血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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極道の世界

セキュリティ

「瀧、お前何してんだ。」



寝室から出た龍之介がパソコンで作業している瀧雄にそう問いかけた。仕事といってもたくさんのものがある。顧客リストを整理したり新しい事業を始めたり売れたものをその分仕入れたりその他にも沢山あるのだ。だから龍之介は瀧雄が今何をしているのかを聞いたのだ。



「お疲れ様です若。今してんのはセキュリティ強化です。また破られてしまったので。」



そう。瀧雄は今セキュリティの調節をしていた。2度も玲二らに破られてしまったから。だから今度は絶対破られないように厳密にやっているのだ。ハッカーでも絶対に開けられないほど厳重に…。そんな瀧雄を見て龍之介はため息をつく。



「おいおい瀧。そういうことなら俺を呼べよ。何してんだお前は。」

「お楽しみかなと思いまして。」

「そういう時はいい。遠慮なく呼べ。俺がいねぇと進まねぇ事もあんだろ。」

「そうですね。はい。承知しました。ではお言葉に甘えて今お願いしてもいいですか?」

「もちろんだ。庵、亮のとこ行ってろ。」



庵に聞かれてはまずい情報なのだろう。龍之介はそばにいた庵にそういい亮に目配せをした。そんな龍之介に庵は話しかけた。



「龍、あとどのぐらいで終わるの?」

「そうだなぁ。遅ければ3時間ぐらいだろうな。庵、待てそうか?」

「うん待てる。わかった。頑張ってね。」



庵はそう言うと自ら亮の元に歩いて行った。そんな庵を見て龍之介は微笑んだ。瀧雄も同じように微笑んでいた。そして亮は自分の元に歩いてきた庵を抱きしめる。



「では若、俺は失礼しますね。自室に戻ります。」

「ああ。庵を頼んだぞ。」

「はい。瀧、お前も頑張れよ。」

「おうよ。」



亮は瀧のその返事を聞くと庵の肩を抱いて歩き始めた。そして亮の部屋に入っていく。庵はここに来てから思っていたことがある。この家はかなり広い。龍之介、瀧雄、亮の3人で暮らしているにしても広かった。だから庵はまだ入れていない部屋が沢山ある。いつか探検も兼ねて全部の部屋入ってみたいなぁなんて思いながら庵は亮に続いて歩いた。そして亮の部屋に入るとソファに座らせられた。



「お前腹減ってねぇ?」

「ううん、減ってない。」

「そっか。ならいい。まぁ腹減ったらあそこになんかつまめるもん置いてっから適当に食べとけよ。」

「ありがとう。」



庵は亮の優しさにお礼を言った後亮の部屋を見渡した。シンプルでいい部屋だが写真や思い出に関するものが1つも見当たらなかった。あまりいい思い出がないのだろうか。そう思い庵が亮の部屋を物色しているとあるものを見つけた。それは龍之介と瀧雄と撮ったスリーショットの写真だった。それはとても小さくよく見ないと見つけられない程の大きさだ。けれどそうまでしてでも亮は飾りたかったのだろう。それを思うと亮らの絆の深さがよくわかった。なんだか庵は少し…少しだけ羨ましくなった。



「庵。そんな探してもなんも出てこねぇよ。」



庵が亮の部屋を物色していることに気がついた亮がそう言ってきた。そして亮は庵の隣に座り込んだ。そんな亮に庵はある疑問を問いかけた。



「亮、瀧たちは何してるの?」



セキュリティとかなんやら言っていたが庵には理解できなかった。何をしてなんのためにそれをしているのか分からなかったのだ。だから亮にそう聞いたのだ。



「玄関の鍵のセキュリティの強化だ。」

「そんなことできるの?」

「ああ。できるぞ。」

「凄い…。」

「そりゃ極道だからな。厳重なデータとか顧客リストが漏れないように保存しとかねぇといけねぇから。なんだが…玲二さんはさすがだな。宏斗さんもだが2回も破られちまった。」



