誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐

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49.すでに

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 一体、何を言っているの??

「わ、私が??」

 聞き返すと、領主様は腕を組んで言う。

「そうだ! お前、エティレンクドやキャデリレーラが来た時、随分無礼なこと言われてただろ? お前はもうここにいるんだし、たまにはこういう場で楽しむのもいいんじゃないかって思ったんだよ。他にもすることがあったしな!」
「え……えっと…………? どういうことですか?」
「……あの道具使って結界を張ってみろ」
「え?」
「せっかく夜会があるんだし、夜会のついでに、それの威力を今ここで試す!」
「ここで……ですか?」
「もちろんだ! ちなみに、俺の魔法はこう見えて、竜の国ではちょっとしたものだぞ?」
「…………」
「やって見せてくれ!! 新入りっっ!!」

 領主様の魔力が膨れ上がる。

 私は、結界の道具を槍の姿に変えて、自分の足元に突き刺した。城を守らなきゃ……!

 激しい光が襲ってきて、目を閉じる。

 しばらくして、攻撃が止む気配がして、私は、恐る恐る目を開いた。

 城には傷ひとつない。床も、テーブルも、シャンデリアも、カーテン、窓、テーブルの上のワインとグラスまで、そのままそこにある。全部守りきれたらしい。

「やりましたっ……! 成功ですっっ!!」
「何が成功ですかこの馬鹿っっっっ!!!!」

 ものすごい声で怒鳴られて、たまらず私は尻餅をついた。

 私を怒鳴ったテクフィノレク様は、腰に手を置いて、恐ろしい顔をして私を睨んでいる。

 い、今までで一番、声が大きい……

「城を守ってどうするんですかっっ!!!! 領主様は、結界で自分を守れとおっしゃったのです!!!!」
「へ!?? だ、だって……」

 夜会が開かれるからちょうどいいって…………夜会のある城を守れっていう意味じゃなかったの!? そうやって、この魔法の道具が役に立つことを示せっていう意味じゃないの!??

 それなのに、キュファリウェスまで私に飛びついてくる。

「もうっっ……!! 何してるの!」
「キュファリウェス……だって…………」

 役目を果たせるかと思ったのに。

 けれど、キュファリウェスは泣き出しそうな顔で言う。

「あなたに何かあったらっっ……どうするの! 皆様がいらっしゃらなかったら、ここで死んでいたかもしれないのよ!?」
「あ……」

 私のすぐ近くには、テクフィノレク様が立って、私を守る結界を張ってくれている。ヴィラウレルト様とロズルラト様は、魔力と魔法で私と彼を支援してくれたみたい。

 そして、ヴィラウレルト様は領主様を睨みつけて言う。

「……なんの真似ですか? フィレイルイラルは、まだ魔力が回復しきっていないと言うのに」
「は!? え!? そうなの!?」

 驚く領主様に、大きな虎の姿になったロズルラト様まで口を開いた。

「そうに決まってるだろ! お前……こいつを殺す気だったな!?」
「お、落ち着け落ち着け!! ま、魔力、まだだったか…………」

 明後日の方を向く領主様に、テクフィノレク様が、ひどく冷たい目をして「忘れていたんですか?」って聞いた。

「そ、そんなこと言ったって…………それは悪かったな! ぶ、無事でよかった! は……はははっ……!」
「……」

 領主様、すごい汗だ……

 ロズルラト様は領主様を睨んでいたし、ヴィラウレルト様は、私に振り向いて、怪我はないかって言ってくれた。

「だ、大丈夫です……皆さま、ありがとうございます……領主様だって、本気で撃ったりはしません」

 私に向けて撃ってきていたけど、本気で私を殺すためには撃ってこない。領主様は、そのようなことはしない。

 そう思って言うけど、テクフィノレク様は「うちますよ」って言い出す。

「……城を破壊したり、あなたを殺すような気はなかったようですが……」

 それを聞いて、領主様も肩をすくめ、私に向き直る。

「テクフィノレクの言う通りだ。もう少し警戒した方がいいぞ? 俺の魔法は、城もフィレイルイラルも狙った。城を守ったのは、フィレイルイラル、お前の強化だ!」
「領主様……」

 驚く私に、領主様は微笑んだ。

 まだ、信じられない。私の用意した魔法の道具が、こんな風に役に立つなんて。

「そうだろ? フィレイルイラル! もう、その道具は完成だ!! 俺は満足だぞ! ……って、前にも言ったような気がするけどな!!」
「え……と…………あ、ありがとうございます!」

 確かに、言われていたけど…………

 こうして、その力を再確認できたことは嬉しい。

 なにしろ、自分のしたことを認められたことなんて、まるでない私だ。そうされると、嬉しくてたまらない。

 でも……

「そのために、わざわざ夜会を……?」
「ああ、そうだよ!! お前がいつまでも、自分は魔法の道具のために連れてこられたって言ってるからだ!」
「へ?」

 私が? 確かに言ったけど。

 びっくりした。だって、まさか、そんなことのために?

「お前をここに連れてきた時には、渡されたものはどうせろくに動かないだろうし、そうなったら、お前を代わりに使うつもりだった…………本当に、すまなかったな……」

 領主様が申し訳なさそうに頭を下げるから、私は焦った。

「そ、そんなっ……!! やめてください!! 提案したのは私です!」

 あの時、私は皆さんに無理を言ってついてきた。彼らだって、急に私がここに来ることになって、戸惑い、焦ったはずだ。彼らにとっては、ひどく不利な話だったはず。

 それでも私を連れ出してくれて、今は心から感謝している。

 だから、万が一にも後悔なんてしてないし、それを恨みに思うなんて、とんでもない。

「私は……感謝しています!」
「そうか…………それなら、もう二度と道具の代わりなんて言うな!! お前がそんなこと言ってるから、この夜会を開いたんだぞ?」
「え……」
「お前は、そんなんじゃない!! 結界の魔法の道具だって、完成しただろ!? 俺の魔法を防ぐくらいだからな!」
「領主様……」
「せっかくの夜会だ! 楽しんでいけ!! それがあってもなくても、お前はこの城で暮らす仲間だ!!」

 驚いたけど、どうやら他の皆さんは、本当にそんなつもりだったみたい。

 私の後ろにはみんながいてくれて、彼らがいなかったら、私は死んでいた。

 どうしよう……嬉しいんだから、そう伝えたいのに、涙が出てくる。

 私がそんなことをしているから、ロズルラト様が焦った様子で言った。

「は!? お、おいっ……! なんで泣くんだ!?」
「え……あ、ち、ちがっ……! ちがう!! 違うんです!!」
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