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極道の世界
対面
「あ、親父。」
あの部屋から出た3人は龍之介の元へと歩き続けていた。もちろん庵は益田の腕の中にいる。その腕の中にいる庵をみて益田が和紀の名を呼んだ。
「なんだ。」
「庵が寝ました。」
「寝ただと?」
「はい。」
何かあったのかと思えば庵が寝たと言う益田の言葉を聞いて正直和紀は安心した。そして益田の腕の中ている庵の顔をのぞき込む。
「はは、あんだけビビってたのに一瞬で寝るんだなこいつは。」
「まぁ庵はまだ子供ですからね。」
益田もこう見えて和紀同様に40代だ。だから彼らからすれば庵は息子のような立場になる。だから庵が10代後半とはいえまだまだ子供に見えるのだろう。
「確かにな。そう考えると寝るのも無理もないか。出来ることなら起きたまま龍之介に会わせてやりたかったが相当なことをされていたようだからな。今の庵には休息が必要だろう。」
「そうですね。庵が起きた時はちゃんと坊ちゃんの近くに入れるよう我々も協力しましょうか。」
「そうだな。」
2人はそう言うと止めていた足を再び進めだした。そして龍之介の家の前までたどり着いた。だがその時何故か益田は足を止めた。
「あ、そうだ親父。」
「あ?どうした?」
「先に入ってください。坊ちゃん多分興奮しちゃうんで。」
「別に興奮させといたらいいだろ。あれだけ会いたがってたんだぞ?」
「そうなんですけど…そしたら庵が起きてしまいますよ。だから今は寝かせてあげましょうよ。」
和紀は益田にそう言われて迷っている様子だった。それは紛れもなく龍之介のことを思っているから。龍之介がどれだけ心配していたのかを和紀は知っている。だから迷ったのだ。だが益田の言うことは正論。なので和紀は益田の言う通りにすることにした。
「分かった。お前の言う通りにするから俺が合図するまで入ってくるなよ。」
「はい。承知致しました。」
和紀はその益田の返事を聞くと玄関を開けてすぐさま扉を閉めた。するとリビングでずっと庵の帰りを待っていたであろう龍之介と亮、そして瀧雄が玄関まで一目散に走ってきた。
「親父、庵は!?」
和紀が家に入ると益田の予想通り案の定興奮が抑えられない様子の龍之介の姿があった。その龍之介の姿を見て和紀は龍之介にのめり込まないよう一度深呼吸をする。
「落ち着け龍之介。焦んじゃねぇよ。」
「落ち着いてられるかよ…つか庵はなんでいねぇんだよ。庵はどこだ!」
「落ち着けと言っているだろうが。庵は無事だ。だがお前がそんなんでいいのか?庵を苦しめるだけだぞ。」
龍之介は和紀にそう言われ少し冷静になれた様子だった。それは和紀の言ったことが正しかったから。きっとこの興奮が抑えられないまま龍之介が庵に近づくともしかしたら龍之介は庵を傷つけてしまうかもしれない。それを防ぐために和紀は龍之介を落ち着かせようとしたのだ。その和紀の言葉もあって龍之介はいつもの冷静さを取り戻した。
「…悪ぃ親父。分かった。落ち着くから教えろ。庵はどこにいる。」
「庵はすぐそこにいる。目立った外傷はないがまぁ心の傷は相当深いだろうがな。そこはお前が何とかしてやれ。」
「当然だ。」
「なら安心だ。益田、入ってこい。」
龍之介の今の様子を見て大丈夫だろうと思った和紀が外にいる益田を呼んだ。するとその和紀の声を聞いた益田が家の中に入ってきた。その益田の腕の中にいた庵をみて龍之介も亮も瀧雄も安心から涙が溢れそうになる。だがそれを必死にこらえた。辛い思いをしたのは庵だから。
「…庵。」
腕にも足にも拘束具の痕が着いている。その傷を見ただけで庵がどれだけ暴れたのかわかった。そして顔には殴られたような痕もあった。龍之介はその庵をみて怒りを抑えられなくなりそうだったが今それをするのは違う。今すべきことは…。
「益田…庵を寄越せ。」
「坊ちゃん…。」
庵をお風呂に入れたくてそう言った龍之介だが益田のその顔をみて龍之介は邪険そうな顔をした。それはこれまで益田と共に生活してきた龍之介にだからこそ感じるものがあったから。この顔をする時の益田は…。
「嫌です。渡しません。」
「…チッ。」
益田のその言葉に龍之介は舌打ちをした。まるで為す術をなくしたように。そう。龍之介が益田から庵を奪い取ろうとしなかったのは勝てないからだ。益田はこう見えて強い。和紀の補佐をしているぐらいなのだから強いのは当然なのだがそれにしても強いのだ。だから龍之介は為す術をなくしただ舌打ちをすることしか出来なかったのだ。
「坊ちゃん…舌打ちしても駄目ですよ。駄目なものは駄目です。」
「…俺はもう落ち着いている。それでも駄目なのかよ。」
「はい。」
「なんでだよ。」
「坊ちゃんが興奮しているからです。だからまずは落ち着いてください。」
「落ち着いてるって言ってんだろ。」
「そうは見えないのでそう言ってるんですよ。」
何やら口喧嘩が始まりそうな雰囲気だ。亮と瀧雄はどうしようかと静かに慌てていた。しかし和紀は何故か笑っていた。それも楽しそうに。
「はは、龍之介にそこまで強気でいれるのはお前ぐらいだな益田。」
