完結!【R‐18】獣は夜に愛を学ぶ(無垢獣人×獣人にトラウマを持つ獣人殺し)

路地裏乃猫

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ただ、ぬくもりを

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 変化には、すぐに気付いた。

 硬く閉じたロアの身体から、ふわりと香った甘美な匂い。ああ、これはと思った矢先、ロアは鎧を解くと、不意をくようにリクの鼻先をちろりと舐めた。まるで、そう、リクを誘い込むかのように。

「……ロア?」

「なあ、リク」

 紫の双眸が、じっとリクを見上げる。ただでさえ人間より優れた五感を持つリクに、それに気づくなという方が酷だ。

「抱いたのか、女を」

「えっ? あ……う、うん」

 意表を突く問いに、うろたえつつもリクは頷く。確かに、抱いた。ゲインの見よう見まねで。ただ、今こうしてロアを抱きしめながら感じる喜びやぬくもりは、そこにはなかった。ゲインの言うとおりにすればするほど、自分の中身が空っぽになるような虚しさばかりが募った。

 あるいは、これじゃないという違和感。

「じゃあ、やり方はわかるな」

 そしてロアは、リクの腰の熱にするりと手を伸ばす。一体、何をするつもりなのか。そうリクが問うよりも先に、未知の痺れがぞくりと全身を走る。……いや、一応知ってはいる。ついさっき女たちにされたこと。ただ、それと同じことを、あのロアにされているという事実が、未知の刺激を否応なしにリクの身体に注ぎ込む。

「はは……やっぱでかいな」

 なおもリクのそれに触れながら、鼻先でロアが囁く。その指先がリクの先端を小突くたび、リクのものはびくりと震え、見えない針で貫かれたような痛みを覚える。……それでも、そこは萎えることなく、むしろ余計に膨らみを増してゆく。

「や……めて、ロア……」

「どうして。したいんだろ?」

「や、だから」

 今度は口元を舐られる。唾液の甘い匂いにつられるようにその舌を絡め取ると、その奥から唾液よりもさらに甘い声が漏れてリクは慌てた。

「ん……リク……っ」

「……っ」

 これは夢か? あの女たちの宿で――あるいは、それ以前にもたびたび目にした白昼夢。あれが、今、現実と化している。リクの腕の中で妖しくくロア。

 でも……いや、だからこそ。

「や、めないと、お……俺、我慢、できなくなる」

「じゃあ、しなきゃいい」

「……え」

 一瞬、聞き間違いかと思った。が、覗き込んだロアの目は、今の言葉を裏付けるようにリクを誘い込んでいる。

「俺も、したい」

「……」

 ああ、駄目だ。

 リクの中で、固く閉ざしていた箱が音を立てて弾け飛ぶ。……わかっていた。どだい我慢などできるはずもなかったのだ。それでも何とか堪えたくて、堪えさえすれば何とかなると思って。

 でも。

「……ロア……っ」

 できるだけ平板な岩の上に、背中を抱えつつそっとロアを寝かせる。その上に、体重をかけないよう四つん這いの恰好で重なると、白い首筋や紅潮した耳たぶを丹念に舐った。……ああ、どこもかしこも甘い。より濃密な匂いを求めて上着をまくり、今度は剥き出しになった胸板を舐める。傍目には細身に見えるロアだが、脱ぐと意外にも豊かな筋肉に覆われている。その、程よい弾力ごと味わうように舐め回していると、ロアの口から、それまでとは明らかに違う色の声が漏れた。

「……あ」

 その声をもう一度聞きたくて、さらに舐め回す。やがて舌先が小さなひっかかりを捉えると、応じるようにロアはびくりと背中を反らした。

「っ……そこ」

「ここ?」

「しびれる……すごく」

 吐息が熱を帯びるとともに次第に深みを増す香り。あるいはロアの中でも、リクの知らない花が咲いているのかもしれない。その香りが、肌や吐息に乗ってリクに届いているのだ。

 知りたい。その花の色を、匂いを、味を、もっと。

「あ、あ、っ」

 急くような気持ちに負け、つい突起を噛んでしまう。しまった。傷つけたくは――そう、心配顔でロアの顔を覗き込むと、なぜか驚いた目でリクを見上げている。

「だ……大丈夫? ロア」

「何だ、これ」

「えっ?」

「あ……頭が、とける……」

 それは、とても危ない状況じゃないか。詳しいことはわからないが、何か妙な魔術なりが働いているのかもしれない。そう思い、慌てて身を引くと、なぜか鼻面をぎゅっと掴んで引き留められた。

「やめるな。……見ろ」

 そしてロアは、つい、と顎で腹のあたりを指す。見ると、ロアの脚衣がぷくりと膨らんでいる。そのふくらみに、何の気なしに手を伸ばし――

「や、やめろ!」

 今度はなぜか引き止められる。

「えっ、ど、どっち……?」

「あ、いや……やめるな……」

 どうやらロア自身、どうして欲しいのかわからず混乱しているらしい。こんなロアの反応も新鮮だ。普段はどんなに切羽詰まった場面でも、賢者のように堂々とリクを導いてくれるロアが。

