血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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囚われの身

知られなかった事実 *

「そういや亮、お前には話してなかったな。」



そう言ってきた龍之介をみて亮はなんとなくではあるが察した。何がが起きたんだということを。龍之介も龍之介でそれを亮に伝えなければと思っていた。しかし今はそれよりも優先すべきことがある。それは庵だ。



「まぁその前に瀧、庵を風呂に入れてやれ。起こさないようにそっとしてやれよ。」

「承知しました。」

「万が一怪我でもさせたらお前でも容赦しねぇからな。」

「分かってますよ。」



瀧雄は龍之介にそう返事をすると庵を優しく抱きかかえ寒くないようブランケットをかけた。そして瀧雄はそのまま庵を連れて浴室へと歩いていった。その瀧雄を見届けたあと龍之介は真剣な顔をして亮をみた。



「亮、お前栗濱組を知ってるか?」

「え…なんでですか?」



この時龍之介は亮に対して不信感を抱いた。知っているかという問いかけに対してなんで?と答えたからだ。そういう場合、うしろめたいことや隠していることがある。亮に限ってそんなことは無いと思っていたので龍之介は顔を顰めた。



「あ?なんでだと?それはどういう意味だ。」

「…いえ、なんでもありません。」



亮は龍之介に問い詰められても言わなかった。しかし亮が何かを隠していることは確かだ。だから龍之介は亮に再び問い詰める。



「なんだよお前。知ってんのか知らねぇのか正直に言え。」

「………えっと、」



かなり言いずらいことなのだろう。亮は言葉に詰まってしまった。そんな様子の亮をみて龍之介はため息をつく。そして表情を変えた。



「亮、正直に言え。怒んねぇから。」



と、龍之介が言うと亮は顔を上げ龍之介の顔を見た。その様子を見る限り亮は龍之介の顔色を伺っているのだろう。そして龍之介が怒ってない。それを確認すると亮は話し始めた。



「その、知ってるというか昔関わりがありまして…。」

「関わり?どういう意味だ。」



これは龍之介にとって初耳の事だった。そのため龍之介は目を丸くした。そりゃそうだろう。極悪非道で有名な栗濱組と亮が関わりがあったと言ったのだから。そんな龍之介に亮は更なる驚くべき事実を話しだした。



「とても言いずらいのですが栗濱組のトップ…その人物は俺の実の父親です。」

「…は?」



展開が早すぎて龍之介はついていけていない様子だった。なんだって?父親?それも実の?これまで亮の口からは一度たりともそんなことを聞いていない。だから龍之介がこんなに驚くのも無理はないだろう。そんな龍之介の様子を伺いながら亮は再び話し始めた。



「でも俺は愛人との子供だったから隠し子で表には出されてない情報だと思います。」

「じゃあお前はなんで兄貴に捕まってたんだよ。」



龍之介の知っている過去の亮は玲二の玩具だったということ。だからどういう経緯で亮がここに来たのか龍之介は知りたかったのだ。



「それは話すと長くなるのですが簡単に言うと俺は売られたんです。」

「売られただと?」

「はい。」

「誰に。」

「父親にです。俺の母親と俺は栗濱に追い出されました。そのまま数年もの間隠れながら生活していたのですが母親が殺されたんです。」

「そうだったのか。」



亮が相当過酷な生活をしてきたことを龍之介は知らなかった。亮が龍之介に話さなかったので知るゆえもないがそれでももっと早く知っていたらと後悔した。きっと亮は今も尚苦しみの中にいるだろうから。



「お前は強いな。」

「そんなことありませんよ。」

「いやあるさ。なにせ俺の右腕に選ばれた男だからな。それで、お前の母親を殺したのは栗濱組の連中か?」

「はい。それで俺は母親を殺された後売られたんです。この組の長男である玲二さんのところに。」

「なるほどな。傍から見りゃ長男である兄貴が後継になるように見えたんだろうな。」



次の後継である玲二に媚びを売っておけば栗濱組の連中は上手く丸め込めると思ったのだろう。だが実際は龍之介が後継に選ばれた。その時はさすがに栗濱組の連中も狼狽えただろう。



「そうですね。それで俺は玲二さんの玩具になったというわけです。ですがそこからは関わりが一切ないです。」

「そうとも限らねぇぞ亮。」

「どうしてですか?」

「兄貴が栗濱組の事を知ってたんだ。いや知ってたと言うよりかは手を組んでいた。」

「宏斗さんがですか?」

「ああ。あいつは庵を栗濱組の連中に渡すつもりだったらしい。しかも栗濱組は国とも繋がっているらしくてな。」



国とも繋がっているとなれば下手に動けない。それどころか殺されてしまう恐れがある。国と繋がっていれば殺しをしたとしても取り消すことができるから。



「…それはややこしくなりそうですね。」

「そうなんだ。」

「今宏斗さんはどこにいるのですか?」

「益田の所だ。あいつの処理は益田に任せた。」

「それがいいですね。益田さんは経験も豊富ですから。」

「ああ。」



そう返事をした龍之介だが不安は消えない。いくら宏斗を隔離したとはいえ宏斗が栗濱組と手を組んでしまった以上きっとこの場所もバレてしまう。もしバレていなくてもそれは時間の問題だろう。早く庵を守る手段を考えなければならない。そんなことを龍之介が思っていると亮が話しだした。



「ですが栗濱組の連中が宏斗さんと連絡が取れないとなればきっと計画が失敗に終わったということを察するはずです。そしたら俺の方に来そうですね。」

「ああ。お前が生きていることをきっと知っているはずだからな。」

「すみません。俺がもっと早く言ってれば…。」

「過去に囚われても仕方ねぇよ亮。とりあえずお前はこの家から1歩も出るな。命の保証がねぇから。」



龍之介は亮を守るためにそう言った。だが亮は申し訳なさが膨れ上がってしまった。迷惑をかけた。それも命の恩人である龍之介に…。



「若、迷惑をかけちまってほんとすみません。」

「何言ってんだ。迷惑かけてなんぼだろ。」

「…若みたいな人ばかりだったら争いは起きないでしょうね。」

「そうか?でもまぁそんな世界は訪れねぇだろうがな。」

「…そうですね。」



いい事ばかり願ってしまう。何も争いなく生活出来たらどれだけいいだろうか。だがそれはただの妄想だ。それぞれ考え方も捉え方も違う。だから争いは起こってしまう。だからいくら願っても仕方が無いのだ。そのため龍之介は願望をするのではなく策を考えるべく行動を開始した。



「亮、話を戻すぞ。お前が知ってる限りでいい。栗濱の特徴を教えろ。」

「承知しました。」
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