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33.憧れだよ!
「あーー……気持ちいいーーーー…………」
初めての温泉につかった俺は、気持ち良すぎて、もう出たくなくなりそうだった。
時間もだいぶ遅いからか、周りに客の姿はない。広い露天風呂が、自分達だけのものになったみたいで、すっげー気持ちいい。なんだこれ、最高すぎる。
草原にいる間、体を洗うときは、川の水だった。ついでに魚なんかもとったりして、結構楽しかった。ヴァンケズの魔力が戻ってからは、たまにあいつが魔法でシャワーを作ってくれたりしたが、魔物と戦うために魔力は温存しておいた方がいいと言って、できるだけ体は水で洗っていた。
それが、今はあったかいお湯につかって、星空が見える露天風呂。
最高だ……気持ち良すぎる……
ヴァンケズはまだ体を洗っていて、風呂にはいない。湯気が熱かったのか、やけに顔真っ赤だったけど、大丈夫か、あいつ。
隣にいるのはフィエズートだけ。そいつも、さっきディゲーアに会っていた時は少し怯えていたみたいだったけど、今はリラックスしているようだった。
「気持ちいい…………本当に……僕までよかったの?」
「ああーー? 何がだーー……?」
「だ、だって……僕、昼間、お前らを襲ったのに……」
「お前後ろの方で震えてただけだろ…………魔物とは戦えんのに、なんで俺ら相手だとあれなんだよ…………」
「だ、だって……相手はヴァンケズだろ!?? ディゲーアから聞いたときは、金と素材欲しさに……つい……引き受けたけど…………い、いざ、本物を見たら、足が、す、すくんで……」
「あいつ、つえーからなーー。魔法封じられた、とか言ってたけど、魔力なくても魔物と普通に戦ってるし…………すげーよ……」
「すごいに決まってるだろ!! 王家に仕える魔法使いだよ!? 王城を守る魔法使いの部隊ってだけでもすごいのに、ヴァンケズたちは、常に国王陛下のおそばにいて、国王を支えているんだ!! 全ての魔法使いの憧れだよ……陛下に認められれば、地位も名誉も思いのままだ!!」
「へーー…………あのムカつくクソ国王、すげーんだな……」
「そ、その、無礼な口をきくのやめて!! だ、誰かに聞かれたら不敬罪で連れていかれるかも……」
「だってあいつゲスだぞ。ヴァンケズのこと、殺そうとしたんだ」
「それは知ってる…………ディゲーアに聞いたから……だ、だけど……ヴァンケズは王家の魔法使いの中でも、最強と言われた魔力を持っていたんだ……ディゲーアを使ってわざわざ追ってきたんだし、今からでも、城に戻って謝罪すれば……きっとまた、迎えてもらえるんじゃないのかな…………」
「バーーカ。誰が返すか!!」
「……で、でもっ……」
「あんなクズに、ヴァンケズを返せるかよ…………何が王家に仕える魔法使いだ。今は俺の仲間なんだ!」
「……リューオ…………」
フィエズートは、じっと俺を見上げている。そしてしばらくして、呆れたように言った。
「馬鹿はリューオだよ…………国王に追放された逃亡犯なのに……」
「ああ!!?! てめえ喧嘩売ってんのか!!」
「そ、そんなつもりはっ……!! そ、そういえば、ヴァンケズは?」
「あ? まだ体洗ってんだろ?」
「さっき、シャワーのところにはいなかったよ……?」
「なんだよ、迷子か? あいつ」
「迷子にはならないと思う……」
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