誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐

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48.お前が

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 キュファリウェスのお陰で、なんだか自分じゃないみたい。
 夜会の時は、ずっとただ「オーテクルテスファー様の婚約者として恥ずかしくないような格好を!」と言われるがままに着飾っていた。けれど彼女は、ただ緊張している私に、どんな髪型が好き? ドレスの色は? どんなドレスが好き? アクセサリーは? なんて、いろいろ聞いてくれて、私は初めて夜会に出るためのものを自分で選んだ。

 竜の領主様が、あの量のドレスとアクセサリーを用意してくれたことにも驚いたけど……

 私、こんなことまでしていただいて、いいのかな……

「あ、ありがとう! このドレスも化粧も…………こんな風にしてもらえたのは初めて!」
「……本当に綺麗よ。フィレイルイラル。今日は、楽しんで!」

 彼女と話していると、ヴィラウレルト様が歩いてきた。

「フィレイルイラル……どうした? こんな端の方で」
「ヴィラウレルト様……え、えっと…………す、少し緊張していて……」

 答えている間に、小さな虎の姿のロズルラト様と、彼を肩に乗せて鬱陶しそうにしているテクフィノレク様が揉み合いながら歩み寄ってくる。

「……そろそろ降りなさい……」
「やだ! こっちの方が楽だ! フィレイルイラルーー!!」

 ロズルラト様は、嫌がるテクフィノレク様の頭にのぼって飛びおりると、人の姿になって私に笑顔を見せてくれた。

「こんなところにいたのか! 探したぞ! ちゃんと真ん中にいろ!!」
「な、なぜ私が真ん中にいなくてはならないのです……?」
「探すのが大変だからだ! 城の奴らもみんな出て来るし、周辺の貴族たちだって来てるんだぞ!! 獣人の国からもいっぱい客が来てる! さっきから挨拶ばっかでめんどくせーー!!」
「……大変ですね……」

 そんなにお客様が……? 広間には、まだ人は集まっていないのに。夜会が始まる前なんだから、当然だけど……

「獣人の方もいらしているのですか?」
「あー……まあな…………」

 今度はロズルラト様の方が、なんとなく歯切れが悪い。

 すると、一緒にいたテクフィノレク様が腕を組んで言った。

「彼はこれだけ馬鹿なのに、獣人の国の宰相の一族ですから」
「へっ……!? そうなんですか??」

 全く知らなかった…………この城に来て、ずいぶん経ったような気がしていたけど、私はまだまだ知らないことが多いみたい。

 キュファリウェスに関しても、他の方に関しても……きっと、そうなんだろう。

 俯いていると、急にロズルラト様が私の顔を覗き込んできた。

「……どうしたー? 今日のお前、なんかいつもと違う」
「え…………? そ……そうですか……?」
「うん。キラキラして眩しい」
「キラキラ?」

 ああ……そうか。いつもとは違って、着飾っているからだ。宝石も使っているようだし……

 ……ロクデラッド様の城の夜会でも、こんな格好はしなかった。美しい服、宝石、アクセサリー……どれも綺麗で、私はそれらに不釣り合い……

 それに、輝かしい広間と、優雅な衣装を身につけた、貴族の方々。

 皆さんと顔を合わせていると、なんだか苦しくなってくる。私だけ、この場で浮いているような気がして。

 夜会の場だ……ちゃんと貴族として振る舞わなくては。夜会の雰囲気を壊してはいけない。社交の場だ。余裕の笑顔を浮かべて、立っていなくては。

 まだお客さまは会場には来ていない。いるのは、城の方々ばかり。それでも、苦しくなりそうだ。

「私、こう言う場は……少し苦手なんです……」

 自信のないままそう言うと、ヴィラウレルト様が驚いたように言った。

「はっっ!?? そうなのか!?」
「え? ええ…………」
「……そうか…………」
「ヴィラウレルト様……?」

 私が首を傾げると、彼は顔を背けてしまう。

 私が夜会が苦手だと、何か都合が悪いことでもあるの?

「……すまん…………」
「え……?」

 一言だけ謝って、彼は顔を背けている。そこに、私たちの姿を見つけた竜の領主様が近づいてきた。

「なーにやってんだーー? ヴィラウレルトーー」
「領主様…………すみません。夜会は、苦手だったみたいです」

 ヴィラウレルト様にそう言われて、驚いた様子の領主様は、私に振り向いた。

「え!? お、お前、夜会は嫌いか?!」
「嫌いというわけでは……ないのですが…………ただ、少し苦手なんです」
「そうか……それは……悪かったな…………」
「そ、そんなっ……領主様が謝るようなことではございません!! も、申し訳ございませんっ……! 無礼なことを……」

 私は、何をしているんだろう。

 皆さんがこれだけ気を遣ってくれているのに、私はずっと俯いたままで。みんなに心配をかけてしまった。

 今日はオーテクルテスファー様との交渉の日で、それは、この領地のためにも重要なことなのに……こんなわがままを言ったりして!

「ほ、本当に、申し訳ございません!! 私、精一杯頑張らせていただきます! 絶対にオーテクルテスファー様からこの領地を守って見せます!」
「…………は? 何を言っているんだ?」

 領主様は不思議そうに首を傾げた。

 だって、そのためにこうして夜会を開いたのではなかったの? オーテクルテスファー様を、出迎えるために……

「お前が喜ぶと思ったんだよ!」

 そう言って、領主様は私の顔を覗き込んできた。
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