誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐

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34.その程度

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 キャデリレーラ様の言うことに答える間、私はずっと俯いていた。

 どうしよう……なにも、言葉が出てこない。怖くて……体も動きそうにない。

 キャデリレーラ様は、俯いたままの私を鼻で笑うと、テクフィノレク様に振り向いた。

「ねえ……テクフィノレク様。実は私、あなた方が後悔なさっているのではないかと、心配していたのです」
「……後悔?」
「だってあの時、フィレイルイラル様を庇って、私の手を振り払われたではありませんか。覚えていらっしゃいませんか? ロクデラッド様の城でのことです」
「…………」

 答えないテクフィノレク様に、キャデリレーラ様が、一歩近づく。

「どうです? あの時あなたが庇ったフィレイルイラル様は。魔力もなく、魔法も使えない……そんな方がロクデラッド様のお城にいたなんて、信じられないでしょう?」
「私は、彼女を庇った覚えはありません」
「ええ! そうでしょうとも!! そうおっしゃりたくなる気持ちは分かります! あの時あなたが庇ったものが、あの程度のものだったなんて、お認めになりたくないですよね?」
「…………」

 何も答えないテクフィノレク様に、キャデリレーラ様は微笑んだ。

「……テクフィノレクさまぁ…………こんなこと、申し上げるのもおこがましいとは思うのですが……そろそろ、気づいていらっしゃるのではないのですか? 聡明なあなたなら……ここにいるのがフィレイルイラル様ではなく、もっとまともな魔法使いだったら……例えば、私だったら。もっとここを強力に守ることができたことに」
「あなたが?」
「ええ! ご存知でしょう? 私はカテリスラ家の者です」
「…………カテリスラ家?」
「ご存知ですよね? 私は、一族の名をひけらかすことはしたくないので、いつもはお話ししないのです。だって、一族の名前なんてなくても、私にはこの魔力がありますから」
「………………」
「……テクフィノレク様……そんな顔をなさることはありませんわぁ……後悔していらっしゃるのですよねぇ……? あの時、フィレイルイラル様を庇って、私の手を捻り上げたことを………………もちろん、何もご存じないあなたがなさったことですもの! 今さらその責任を問おうなんて、考えたこともありません!! けれど…………カテリスラ家として、無礼を簡単に許してしまえば、私以外の一族の方までみくびられてしまうのです。私も、こんなことを言うのは大変心苦しいのです。ですから…………一言、地に膝をつき、手をついて謝罪していただければ…………私がここの結界を、より強固なものにして見せますわ」
「…………あなたは……」
「おっしゃりたいことは分かりますわ! 私だって、そのような無様な真似をあなたにさせたいわけではないのです! でもぉ……」
「カテリスラ家の方なのですか?」
「へ?? え、ええ……そう申し上げているではありませんか」
「彼女よりも、強固な結界を張れると……そう言うことですか?」
「ですからっ……先ほどから申し上げている通り……」
「やって見せなさい」

 そう言った彼が、キャデリレーラ様の前で、閉じていたてのひらを開く。そこには、素材として使われる植物が置かれていた。それが、キャデリレーラ様の前で至近距離で弾け飛ぶ。

 激しい爆発音が鳴った。音の衝撃で、城が揺れたくらいだ。

 彼の魔力は恐ろしい勢いで破裂して、訓練場のほとんどを抉り取ってしまう。

 衝撃で飛び散った土が空から落ちてくる。

 それを眺めながら、私は呆然としていた。

 な、なに…………今の…………

 被害が訓練場だけで済んだのが信じられない。

 彼が持っていたものが、彼の恐るべき量の魔力を受け、大きな衝撃と共に破裂したんだ。しかも、同時に魔法をかけて爆破まで起こしている。殺す気でやったようにしか思えない!

 自分が無事であったことが信じられない。なんで無事なの!?

 驚いたけど、私のすぐそばにはテクフィノレク様が立って、あの槍のような姿の魔法の道具を握っていた。それの力を使って、自らと城を守ったらしい。城ももちろん無傷だ。

 そして、少し離れたところでは、エティレンクド様が、腰を抜かしたキャデリレーラ様を支えていた。そのそばには、テクフィノレク様の部隊の魔法使いの一人が立っている。彼が二人を守ったのだろう。今の魔法を防ぐなんて、さすが、テクフィノレク様の部隊の魔法使いだ。

 けれど、防げればいいと言うものではない。

 キャデリレーラ様はガタガタ震えている。死んでいたかもしれないんだから。

 彼女のそばにいたエティレンクド様が、ひどく震えながらテクフィノレク様に振り向いた。

「て、テクフィノレク様っ……こ、こっ……これは一体……ど、どういうおつもりですか!??」
「どう? おかしなことを言う方々だ…………そこで震えている方が、カテリスラ家だと自慢するから、少しその力を見せてほしいと、そう言っただけです」
「ち、力をって…………そ、そんな無茶なっ……な、なんですか今のは!!」
「ちょっと驚かせただけです。それを…………随分情けないことだ。大きな口を叩いておいて、その程度かっ…………!」
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