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極道の世界
不信感
「りゅ、りゅ、うのすけ…苦しい。」
龍之介は庵が無事に帰ってきたこと。庵が運良く宏斗らにされた仕打ちすべての記憶をなくしてしまっていたこと。その全てが重なり合ったこの偶然に龍之介は喜んだと同時に不安になった。あまりにも物事がうまくいきすぎている時こそ何か起こるかもしれないから。だがそれは龍之介のただの勘だ。勘にすぎない。しかし龍之介は感じてしまうのだ。なにか不吉なことが起こるかもしれない…と。そんなことを思っていると龍之介は無意識のうちに庵を抱きしめていた手に力が入ってしまったようで庵にそう言われてしまった。そのため龍之介は急いで腕の力を抜いた。
「悪い庵…。」
龍之介は苦しいと言った庵のことを離すとその後すぐさま庵の顔を覗き込んだ。庵の顔色を伺うために。そして龍之介が庵の顔を覗き込むと案の定不貞腐れていた。だが痛くはなかったようだ。それだけでも龍之介は安心した。
「なんて顔してんだお前は。大丈夫か?」
不貞腐れている庵の頬をモミモミとしながら龍之介がそう言った。その横では亮も瀧雄も笑いながら庵を見ていた。いつもの庵だったらその光景にもまた怒るだろう。笑わないでなんて言って庵はきっとどこかに行こうとするはず。しかし今回庵は怒らなかった。それは龍之介の行動に不信感を覚えたから。
「…庵?」
3人にちょっかいを出されているのに庵は怒らない。それどころか亮には庵が何かを考え込んでいるようにも見えた。そのため亮はそう庵の名を呼んだのだ。その亮に対して庵はさらに首を傾げる。亮が手を出してこないから。
「龍之介も亮も…瀧もみんなほんとにどうしちゃったの…?」
「ん?どうってなんだよ。」
無意識のうちに態度に出ていたのかもしれない。そう思った瀧雄が庵に不信感を抱かせないよう気に食わぬ顔をしてそう言った。記憶を蘇らせて庵が恐怖の中に落ちてしまうのを防ぐために。しかしそんな瀧雄に対しても庵は疑問を抱いた。
「だって…みんないつもと違う。いつもだったら俺が何を言っても抱いてくるのに…。」
そういうことか。龍之介も亮も瀧雄も庵の言ったことを聞いて納得した。庵はそこに不信感を抱いていたのだ…と。それなら話が早い。それは誤魔化せる内容だから。
「なんだよ庵。寂しいのか?」
「ち、ちがっ、そういう意味じゃなくてっ、ちょっと亮っ、こっちに来るな!」
庵の身体は絶対に疲れている。宏斗らを相手にしたのだ。疲れていないはずがない。だから亮らは絶対に庵に手を出さないようにしていた。しかしそれが逆に庵に疑問を抱かせてしまう結果になっていたようだ。それなら遠慮する必要は無いと亮は早速庵に手を出し始める。そして瀧雄もそんな亮に悪ノリしてきて…。
「寂しがり屋だなぁ庵は。そんな寂しいなら俺が構ってやろうか?ほら庵、こっち向けよ。」
「やめっ、いらないから…!」
庵はそう言ったが瀧雄はまるで言うことを聞いてくれない。瀧雄は庵の顔を鷲掴みにすると何度も何度もキスをしてきた。亮に至っては耳も舐めてきている。今目の前には益田も和紀もいるというのに好き放題してくる2人。その2人から逃れようと庵は暴れて暴れていた。すると案外簡単に亮ら抜け出すことが出来た。まぁそれは2人があまり強く庵のことを押えていなかったからだ。身体中痛む庵に無理なんてさせること絶対に出来ないから。そしてそんな2人から逃げだした庵はすぐさま龍之介の腕の中に飛び込んだ。その庵をみて亮が口を開く。
「おい庵。こっち戻ってこいよ。」
自分たちの元から逃げ出して龍之介のところに行ってしまった庵に対して亮はそう言ったが…。
「亮うるさいっ、もう亮とは口聞かないから…!」
