100 / 210
囚われの身
別れ
*亮視点
「お忙しいですよね。すみません。」
その必要はない。その言葉に俺は危険を感じた。いつもの益田さんではなかったから。そしてその俺の察知した危険は予想を超える形になってしまう。
「そうじゃねぇよ亮。つかお前も下手な演技は辞めたろどうだ。」
「…え?」
まずい…。バレてしまったのか?でもまだ挽回できる。だって俺たちが益田さんがラットであると気づいているとは知られていないはずだから。
「演技?俺はそんなことしてませんよ。」
「お前も少しは大人になったようだな。」
「実際俺はもう大人ですからね。」
ああ。どうしたらいい。胸騒ぎが止まらない。腕すらも震えそうだ。こんな威圧感…。これまで益田さんから感じたことがない。
「大人…か。」
俺の言ったことに対して益田さんは少し上を向きながらそう言った。そして再び俺を見てきた。その時の益田さんの顔は一生忘れないだろう。それ程までに怖かった。
「大人になったお前に教えてやるよ亮。俺はさっき組長を殺してきた。」
「…………は?」
え、なんて…?組長を…殺した?
「この意味がお前なら分かるよな。坊ちゃんが動き始めたなら尚更だ。」
「…なにを、言っているのですか?」
訳が分からない。益田さんは組長に命を救われたのでは無いのか?ずっと支えてきたのではないのか?どうしてそうも簡単に殺せるのか俺には分からなかった。一日でも過ごせば殺す気は失せる。だが益田さんと組長は何年も一緒に過ごしてきたんだ。なのに…なんでっ、
「ああ、それと幹部を殺したのも俺だ。組長多分薄々気づいていただろうな。でもどうしようもなかった。坊ちゃんを守るために見て見ぬふりをしたんだ。けどまぁ結果的には守れてねぇけどな。」
「…そんな、」
それも益田さんの仕業だったなんて…。確かにそうだ。宏斗や玲二らが簡単に出来るわけが無い。そんな権力ないのだから。でもだったら益田さんは…。
「宏斗さんや玲二さんとも手を組んでいたのですか…?」
「いやあれはただの捨て駒だ。あぁ、そうだ亮。お前を玲二んとこに売るってのを提案したのも俺だ。」
「どうして…。」
「まぁそうなるよな。けどお前の知ってる俺は俺じゃねぇんだよ。俺は栗濱組の秘書だ。ここに密偵として侵入していただけ。俺が忠誠を誓ってんのも栗濱さんだけだ。」
それならどうして俺たちに優しくしてくれたのですか?どうして若のことを本当の息子のように可愛がっていたのですか。これはあんまりにも残酷じゃないですか。
「…けど益田さんは俺にあんなに優しくしてくれたじゃないですか。玲二さんにされたことを知ったあとも俺の事を、」
「それも引っ括めての作戦だからな。」
益田さんがこんなにもやり手だとは思わなかった…。全ては偽り。全部嘘。俺は信じたくなかった。
「今、宏斗さんは…?」
「死んだ。俺が殺した。」
「なんでだよ…。」
「必要ないからだ。あんな簡単な事も出来ねぇ奴なんていらねぇよ。生きる価値もねぇ。」
「ふざけんじゃねぇ!!」
俺は耐えきれなくなって叫んでしまった。もう敬語も使わない。尊敬もしていない。こいつは人の命をなんとも思っていない悪魔だ。
「大きな声を出すな。それに亮、そんなことをした所でお前じゃ俺には勝てねぇよ。」