 やがてロアは、自ら脚衣の紐を解く。そのまま太腿のあたりまでずり下ろし、それを露わにする。

「……あ」

 むせかえる匂い。まるで、夜明けとともに花開くつぼみみたいだとリクは思う。ただ、その姿は花というより、熟れきった果実のようだ。赤く、今にも破裂しそうに膨らんだ。

 その先端から。

 抗いがたいほどに香る、ロアの匂い。

「……舐めて、いい?」

 考えるよりも先に口が問う。が、恐れるはずの獣人の口に急所を委ねるなど、ロアにしてみれば怖くないはずがない。

「ご、ごめん、今のは忘れて」

 慌てて言葉を取り消す。と――

「……いいぜ」

「えっ」

 意外な言葉に問い返せば、ロアは、やはりあの誘うような目でリクを見上げている。

「舐めろよ。……舐めたいんだろ?」

 そしてロアは、今度は完全に脚衣を足から抜き取ってしまう。でも、と躊躇していると、今度は「早くしろ」と鋭い声で急かされてしまった。

 ごく、と喉が鳴る。リクだって、本心ではかぶりつきたくて仕方なかったのだ。

「じゃあ……」

 身体をずらして這いつくばり、おそるおそる先端を舐める。瞬間、殴られたような衝撃が脳髄を突き抜け、リクは陶然となる。ただ甘いだけじゃない。むしろ痺れるように苦くて、なのに――いや、もう何も考えたくない。この、ロアそのもののような味を今は無心で堪能していたい。

 先端の蜜を舐め取り、形の良いくびれを舌先で辿る。そのたびにロアはあの甘い声をこぼす。見るとロアは、さっき頭がとけると言った胸の突起を自分で弄っている。本当はもっと触ってほしかったのかな。そう思い、指の肉球で挟み込むと、痩せた腰が魚のようにびくんと大きく跳ねた。

「あ! っ、」

 鋭い、なのに蕩けるように甘い悲鳴。喜んでいるのかな、と、さらに肉球でこね回すと、ロアはいやいやをするように左右に身をよじった。そのたびに、リクの鼻先でぴくん、ぴくんと跳ねる果実。逃げないよう長い舌で絡め取りつつさらに舐め回していると、いよいよそれは硬くなってゆく。

 なお濃密さを増す匂いが、リクの脳髄を否応なしに揺さぶる。

「あ……んんっ、リク……」

 浮いた腰を抱え込み、さらにそれを舐める。本当は咥えこんでしまいたい。けど、獣人の姿では鋭い歯が当たって痛むだろう。いっそ人に化けようか……

 いいや。
 
 今はこの姿で愛したいし、求められたい。

 果実を舐め尽すと、今度はもっと深い場所もなだめたくなる。が、なぜか膝は硬く閉ざされ、リクの侵入を許さない。無理強いにならないようそっと押し開くも、やはり、すぐに閉じてしまう。リクを拒んでいるのではなく、おのずとそうなってしまうらしい。仕方ないので今度は強めに膝を開き、内股に身体を滑り込ませる。

 ロアの目が、不意に色を変えたのはその時だ。ああ、この目は――

「俺だよ」

 あわや凍り付きそうになる目を覗き込み、訴える。

「ロア、俺だよ。そいつはもう、どこにもいない。……俺だけを、見て」

 その後もリクは、繰り返し、繰り返し言い聞かせる。俺だ。リクだ。ここにはもう、ロアを傷つける奴はいない――

「……リク」

 次第に、乱れかけたロアの焦点が目の前のリクに合ってゆく。

「あ……ああ、そう、そうだな」

 それでもなお硬さの残るロアの声を、リクは唇ごと丁寧に舐め溶かす。それから胸、そして腹。恐怖の匂いが、ふたたびよろこびのそれに変わるのを待ってから、改めてロアのものに舌を這わせる。それから、さっきまで閉ざされて届かなかった内股の傷痕にも。

 自分は、ただ傷つけるだけの獣人とは違う。ロアの傷に寄り添い、癒したい。

「すまなかった」

「ううん、いいよ。……辛かったんだろ?」

「そうじゃない」

「えっ?」

 身を起こして問い返すと、ロアはなぜか痛みを堪えるような目でリクを見上げる。

「お前だって……辛かったはずなんだ。俺と同じように……俺に全部奪われて、悲しくて、悔しかったはずだ。なのに、俺は……自分の痛みばかりで」

「……ロア?」

「す……すまなかった。こんなもの……謝って、許してもらえる類の話じゃない。でも……それでも、お前には、せめて、謝りたい。謝らせて、くれ。今更、こんな……でも……」