庵はそう言い戻る気配がない。しかもどうやら庵はハブててしまった様子だ。だがだからといって今の庵を力づくで戻すわけにもいかない。そのため亮はしばらく我慢な毎日が続きそうで溜息をつきたくなった。庵の身体が全回復するまではきっと抱くことすらも出来ないだろうから。そんなふうに亮が落ち込んでいると瀧雄が背中を叩いてきた。
「だとよ亮。お前は要らねぇって。どんまい。」
「うるせぇな。お前は黙っとけよ瀧。つかお前も人の事言えねぇからな。」
「おいお前らすぐ喧嘩すんなっていつもいってんだろうが。」
庵にちょっかいを出すところまでは黙って見守っていた益田だがこれ以上は見ていられないと口を挟んだ。その益田に怒られた2人は分かりやすくしょげてしまう。
「「…すみません。」」
いつもだったら庵には見られない光景だ。だから庵はそんなふうに落ち込む亮と瀧雄を見ているとなんだか面白くなって気づけば口角が上がっていた。その庵にすぐさま気づいた亮が庵のお腹を揉み揉みし始めた。
「おい庵、何笑ってんだよ。」
「ちょ、触んないでよ…!」
「お前が笑うからだろ?」
「だ、だってなんか新鮮だなぁって思ったから…!」
「はぁ?」
庵の言っている新鮮という意味が亮には分からなかった。そんな亮と同様に瀧雄も分からなかったようで瀧雄も庵を重視している。そんな2人に庵は分かりやすく説明をし始める。
「亮は龍によく怒られてるけどそこまで反省してないじゃん?瀧もだけどさ。だからそんな風に反省してる2人見るのすごい新鮮だよってこと。」
「…お前な。」
なんと言えばいいのか分からなくなった亮。新鮮…。喜ぶべきなのだろうか。いや違うだろう。だが庵からすればこれまで見れていなかった亮と瀧雄の姿が見れた。それが少し庵は嬉しかったのだ。しかも庵はその嬉しさが顔に現れていた。そんな表情を庵にされては瀧雄も亮もこれ以上なにも言えない。だって庵が可愛い顔をするんだもの。そんなふうに黙り込んでしまった亮と瀧雄をみて龍之介は呆れ顔を浮かべながら口を開いた。
「確かに庵の言う通りだ。それは事実だな。こいつらは俺の言うことを全く聞かねぇ奴らだからな。困ったもんだ。」
「ちょ、ちょっと若までそんな事言わないで下さいよ。」
「そういや庵、お前腹減ってねぇか?」
「…無視しないでくださいよ若。」
龍之介に言ったことに対してすぐに反論した亮だが綺麗に龍之介によって交わされてしまった。それが少し寂しかった亮は龍之介に再び文句を言う。自分の言ったことに対してちゃんと答えてもらうために。しかし龍之介は…。
「うるせぇ亮。今は庵が優先だからちょっと待ってろ。」
「なんですかそれ!俺がまるで若に構って欲しい見たいじゃないですか!」
「何言ってんのさ。いつもそうじゃんか亮は。ていうか龍之介っ、おれお腹空いた…!」
庵にまでそう言われては亮は言い返すことが出来ない。確かにそうなのかもしれない。だが亮は自覚していなかった。そのため少し反省した。そして自分の行いを恥じた。そんな1人反省会を開いている亮を差し置いて庵は龍之介にそう言った。その庵の言葉に龍之介は優しく微笑みながら頭を撫でてくれた。
「よし。なら食うか。運んでやるよ。あ、親父達も食っていくか?」
「そうさせてもらうか。礼を言うぞ龍之介。」
「ありがとうございます坊ちゃん。大人になりましたね。」
「うるせぇよ。」
たかがご飯を食べていくことを勧めただけなのに感謝され益田には貶されているのか褒められているのか分からなかったがそう言われた。そんな和紀と益田に龍之介はぶっきらぼうにそう言うと庵の手を引きキッチンへと向かっていった。その龍之介をみて亮が口を開いた。
「あ、若どこ行くんですか!」
「キッチンだ。亮、お前も突っ立ってないで手伝え。瀧もだぞ。早く来い。」
