血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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囚われの身

頼りの綱

「…嘘、だろ。」



その声は瀧雄のものだ。瀧雄は龍之介に頼まれて組長である龍之介の父親の部屋に行っていた。だがそこで見た光景は…。



「組長!!!」



なんと和紀が血だけで倒れていたのだ。すかさず瀧雄は駆け寄り止血をしようと身体に触れた。しかし和紀の体はもう既に冷たかった。



「…そんな、組長。」



和紀が殺されてから大分時間が経っている。そして瀧雄は気づいた。和紀の体に戦った形成がないということに。それが意味することは1つだ。



「…あいつしか、いねぇ。」



瀧雄の言ったあいつというのは益田の事だ。まさかの裏切り。ずっと瀧雄は益田のことを本当の親のように思ってきた。なのにこんなことに…。



「くそ…。」



瀧雄は悔しさから唇を噛み締めた。それも血が出るほどに。だがこんなところで立ち止まっているようではダメだ。益田が動き始めしまった。それも和紀を殺した。この組のトップをいとも簡単に殺したのだ。和紀に争った形成がないことを見る限り後ろから撃ったのだろう。その事を龍之介に伝えるべく瀧雄は目を真っ赤にしながら電話をかけた。



『瀧雄か?』



電話越しに龍之介の声が聞こえた。その声を聞いただけなのに瀧雄は涙が溢れだしそうになる。だけど駄目だ。先に進まなくてはいけない。



 「はい。若、組長が殺されました。」

『やはりな…。』



瀧雄は龍之介の発した言葉にフリーズしてしまった。やはり?どういうことだ?龍之介はこのことを知っていたのか?



 「若。それってどういうことですか?」

『今兄貴たちの所に着いたんだが殺されていた。』

 「そんな…。」

『瀧雄。家に戻るぞ。庵が危ねぇ。』

 「は、はい。」



瀧雄はそう返事をして電話を着ると大急ぎで家に戻って行った。早くしなければ庵が危ない。益田が栗濱と手を組んでいたとしたら必ず庵を奪い去る。そんなことさせねぇ。亮もきっとそう思うはずだ。そうしたら亮も殺されてしまう。あいつは人一倍庵を愛しているから。



「急がねぇと。やべぇ。くそ!」



庵が連れ去られる前に。亮が殺される前に行かなくては…!和紀を簡単に殺すような人物だ。亮を殺すことにも庵を連れ去ることにも躊躇はしない。そして瀧雄が1番焦っているわけ。それは益田この組で誰よりも強いということだ。だから早くしなくてはいけない。そんなこんなで瀧雄が家に到着しドアを乱暴に開けた。

しかしーーー。



「…亮?」



瀧雄の目に映ったのは倒れている亮の姿。見たところ血痕はない。だが生きているかどうか分からない。そのため瀧雄は全速力で亮に駆け寄った。



「おい亮!!どうした…って庵は?」

「瀧、防犯カメラを確認しろ。急げ!!」



瀧雄が庵の姿がないことに気づき焦り出すと後ろから龍之介の声が聞こえた。龍之介も今到着したようだ。そして龍之介は焦ることなく瀧雄にそう指示を出した。



「は、はい。急いでやります。」



瀧雄がそう言って走っていったのを見ると龍之介は亮を揺さぶった。様子を見る限り亮は生きている。だったら誰がこんなことをしたのかを聞き出せる。それをいち早く聞き出したかった龍之介は亮を強めに揺さぶる。しかし亮は中々起きなかった。



「亮…。起きろ。頼むから起きてくれ。」

「……………。」

「くそ、何があったんだ…。薬でも使われたか?でも亮が負けた…?そんな事あるのか?相手は複数か?それとも…。」



亮が負ける。そんなことあるわけが無い。もし負けるとしても宏斗の時のような複数で襲われた時。あるいは身内…。それ以外はそもそもこの屋敷に入ることが出来ないのだから考えられない。けれど今は一択しかない。だってここは家なのだから。それに宏斗は何者かによって殺害されていた。玲二もだ。だとしたらそんなことできる人物は一人しかいない。だが…。