「…そんなの分かってますよ。けど俺は退きませんからね。」
「賢い奴だ。俺が庵を回収しに来たことを分かってるようだな。お前が仲間になってくれていたらスムーズにことが進んでいただろうに。」
「なるわけねぇだろ…。」
「知ってるさ。そう思ったから俺はお前に声をかけなかったんだ。」
益田さんは…いや益田はそういうと腕をまくった。こいつ俺を殺す気だ…。
「無駄話はこの辺にしよう。亮、庵を渡せ。素直に渡したらお前の命は助けてやる。」
「いいえ。退きません。」
きっとどの道俺は死ぬ。それなら時間を稼がなければ。若が来たらもしかしたら勝てるかもしれない。俺じゃ無理だけど瀧や若が異変に気づいて帰ってくるかもしれない。そうすれば仮に俺が死んだとしても庵は助かる。だから俺は絶対ここを退くつもりはない。そんな俺を見て益田は呆れ顔をしてきた。
「たかが一人のガキの命のためにお前は死を選ぶのか?」
「はい。死んでも庵は渡しません。あいつの苦しむ顔をこれ以上見たくは無いので。」
「とことん馬鹿だなやつだ。お前は栗濱さんの息子なんだぞ。父親を裏切るのか?」
「捨てられた父親に忠誠を誓う意味はありません。」
「はは、それもそうだな。愛人との子供はゴミ以下だからな。」
「なんとでも言ってください。俺は挑発には乗りませんから。」
「…面白くねぇ奴だ。だが時間がねぇんだよ俺には。」
くそ、本気でやるつもりだ。俺には勝ち目がねぇのに。でも諦めねぇ。死んでも食らいついてやる。
「無駄だ亮。」
「う゛っ、」
くそ…!くそ…!!くそ……!!気絶しちまう。鳩尾を殴られちまった。攻撃してくるってわかってたのになんにも出来なかった。強すぎる。力の差がありすぎる…。それにこいつ、俺の事殺さずに気絶だけを…。まずい。このままじゃ庵が連れ去られちまう。
「…ま、て、」
「無駄だと言ってるだろ。お前はもうすぐ気絶する。そしたら坊ちゃんに伝えろ。庵は貰った、とな。」
「ふざ、ける、な…、」
「これまでのよしみで命だけは助けてやる。けどこれでお別れだ亮。お前は二度と庵には会えねぇよ。」
「お忙しいですよね。すみません。」
その必要はない。その言葉に俺は危険を感じた。いつもの益田さんではなかったから。そしてその俺の察知した危険は予想を超える形になってしまう。
「そうじゃねぇよ亮。つかお前も下手な演技は辞めたろどうだ。」
「…え?」
まずい…。バレてしまったのか?でもまだ挽回できる。だって俺たちが益田さんがラットであると気づいているとは知られていないはずだから。
「演技?俺はそんなことしてませんよ。」
「お前も少しは大人になったようだな。」
「実際俺はもう大人ですからね。」
ああ。どうしたらいい。胸騒ぎが止まらない。腕すらも震えそうだ。こんな威圧感…。これまで益田さんから感じたことがない。
「大人…か。」
俺の言ったことに対して益田さんは少し上を向きながらそう言った。そして再び俺を見てきた。その時の益田さんの顔は一生忘れないだろう。それ程までに怖かった。
「大人になったお前に教えてやるよ亮。俺はさっき組長を殺してきた。」
「…………は?」
え、なんて…?組長を…殺した?
