性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

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1.変わらないし、嫌気がさす

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 どこにも行けないし、心が休まることなんてない。逃げることもできなければ、苦しいだけ。ずっと、そんな風に感じていた。

 代々魔法使いとして貴族に仕えてきた一族の家に生まれた僕は、生まれた時から、常に比べられてきた。兄弟とも、同年代の魔法使いたちとも。
 魔力、学力、体力……あらゆる面で厳しく評価されて、できないことがあれば激しく叱責された。

 とりわけ一族が重視していたのは魔力だった。だから、魔力を磨くための厳しい教育にもずっと耐えて来た。いつか僕を認めてくれるって、そう信じていたのに。

 そんなこと、一度もなかった。僕を見れば家族は、僕なんかいないかのような態度をとる。

 たまに珍しく学園の試験で好成績を残しても、それを家族に告げようとしたら、家族はその日はたまたま成績が悪かった兄弟を慰めることに夢中。
 そんなところに飛び込んでいった僕が、つい成績が上がった話なんてしてしまったから、激しくぶたれた。
 空気を読め、兄弟のことを思ってやれと言われて。
 僕はただ、少しだけその日だけ、認めて欲しかっただけなのに。

 それからも懲りずに成績が上がれば話そうとしたけど、しょげる弟を慰める両親に声をかけたら、僕に振り向いたらしい両親が「なんだ、いたのか」と言った。

 いたのか。

 それが、自分に与えられた評価なんだと思い知った。

 いてしまったのか、と。

 それだけ悟ったら、自分がひどく邪魔者扱いされていると気づいた。

 そうしているうちに、僕の婚約が決まった。相手は、伯爵家の御令息のフォルゲソス・リギューラ。僕なんか好きでもなんでもないけど、僕の魔力を見初めたらしい。

 なんだか嫌な感じだったけど、僕は初めて会ったその男に、丁寧に頭を下げて挨拶をした。

「初めまして。リュイウェリレク・リートベリクトです」
「ふーーん……」

 そう言ってそいつは、僕のそばまで来て、僕をジロジロ見る。

「領地を守るのに使えるーー!」

 そう言ってその男は嬉しそうだったが……それは婚約者じゃなくて武器じゃないか?

 こんな奴と婚約なんて、心底嫌だ……

 だけど、僕に逆らうことなんてできるわけない。

 僕の意思なんて無視して勝手に話は進んで、気づいたら婚約が成立してた。

 こうなったら仕方ない……

 僕は大人しく……というか、渋々、婚約者に会いに行った。
 そしたら、婚約者は僕の顔なんかろくに見もせずに、僕を魔物の多い地域に送った。

 そこでは毎日魔物退治をさせられた。なんだよ、やっぱり武器じゃないか。

 それからしばらくして、僕より兄弟たちの方に魔力があることが明らかになってきた。魔力を使うのが苦手だっただけで、その魔法の威力は、すぐに僕を追い抜いた。
 家族は「努力が実ったんだ!! 素晴らしいっ!!」と、泣いて喜んでいた。

 落胆したのは僕の婚約者のフォルゲソス。一番の魔力を持っていると言ったから、仕方なくお前なんかを選んでやったのに。嘘つきめ。
 そう僕の目の前で一族に詰め寄る姿を見た時は、さすがに辛かった。

 一族も黙ってない。こっちだって、こんな欠陥品だなんて知らなかったんだ。

 そして僕には、一族と婚約者から、激しい罵倒の言葉がぶつけられた。

「嘘つきっ……! この嘘つきめ!!」
「一族を騙して、どう言うつもりだ!!」
「魔力があると言ったから娶ってやったのに……」
「謝りなさい! 傲慢な極悪人め!」

 そう言われて詰め寄られて、婚約者に手を上げられそうになって、怯えた僕は、つい、その手を振り払ってしまった。だけどその仕草を見て婚約者は僕が魔法を使おうとしたと思ったらしい。のけぞった婚約者は頭を棚にぶつけて、そのまま倒れてしまった。

 その瞬間、僕は殴り飛ばされた。婚約者の護衛たちに。

「暴力はやめろ! 無礼者め!!」

 一斉にそんな非難の声が飛んできた。

 えーー……僕、何もしてなくない?

 だけど床に押さえつけられて、婚約者はキレまくる。

「暴力を振るう嘘つきとの婚約なんか破棄だーーーー!!」

 こうして僕は、婚約者を騙して暴力を振るったクソ野郎になった。

 そのまま婚約破棄。

 今さら僕の一族も、僕を屋敷に迎える気なんて全くない。それどころか、「二度と一族の名を名乗るな!!」と言われて、気絶するまで蹴られた。

 行き場を無くした僕は、国のはずれの砦に送られた。そこで魔物退治を続けろと命令されたからだ。
 家族は「こんな一族の恥、魔物退治で死んでもいいので、好きなだけこき使ってください」と砦の主に言って、代わりに大金を受け取っていた。

 そこでも、婚約者に手をあげたクズ野郎になってしまった僕への当たりはきつくて、僕は毎日、言いがかりのように咎められては罰を受けてばかりだった。

 砦にいるみんなにとっても、僕は悪党。そんな扱いは、この砦に来ても、同じだった。
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