「「はい。」」
龍之介は庵が無事に帰ってきたこと。庵が運良く宏斗らにされた仕打ちすべての記憶をなくしてしまっていたこと。その全てが重なり合ったこの偶然に龍之介は喜んだと同時に不安になった。あまりにも物事がうまくいきすぎている時こそ何か起こるかもしれないから。だがそれは龍之介のただの勘だ。勘にすぎない。しかし龍之介は感じてしまうのだ。なにか不吉なことが起こるかもしれない…と。そんなことを思っていると龍之介は無意識のうちに庵を抱きしめていた手に力が入ってしまったようで庵にそう言われてしまった。そのため龍之介は急いで腕の力を抜いた。
「悪い庵…。」
龍之介は苦しいと言った庵のことを離すとその後すぐさま庵の顔を覗き込んだ。庵の顔色を伺うために。そして龍之介が庵の顔を覗き込むと案の定不貞腐れていた。だが痛くはなかったようだ。それだけでも龍之介は安心した。
「なんて顔してんだお前は。大丈夫か?」
不貞腐れている庵の頬をモミモミとしながら龍之介がそう言った。その横では亮も瀧雄も笑いながら庵を見ていた。いつもの庵だったらその光景にもまた怒るだろう。笑わないでなんて言って庵はきっとどこかに行こうとするはず。しかし今回庵は怒らなかった。それは龍之介の行動に不信感を覚えたから。
「…庵?」
3人にちょっかいを出されているのに庵は怒らない。それどころか亮には庵が何かを考え込んでいるようにも見えた。そのため亮はそう庵の名を呼んだのだ。その亮に対して庵はさらに首を傾げる。亮が手を出してこないから。
「龍之介も亮も…瀧もみんなほんとにどうしちゃったの…?」
「ん?どうってなんだよ。」
無意識のうちに態度に出ていたのかもしれない。そう思った瀧雄が庵に不信感を抱かせないよう気に食わぬ顔をしてそう言った。記憶を蘇らせて庵が恐怖の中に落ちてしまうのを防ぐために。しかしそんな瀧雄に対しても庵は疑問を抱いた。
「だって…みんないつもと違う。いつもだったら俺が何を言っても抱いてくるのに…。」
そういうことか。龍之介も亮も瀧雄も庵の言ったことを聞いて納得した。庵はそこに不信感を抱いていたのだ…と。それなら話が早い。それは誤魔化せる内容だから。
「なんだよ庵。寂しいのか?」
「ち、ちがっ、そういう意味じゃなくてっ、ちょっと亮っ、こっちに来るな!」
庵の身体は絶対に疲れている。宏斗らを相手にしたのだ。疲れていないはずがない。だから亮らは絶対に庵に手を出さないようにしていた。しかしそれが逆に庵に疑問を抱かせてしまう結果になっていたようだ。それなら遠慮する必要は無いと亮は早速庵に手を出し始める。そして瀧雄もそんな亮に悪ノリしてきて…。
「寂しがり屋だなぁ庵は。そんな寂しいなら俺が構ってやろうか?ほら庵、こっち向けよ。」
「やめっ、いらないから…!」
庵はそう言ったが瀧雄はまるで言うことを聞いてくれない。瀧雄は庵の顔を鷲掴みにすると何度も何度もキスをしてきた。亮に至っては耳も舐めてきている。今目の前には益田も和紀もいるというのに好き放題してくる2人。その2人から逃れようと庵は暴れて暴れていた。すると案外簡単に亮ら抜け出すことが出来た。まぁそれは2人があまり強く庵のことを押えていなかったからだ。身体中痛む庵に無理なんてさせること絶対に出来ないから。そしてそんな2人から逃げだした庵はすぐさま龍之介の腕の中に飛び込んだ。その庵をみて亮が口を開く。
「おい庵。こっち戻ってこいよ。」
自分たちの元から逃げ出して龍之介のところに行ってしまった庵に対して亮はそう言ったが…。
「亮うるさいっ、もう亮とは口聞かないから…!」
