血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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トラウマ

起床

「……ん…………。」



頭がキンキンする…。なんだろうこれ…。苦しい…。痛い…。庵は目が覚めたのはいいけれど目の前が明るくて目を開けられなかった。その上頭が痛い。物凄く痛かった。これまで経験したことの無い頭痛に襲われ庵は顔を顰めた。その痛みを紛らわそうと本能から庵は寝返りを打つ。だが痛みは当然治まらない。だけど動いていた方がまだ気を紛らわせると思った庵は身体をちょっとずつ動かしていた。そんなことをする庵にいち早く気づいた亮が庵の元まで駆け寄ってきた。



「庵?起きたのか?」

「うぅ…。」

「どうした?」



寝ている間の庵は顔色も悪くなかった。悪夢を見ている様子もなかった。なのに今の庵の顔は真っ青だ。この短時間に何があったのだろうか。亮は心配でたまらない様子で庵を抱きしめ頭を撫でる。



「まだ気持ち悪いか?」

「そう、じゃない…けど、ちょ、っと…っ、」



庵は受け答えはできている。それに気持ち悪い訳でもないようだ。ならなんなのだろうか。亮は庵を抱きしめたまま再び問いかける。



「そうかそうか。ならどうしたのか教えてくれるか?」

「…あたま、いたいの、」



庵は亮を抱き締め返しながらそう言った。亮の体温は暖かくて落ち着くから。この亮の匂いに包まれて庵は少しだけ頭痛が収まった気がした。そんなふうに抱き締め返してくる庵の頭を撫でながら亮は口を開く。



「そうか。頭痛くなっちまったか。ちょっと考えすぎて疲れちまったのかもな。我慢できそうになかったら薬飲むか?」

「…くすり?」

「ああ。頭痛薬だ。飲んだら痛みがすぐに治まるぞ。けどまぁお前が飲むの嫌なら無理して飲まなくていい。そんときは瀧が暖かい飲み物でも作ってくれるからよ。」



その亮の言葉に庵は黙り込んだ。だから亮は庵の答えを待った。近くで見守っている龍之介も瀧雄も亮同様に庵のことを見守っている。そしてしばらくの沈黙の後庵の中で答えが決まったようで庵は話し始めた。



「くすり、のまない…。」



庵がそう言うと亮は考え込んでしまったようで口を閉ざしてしまう。薬を飲めば痛みだけでもなくなり楽になるから。だから亮的には庵に薬を飲ませたかった。しかし庵の答えは真逆だ。そのため亮はどうやって庵に薬を飲ませようか考えていたのだ。そんな風に考え込んでしまった亮の代わりに今度は瀧雄が話し始めた。



「庵、変な薬じゃねぇよ?ただの頭痛薬だ。」

「わか、ってるけど、のみたくない…っ、」



庵自身もなんでそんなに薬が嫌なのか分からなかった。けれど何故か飲みたくなかった。飲んだら嫌なことが起こる気がして嫌だった。何か嫌な記憶が蘇りそうで怖かった。ただの直感だけどそんな気がしたから庵は薬を飲みたくなかったのだ。



「けど頭痛いんだろ?痛いの無くなったら大分楽になると思うぞ。」

「…そう、だけど、」



庵はその瀧雄の言葉に困った顔をした。庵自身も分からないから。どうしたらいいのか分からないのだ。なんで薬が嫌なのか分からない。そもそも庵は薬なんて飲んだことは無い。貧乏だったがために多少頭が痛くても我慢していた。お腹が痛くても耐えていた。我慢しなくちゃいけなかった。だから薬というものがどんなものかわからない分怖かったのかもしれない。だがそれだけじゃない。なんだか庵は不吉な予感がするのだ。



「飲みやすいように砕いてやる事も出来るぞ?」

「……うん、でも、」



痛みに苦しむ庵をこれ以上見たくなかった瀧雄は庵になんとしてでも薬を飲ませようとそう言った。しかし庵の答えは変わらないようだ。だから瀧雄はこれ以上庵に無理強いをすることをやめた。それが逆にストレスになってしまう恐れがあったから。



