血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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脱獄

知らない計画

「…組長?庵はどうしたんですか?」



寝室に庵と共に行ったはずの龍之介が一人で帰ってきた。その光景に驚いた亮が目を丸くして龍之介にそう言った。



「今は1人にしてやってる。多分そっちの方があいつ的にもいいからな。」

「組長がそう判断したなら庵は大丈夫そうですね。」



と、瀧雄が安心してそう言った。瀧雄は龍之介が1人でここに来るぐらい庵が回復したと思ったのだろう。しかし実際は逆だ。



「いや逆だ。暫くは目を離せねぇ。」

「…それはどういう意味ですか?」



瀧雄が真剣な顔をして龍之介にそう聞いた。目を離せない。その言葉を聞いてただ事ではないと感じたから。



「あいつは優しいからな。だから多分俺達から…いやこの家から逃げようとしてる。」

「「…え?」」



龍之介が言ったことを聞いて驚きのあまり反応が同じになった瀧雄と亮。そして亮は信じられないと言わんばかりに口を開いた。



「逃げるって…庵がですか?」

「そうだ。」

「そんなわけないじゃないですか。そもそも庵には帰る家もねぇのに。」



と、亮。そんな亮に龍之介は…。



「だからこそかもしれねぇな。」



と、言った。そんな龍之介の言葉を聞いてもやはり理解出来ていない様子の亮。瀧雄もそうだった。そんな2人に龍之介は丁寧に説明を始めた。



「あいつは幸せを知らずに生きてきた。だけどここで知った。その後に連れ去られて同時に親父が死んじまったからきっと罪悪感に押しつぶされてんだろうよ。」



その龍之介の言ったことを聞いて亮と瀧雄の中にある不安が芽生えた。その不安というのは…。



「…組長はどうするつもりですか?」

「あ?どうするってどういう意味だ亮。」

「…庵を解放するつもりですか?」



亮と瀧雄は龍之介がもしかしたら庵の幸せを願ってこの家から解放させるかもしれない。それを思ったのだ。しかし龍之介にはそんなつもりはサラサラない。



「馬鹿か亮。あいつがいくら逃げたいとしがみついてきても俺は離してやんねぇよ。」

「そうですよね…。」



亮は龍之介の言葉に安心した。庵なしの生活は出来ないから。庵からすれば残酷な話かもしれないが亮らはもう庵なしでは生きていけないほどになっている。そのため亮は安心のあまりそう言ってため息をついてしまった。そんな亮の様子を見て龍之介は…。



「亮、お前はどう思ってんだ。」

「…え?」

「そう聞くって事は庵を解放すべきだとお前は考えてんのか?」

「いえ。俺も組長と同じ考えです。だからこそ不安になりました。組長が庵を解放したらどうしよう…と。」

「そうか。瀧、お前は?」

「俺も組長に賛成です。仮に庵に泣いてここから出せと言われても俺は出しません。」



瀧雄も亮も龍之介と同じ考え。それを知れた龍之介は心から安心した様子だった。



「安心した。お前らがその気でな。」

「当然です。」



と、亮。



「俺も安心しました。組長が俺達と同じ考えでよかったです。」



と瀧雄が言った。そしてそんな2人に続くように龍之介が…。



「そうだな。だがだったらあいつから目を離さねぇように代わる代わる見張ろう。勿論夜もな。まぁあの馬鹿が一人で玄関のセキュリティを破れるとは思えねぇが念の為だ。」

「「はい。」」



2人は龍之介の言ったことにそう返事をした。そして亮はあることを思いついた。そのことを伝えるべく口を開き…。



「組長。俺に考えがあるのですが…。」

「なんだ。」

「この際庵をわざと………」



そんな風に庵を逃がさないように3人が作戦を練り始めたちょうどその頃寝室では…。



「…どうしよう。」



庵は独り悩み続けていた。どうしようか、と。逃げなきゃいけない。けど逃げたくない。しかし逃げなければ龍之介たちが不運な目に遭う。だから逃げなくてはいけない。そんな気持ちが交差して庵は頭がおかしくなりそうになっていた。自分の気持ちに正直になれ。そんな事をかつて誰かに言われた。その言葉を信じていいのならここにいたい。だがそれでは…。



「龍が幸せになれない…。龍たちだけは幸せになって欲しい…。」



庵は自分がどれほど愛されているか知らない。龍之介らは庵を監禁してここに閉じ込めておくほど庵に執着している。なのに庵はここから逃げようとしている。それも龍之介らのために。いや愛されていることを知っているからこそ逃げようとしているのかもしれない。幸せを知れば不幸になりたくない。その気持ちが必然的に大きくなっていくから。



「…だから逃げないと。」



しかし見張りの目がある。亮、瀧雄、そして龍之介。果たして3人の目を盗んで庵がこの家から出られるだろうか。いや出来ないだろう。



「…でもみんなの目を盗んで逃げるの、難しいよね。」



庵は頭を抱えてしまった。どうしようもないこの状況に打ちのめされてしまったのだ。



「どうしよう…逃げるすべがない…っ。」



仮に運良く庵が玄関までたどり着けたとしても玄関の扉は開くことがないだろう。あの事件があったあとなのだから尚更セキュリティが高くなっているはずなのだ。庵はそこを抜け出して外に出なきゃ行けないのに…。



「外に…あ、そうだ。外に行きたいって言えば行けるかな。」



そうしたらもしかしたら隙を盗んで逃げられるかもしれない。今の庵が考えれる脱獄策はこれしか無かった。



「そうしよう。それしかない。」



玄関のセキュリティを破るのは不可能だ。だったら一緒に外に出ればいい。そしたらセキュリティを破らなくても庵は外に出られるから。それを思いついた庵は立ち上がり龍之介らがいるリビングへと向かって行った。

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