「この意味がお前なら分かるよな。坊ちゃんが動き始めたなら尚更だ。」
「…なにを、言っているのですか?」
訳が分からない。益田さんは組長に命を救われたのでは無いのか?ずっと支えてきたのではないのか?どうしてそうも簡単に殺せるのか俺には分からなかった。一日でも過ごせば殺す気は失せる。だが益田さんと組長は何年も一緒に過ごしてきたんだ。なのに…なんでっ、
「ああ、それと幹部を殺したのも俺だ。組長多分薄々気づいていただろうな。でもどうしようもなかった。坊ちゃんを守るために見て見ぬふりをしたんだ。けどまぁ結果的には守れてねぇけどな。」
「…そんな、」
それも益田さんの仕業だったなんて…。確かにそうだ。宏斗や玲二らが簡単に出来るわけが無い。そんな権力ないのだから。でもだったら益田さんは…。
「宏斗さんや玲二さんとも手を組んでいたのですか…?」
「いやあれはただの捨て駒だ。あぁ、そうだ亮。お前を玲二んとこに売るってのを提案したのも俺だ。」
「どうして…。」
「まぁそうなるよな。けどお前の知ってる俺は俺じゃねぇんだよ。俺は栗濱組の秘書だ。ここに密偵として侵入していただけ。俺が忠誠を誓ってんのも栗濱さんだけだ。」
それならどうして俺たちに優しくしてくれたのですか?どうして若のことを本当の息子のように可愛がっていたのですか。これはあんまりにも残酷じゃないですか。
「…けど益田さんは俺にあんなに優しくしてくれたじゃないですか。玲二さんにされたことを知ったあとも俺の事を、」
「それも引っ括めての作戦だからな。」
益田さんがこんなにもやり手だとは思わなかった…。全ては偽り。全部嘘。俺は信じたくなかった。
「今、宏斗さんは…?」
「死んだ。俺が殺した。」
「なんでだよ…。」
「必要ないからだ。あんな簡単な事も出来ねぇ奴なんていらねぇよ。生きる価値もねぇ。」
「ふざけんじゃねぇ!!」
俺は耐えきれなくなって叫んでしまった。もう敬語も使わない。尊敬もしていない。こいつは人の命をなんとも思っていない悪魔だ。
「大きな声を出すな。それに亮、そんなことをした所でお前じゃ俺には勝てねぇよ。」
「…そんなの分かってますよ。けど俺は退きませんからね。」
「賢い奴だ。俺が庵を回収しに来たことを分かってるようだな。お前が仲間になってくれていたらスムーズにことが進んでいただろうに。」
「なるわけねぇだろ…。」
「知ってるさ。そう思ったから俺はお前に声をかけなかったんだ。」
益田さんは…いや益田はそういうと腕をまくった。こいつ俺を殺す気だ…。
「無駄話はこの辺にしよう。亮、庵を渡せ。素直に渡したらお前の命は助けてやる。」
「いいえ。退きません。」
きっとどの道俺は死ぬ。それなら時間を稼がなければ。若が来たらもしかしたら勝てるかもしれない。俺じゃ無理だけど瀧や若が異変に気づいて帰ってくるかもしれない。そうすれば仮に俺が死んだとしても庵は助かる。だから俺は絶対ここを退くつもりはない。そんな俺を見て益田は呆れ顔をしてきた。
「たかが一人のガキの命のためにお前は死を選ぶのか?」
「はい。死んでも庵は渡しません。あいつの苦しむ顔をこれ以上見たくは無いので。」
「とことん馬鹿だなやつだ。お前は栗濱さんの息子なんだぞ。父親を裏切るのか?」
「捨てられた父親に忠誠を誓う意味はありません。」
「はは、それもそうだな。愛人との子供はゴミ以下だからな。」
「なんとでも言ってください。俺は挑発には乗りませんから。」
「…面白くねぇ奴だ。だが時間がねぇんだよ俺には。」
くそ、本気でやるつもりだ。俺には勝ち目がねぇのに。でも諦めねぇ。死んでも食らいついてやる。
「無駄だ亮。」
「う゛っ、」
くそ…!くそ…!!くそ……!!気絶しちまう。鳩尾を殴られちまった。攻撃してくるってわかってたのになんにも出来なかった。強すぎる。力の差がありすぎる…。それにこいつ、俺の事殺さずに気絶だけを…。まずい。このままじゃ庵が連れ去られちまう。
「…ま、て、」
「無駄だと言ってるだろ。お前はもうすぐ気絶する。そしたら坊ちゃんに伝えろ。庵は貰った、とな。」
「ふざ、ける、な…、」
「これまでのよしみで命だけは助けてやる。けどこれでお別れだ亮。お前は二度と庵には会えねぇよ。」
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。