「まぁ庵が嫌ならやめとこう。その代わり毛布を被って暖かい飲み物でも飲もうな。」

「瀧、ありがとう…。」

「おう。」



瀧雄はそう言うと庵の頭を撫でた。そしてキッチンへと向かっていく。先程作っておいた料理と飲み物を取りに行くために。そんな瀧雄をみて龍之介が動き出した。



「亮、変われ。」

「はい。」



ずっと庵のことを抱きしめ頭を撫で続けていた亮に龍之介がそう言った。その後亮は直ぐに龍之介に場所を譲る。その時庵は亮が離れて寂しそうな顔をした。だが直ぐに龍之介が抱きしめてくれたのでその寂しさはすぐに無くなった。



「お前頭痛ぇのか?」

「うん…。」



龍之介も暖かかった。心地が良い。落ち着く。いつもだったらいつ手を出されるか分からなくて常に緊張していたであろう場面。なのに庵はここに来てから過去一と言ってもいいほど安心していた。その庵の落ち着いた顔を見て龍之介はホッとする。



「すぐに良くなるさ。時間が解決してくれる。でも頭痛ぇのは辛いよな。」



龍之介がそう言いながら庵に何度もキスをする。そして抱きしめてくれる。庵はそれを拒否することなく受け入れた。心地よかったから。



「りゅうのすけ…。」

「ん?」

「もっと…。」

「分かった。」



何をと言わなくても庵が求めているものがわかった龍之介。庵が求めていたもの…それはもっと強く抱きしめて欲しかったのだ。そのため龍之介は強く…でも苦しくさせないように庵を抱きしめた。ちょうどその時キッチンの方から瀧雄が戻ってきた。



「庵、飲み物持ってきたぞ。飲めそうか?」

「ありがとう…。」



瀧雄のその言葉を聞いた庵は龍之介の体の隙間から顔を出した。それがなんだか可愛くて瀧雄は思わずニヤケてしまった。しかし直ぐに表情を元に戻す。今はそんな場面では無いから。



「無理して飲まなくていいぞ。飲めそうだったら飲め。」

「飲みたい、瀧の美味しいから…。」

「そうか。でもまだちょい熱いから気をつけろよ。」

「うん。」



と、言い頷いた庵に瀧雄はコップを渡した。そして庵は瀧雄の作ってくれた飲み物をゆっくりと飲み始めた。



「…おいしい。」

「そりゃよかった。」



庵の言葉に瀧雄が嬉しそうにそう言った。そんな瀧雄をみて庵は新鮮な気持ちになった。体調を悪くした時これまで誰一人として心配してくれなかったから。してくれてたとしてもきっと口先だけ。心ではどうでもいいと思っている。だからこうして心から心配してくれる3人に庵は嬉しさを隠せなかった。嬉しくて嬉しくて涙が出そうになる。龍之介はそんな庵の頭を撫で頬にキスをする。



「庵、腹は減ってねぇか?」



龍之介が庵の顔中にキスをしながらそう聞いた。その龍之介の問いかけに庵は少し考えて答えを出した



「ちょっとだけ空いてる。」

「なら食べるか?さっき瀧が作ってくれたやつがあるから。」

「食べたい…っ!」



庵がそう言い笑った。その笑顔を見て3人はつられて笑う。庵は笑顔がやはり似合う。ずっと笑っていて欲しい。そう思うほどに。



「よし。そういう事なら持ってきてやる。お前の好物作ってやったから楽しみに待っとけ。」

「やった…っ!」



庵にいつもの調子が戻ってきている。それを感じた瀧雄はさぞ嬉しそうにキッチンへと足を進めていった。そして庵も瀧雄の料理が食べれることが嬉しくて笑みを浮かべていた。いつもの日常だ。壊されかけたけれど徐々に戻ってきている。それがどれだけ幸せなことか。だが気は抜けない。だから龍之介も亮も瀧雄も変わらず気を張り続けていた。庵には絶対悟られないように…。



「楽しみ…!」

「そうだな。でもあんま食いすぎんなよ。腹壊しちまったら元も子もねぇからよ。」

「分かってるよ。」



庵は過度に心配してくる龍之介にそう答えた。すると龍之介は何故か笑ってくる。嬉しかったのだろうか?庵はそんな龍之介に少し疑問を抱いたが深くは考えず瀧雄の料理を待った。

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