれ以上は声を出さなかった。寝室にいる庵に声を聞かれれば必ず心配する。だから亮は必死に耐えた。その亮の姿にも腹が立ったようで怜二は亮を投げ飛ばす。その様子を宏斗は楽しそうに見ていた。



「チッ、これも全部龍之介…あいつのせいだな。せっかく時間をかくてお前を従順な犬に仕立て上げたのに最初からやり直しじゃねぇか。」



怜二は何度も何度も亮を蹴った。宏斗もそれを止めない。だが亮からすればこうなって良かったかもしれない。こんな男の陰茎を突っ込まれるよりは全然マシだから。痛みはいくらでも耐えられる。そんな亮の服を掴み怜二は亮を無理やり起こした。



「いいか亮。お前次第だ。お前の行動しだいではお前を殺して庵は連れ去る。ドアなんて壊せばいいんだからな。それが嫌なら行動で示せ。」




時間稼ぎはこれ以上できない。これ以上すれば庵が危険だ。だから亮は服を脱ぎ始めた。庵だけは守りたかったから。そんな亮をみて怜二は満足そうに笑う。そして怜二が体に手をかけようと亮を引き寄せた。

だがその時ーーー。



ガチャ



玄関の方から音が鳴った。誰だと探るまでもないだろう。この家は龍之介のものなのだから。だが龍之介は出張に行っているはず。なのになぜ…。



「おい宏斗。龍之介は出張に行ってたよな?」

「そのはずだけど…早く帰ってきちゃったみたいだね。」

「はぁ…最悪だ。」



今からせっかく楽しめると思ったのに邪魔が入ってしまう。その苛立ちから怜二は亮を再び蹴った。



「うく゛っ!」



亮は全身が痛かった。折られてしまった手はもちろん蹴られたところ全て痛い。だがその痛みが龍之介のおかげで緩和した。だから亮は今ある最後の力を振り絞って怜二を殴ろうとした。だがそれよりも先に亮は怜二に捕まってしまう。



「おい亮。来い。」

「なにす…っ、怜二さん…?」

「イライラすっからお前で解消する。」

「…え?」



バァン!!!



「く゛ぅ…っ、」



亮が状況を理解するよりも先に怜二が手を出した。ポケットから拳銃を取りだし銃口を亮の骨折した場所に当てるとそのまま躊躇することなく打った。その痛みに亮は叫びそうになったが必死に耐えた。そしてその銃声を聞き焦ったのだろう。玄関の方から走ってくる足音が聞こえた。



「亮!!」



リビングに入ってきたのは瀧雄だった。瀧は亮から流れ出る血を見て血相を変えて怜二の元まで走っていく。



「っ、やめろ瀧!!」



怜二に殴りかかろうとした瀧に亮はそう叫んだ。その亮の叫びにより瀧は動きを止める。



「おれらが…手を出していい相手じゃない…若に…若の判断に任せよう…。」

「チッ。」



悔しいが亮の言っていることは正しい。自分たちが相手に出来るほどの相手ではない。悔しさのあまり瀧は噛み締めた唇から血をだす。そして亮の元に駆け寄った。その時ちょうとリビングに龍之介が入ってきた。その顔を見て亮も瀧も安心する。



「てめぇら、今すぐ帰れ。」



一目見ただけで自体を把握した龍之介は物凄い怖い顔をしてそう言った。その顔に怜二も宏斗も少し怖気付いていたようにも見えた。だが負けたくないのだろう。怜二はそんな龍之介に言い返し始める。



「なんだ龍之介。俺らに仕返ししねぇのか?」

「顔すら見たくねぇんだよ。今すぐ帰れ。消え失せろ。」



龍之介はそう言いながら亮を担ぎあげる。怜二達から守るために。その本気の龍之介の顔を見て宏斗はこの場は引いた方がいい、そう思った。



「兄さん。ここは帰ろう。まだあのじじいも生きてる事だしこいつはこんなでも時期組長だ。だから面倒になる前に帰った方がいい。」



宏斗の言ったじじいと言うのは組長の事だ。龍之介に時期組長を託した男。この組長が生きている限りは龍之介に手を出せない。だから面倒になる前に退散しよう。宏斗は怜二にそう言った。龍之介はそうなることを見越してこの行動を取った。だからなのか何も龍之介に手を出せない怜二は悔しそうに龍之介を見る。



「…チッ。」

「早く消えろと俺は言ったはずだ。二度目はねぇぞ。」

「龍之介。俺は必ずお前を殺す。」

「好きにしろ。どうでもいい。」



龍之介がそう言うと怜二は椅子を蹴り飛ばしこの部屋を後にした。宏斗もそれに続いて出ていく。それを確認した龍之介はソファに亮を下ろした。そして傷口を直ぐに確認する。瀧も心配そうに亮を見ていた。



「亮、お前なんでこんなことになってんだよ。大丈夫か?」

「…た、き…お前なんで、」



出張に行っていたはずなのにここにいる2人を不思議がった亮はそう言った。痛みのあまりまともに喋ることが出来ないのだろう。その痛々しい亮の姿を見て龍之介に怒りが込上げる。その怒りのあまり龍之介は黙り込んでしまっていた。だから亮は瀧雄にそう聞いたのだ。