「そんな事、本当にあるのか…?」



龍之介はどうしても信じられなかった。自分を養子として迎え入れてくれたのは益田だ。益田が提案してくれていたのだ。だから龍之介はこうして今生きている。そんな命の恩人と言っても過言では無い人物の裏切り…。龍之介は信じたくなかった。



「若!!!!」



龍之介が悔しさから拳を握りしめていると瀧雄の叫び声が聞こえた。どうやら瀧雄は誰がこの家に侵入してきたのかを突き止めたらしい。



「庵は…?」

「…益田さんが連れ去っていきました。」

「くそ、なんてことだ。亮をやったのも益田か?」

「はい。とりあえず亮を起こしましょう。殴られただけで特に薬を使われたとか言うわけではなかったです。」

「そうか。亮は俺が起こすから瀧、お前準備をしろ。」

「はい。」



犯人は益田。それはつまり庵は栗濱組の連中の所に連れていかれるということ。それだけは避けたかった。だからせめて益田が栗濱の所に行く前に庵を取り戻したい。そのため龍之介は瀧雄を急かしたのだ。



「亮。起きるんだ。」

「………わ、か?」



亮の声だ。やっと起きてくれた。余程酷く殴られていたのだろう。こんなにも起きなかったのだから。



「よかった…亮。起きれそうか?」



亮が起きてくれた。死んでいない。それを確認した龍之介は安心から涙が溢れそうになった。だがそんな龍之介とは裏腹に亮の顔はどんどん真っ青になっていく。



「若!大変です。すみません俺のせいで庵が…!」

「分かっている。益田の仕業だろう。」

「すみません…。俺のせいです…。庵を守りきれなかった…。」

「違う。今は自分を責めるときではない。あの時も言っただろ。」



そう言ったが亮の事だ。相当責任を感じているだろう。だから亮のためにも早く庵を取り戻さなくてはならない。



「亮、益田は栗濱と手を組んでいるのか?」

「はい。そうです。」

「よし。行こう。」

「若、どこに行くのですか…?」

「栗濱の所に行くぞ。」



当然だろうと言うように龍之介は言った。だが相手はあの栗濱組だ。なんの考えもなしに突っ込んだら待っているのは死のみ。それに栗濱は龍之介を恨んでいる。だったら尚更死んでしまうだろう。だから亮は起き上がり龍之介を止め始める。



「…若。相手はあの栗濱ですよ。なんの策もなしに行くのですか?」

「そうだ。早くしねぇと手遅れになっちまう。」



龍之介は判断を間違えている。焦っているのだろう。だが焦ってはなんのいい事もない。しかし今の龍之介は下手に刺激してはいけない。そのためどうしようかと亮が思っていると瀧雄がリビングの方から戻ってきて話し始めた。



「若。俺達だけでは駄目です。頼みの綱の組長も亡くなってしまいました。だから今あなたが組長なんです。この組はあなたにかかっているのですよ。」

「だったら尚更行かねぇといけねぇんだ。」



龍之介らしくない。しかしそれだったら亮と瀧雄が助ける。それをするだけだ。だがそれをしたところで今の龍之介達だけでは誰がどう見ても勝ち目はない。だったら…。



「若。助けを求めましょう。」

「誰に助けを求めるってんだよ亮。俺達にはそんな奴…。」

「それがいるんです若。俺が母親と暮らしていた頃命を助けてくれたある男がいます。その男は栗濱よりも力があります。ただ今は表立った行動を避けているようで姿を現しません。ですが俺はその男の連絡先を知っています。」

「それは誰だ?」



亮は龍之介のことを真っ直ぐ見た。そして笑った。それほどまでにその相手は頼れるのだ。

そしてその人物の名は…。



「旭川 寛也です。」
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