誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐

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46.死ぬところだった!

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 私は、ブークリアス様と対峙して言った。

「すでに、ヴルレウェス様のことがあって、城は厳戒態勢です。城に近づく者も、城を出て行く者も、全部ヴィラウレルト様たちが警戒しています。このまま去るより、話し合いの席に着くべきです。このままヴルレウェス様を連れ出すことは、領地のためにならないし、あなたたちのためにもなりません」
「何を偉そうにっ…………!」

 怒鳴るブークリアス様の攻撃の魔法を、虎の姿のまま私の前に飛び出して来たロズルラト様が、片手で弾き飛ばす。

「なっ……なんでっ…………」

 彼女はひどく怯えているようだった。子猫みたいな猫に、自慢の魔法を軽く弾き飛ばされたんだ。よほど驚いただろう。

「こんなものか? もっと強い魔法と戦えるのかと思っていたのにな…………」

 そう言ってロズルラト様が、ニヤリと笑う。

「お前ら……俺に手を出したな?」
「あっ…………」

 怯える彼女から、私は離れた。

 話し合いは、決裂。

 竜の領主様の城から無断で物を持ち出そうとした男を、彼女らが無理に連れて行こうとしていることも確認した。

 私の横をすり抜けて、幾つもの魔法の光が彼らに向かって飛んでいく。ヴィラウレルト様たちが来たんだ。

 すぐに応戦するオーテクルテスファー様たち。

 けれど、彼らのそばにいたヴルレウェス様は、突然の攻撃に驚いたのか、私たちに背を向けて逃げて行く。

 ……何をしてるの!?

 これだけ魔法が飛び交う中、無防備に逃げ出そうとしたら危ない。

 私は、結界の魔法の道具を握って、逃げた男まで走った。背後で、ロズルラト様が「おいっ……! 危ないぞ!」と叫んでいた。

 逃げるその男を、私は飛びついて止める。

「は、はなせ!! 貴様っ……! 無能の分際で!!」
「私が離れたら、流れ弾で死にますよ!!」

 だってこんなことをしている間も、ずっと魔法の弾が飛びかっている。私たちにそれが当たらないのも全部、私の結界あってこそだ。

 周囲の地面に魔法の弾が着弾して、地面は抉れ、弾けていく。

 皆さん……

 少し、容赦がなさすぎませんか!!?? 私もここにいるのですが!!??

 ヴルレウェス様は真っ青になって私にしがみついてくる。

「…………た、助けてくれっっ!! お、俺まで殺されるっっ!!」
「……大丈夫です。この結界の中にいれば」
「ほ、本当だろうなっっ!! お、俺は死にたくないっ……! 聞かれたことには答えるからっっ!! 助けてっっ……!」
「いきなり情けないですね…………言っておきますが、あなたがあの時使用人を守ったから、助けるだけですよ?」
「へっ!!??」
「魔物が現れて使用人が怪我をした時です。本当に素材だけを狙ったなら、あなたは襲われている使用人を見捨てることもできたはずです。だから助けるだけです! 代わりに、怪我をした方とキュファリウェスに、後でちゃんと話して謝ってくださいね!」
「…………はい」

 項垂れて、男は頷いた。それがなかったら、私だってこんな男、見捨てていたかもしれない。キュファリウェスはひどく苦しんでいたんだから!

 激しい攻撃魔法の光は、私たちのすぐそばをすり抜けていく。

 私もいますが!?? 結界があるとはいえ、さすがに怖くなる。

 結界の魔法の道具を強化しておいて、よかったあああああ!!

 自分の強化なんて信用できないと思っていたけど、今なら心底思う。よくやったなーー、私!

 これをしてなかったら、私は死んでいたかもしれない。

 周りには多くの魔法使いたちが倒れている。

 後でテクフィノレク様に心から感謝しておこう……彼の指導がなければ、こんなに強化はできなかったし、私は今頃、死んでいたかもしれない。

 次第に攻撃は止んで、そのあと無事だったのは、私と、私が守っていたヴルレウェス様だけ。

 倒れた方々はみんな気絶しているようだけど、生きている。誰もが防御の魔法に長けていたのと、ヴィラウレルト様たちが多少手加減したこともあったのだろう。

 背後から、ヴィラウレルト様と領主様が現れた。

「ずいぶん乱暴にやったなーー。まあ、全員止まったならいいか!」

 と、相変わらずな様子の領主様。

 ヴィラウレルト様も、倒れたままのオーテクルテスファー様のそばに立って「死ななかったか」なんて、ちょっと残念そうに言ってる。

「ヴィラウレルト様!! け、結界があるとはいえ、私もいるんです!! どうか、あまり恐ろしいことはなさらないでください!!」

 さすがに食ってかかる私。

 だって、こんなの恐ろしすぎる。私まで殺されるところだった。

 けれど、ヴィラウレルト様は平然として言う。

「あの結界が破れるはずがないだろう。なにを恐れるようなことがあるんだ?」
「……破れなくったって、あれだけ攻撃魔法が飛んできたら怖いです!! き、気をつけてください!!」

 もう泣きそう。

 けれど、私のそばに駆け寄ってきた虎の姿のロズルラト様が言う。

「大丈夫だって! お前にだけは、当てないから!」
「当たらなくたって、怖いんです……」

 周囲からはすっかり何もなくなってしまっている。全部吹き飛んでしまったらしい。

 こいつら、絶対に私たちがいることに構わず撃ったなっ……!! お陰で死ぬところでしたよ!??

「それに……いいんですか? オーテクルテスファー様にまで魔法を撃って…………後で問題になるのではないですか?」

 私がたずねても、領主様は余裕な様子で笑う。

「こっちは、お前とヴルレウェスを攻撃されたから撃っただけだ! そいつらに当たったのは、流れ弾だな!」
「…………」
「それに、俺たちとやり合うほどの力はもうないだろうし、王家や周辺の貴族どもに助けを求めることもできないだろう。あっちにも後ろめたいことが多いんだからな……さあ! 帰るぞっっ!!」
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