あの部屋から出た3人は龍之介の元へと歩き続けていた。もちろん庵は益田の腕の中にいる。その腕の中にいる庵をみて益田が和紀の名を呼んだ。
「なんだ。」
「庵が寝ました。」
「寝ただと?」
「はい。」
何かあったのかと思えば庵が寝たと言う益田の言葉を聞いて正直和紀は安心した。そして益田の腕の中ている庵の顔をのぞき込む。
「はは、あんだけビビってたのに一瞬で寝るんだなこいつは。」
「まぁ庵はまだ子供ですからね。」
益田もこう見えて和紀同様に40代だ。だから彼らからすれば庵は息子のような立場になる。だから庵が10代後半とはいえまだまだ子供に見えるのだろう。
「確かにな。そう考えると寝るのも無理もないか。出来ることなら起きたまま龍之介に会わせてやりたかったが相当なことをされていたようだからな。今の庵には休息が必要だろう。」
「そうですね。庵が起きた時はちゃんと坊ちゃんの近くに入れるよう我々も協力しましょうか。」
「そうだな。」
2人はそう言うと止めていた足を再び進めだした。そして龍之介の家の前までたどり着いた。だがその時何故か益田は足を止めた。
「あ、そうだ親父。」
「あ?どうした?」
「先に入ってください。坊ちゃん多分興奮しちゃうんで。」
「別に興奮させといたらいいだろ。あれだけ会いたがってたんだぞ?」
「そうなんですけど…そしたら庵が起きてしまいますよ。だから今は寝かせてあげましょうよ。」
和紀は益田にそう言われて迷っている様子だった。それは紛れもなく龍之介のことを思っているから。龍之介がどれだけ心配していたのかを和紀は知っている。だから迷ったのだ。だが益田の言うことは正論。なので和紀は益田の言う通りにすることにした。
「分かった。お前の言う通りにするから俺が合図するまで入ってくるなよ。」
「はい。承知致しました。」
和紀はその益田の返事を聞くと玄関を開けてすぐさま扉を閉めた。するとリビングでずっと庵の帰りを待っていたであろう龍之介と亮、そして瀧雄が玄関まで一目散に走ってきた。
「親父、庵は!?」
和紀が家に入ると益田の予想通り案の定興奮が抑えられない様子の龍之介の姿があった。その龍之介の姿を見て和紀は龍之介にのめり込まないよう一度深呼吸をする。
「落ち着け龍之介。焦んじゃねぇよ。」
「落ち着いてられるかよ…つか庵はなんでいねぇんだよ。庵はどこだ!」
「落ち着けと言っているだろうが。庵は無事だ。だがお前がそんなんでいいのか?庵を苦しめるだけだぞ。」
龍之介は和紀にそう言われ少し冷静になれた様子だった。それは和紀の言ったことが正しかったから。きっとこの興奮が抑えられないまま龍之介が庵に近づくともしかしたら龍之介は庵を傷つけてしまうかもしれない。それを防ぐために和紀は龍之介を落ち着かせようとしたのだ。その和紀の言葉もあって龍之介はいつもの冷静さを取り戻した。
「…悪ぃ親父。分かった。落ち着くから教えろ。庵はどこにいる。」
「庵はすぐそこにいる。目立った外傷はないがまぁ心の傷は相当深いだろうがな。そこはお前が何とかしてやれ。」
「当然だ。」
「なら安心だ。益田、入ってこい。」
龍之介の今の様子を見て大丈夫だろうと思った和紀が外にいる益田を呼んだ。するとその和紀の声を聞いた益田が家の中に入ってきた。その益田の腕の中にいた庵をみて龍之介も亮も瀧雄も安心から涙が溢れそうになる。だがそれを必死にこらえた。辛い思いをしたのは庵だから。
「…庵。」
腕にも足にも拘束具の痕が着いている。その傷を見ただけで庵がどれだけ暴れたのかわかった。そして顔には殴られたような痕もあった。龍之介はその庵をみて怒りを抑えられなくなりそうだったが今それをするのは違う。今すべきことは…。
「益田…庵を寄越せ。」
「坊ちゃん…。」
庵をお風呂に入れたくてそう言った龍之介だが益田のその顔をみて龍之介は邪険そうな顔をした。それはこれまで益田と共に生活してきた龍之介にだからこそ感じるものがあったから。この顔をする時の益田は…。
「嫌です。渡しません。」
「…チッ。」
益田のその言葉に龍之介は舌打ちをした。まるで為す術をなくしたように。そう。龍之介が益田から庵を奪い取ろうとしなかったのは勝てないからだ。益田はこう見えて強い。和紀の補佐をしているぐらいなのだから強いのは当然なのだがそれにしても強いのだ。だから龍之介は為す術をなくしただ舌打ちをすることしか出来なかったのだ。
「坊ちゃん…舌打ちしても駄目ですよ。駄目なものは駄目です。」
「…俺はもう落ち着いている。それでも駄目なのかよ。」
「はい。」
「なんでだよ。」
「坊ちゃんが興奮しているからです。だからまずは落ち着いてください。」
「落ち着いてるって言ってんだろ。」
「そうは見えないのでそう言ってるんですよ。」
何やら口喧嘩が始まりそうな雰囲気だ。亮と瀧雄はどうしようかと静かに慌てていた。しかし和紀は何故か笑っていた。それも楽しそうに。
「はは、龍之介にそこまで強気でいれるのはお前ぐらいだな益田。」
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