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糸
涙
*瀧雄視点
「さぁ、やるかって言いたいところだが…。」
俺は庵の唇の色が悪いことに気づいた。初めは俺らを怖がるあまりにそうなってんのかと思ったがどうやら違うようだ。この部屋を見る限り目が覚めた庵が何かを食べたり飲んだりした形跡がない。だから多分亮は庵に何も食わせてないんだ。そりゃ顔色も悪くなるよな。
「お前こいつに朝飯食わせてなかっただろ。水も。」
俺は少し亮を睨みながらそう言った。食事管理は最低限徹底しなければいけないものだ。なのにそれを亮は怠った。気づかなかった俺も悪いが元はと言えば亮が悪い。だから亮はやべ、みたいな顔をして俺から視線を逸らした。
「そ、そういやそうだな。躾はその後にするか。」
「ああ。食べて体力付けてもらわねぇと毎回毎回気絶されちまうからな。」
俺はそう言って庵の頭を撫でた。それだけで庵は震えた。正直俺は腹が立った。そりゃそうだろ。俺が触れてやってんのにこんなに嫌そうに震えやがるんだから。けど今は先に飯を食わせねぇと。
「てことだ庵。休憩がてら飯食いに行くぞ。」
「瀧待て。」
「あ?」
俺は庵を抱き抱えてリビングに行こうとした。だが何故かそれを亮は止めた。何故だろうか。それが分からなかった俺は亮のことを直視した。
「俺が飯持ってくるからお前は庵とここにいろ。そんな状態の庵動かしたらどっか痛めるだろ。」
「それもそうだな。じゃあ頼む。」
俺は亮の言ったことに賛同した。その後亮が飯を簡単に作りに行くためにこの部屋を出た。すると庵は目を泳がせ始めた。俺と二人っきりになってどうしたらいいのか分からないんだろうな。そんな庵の顔を俺は覗き込み優しく話しかけた。
「腹減ってるか?」
「…………っ。」
ただ一言…俺はそう言っただけだ。なのに庵は震えて答えられない。逃げる前はあんなに素直で可愛かったのに…。
「なぁ庵。俺が怖いか?」
「………………っ。」
もちろんその問いかけにも庵は答えなかった。いや…答えられなかったと言った方が正しいだろうな。こんだけ震えてりゃ話せなくなるに決まってる。けどだからって俺を無視していい理由にはならない。飯を食い終わるまでは怒らないと俺は決めていたのにそれが段々と出来なくなっていってしまった。
「なぁお前さ。なんで逃げたんだよ。」
「………………っ。」
「言えねぇの?」
俺は段々と声を低くしてしまう。その度に庵の震えが大きくなっていく。なんで…こうなるのは分かってただろ。なのにどうして逃げたんだよ。お前…あんなに幸せそうに笑ってたじゃねぇか。
「俺達のことが嫌いになったのか?」
「…………っ。」
まずい…。庵が過呼吸になる。くそ…そんなになるぐらいなら逃げんじゃねぇよ。けどこれ以上問い詰めるのもよくねぇな。過呼吸になられたりなんてしたらセックスが出来ねぇ。
「まぁいい。後々聞いてやる。今は休憩しとけ。」
「……………っ。」
俺はそう言って庵の頭を撫でた。すると庵は少しだけ落ち着いた様子になった。だがまだ震えは治まっていない。そんだけ俺が怖いんだろうな。
「庵。今はまだ何もしねぇから震えなくていい。」
亮が料理を作っている間は何もしない。ご飯と水を胃の中に入れるまでは庵に手を出さない。そう決めている俺は庵にそう言った。するとこれまで何も話さなかった庵が…。
「…………ぅ、に?」
「あ?」
庵が何かを話したのは聞こえた。だが何を話したのかまで分からなかった。だから俺は思わずそう言ってしまったがそれは間違えだった。庵を怯えさせてしまった。庵がせっかく話そうとしてくれた…いや何か俺に伝えようとしてくれていたのに。
「悪い庵。もう1回言えるか?」
俺がそう言うと庵は少し迷ったように考え込んでしまったがその後すぐに俺の顔を見た。そんでまた勇気を出して話してくれた。短い言葉だったけどな。
「……ほ、んと、に?」
きっと庵はさっき俺が言った今は何もしないという言葉についてそう言ったんだろう。それが分かった俺は庵の頭を撫でて頬にキスを落とした。
「ああ。今はな。今は何もしない。だから安心しろ。」
俺がそう言うと庵は分かりやすく安心した様子だった。顔色が変わった。先程とは違う。落ち着いた表情になった。俺は庵のその顔を見た時自分の過ちに気づいた。俺は庵にこんな顔をさせたかったんじゃない。俺は…。
「…た、き。」
俺が自分を責めていると庵が俺の名を呼んできた。だから俺はすぐに庵の顔を見た。
「どうした?」
「…りゅう、は?」
庵は俺たち3人の中できっと組長のことを1番怖がっている。だから庵はどこに組長がいるのか知りたかったんだろうな。
「組長は今寝てる。仕事でいっぱいいっぱいになってたからな。その後にお前が出ていこうとしたからパンクしたんだろうよ。けどお前がまたここに戻ってきたから安心したんだろうな。今はぐっすりだ。」
俺がそう言うと庵が突然…。
「…っ、ぅ、」
「庵?」
庵の涙が俺の腕に落ちてきた。俺は前触れもなく急に泣き出した庵に混乱してしまった。
「どうした。どっか痛いか?」
なんで庵が泣いているのか俺は全く分からなかった。俺のことが怖かったのか?いやそうじゃねぇ。それだったらもっと早くから泣いてる。だったらどうして…。
「庵。言わなきゃ分かんねぇ。どうしたのか言ってくれ。」
「…っ、こ゛めっ、んなさぃっ、ごめんっ、ごめんなさぃっ、」
「……………。」
なんに対しての謝罪だろうか。逃げ出してしまったことだろうか。だが俺にはそうは思えなかった。逃げ出したことでは無い。庵は組長の話をした途端に泣き出したのだから。いや…これか?組長のことで泣き出したのか?俺が仕事でいっぱいいっぱいになってるって言ったから…?
