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2.やっぱり来るんじゃなかった!
しおりを挟むオヴズティのこと、警備隊の奴らは俺の親友みたいに言うが、俺にしてみれば、ただの腐れ縁だ。
この街に来たばかりの頃は、よく一緒に飲みにいったりしたが、俺は傭兵、あいつはパティシエとして働き出して、忙しさもあって、あまり会わなくなった。
というのも、さっきの警備隊長に、変なことを言われたからだ。俺はよくあいつのケーキ屋に顔を出していたし、魔物退治の後、昼飯をあいつと食ったりしていたからなのか、俺とあいつができてる、なんて。
できるわけねえだろ。ただの悪友。なんなら、ただの知り合い、むしろ、ちょっと知ってるだけの人だ。
そんな奴と俺ができるなんて、一生ない。ちょっと知ってるだけの人だから、一緒にいるだけだ。
とはいえ、そんな奴が殺されたら、俺だって多少、少しは、ほんの少しは動揺はする。
警備隊から金も出るし、あいつのそばを一日うろつくだけで金がもらえるんだ。
それなら別に……いいだろ。会いに行っても。これは警備なんだから。
そもそも、あいつが会いに来ればいいんだ。それなのにあいつ、ちっとも会いに来てくれないし、それどころか、俺がわざわざ連絡してやっても無視だ。
この際だから、ついでに文句言ってやる。俺は全然会いたくないが、なんで会いにこないんだって。
今の時間なら、オヴズティは、ケーキ屋で仕事中のはず。あいつの店は、花やリボンのオブジェ、ぬいぐるみで飾られためちゃくちゃ可愛い店で、いつも客で賑わってて、ちょっと前までよく立ち寄ったりしていたが、最近は寄り付かなくなった。
大通りをしばらく車で走って、あいつの店を見つけた。相変わらず、猫の絵が描かれた看板まで可愛らしい。
例の警備隊長の件もあって、あいつの店に来るのも久しぶり。
駐車場は満車だったけど、ちょうど店からいくつも紙袋を下げて出て来た客が、車を出してくれて、そこに止めることができた。
店の外のショーウインドーには、バルーンアートの猫と、見事な技術で作り上げられた飴細工。きっと、オヴズティの作品だ。相変わらず、あいつはすごい。
店内は今日も、客でいっぱいらしい。甘い砂糖とバター、あとはなんかよくわからないふわふわした匂いが、駐車場にいてもわかる。
車からおりて、ショーウインドーの飴細工の隙間から、店内を覗き込む。
あいつがいるのは、ショーケースの向こうのカウンターの向こうの厨房の中のはず。
ここからだと、厨房の方は見えないな……
ショーウインドーから、たくさんいるお客さんの向こうを爪先立ちでのぞいていたら、ヒソヒソ声がした。
振り向くと、数人の客が、俺を指差し、声をひそめて何か話している。ただでさえ目立つ傭兵の格好をして、大きな銃を担いでいるせいで、変な目で見られているらしい。
店内の客の一人が、店員を呼んで俺を指差して何か言ってる。
めちゃくちゃ不審者扱いされているじゃないか!!
「お、おい! 待って!! ち、違う違う!」
慌てて両手を振る俺だが、中の客の冷たい目は変わらない。
おろおろしていたら、客たちに挨拶をしながら、一人のパティシエが出てきた。
金色のふわふわした髪に、金の目をした背の高い男、オヴズティだ。
「ズティっ……!」
「やっぱり……ノラギか!! 久しぶりだなっ……!」
そう言って、オヴズティは微笑んだ。相変わらず、こいつは可愛らしく笑う。そして、この笑顔が人を惹きつけるらしい。こいつは老若男女を問わず、めちゃくちゃモテる。今だって、客たちがオヴズティが出てきたのをチラチラ見ながら、手を振ったり名前を呼んだりしている。
それは俺にとって、めちゃくちゃ気になることなんだが、モテるこいつにしてみれば、いつものことらしい。全く構わずに、俺の方に近づいてきた。
「ノラギ……お前が会いに来るなんて、久しぶりだな。どうしたんだ? 俺に会いに来たのか?」
「……んなわけねーだろ……」
「ふーん…………俺だって別に会いたくないけどな」
「はあ!? じゃーなんでわざわざ出て来たんだよ!!」
「外に不審な奴がいるって、レジの奴が怯えてたから、わざわざ出て来てやったんだ!」
「はあー!? わざわざ厨房から出てきて人のこと不審者扱いかよ!」
「わざわざ出てきたんじゃない。頼まれて仕方なく出て来たんだ! お前じゃないと思ってたしな」
「んなことより不審者扱いを謝れ!!」
ついに睨み合いになる。
腕を組むオヴズティは絶対に謝りそうにない。
こいつ……せっかく来てやったのに、態度が悪いぞ!! やっぱり来るんじゃなかった!
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