庵は亮のその言葉を聞いて思った。やっぱり凄いな…と。裏で生きるためにはそこまでしなければならない。そうしないと生きていけない。慈悲なんてかけてはいけない。そんなものかけてしまえば自分が死んでしまうから。だからなんだかそれと同時に庵はもったいないなとも思ってしまった。そこまでパソコンを操れるのなら表の世界でも生きられるのではと思ったから。



「そんなに実力あるのになんか勿体ないね…。」

「あれは玲二さん達の実力じゃねぇよ。玲二さん達がハッキングしてんじゃねぇもん。」

「そうなの?」



庵は全て玲二らがやっていたことだと思っていた。だから驚いたのと同時に怖くなった。まだ怖い人がいるんだって…。



「部下にやらせてるだけだ。あの二人は若に到底及ばない。けど部下を従える実力はある。ハッカーを捕まえる実力もな。それは若に出来ないことだ。だからすげぇんだ。若は新しいものを拒むからな。けどだとしても玲二さんは若には勝てねぇよ。」

「やっぱ亮は龍のことが大好きだな。」

「違ぇよ。慕ってんの。」

「どっちも同じだよ。」

「生意気な奴だ。」



口答えをするようになった庵の頭を亮は少し乱暴に撫でた。その時庵の顔が笑顔になった。笑みを浮かべた。ついこの間まで庵は亮に頭を撫でられた時嫌な顔をしていた。嫌悪感を隠せていなかったのに今は心の底から笑っているように見えた。



「てかさ亮!俺思いついちゃった!」

「ん?なんだ?」

「その凄い部下を取っちゃえば龍の圧勝になるんじゃないかなって。」



庵は少しドヤってそう言った。そんな庵が亮は可愛くて仕方が無い。このまま食べてしまいたいほどに。だが庵が言っていることは間違っていた。それで出来たら苦労しない。出来ないからこんなに悩んでいるのだ。



「それがそう上手くはいかねぇんだよ。その部下は玲二さんに命を捧げてるからな。俺と若みたいな感じだ。」

「…そうなんだ。それじゃあ無理だね。」

「そう。だから俺らは葛藤してもがいてんだ。でもさっきのお前の策はナイスだったぞ。偉い偉い。」



そう亮に言われ庵は再び頭を撫でられる。素直に褒められたのが嬉しかったのだ。そしてこの時庵は思った。幹部を殺すのを躊躇しない玲二が龍之介は殺さない。これが意味することはひとつだ。



「今のところは龍の圧勝だね。」

「よく分かってんじゃねぇか庵。そうだ。お前の言う通りだ。」



亮はよく褒めてくれる。きっと亮が父親になれば良い父親になるだろう。庵はそう思った。そしてこの機会に全て気になることを聞いてしまおうと。亮は今機嫌がいい。だから分からないことは全て聞く。庵はそう決断した。



「あとさ、もう一つ気になったことがあるんだけど…いい?」

「ああ。いいぞ。なんでも言ってみろ。」



庵の思った通り亮は今最上級に機嫌がいい。だから庵のその問いかけにも笑顔でそう言ってくれた。



「ここは事務所なの…?」

「んーなんて言えばいいんだろうな。事務所でもあり自宅でもある。」

「そうなんだ。広すぎるから俺ここなんかの施設かと思っちゃった。それに下も事務所だったよね。」

「よく覚えてんじゃねぇか。立派だ庵。お前の言う通り下の階にも事務所がある。だがあそこは幹部の事務所みたいなもんなんだ。元は若の部屋もあったんだが…まぁ必然的にこっちに移動するしか無くなった。情報を守るためにな。」

「…玲二さんのせい?」



庵がそう言うと亮は黙り込んだ。聞いてはいけないことを聞いてしまったかもしれない。グレーゾーンであることを聞けば大体亮ははぐらかす。まぁその時はその時だ。答えてくれないのなら諦める。けれど亮はまだ答えてない。だから庵は亮の答えを静かに待った。



「…まぁそうだな。玲二さんのせいと言えばそうなのかもしれない。なんか嫌な予感がしたんだ。あの時…。だから災いが起こる前に避難したんだ。言っておくが逃げたわけじゃねぇよ。」

「分かってるよ。龍は逃げるような性格してないから。」

「よく分かってんなお前は。優秀だ。」


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