「好きなだけ泣け。俺がそばにいるから。」
どの口が言ってんだよって感じだよな。あんなことをしておいて…。けど俺はお前が逃げたしたことにちゃんと訳があることを今知れた。庵…お前が組長のことを心配してるから。だから泣き止んだ後に聞かせてくれ。お前がここから出ようとした本当の理由をな。
「ご、めんっ、ごめんなさぃっ、ごめん…っ、」
「謝らなくていい。」
謝るべきは俺だ。お前になんの理由も聞かずにあんなこと…。怒りで理性が無くなっていたとしてもやっていい事と悪い事があった。すまない庵。
「俺の方こそすまない。」
「…なんっ、で、?」
「なんでってそりゃ酷い事をしちまったから。」
「おれ、がっ、おれ…っ、」
庵は俺に何かを伝えようとしてくれていた。だが焦っているのかそれが言葉にならない。泣いているっていうのもあるだろうな。だから俺は庵を落ち着かせるために抱きしめた。
「庵。落ち着いてからでいい。落ち着いてから話し合おう。」
「さぁ、やるかって言いたいところだが…。」
俺は庵の唇の色が悪いことに気づいた。初めは俺らを怖がるあまりにそうなってんのかと思ったがどうやら違うようだ。この部屋を見る限り目が覚めた庵が何かを食べたり飲んだりした形跡がない。だから多分亮は庵に何も食わせてないんだ。そりゃ顔色も悪くなるよな。
「お前こいつに朝飯食わせてなかっただろ。水も。」
俺は少し亮を睨みながらそう言った。食事管理は最低限徹底しなければいけないものだ。なのにそれを亮は怠った。気づかなかった俺も悪いが元はと言えば亮が悪い。だから亮はやべ、みたいな顔をして俺から視線を逸らした。
「そ、そういやそうだな。躾はその後にするか。」
「ああ。食べて体力付けてもらわねぇと毎回毎回気絶されちまうからな。」
俺はそう言って庵の頭を撫でた。それだけで庵は震えた。正直俺は腹が立った。そりゃそうだろ。俺が触れてやってんのにこんなに嫌そうに震えやがるんだから。けど今は先に飯を食わせねぇと。
「てことだ庵。休憩がてら飯食いに行くぞ。」
「瀧待て。」
「あ?」
俺は庵を抱き抱えてリビングに行こうとした。だが何故かそれを亮は止めた。何故だろうか。それが分からなかった俺は亮のことを直視した。
「俺が飯持ってくるからお前は庵とここにいろ。そんな状態の庵動かしたらどっか痛めるだろ。」
「それもそうだな。じゃあ頼む。」
俺は亮の言ったことに賛同した。その後亮が飯を簡単に作りに行くためにこの部屋を出た。すると庵は目を泳がせ始めた。俺と二人っきりになってどうしたらいいのか分からないんだろうな。そんな庵の顔を俺は覗き込み優しく話しかけた。
「腹減ってるか?」
「…………っ。」
ただ一言…俺はそう言っただけだ。なのに庵は震えて答えられない。逃げる前はあんなに素直で可愛かったのに…。
「なぁ庵。俺が怖いか?」
「………………っ。」
もちろんその問いかけにも庵は答えなかった。いや…答えられなかったと言った方が正しいだろうな。こんだけ震えてりゃ話せなくなるに決まってる。けどだからって俺を無視していい理由にはならない。飯を食い終わるまでは怒らないと俺は決めていたのにそれが段々と出来なくなっていってしまった。
「なぁお前さ。なんで逃げたんだよ。」
「………………っ。」
「言えねぇの?」
俺は段々と声を低くしてしまう。その度に庵の震えが大きくなっていく。なんで…こうなるのは分かってただろ。なのにどうして逃げたんだよ。お前…あんなに幸せそうに笑ってたじゃねぇか。
「俺達のことが嫌いになったのか?」
「…………っ。」
まずい…。庵が過呼吸になる。くそ…そんなになるぐらいなら逃げんじゃねぇよ。けどこれ以上問い詰めるのもよくねぇな。過呼吸になられたりなんてしたらセックスが出来ねぇ。
「まぁいい。後々聞いてやる。今は休憩しとけ。」
「……………っ。」
