誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐

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26.一員ですか?

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 私は反乱を企んだりなんて、していないのに。

 それなのに、ロズルラト様はそんな噂を信じてしまったみたい。うるうるした目を私に向けてくる。

「反乱なんて、すごいぞ!! 俺は見直した! あのヴィラウレルトに喧嘩を売るような奴は、俺以外この城にいなかった!」
「…………あの……ロズルラト様…………ですから私は、喧嘩を売った覚えはありません!」
「なんだよ! 隠すなよ!! 今からやりに行くなら、手伝うぞ!」
「ロズルラト様は、反乱を起こしたいのですか?」
「反乱したいんじゃない! 俺は、ヴィラウレルトに勝ってみたい! あいつ、強いからな!! あいつに勝ったら、俺がボスだ!」
「……ボスですか…………よく分かりませんが……お城が賑やかになりそうですね」
「だろーー? だろ!? 分かるのかーー!! だったら俺と、ヴィラウレルトに喧嘩売りに行こうぜ!!」
「行きません」
「なんでだよ!」
「ところで、ロズルラト様」
「なんだよ?」
「これから、素材を運ばなくてはならないのです。どうか、力を貸していただけませんか?」
「素材??」
「はい。今は庭に積んであるのですが、それを急いで運ばなくてはならないのです」
「運ばねーよ! 俺はヴィラウレルトと殴り合いがしたい!!」
「お、穏やかではないですね…………ロズルラト様がそうしたいのは分かりましたが……こっちだって、人手が足りないのです! ロズルラト様なら、部隊の魔法使いの方を集めることができますよね!?」
「確かにできるけどな……しない!!」
「……なぜです?」
「反乱の話してたら、ヴィラウレルトと喧嘩したくなったからだ!! 俺一人でも行く!!」

 言って彼は、廊下を走り出してしまう。それも、恐ろしいようなスピードだ。さすが虎さん……

 けれど……ちょっと逃げられたくらいじゃ諦めません!

 こんなことになって驚いているキュファリウェスに「すぐに戻ります!」と言って、私も彼を追って走り出す。

「待ってくださいっっ!! ロズルラト様!!」

 叫ぶと、ロズルラト様はますますスピードを上げる。

「俺に追いつけると思ってるのかーーーー!?」
「やってみなくては分かりません!」
「おもしれぇっ! やれるもんならやってみろ!」
「言いましたね!? 捕まえたら、素材を運んでいただきます!!」

 私は、自分自身に強化の魔法をかける。一気に走るスピードが増すけど、それでも、私の遥か先を走るロズルラト様には届きそうにない。

 追いつけないなら、相手の足を止めるまで!!

 さっき運んでいた素材は、こういう使い方もできるんだ!

 私は、さっきまで運んでいた素材の一つ、小さな植物の葉を取り出す。それに魔力を増幅する魔法をかけて、一瞬だけ、大きく魔力を強化する。それができるのはほんの一瞬で、その魔力はすぐに消えてしまうのだけど、背後で急に魔力が強くなったら、誰でも驚く。普段魔物と戦っている方なら、なおさらだ。

「なんだ?!」

 ロズルラト様が走るスピードを緩めて、こちらに振り向く。

 チャンスだ。私は、自分の体に魔法をかけて、ロズルラト様に飛びかかった。

 けれど、あっさり避けられてしまう。

「残念だったな!!」

 さすが、素早い……

 だけど、そんなことで私は負けません!

 すでに先手は取ってある。彼のすぐそばに小さな鳥の姿の使い魔を作って、彼の体を抱きとめた。

「わ!! うわっ……! なんだよ! 鳥!?」
「捕まえました!!」

 言って、私の使い魔に抑え込まれた子猫のようなロズルラト様を抱き上げる。その頃には使い魔は消えてしまっていたけど、ちゃんと捕まえられた! ロクデラッド様の城の中でも、暴走した使い魔を捕獲したりしていたからなー……

「さあ、手伝っていただけますか?」

 何しろもうほとんど魔力がない。断られたり別の条件を出されたりしたら、私には対処できなくなりそうだけど……私が捕まえたロズルラト様は、私に振り向いた。

「お前……二度も俺を捕まえるなんて……すげーな!!」
「褒めていただき、光栄です! では、手伝っていただきます!」

 半ば強引に言うと、怒り出すかと思いきや、彼はどこか楽しそうに言った。

「ちっ……負けたからには仕方ない!! 俺も素材運ぶ!」
「本当ですかっっ!?」

 まさか、本当に運んでもらえるなんて!

「代わりに! 俺の反乱計画を聞け!!」
「……聞くだけなら……」
「本当か!?」
「き、聞くだけですよ!? 聞くだけ! 私は反乱しませんから!」

 それでも、ロズルラト様は嬉しそう。よほどヴィラウレルト様と勝負がしたいみたい。仲が悪いというわけではないようだし……勝負ごとが好きなのだろう。

 けれど、こうして手伝ってくれたことには感謝しなくては!

「隊長? 何してんすか?」

 そう言って首を傾げて近づいてきたのは、ロズルラト様と同じく、虎の耳と尻尾を持つ男たち。彼らは、ロズルラト様が小さな姿になっていても、あまり驚いた様子がない。

「隊長ー、またそんなに小さくなって……どれだけテクフィノレク様が怖いんですか……」
「俺はあんな奴怖くねえっっ!! いちいち嫌味言われるのが嫌なだけだ!! お前ら!! 俺は今から素材を運びに行く!! 先に森に行ってろ!!」
「まだ見回りには時間があります。隊長がやるんなら、俺らもやりますよ!」

 一人がそう言い出すと、他の虎耳の男たちも手をあげる。

「そうですよ!! 隊長だけずるいですよ!! 素材で新しい武器用意する気ですね!?」
「馬鹿か! お前らっ!! 俺に素材から武器をどうこうするなんて、できると思ってんのか!? んなことは素材を扱う魔法使いに言え!!」
「そいつらは今日は全員、素材集めに出かけてます!」

 口々に言いながら、虎耳の方々が幾人も集まって来る。

 ロクデラッド様の城を出る時もそうだったけど……彼の周りにはいつも、獣人の方々がいる。慕われているのだろう。

「あの……素材を運んでいただけたら、それを使っての強化でしたら、私にもできます」
「本当か!?」

 ロズルラト様は嬉しそうに振り向く。

「はい。私には大したことはできませんし、効果が続く時間も短いですが……代わりに、素材もほんの少しでできます。こちらも手を貸していただくので、お礼です」
「そうかーーーー!! だったら、すぐに運ぶぞ!! それから一緒に反乱の計画だ!!」
「……あの、何度も言っていますが、私は反乱の計画は立てません」

 言うけど、周りの男たちまで騒ぎ出す。

「隊長!! ついにですか!?」
「ヴィラウレルト様の部隊とですね!? 俺、隊長が決断するの、待ってました!!」

 それを聞いて、ロズルラト様はますます楽しそう。

「だったら行くぞ!! おい!! フィレイルイラル! お前もだからな!!」

 なぜか私まで反乱をする話に……違うと言っているのに。

 それなのに、部隊の方々まで私の方に「新入りですか?」「部隊の仲間が増えた!」なんて言ってくる。

 私も部隊の一員になれるの? 戦えないんだけど……いいの??
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