血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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消毒という名の快楽地獄

焦り

「はは、嘘ついてんじゃねぇよ。この状況でどうしようも無くなったからしょうもない嘘をつき始めたのか?そんなこと信じるわけねぇだろ。」



あまりにも宏斗が言った内容が信じ難いものだったため龍之介は苦笑いでそう言った。しかし龍之介は内心焦っていた。それが本当ならかなりまずいことになるだろうから。



「別に俺はお前に信じて欲しくて言ったわけじゃねぇ。ただこれが事実だ。こうなったのは俺がちゃんと計算して動かなかったせいだし仕方ねぇ。けど覚えとけよ龍之介。お前は必ず苦しむことになる。」



宏斗は真面目な顔をしてそう言った。もし本当に栗濱組と手を組んでいるなら宏斗はしくじったことになる。そんな宏斗を栗濱組の連中がほおっておくわけが無い。殺されるにしても必ず痛めつけられて殺されるだろう。指を1本1本切られたり爪を剥がれたり…。そんな状況なのに宏斗はまだ龍之介を苦しめることをやめない。最後の最後まで龍之介を恨む。そんな宏斗をみて龍之介は…。



「まるで死にかけ野鼠だな。」

「ちょ、ちょっと若…。」



瀧雄が宏斗を煽る龍之介にそう焦ったように言った。瀧雄は焦っていたのだ。宏斗が嘘をついているように見えなかったから。だから栗濱組と手を組んでいる宏斗を煽ってはまずいと思ったのだろう。しかし龍之介は何も怖くないようで瀧雄の言葉を無視した。



「お前はどの道死ぬんだ。今更何をほざこうが何も意味ねぇんだよ。死人に口なしだからな。」

「なんとでも言えよ龍之介。けど事実は変わらねぇからな。」

「そうかよ。」



宏斗の生死は今龍之介に握られている。そんな状況になっても宏斗は焦らない。そんな宏斗をみて龍之介は更に焦る。その理由は栗濱組の連中が既に庵の情報を獲得しているだろうから。これから死ぬのに宏斗が焦らないのはそういうことだろう。宏斗は自分の任務を全うした。だからこうして龍之介を嘲笑い続けている。それにもし宏斗がこの住所も言っているとしたら…。そしたら庵がいるところもバレてしまう。そうなれば庵の身が危険だ。だから龍之介は…。



「益田。こいつを殺せ。」



龍之介は早く宏斗を殺さなければまずい気がしたのだ。とんでもないほどの悪い予感がする。龍之介がこんな気持ちになるのは久しぶりだった。喧嘩はもちろん頭脳も兼ね備えている龍之介には敵無しだったから。だが栗濱組は話が別なのだ。だからその組と繋がっているとしたら直ぐに排除したい龍之介。駆除しなければ気が済まないのだ。しかしそれには和紀の許しが必要だ。そのため益田は龍之介の顔色を伺いながら話し始めた。



「…坊ちゃん。さすがにそれは親父も黙ってませんよ。」

「いいからやれ。」

「やれません。まずは親父に相談しましょう。」



勝手にしてはダメだ。してしまえば龍之介が罰を受けることになる。そのため益田はそう言った。しかし龍之介は…。



「そうか。なら俺がしよう。」



龍之介はそう言い近くにあった拳銃を手にする。そんな龍之介を見てたまらず瀧雄が動き出した。



「若…!!!!!」



瀧雄は龍之介の持っていた拳銃を奪った。そして投げ捨てた。その後龍之介のことを真っ直ぐ見つめた。



「落ち着いてください…。」

「俺は落ち着いている。邪魔をするな。瀧、さっさとどけ。」

「退きません!!それにどこが落ち着いているのですか!確かに宏斗さんの言った内容は恐るべきものです。しかしそれがなんの関係があるというのですか。若は強いです。それにきっと宏斗さんは捨て駒としか思われていませんよ。そんな相手のために若は組長…いや親父さんの信頼を裏切るのですか?」



普段瀧雄が声を荒らげることは少ない。だからこそ緊急時の時に助かるのだ。瀧雄が怒ればそれだけ緊急であることがわかるから。そんな瀧雄に続くように益田も話し始めた。



「瀧の言う通りです。坊ちゃんは一度この部屋から出てください。」

「…チッ。」




龍之介はそう舌打ちをすると益田に言い返すことはせずこの部屋から出ていった。そんな龍之介をみて瀧雄は申し訳なさそうに益田に頭を下げた。



「申し訳ないです益田さん…。」

「気にするな。それよりお前は坊ちゃんを頼む。ここは俺に任せろ。」

「恩に着ります益田さん。」



瀧雄はそういうと益田に一礼をして部屋を後にした。そして先に出ていった龍之介を追いかける。



「待ってください若…。」

「瀧か?」



後ろから聞こえてきた声と足音の主を探るために龍之介は後ろを振り返りそう言った。そして龍之介はその音の主が瀧雄だとわかると…。



「さっさと帰るぞ瀧雄。」



普段龍之介は瀧雄のことを『瀧』と呼ぶ。しかし何かあった時や不安な時。そして焦っている時。他にも色々あるが普段と違う時には龍之介は瀧雄と呼ぶ。なのでその『瀧雄』呼びをされた瀧雄は心配そうに龍之介を見た。



「…若。どうしたんですか。」

「あ?」

「そんなに感情を表に出す事普段ないじゃないですか。何がそんなに…。」



瀧雄は龍之介が心配だった。仕事では絶対に感情を表に出さないあの龍之介がここまで焦っている。そんな姿を見て瀧雄はどうしたら良いのか分からなくなったのだ。そんな不安そうな瀧雄の声に龍之介は足を止め話し始めた。



「お前栗濱組の連中と会ったことがあるか?」

「話には聞いてますけど実際には会ったことは…。」

「そうか。なら今はそれでいい。また話す。」

「…はい。」

「とりあえず今は帰るぞ。庵が心配だ。」

「そうですね。早く帰りましょう。」



今の龍之介を下手に刺激してしまうのはよくない。そう思った瀧雄はただ龍之介の言ったことに賛同しそう答えた。そんな瀧雄のおかげもあってか龍之介は少し落ち着いたようにも見えた。そのため瀧雄はこれ以上龍之介に何も言わなかった。そして車に乗りこみ運転を開始した。そんな時…。



「あ、若。」

「どうした?」

「電話が鳴ってるので誰からか見てくださいますか?」



今運転中の瀧雄は携帯を見るわけにはいかない。そのため隣に座っている龍之介にそう聞いたのだ。そして龍之介は瀧雄のポケットから携帯を取りだし相手を見てくれた。



「…亮からだ。」

「なら出た方が良いですね。」

「そうだな。俺が出てやる。」

「ありがとうございます。」



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