「商談があっちの都合で無くなったから帰ってきたんだ。最悪だとか思ってたけど良かった。無事か?」

「俺は大丈夫だ、庵も無事だ…。」

「良かった…。」



庵が無事であることは分かっていた。この部屋にいないとなれば亮がどこかに隠したのだろうと思っていたから。そんな庵を守るために亮はこうなった。龍之介は亮に感謝してもしきれなかった。そしてその龍之介は庵のことを気にしている様子だった。だが亮も心配でたまらなく動き出せない。そんな龍之介に亮は声をかける。



「若、俺の部屋に庵がいます…怖かっただろうから慰めてやってください…俺は大丈夫ですから…。」

「何が大丈夫だ。撃たれてんだぞ。瀧、医者はまだなのか。」

「もう少しかかるそうです。」

「くそ…っ。」



龍之介は痛めつけられた亮の手首を見て怒りが抑えられない。これを見る限り骨折をしている。その上から撃たれたのだから痛みは計り知れないほどだろう。なのに亮は…。



「撃たれたの腕ですから…命には別状ありません。」

「そういう問題じゃねぇんだよ。」

「先に庵を…。」

「…………。」

「馬鹿か亮。ちょっと考えてみろ。こんなとこ見せたら余計に庵が怖がるだろ。だからせめて血だけでも止めねぇと。」



亮は龍之介に自分に気を使わなくていい。そういう意味を込めてそう言った。それを龍之介も分かっていた。だがこんな姿の亮を置いていけなかった。庵が寝室にいるとなれば庵が逃げる心配もない。だが精神面は分からない。亮の言う通り庵もかなり心配だ。だから龍之介は庵の顔だけでも見に行くことにした。




「まぁ確かに庵も心配だ。俺はお前の部屋に行くことにする。瀧、あとは任せたぞ。」

「はい。お任せ下さい。」



医者が来るまでの間亮を瀧雄に託し龍之介は歩き出した。そして亮の部屋である寝室の前まで来ると龍之介は庵に声をかける。



「庵。俺だ。龍之介だ。鍵を出せるか?」



龍之介がそう言うと庵はすぐにドアの隙間から鍵を出してきた。そしてその鍵を使い龍之介がドアを開けると庵が焦った様子で飛び出してきた。すかさずその庵を龍之介はキャッチする。



「おいどこに行くってんだ。」

「亮が、亮に会わせてっ…!」



あの大きな銃声を聞けば亮が撃たれたことは寝室にいても分かったのだろう。庵は泣きながら亮に会わせて欲しい、そう龍之介に頼み込んだ。だが龍之介は庵を捕まえている手を緩めない。



「駄目だ。お前はこっちだ。」

「り、りゅうっ、亮が撃たれたんだ…っ、俺の事かばってあんな目に…!」

「大丈夫だ。あいつは強い。お前はお前の心配をしろ。」

「お願い…無事かどうか、それだけでいい。それだけでいいから亮を見せて。会わせて…。」

「駄目だ。血なんて見るもんじゃねぇ。」

「お願い…っ。」

「…分かった。」



龍之介は自分が留守にしている間に亮と庵の仲が深まったことはすぐに分かった。そうと分かれば見せるしかない。庵を安心させるしかない。そう思った龍之介は庵を抱きかかえて亮がいるところまで運び出した。そして亮の所に着くと庵を下ろした。



「亮…!!」

「は、?おまえ、なんで… 、」

「お前が心配だそうだ。だから連れてきた。」



こんな姿を見られたくなかったのだろう。亮は庵の姿を見ると焦った様子で立ち上がろうとした。だがそれを瀧が止める。



「馬鹿。怪我してんだから立つな。」



庵の前では弱い所を見せなくないという亮の思いを知った上で瀧はそう言った。そう言わなければ亮は出血多量になってしまうから。その瀧の思いを受け取った亮は瀧の言う通りソファに再び寝転がった。そして自分の元に来てくれた庵に優しい目を向けた。



「俺は大丈夫だ。だからそんな顔しなくていい。庵が無事で良かった。」

「…おれのせいだっ、ごめん。」

「違う。またそんな事言ったら躾るぞ。」

「………っ。」



躾られるのはどうやら嫌らしく庵はすぐに黙り込んだ。そんな素直な庵をみて亮は思わず笑ってしまう。横を見ると瀧も龍之介も同じように笑っていた。そんな亮をみて庵は自然と口が開いていた。



「…亮。」

「なんだ?」

「ありがとう…。」



庵の心からのお礼だ。自分を守ってくれる存在なんていなかった庵からしたら今回の件は相当嬉しかっただろう。そんな庵の気持ちに答えるように亮は庵の頭を撫でた。そしてその奥にいる龍之介と目が合うと亮は口を開いた。



「若、部屋汚してすみません…。」

「気にすんな。汚れたら綺麗にすればいい。それよりお前は止血することに集中しろ。死んだりしたら許さねぇからな。」

「…はい。」

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