誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐

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18.そのために来たのです

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 朝、まだ日が登ったばかりの頃、私は目を覚ました。

 昨日はよく寝た……もう少し寝ていたかったけど……

 起きないせいで、オーテクルテスファー様やブークリアス様に殴られたことが何度あるか分からない。そのせいで、早く目が覚めてしまったようだ。

 もう一度寝てもいいのだけれど……せっかくだから、この城を見ておきたい。

 昨日見つけた地図を頼りに部屋を出る。鍵などはかかっていないし、やっぱり自由に出ていいみたい。

 朝の城は、すっかり静まり返っていた。身だしなみを整えた私は、一度庭に出てみた。

 そよ風が吹いていて気持ちいい。風に吹かれて揺れているのは、全部魔力を持った魔法の植物だ。

 オーテクルテスファー様に怒鳴られたりもしないし、ブークリアス様の喚き声もしない。なんて静かなの……

 そろそろお腹が空きそうだけど、食事の時間まではまだかなりある。どうしていようか……

 そんなことを考えながら歩いていると、一人のメイドらしき女性が、庭を横切っていくのが見えた。抱えている大きなカゴには、魔法の植物が入っている。

 こんなに朝早くから魔法の植物を摘みにきたの?

 ……そうだ!! 私、お願いしたいことがあったんだ!!

「あの!! そこの方!!」

 私が呼び止めると、彼女は私に振り向いた。

「はい……? あら……あなたは……」
「フィレイルイラル・リウィルテと申します。領主、ロクデラッド・クリウレル様の城から送られた魔法の道具と共に、ここに迎えていただいた魔法使いです!」
「ああ…………あなたが……」

 そう言った彼女から帰って来たのは冷たい視線。

 やっぱり私たち……ここにいる方々には、ひどく嫌われているようだ。ロクデラッド様のこと、テクフィノレク様はひどく腹を立てていたけど、おそらくそれは、他の方も同じなんだ。

 彼女は私にひどく冷たい目をしたまま言う。

「…………何か、私にご用でしょうか……」
「あのっ……! お願いしたいことがあるんです!」
「申し訳ございません。私たちは自分達の仕事だけで精一杯なのです。ご令嬢のわがままには付き合えません」

 彼女はさっと私に礼をして歩き出してしまう。

「待ってください! すぐに終わります!! 今着ているこの服を補修したいのです! どうか、針と糸を貸してくださいませんか!?」
「それでしたら、使用人のための服をお貸ししましょう。今着ているそれよりはマシだと思いますよ」
「本当ですかっ!!??」

 嬉しくて声を上げると、彼女は立ち止まって私に振り向いた。

「え…………?」
「どうかお貸しください!! 困っていたんです!!」

 言って、彼女の手をぎゅっと握る。

 ずっとボロボロの服を着ていたんだ。せめて破れたところをなんとかしたいと思っていたけど、まさか、新しい服を渡していただけるなんて!!

「あなたは親切な方ですね! もちろん、お礼はさせていただきます!!」
「お、お礼??」
「服をいただけるんですもの! 見たところ、庭の魔法の素材を集めていらっしゃる最中のようですし……私にも、手伝わせてください!!」
「な、何をおっしゃっているのか分かりません!! 貴族のご令嬢にできるようなことではありません!!」
「そんなこと、やってみなくては分かりません!! こう見えて、領主様の城にいた頃は、城の雑務は私がしていたのです! もちろん、魔法の植物の収穫もしていました! どうか、私にさせてください!」

 胸を張って言うと、彼女は少し困ったような顔をする。

 困らせてしまった? そんなつもりはなかったのに。

「あ、あのっ……それに、私はすでに領主様の城から飛び出して来たも同然ですし、婚約も破棄され、両親にも見放され、魔法の道具が動かなくなった時に道具の代わりに働くためにここに来たのです!」
「…………そんなに楽しそうに言うことですか……? それは……」
「はい!! だって私、楽しいので!!」
「…………」
「ですから、私に気を使う必要などありません! どうか、私にもさせてください!! まだ、お仕事の時間までは時間があるので!!」
「……」

 彼女は、かなり戸惑っていたようだったけど、頷いてくれた。

「……分かりました。人手も足りないので、お願いできますか?」
「はい!!!! どうか、お任せください!!」
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