庵はそう言い戻る気配がない。しかもどうやら庵はハブててしまった様子だ。だがだからといって今の庵を力づくで戻すわけにもいかない。そのため亮はしばらく我慢な毎日が続きそうで溜息をつきたくなった。庵の身体が全回復するまではきっと抱くことすらも出来ないだろうから。そんなふうに亮が落ち込んでいると瀧雄が背中を叩いてきた。
「だとよ亮。お前は要らねぇって。どんまい。」
「うるせぇな。お前は黙っとけよ瀧。つかお前も人の事言えねぇからな。」
「おいお前らすぐ喧嘩すんなっていつもいってんだろうが。」
庵にちょっかいを出すところまでは黙って見守っていた益田だがこれ以上は見ていられないと口を挟んだ。その益田に怒られた2人は分かりやすくしょげてしまう。
「「…すみません。」」
いつもだったら庵には見られない光景だ。だから庵はそんなふうに落ち込む亮と瀧雄を見ているとなんだか面白くなって気づけば口角が上がっていた。その庵にすぐさま気づいた亮が庵のお腹を揉み揉みし始めた。
「おい庵、何笑ってんだよ。」
「ちょ、触んないでよ…!」
「お前が笑うからだろ?」
「だ、だってなんか新鮮だなぁって思ったから…!」
「はぁ?」
庵の言っている新鮮という意味が亮には分からなかった。そんな亮と同様に瀧雄も分からなかったようで瀧雄も庵を重視している。そんな2人に庵は分かりやすく説明をし始める。
「亮は龍によく怒られてるけどそこまで反省してないじゃん?瀧もだけどさ。だからそんな風に反省してる2人見るのすごい新鮮だよってこと。」
「…お前な。」
なんと言えばいいのか分からなくなった亮。新鮮…。喜ぶべきなのだろうか。いや違うだろう。だが庵からすればこれまで見れていなかった亮と瀧雄の姿が見れた。それが少し庵は嬉しかったのだ。しかも庵はその嬉しさが顔に現れていた。そんな表情を庵にされては瀧雄も亮もこれ以上なにも言えない。だって庵が可愛い顔をするんだもの。そんなふうに黙り込んでしまった亮と瀧雄をみて龍之介は呆れ顔を浮かべながら口を開いた。
「確かに庵の言う通りだ。それは事実だな。こいつらは俺の言うことを全く聞かねぇ奴らだからな。困ったもんだ。」
「ちょ、ちょっと若までそんな事言わないで下さいよ。」
「そういや庵、お前腹減ってねぇか?」
「…無視しないでくださいよ若。」
龍之介に言ったことに対してすぐに反論した亮だが綺麗に龍之介によって交わされてしまった。それが少し寂しかった亮は龍之介に再び文句を言う。自分の言ったことに対してちゃんと答えてもらうために。しかし龍之介は…。
「うるせぇ亮。今は庵が優先だからちょっと待ってろ。」
「なんですかそれ!俺がまるで若に構って欲しい見たいじゃないですか!」
「何言ってんのさ。いつもそうじゃんか亮は。ていうか龍之介っ、おれお腹空いた…!」
庵にまでそう言われては亮は言い返すことが出来ない。確かにそうなのかもしれない。だが亮は自覚していなかった。そのため少し反省した。そして自分の行いを恥じた。そんな1人反省会を開いている亮を差し置いて庵は龍之介にそう言った。その庵の言葉に龍之介は優しく微笑みながら頭を撫でてくれた。
「よし。なら食うか。運んでやるよ。あ、親父達も食っていくか?」
「そうさせてもらうか。礼を言うぞ龍之介。」
「ありがとうございます坊ちゃん。大人になりましたね。」
「うるせぇよ。」
たかがご飯を食べていくことを勧めただけなのに感謝され益田には貶されているのか褒められているのか分からなかったがそう言われた。そんな和紀と益田に龍之介はぶっきらぼうにそう言うと庵の手を引きキッチンへと向かっていった。その龍之介をみて亮が口を開いた。
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「「はい。」」
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