 そしてロアは、すまなかった、悪かったと、ほとんど悲鳴じみた声で繰り返す。そんなロアの慟哭どうこくを前に、どうすればよかったんだろうとリクは途方に暮れる。少なくともリクは、別に謝罪など求めてはいないのだ。

 ただ。あえて言うなら。

「うん。でもそれは、いくらロアが謝っても、駄目なんだと思う」

 そもそも、リクに許すかどうかを決めることなどできない。唯一それができるリクの仲間たちは、皆、ロアに殺されてしまった。

 ところがロアは、なぜかほっとしたように頬を緩める。

「……ロア?」

「あ、いや……そうだな。俺も、許せないものは、許せないままでいいと思う。俺だって、獣人そのものを許したわけじゃない。ただ……」

 そしてロアは、リクの肩越しに空を見上げる。その目はどこまでも遠く、穏やかだ。

「そういうものを抱えながら、それでも誰かを愛せるんだと、わかったから」

「……うん」

 頷きながら、それは俺のことかなとリクは嬉しくなる。だったらいいな。でも、聞いたところで白状はしてくれないだろう。心と言葉が裏腹な人だから。

「俺も、そう思うよ」

 そっと傷痕を撫で、鼻先を擦りつける。ロアが味わった苦しみと、今も抱き続ける獣人への憎しみ。そうした部分も含めてのロアなら、まるごと愛そう。愛し抜こう。ロアが、憎むはずの獣人であるリクを愛してくれるように。

「……っ」

 リクの舌が内股のさらに奥に触れた瞬間、ロアの身体がぎゅっと縮こまる。見ると、奥で蕾に似た肉が怯えたようにひくついている。その奥から、明らかに漂うリクを誘う匂い。これは……見覚えがある。あの宿の女たちが見せた反応。だから、わかる。わかってしまう。今のロアが何を求めているかを。

 ただ……だからこそ、怖い。

 この一線を踏み越えた先にあるものを知ってしまったら、自分はどうなってしまうのか。それこそゲインが言ったとおり、肉欲に支配された狂暴な獣人と化してしまうのでは。そして……その時こそ自分は、本当の意味でロアの仇と化すのだろう。

 それでも。

 ロアが欲しい。あんなにもロアとの未来を望んでおきながら。結局これが獣人の本能かと思うと心底悔しい。が、それでも。

「ねえ、ロア」

「……何だ」

「もし、正気に戻れなくなったら……殺してよ、ロア」

「は?」

 問い返すロアに、その意味を思い知らせるようにそこを舐める。怯えた目でびくりと身を竦めるロア。でも……もう遅い。

「わかるんだ、俺も獣人だから。このまま進んだら……もう、戻れなくなるかも……だから……その時は、ロアに殺してほしい。ほかの獣人殺しじゃ嫌だ。俺は……ロアに殺されたい」

「そんな――」

 慌てて身を引こうとするロアの腕を、リクは咄嗟に掴んで引き留める。わかっている、この拒絶は、リクを殺したくないというロアなりの意思表示だ。だからこそリクは辛い。この期に及んで自分を止められないとわかるから。

「リク、やめろ」

「ごめん。それでも、ロアが欲しいんだ。……お願い」

「うるさい! あ、あんなに……俺と、一緒に、いたいと、っ……」

 身を起こし、リクに掴みかかるロアを、それでもリクは優しく押し返す。その言葉だけでも嬉しい。きっと、もし本当にリクが戻れなくなって、ロアに殺されることになっても、もう充分、充分だ。

「ありがとう、ロア」

 ロアの痩せた腰を両手で掴み、自身の雄をつぼみにあてがう。

 形こそロアの果実に似ているが、大きさは人間のそれの倍近くはある。そんなものが、ただでさえ細いロアの腰に収まるようには思えない。なのに蕾は、リクの先端を舐るように妖しくうねっている。まるで、さっさと入れとばかりに。

 本当に……入るのか?

 でも、一度はリク以外の雄がここを使って――いや、そいつらのことは考えるな。俺は、相手に苦痛を強いてでも貪りたい連中とは違う。

「や、やめろ、リク」

 そう、口では言いながら、ロアのそこは相変わらずリクを誘い込んでいる。匂いも。

「……ごめん」

 馴染ませるように先端を、続いて芯を押し込む。狭い入り口が精一杯に張り詰めながら、リクの巨大な雄をじわりじわりと呑み込んでゆく。その様子を見守りながら、リクは、こみ上げる破壊的な衝動を必死に堪えていた。突っ込め。相手の苦痛など関係ない。貪りたいように貪れ――そう声を荒げるもう一人の自分を、リクはどうにか頭から締め出す。

 俺は、雄になりたいわけじゃない。

 ただロアと、ぬくもりを、体温を、よろこびを分かち合いたい。それだけなんだ。
 
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