俺はそう言って庵の頭を撫でた。すると庵は少しだけ落ち着いた様子になった。だがまだ震えは治まっていない。そんだけ俺が怖いんだろうな。
「庵。今はまだ何もしねぇから震えなくていい。」
亮が料理を作っている間は何もしない。ご飯と水を胃の中に入れるまでは庵に手を出さない。そう決めている俺は庵にそう言った。するとこれまで何も話さなかった庵が…。
「…………ぅ、に?」
「あ?」
庵が何かを話したのは聞こえた。だが何を話したのかまで分からなかった。だから俺は思わずそう言ってしまったがそれは間違えだった。庵を怯えさせてしまった。庵がせっかく話そうとしてくれた…いや何か俺に伝えようとしてくれていたのに。
「悪い庵。もう1回言えるか?」
俺がそう言うと庵は少し迷ったように考え込んでしまったがその後すぐに俺の顔を見た。そんでまた勇気を出して話してくれた。短い言葉だったけどな。
「……ほ、んと、に?」
きっと庵はさっき俺が言った今は何もしないという言葉についてそう言ったんだろう。それが分かった俺は庵の頭を撫でて頬にキスを落とした。
「ああ。今はな。今は何もしない。だから安心しろ。」
俺がそう言うと庵は分かりやすく安心した様子だった。顔色が変わった。先程とは違う。落ち着いた表情になった。俺は庵のその顔を見た時自分の過ちに気づいた。俺は庵にこんな顔をさせたかったんじゃない。俺は…。
「…た、き。」
俺が自分を責めていると庵が俺の名を呼んできた。だから俺はすぐに庵の顔を見た。
「どうした?」
「…りゅう、は?」
庵は俺たち3人の中できっと組長のことを1番怖がっている。だから庵はどこに組長がいるのか知りたかったんだろうな。
「組長は今寝てる。仕事でいっぱいいっぱいになってたからな。その後にお前が出ていこうとしたからパンクしたんだろうよ。けどお前がまたここに戻ってきたから安心したんだろうな。今はぐっすりだ。」
俺がそう言うと庵が突然…。
「…っ、ぅ、」
「庵?」
庵の涙が俺の腕に落ちてきた。俺は前触れもなく急に泣き出した庵に混乱してしまった。
「どうした。どっか痛いか?」
なんで庵が泣いているのか俺は全く分からなかった。俺のことが怖かったのか?いやそうじゃねぇ。それだったらもっと早くから泣いてる。だったらどうして…。
「庵。言わなきゃ分かんねぇ。どうしたのか言ってくれ。」
「…っ、こ゛めっ、んなさぃっ、ごめんっ、ごめんなさぃっ、」
「……………。」
なんに対しての謝罪だろうか。逃げ出してしまったことだろうか。だが俺にはそうは思えなかった。逃げ出したことでは無い。庵は組長の話をした途端に泣き出したのだから。いや…これか?組長のことで泣き出したのか?俺が仕事でいっぱいいっぱいになってるって言ったから…?
「好きなだけ泣け。俺がそばにいるから。」
どの口が言ってんだよって感じだよな。あんなことをしておいて…。けど俺はお前が逃げたしたことにちゃんと訳があることを今知れた。庵…お前が組長のことを心配してるから。だから泣き止んだ後に聞かせてくれ。お前がここから出ようとした本当の理由をな。
「ご、めんっ、ごめんなさぃっ、ごめん…っ、」
「謝らなくていい。」
謝るべきは俺だ。お前になんの理由も聞かずにあんなこと…。怒りで理性が無くなっていたとしてもやっていい事と悪い事があった。すまない庵。
「俺の方こそすまない。」
「…なんっ、で、?」
「なんでってそりゃ酷い事をしちまったから。」
「おれ、がっ、おれ…っ、」
庵は俺に何かを伝えようとしてくれていた。だが焦っているのかそれが言葉にならない。泣いているっていうのもあるだろうな。だから俺は庵を落ち着かせるために抱きしめた。
「庵。落ち着いてからでいい。落ち着いてから話し合おう。」
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