怖いお兄さん達に誘拐されたお話

安達

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温もり

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「最悪の事態って…。」

「死んでるかも知れねぇってことだ。」

「…そんな。」



俺は色んな感情が合わさりあって爆発しそうだった。俺がこんなに呑気に寝てる間に星秀さんは命も惜しまず…っ。



「けど、そうならねぇようにあいつらが星秀を探してんだ。動けない健二さんを残してな。」

「…渚さんは行かないのか?」

「俺はお前の見張りだ。」

「…俺の?」

「そうだ。組長の指示だからな。文句言うなよ。」

「…文句がある訳じゃないけど。」

「へぇ。何か言いたげな顔してるくせによ。」

「そりゃ…思うことはある。」



いっぱいあるよ。だって俺はどの道ここから逃げられないじゃないか。それなら渚さんがここにいる必要は無い。俺はただのお荷物じゃねぇか…。



「なんだよ誠也。なんでそんな顔してんだよ。顔上げろって。」



そう言いながら渚さんは変わらず明るい顔で俺のか頭を撫でてくれる。きっと渚さんは今不安で仕方ないはずなのに…っ。いやそう思ってるのは俺だけなのか…?渚さんはこの極道の世界で生きてきてる。だからこんな風に甘ったれた考えをしてるのは俺だけなのかもしれない…。



「…渚さんは星秀さんのこと誰よりも大事に思ってる気がしたからここにいていいのかなって。俺なんかに構ってる暇…ないんじゃねぇのかなって。」

「そりゃ俺だってあいつを探してぇよ。けどな誠也、俺らはチームなんだ。俺はあいつらを信じてる。だから星秀はあいつらに託す。んで俺は楽しくお前と過ごす。」

「…楽しくってなんだよ。」

「そのままの意味だ。おいで誠也。」



渚さんが手を広げて俺を呼んできた。この状況でするつもりなのか…?



「…今からやるのか?」

「やらねぇよ馬鹿。俺はそこまで薄情なやつじゃねぇ。ただお前が不安そうだから抱きしめてやるって言ってんだよ。」



なんだよそれ…っ。なんで俺をそんな風にして扱うんだ。渚さんになんの得があってこんなに優しくしてくるんだよ…っ。



「…そんなのいらねぇ。子供じゃねぇし。」



本当はちょっと…ちょっとだけ抱きしめて欲しいと思った。けど俺も強くなんなきゃいけねぇ。ここで甘えたら…駄目な気がしたから俺はそう言った。けど渚さんは…っ。



「うるせぇ。黙って抱きしめられてろ。おら、来い。」



そう言って渚さんは強引に俺を引き寄せて腕の中に閉じ込めた。



「まっ、強引なんだよ…!」

「いいじゃねぇか。ほら、落ち着くだろ?」

「…落ち着かねぇし。」

「いいから。このままここにいろ。大丈夫だから。」



くそ…っ。泣きたくないのにこいつの言葉聞いてると泣きそうになる。渚さんの…ばか。



「……………っ。」

「あいつらを信じて待ってような。な?誠也。」

「…分かってる。」

「うんうん。いい子だ誠也。大丈夫だからな。星秀もヤワじゃない。だからあいつもきっと帰ってこようと頑張ってくれてる。何せあいつは…星秀はお前の事を特別に思ってんだから。だから大丈夫、な?」
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