誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐

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32.何度か恐ろしい目にあったけど

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 訓練場での騒ぎから、私は仕事が終わってから毎日、テクフィノレク様にあの魔法の道具の強化を提案するようになった。絶対に、彼にも満足してもらえるようにする。そのために、私はここにきたんだ。

 魔法の道具の監視は私の仕事になっているから、それは毎日続けている。それもしながらキュファリウェスと魔法の素材を運んで、それから、仕事が終わったら更なる強化のための情報を集めるため、書庫に向かうようになった。書庫への入室は、竜の領主様が快く許可してくれた。

 そうしているうちに、テクフィノレク様には書物の整理を言いつけられるようになった。どうせ書庫にいるなら書物の整理くらいしておけと言われたけど、私には願ったり叶ったり! だって、ここの書物は他ではお目にかかれないような珍しい物が多い。どれもこれも、私には興味を惹かれるものばかりだ。

 うっとりしながら書物を眺めていたら、整理さえすればと、テクフィノレク様は貴重な書物の閲覧も許可してくれた。書物が痛むようなことがあったら死罪です、なんて言われたけど、これだけの書物に触れられるなら、そんな言葉も怖くない!

 あまり知られていないが、この書庫は、王国でも一二を争うほどの量の書物を集めた書庫らしい。テクフィノレク様や彼の部隊が、魔法の研究のために集めたものも多いようで、それらを、城で行われる魔法の研究で使っているらしい。それを聞いた時は、よくそんなところに入れてくれたなあと驚いた。
 
 書物の整理は膨大な量で、とても終わりそうにない日もあったけど、そういう時はテクフィノレク様が来て、書物が痛むのを防ぐためです、と言いながら手伝ってくれた。
 お陰で城の皆さんが仕事を終えるのと同じ時間に私も書庫を出ることができて、最後には「さっさと食事をして寝なさい!」とテクフィノレク様に追い払われる。

 ロズルラト様には「お前は部隊なんだから、テクフィノレクが無茶させたら言え!」て言われたけど、そんなことをされたことは一度もなくて、むしろ、気遣われているような気がする。そういえば、初日だって、かなり脅すようなことを言われたけど、言葉どおりのことをされたことはない……

 素材の運搬も、回復した使用人の方々と一緒にできるようになり、それが早く終わったら、あの道具の強化を考える。書物から得た知識も使い、毎日、さまざまな強化を提案できるようになった。

 最初は「却下です」としか言われなかったのが、少しずつ、聞いてもらえる時間が増えてきた気がする。

 最近は強化にも同席させてもらえて、勉強になっているし……今日はもっと上手くいく気がする!

 今日も昼が来る頃、キュファリウェスと庭を歩いていた私は、歩きながら今日の提案について話していた。

「だから、今度はうまくいくと思う! 昨日なんて、いくつか改善の方法を教えて下さったし……結構見てもらえるようになったんだから!」
「あのテクフィノレク様が……? なんだか信じられないわ……提案を受け入れることも、あなたがまだ生きていることも……」
「こ、怖いこと言わないで!! 何度か恐ろしい目にあったけど、ちゃんと生きてる!! そうだっ……あの道具があれば、また別の強化ができるかも!」

 つい、また強化のことに夢中になっていたら、キュファリウェスには呆れたように「本当に、懲りないんだから」と言われてしまう。

 だけど、今日の強化はうまくいきそうな気がする!

 食事が終わったら、すぐにアイデアを書類にまとめようと思って歩いていると、訓練場の近くに、テクフィノレク様が立っているのを見つけた。

 もしかして、また魔法の道具の様子を見にいくのかもしれない。だったら私も行きます!
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